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最終更新日:2021/1/28

他人の相続税を支払うハメに?相続税の「連帯納付義務制度」とは

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、横浜、千葉、大宮、名古屋、大阪、神戸など全国の主要都市22拠点にオフィス展開し、年間2,200件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。 業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

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納付期限までに相続税を納めたにもかかわらず、突然「連帯納付義務のお知らせ」という通知が税務署から送られてくる場合があります。

この通知は自分以外にも親や兄弟など他の相続人がいて、その方の中に納付期限までに納税していなかった場合などに送られてくる可能性があります。

通知の内容ですが、ずばり「払っていない人の分を代わりにあなたが期日までに払いなさい」という恐ろしいものです。

このような制度は連帯納付義務制度と呼ばれており、法定相続人が複数いる場合にはその概要だけでも覚えておいたほうがいいかもしれません。

今回の記事では連帯納付義務制度について解説していきます。

相続税の連帯納付義務制度とは?

相続税の連帯納付義務制度について、制度の概要や各相続人の負担割合、さらに延納の可否についてご紹介します。

制度について

遺産を相続した相続人が複数いる場合、相続人どうしで互いに連帯納付義務を負うというのが、連帯納付義務制度です。

基本的には複数の相続人がいて、その中のだれかが相続税の納付期限までに納税しなかった場合には国税当局はその本人宛てに督促をおこないます。

しかし、本人からの納付が困難なことが明らかな場合などの際には税務署は他の相続人に通知を出して、代わりに収めさせることができるとされているのです。

税務署から届けられる通知は「督促状」と呼ばれ、「他の相続人が延納していること」「督促状の受取人は連帯納付義務を負うこと」が税務署の担当者名とともに記載されています。

督促状をもし受け取った場合には必ず管轄の税務署に事実関係の確認をし、さらに滞納している本人にも連絡を入れたほうがいいでしょう。

なお、相続人の中には、被相続人の最後の所在地にある家庭裁判所宛てに相続放棄の手続きをおこなっている場合もあります。

相続放棄している相続人には連帯納付義務はありません。

ただし、遺産分割協議にて相続分を放棄したことになっているだけにすぎない場合、引き続き連帯納付義務を負うことになりますので注意しましょう。

各相続人の負担割合

納付義務を負う相続人の負担割合ですが、相続財産で受けた利益が同じであれば原則として相続人どうしで特約などが交わされていない限り、平等に納付義務を負うことになります。

ここで簡単な例ですが、1,000万円の相続財産を受けた3人の兄弟(A・B・C)がいたとしましょう。

それぞれに100万円の相続税が発生したとすると、納税すれば残った利益はそれぞれ900万円となります。

しかし、三男のCがその100万円の相続税を払わずに1,000万円を全て浪費し、さらに病気がちであることと無職であるために100万円の相続税を支払える目途が全く立たないとします。

この場合もし税務署から督促等があれば、他の兄弟AとBが得られた利益900万円からそれぞれ50万円ずつ平等に納税することになります。

なお、連帯納付義務の範囲はあくまで得られた利益の範囲内となります。

上記の例で、遺言などによりCだけが2億円の相続財産を受け、納税額2,000万円を滞納していたとしても、AとBはそれぞれ受け取った利益である900万円の範囲(合計1,800万円まで)での納付義務にとどまるということになります。

延納できるか?

連帯納付義務を課せられた人が相続税の延納ができるかについてですが、相続税法では延滞した本人以外は申請できないことになっています。

相続税法には納税義務者の申請があれば延納できる旨が定められていますが、この納税義務者はあくまで本来納付すべき本人(納めていない本人)を指しており、連帯納付義務を課せられた人は含まれていません。

よって本人以外は延納申請ができないことになります。

どのように対処すればいいのか?


滞納した本人がまだ支払う力がある場合、すぐに納税するように話してみましょう。

しかし、納税できるのに納税したがらない場合には、税務署から財産が差し押さえられる可能性や延滞税といった重い負担が課せられるペナルティについて説明し、納税してもらうように説得することが必要になってきます。

さらに本人が既に使い込んでしまった場合で他に納税資金となる現預金も、収入も無いといった事態もあります。

このような場合、ひとまず本人に延納の申請をしてもらって時間を他の手段を検討するための時間を稼ぐことも大切です。

もし、本人が相続した財産が被相続人の自宅などの不動産の場合、その家を担保にローンを借りたり、不動産の売却を進めたりすることもできるかもしれません。

また、連帯納付義務には義務自体が解除される要件が2つあります。

その要件とは、「申告期限から5年が経過して時効が成立した場合(悪意の場合は7年経過後)」と「滞納している本来の納税義務者が延納や納税猶予を認められた場合」です。

ただし、申告期限から5年以内に督促状が届いている場合には解除されません。

連帯納付義務が発生した場合の税務上のペナルティ

ただでさえ相続税の連帯納付義務はやっかいな問題ですが、さらに注意したいのが「利子税」というペナルティが加算されることです。

しかも、本来納税すべき本人に対しては、「延滞税」もかかってきます。

したがって、本来納めるべき相続税に加えて、これらのペナルティも合わせて支払わなければならないということになります。

また、利子税や延滞税は期限までに納税しなかったことに対する税務上のペナルティですので、延納を申請することはできません。

利子税と延滞税

相続税には他の税金と同じように申告期限と納付期限が定められています。

相続税の申告期限と納付期限ですが、相続開始の事実を知った日の翌日から10ヵ月以内となっており、それまでに納税を済ませておかなければなりません。

連帯納付義務が発生したということは、義務が発生した段階ですでに本来納付すべき人がその納付期日までに納付していないことを意味しています。

税務上は納付期限を過ぎれば、それ以降に支払われる税金には利子税や延滞の期間によっては延滞税が課せられることが定められているのです。

利子税と延滞税の税率

以下に利子税と延滞税の税率(2019年の税率)についてまとめてありますのでご覧ください。

納付基準日の翌日から2ヵ月以内 利子税として年2.6%
納付基準日から2ヵ月超~納付日まで 延滞税として年8.9%

納付基準日の翌日から2ヵ月を経過する日までは利子税として年2.6%が課せられます。

また、納付基準日から2ヵ月を経過する日以降から納付日までは延滞税として年8.9%が課せられることになります。

相続税の利子税は原則として4.3%、延滞税は14.6%が課せられることになっていますが、負担が大きすぎるという理由から2012年(平成24年度)の税制改正により上記のような税率へと下げられました。

まとめ

連帯納付義務制度の重要なポイントについてお伝えしてきました。

相続税の納税は普段あまり慣れていないためにうっかり納付日を忘れ、滞納してしまうということも考えられます。

いっしょに相続した兄弟などがいる場合、互いに納税まで済ませたかどうかを確認し合うことをおすすめします。

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