この記事でわかること
- 広大地評価から地積規模の大きな宅地の評価に変わったことがわかる
- 地積規模の大きな宅地の評価を行うための要件を知ることができる
- 地積規模の大きな宅地に該当する場合の評価方法がわかる
相続財産となった土地の評価額を計算する際には、その評価額を軽減する特例が多く用意されています。
そのような特例の1つに広大地の評価というものがあります。
ただ、広大地の評価については廃止され、現在は地積規模の大きな宅地の評価という計算に変わっています。
はたしてどのような場合に適用できるのか、そしてどのような計算を行うのか、その内容を確認していきましょう。
目次
広大地は相続税の評価が軽減される
広大地とは、面積の広い土地のことをいいます。
広大地に該当すると、その相続税評価額を軽減することが認められるのです。
なぜ、広大地に該当すると相続税評価額が軽減されるのでしょうか。
それは、広大地をそのまま第三者に売却するのが難しいからです。
面積の広い土地は、多くの場合宅地として分譲しやすい大きさに分けて売りに出されます。
その際、道路で区画を整理することとなるため、実際には購入されない土地が生じることとなります。
広大地を所有している人から購入するのは、多くの場合不動産業者です。
不動産業者は、利用できない土地が生じるのを見越して、少し安くその土地を購入することとなります。
このことを反映して、相続税評価額が軽減されるような計算方法が定められているのです。
広大地は平成29年末に廃止・地積規模の大きな宅地に改正
広大地の評価方法を定めた規定は、財産評価基本通達24-4に定められていました。
しかし、この規定は平成29年12月31日までに発生した相続について適用される一方、それ以後の相続については適用されません。
そして、平成30年1月1日以降に発生した相続では、地積規模の大きな宅地の評価に関する規定(同通達20-2)が適用されます。
広大地の規定は、平成29年12月31日までに発生した相続について適用されることとなっています。
新たに広大地の規定が適用されることはないのですが、修正申告や更正の請求を行う際にはまだ適用される可能性があります。
地積規模の大きな宅地の評価は、三大都市圏では500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上の土地に適用されます。
また、地区区分は普通商業・併用住宅地区と普通住宅地区の2つの区分で適用されます。
市街化調整区域にあり宅地開発ができない土地、工業専用地域、容積率が400%(東京23区内は300%)以上の地域にある土地も適用できません。
広大地を適用するための要件
広大地評価が適用できると、相続税評価額が減少するため納税者にとって有利に働きます。
ただ、このように納税者に有利になる制度を適用するためには、厳密な要件を満たしていなければなりません。
広大地に該当するためには、以下の4つの要件を満たす必要があります。
1)その地域の標準的な宅地の面積より広大である
具体的に何㎡以上であれば広大地に該当する、という決め方ではありません。
地域ごとにその実状に合わせた判定を行うこととされています。
判定の手順は以下のようになっています。
- ①地域ごとに規定されている開発許可基準面積を満たしていれば、標準的な宅地と比較して広大であると判断します。
- ②開発許可される最低敷地面積を調べ、その地域の標準的な宅地の地積を確認します。
- ③都道府県地価調査の基準地や地価公示でも、その地域の標準的な宅地の地積を知ることができます。
①を満たしたうえで②や③より大きい場合には、広大地に該当すると判断できます。
目安としては三大都市圏の市街地では500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上となります。
2)開発する際に公共公益的施設が必要となる
広い土地であっても、開発する際に区分だけしてそのまま利用できる土地であれば、評価額を減額すべき理由はありません。
開発にあたって道路を設ける必要があり、その道路となる土地について一定の配慮を行うのが広大地評価なのです。
具体的には①1つの道路にしか面しておらず、②奥行きが25メートル以上ある場合は、道路が必要となる可能性が高くなります。
また③間口より奥行の方が長い土地や、④間口が極端に狭い場合も、道路がないと開発できない可能性が高いといえます。
もっとも、最終的には納税者の判断で道路がなければ開発できないという状況を、税務署に対して説明する必要があります。
3)大規模工場用地に該当しない
大規模工場用地に該当するのであれば、そのまま売却することができる可能性が高くなります。
そのため、広大地として評価する理由がなくなるのです。
大規模工場用地に該当するかどうかは、その土地の用途地域によって判断します。
用途地域が工業専用地域となっている土地については、どれだけ大きな土地であっても広大地にはなりません。
また、工業地域や準工業地域となっている場合は、周囲の状況などを勘案して判断することとされています。
たとえば、周囲に大規模な工場が多く立地しているような場所では、広大地と認められない可能性があります。
また、幹線道路に面していたり、高速道路のインターチェンジに近かったりしても広大地と認められない場合があります。
4)マンションの敷地用地に適していない
マンションの敷地とすることにふさわしい土地であれば、そのままの形で売却できる可能性があります。
そのため、大規模工場用地の場合と同じく広大地評価を行う理由がなくなるのです。
駅から徒歩20分以上かかる土地、容積率が300%未満の土地はマンションに適しているとはいえません。
また、周辺にマンションが建っていない場所も、新たなマンションの建設の見込みは小さく、広大地となる可能性が高くなります。
ただ、これらは明確な基準として定められているわけではなく、最終的には個々にその状況から判断することとなります。
広大地に該当しないケース
これまで述べてきたように、相続税法上の広大地となる土地は単に地積が大きいだけでは認められません。
公共公益的施設として道路などの開設が必要となる場合に、初めて認められるものです。
したがって、以下のようなケースでは、広大地評価が認められないと考えられるため注意が必要です。
公共公益的施設が小規模な場合
公共公益的施設には、道路の他ごみ集積場なども該当します。
ただ、ごみ集積場だけを開設するような場合は、その占める割合が極めて小規模にとどまります。
そのため、広大地評価を行って評価額を減額する必要はないと考えられるのです。
地積は大きいが間口が大きい場合
間口が大きな土地は道路に面している部分が大きいため、その道路に沿って区画を分けることができます。
この場合、新たな道路の開設をしなくても区分することが可能であるため、広大地とは認められません。
セットバックを必要とする場合
セットバックとは、道路の幅が非常に狭い場合、その道路の幅を広くするために敷地の一部を道路用地とすることです。
セットバックすべき土地については、別に評価方法が定められており、その計算方法にしたがって評価額を減額することができます。
したがって、セットバックをしなければならない土地であることだけを理由として、広大地に該当することはないのです。
新たな道路を開設する必要がない場合
地積の大きな土地であっても、区分する必要のない土地の場合は広大地に該当しないこととされます。
最も分かりやすいのは、大規模な工場やマンションの敷地にふさわしく、そのまま利用することができる土地です。
ただ、工場やマンションの敷地に利用される可能性は低くても、広大地に該当しない場合があります。
土地が何本かの道路に面しているため、標準的な大きさに区分しても新たに道路を設ける必要がない場合です。
このようなケースでは、区分して利用することが前提であったとしても、広大地には該当しないこととなります。
路地状開発を行うことが合理的な場合
路地状開発とは、道路から路地のように伸びる部分を通って宅地とする土地の利用法をいいます。
道路を新たに開設するのとは違い、路地の部分も宅地の所有者の土地となるため、道路のための土地を考慮する必要はありません。
ただ、その土地が路地状開発を行うのに適しているのか、道路を開設するのが適しているのか判断が分かれるかもしれません。
周囲の状況や土地の大きさ、特に道路からの奥行などを見ながら判断することとなります。
広大地の相続税評価方法
広大地に該当した場合、どのような形で相続税評価を行うのでしょうか。
ここでは、広大地評価の計算方法についてその計算式を確認していきましょう。
広大地評価の計算式
広大地評価の計算式は「路線価×地積×広大地補正率」となります。
このうち広大地補正率とは、「0.6-0.05×(地積÷1,000㎡)」となります。
たとえば、地積が1,200㎡の土地であれば、広大地補正率は0.6-0.05×(1,200㎡÷1,000㎡)=0.54となります。
広大地補正率が0.54になるということは、従来の計算式で求められる土地の評価額の54%にまで評価額が下がることを意味します。
広大地の計算例
路線価が10万円、地積が2,000㎡という土地で考えてみます。
この土地が広大地に該当しない場合、相続税評価額は路線価×地積で10万円×2,000㎡=2億円となります。
ここで、この土地が広大地に該当する場合、広大地補正率は0.6-0.05×(2,000㎡÷1,000㎡)=0.5となります。
この場合、広大地評価の計算式は、2億円×0.5=1億円となります。
広大地に該当することで、その評価額が半分になったのです。
まとめ
広大地に該当して広大地評価が適用できると、その評価額が一気に半分程度にまで減額となる場合もあります。
大きな土地の評価額が減額となれば、その節税効果も非常に大きなものとなります。
ただ、広大地に該当するかどうかの判断は難しい面があり、個々に判断するしかありません。
税理士や不動産関係の専門家の判断も参考にしながら、大きな節税となる方法を適用できないか再度確認しておきましょう。
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