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最終更新日:2023/9/7

再転相続とは?相続放棄ができるのかや期限について解説

田中 千尋 (司法書士)
この記事の執筆者 司法書士 田中千尋

ベンチャーサポート司法書士法人 司法書士 昭和62年生まれ、香川県出身。

相続登記や民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

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再転相続とは?相続放棄ができるのかや期限について解説

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この記事でわかること

  • 再転相続とはどのような相続の方法をいうのかを知ることができる
  • 再転相続になった場合と他の相続との違いを知ることができる
  • 再転相続になった場合の相続放棄の取扱いや注意点がわかる

相続が発生すると、亡くなった人(被相続人)の保有していた財産は相続人が相続します。

ところが、相続放棄するか、あるいは相続するかを決めないうちに相続人が亡くなってしまうケースがあります。

このような相続を再転相続といい、通常の相続とは異なる点があるために注意しなければなりません。

ここでは、再転相続があった場合における相続放棄や熟慮期間などの注意点について解説していきます。

再転相続とは

再転相続とは、相続が発生した時に相続放棄するかどうかを熟慮している間に、その相続人が死亡し、別の相続が発生することをいいます。

相続が発生すると、相続人は遺産を引き継ぐ単純承認、あるいは一切の遺産を引き継がない相続放棄のいずれかを選択します。

相続放棄の熟慮期間中に亡くなった相続人がいると、二次相続の相続人が再転相続人となり、一次相続について相続放棄できます。

このように、再転相続があった場合には、後から一次相続における相続放棄を選択できるようになっています。

再転相続と他の相続ケースとの違い

相続が立て続けに発生する場合、あるいは相続人と被相続人との関係が複雑になるケースはいくつかあります。

それぞれをご紹介していきましょう。

代襲相続は、相続人が先に亡くなったため、相続人の子が相続人になる場合です。

たとえば、親より先に子が亡くなった後に親が亡くなった場合、先に亡くなった子に子どもがいれば、その子どもは法定相続人となります。

この場合、後に亡くなった親から見れば孫にあたる子の子どもが相続する場合のことを、代襲相続といいます。

同時死亡とは、もしいずれか一方だけが先に亡くなった場合には被相続人と相続人の関係になるはずの2人以上の人が同時に亡くなることです。

たとえば交通事故や災害などで、家族が同時に亡くなるケースなどが考えられます。

この場合、同時に死亡した人の間では相続は発生しないという取扱いがされています。

数次相続とは、相続が発生した後、遺産分割協議が成立しないうちに相続人が亡くなり、次の相続が発生することをいいます。

数次相続が発生すると、一次相続についての遺産分割を行った後、二次相続の手続きを行う必要があります。

この数次相続と再転相続は、ともに相続が立て続けに発生しているため、違いがわかりにくいかもしれません。

数次相続は遺産を相続する意思はあるものの、何を相続するかが決定していない状態です。

一方、再転相続はそもそも遺産を相続するか、それとも相続放棄するかで迷っている状態です。

このように、数次相続と再転相続には明確な違いがあるため、注意しましょう。

再転相続でも相続放棄はできる

再転相続でも相続放棄はできる

相続人となった後、相続放棄しないまま亡くなると、二次相続の相続人は2回の相続について、相続放棄するかどうかを判断します。

したがって、一次相続において相続放棄しなかった場合でも、二次相続の相続人の判断で相続放棄することができるようになります。

ただし、再転相続になった場合には、どのような場合でも必ず相続放棄できるわけではありません

一次相続と二次相続の相続放棄の関係を図に表すと、以下のようになります。

ここでは祖父が亡くなった後に、相続人である父が亡くなり、長男が相続したケースを想定しています。

祖父が亡くなった時(一次相続)の選択肢 父が亡くなった時(二次相続)の選択肢 長男が相続放棄あるいは単純承認できるか
相続放棄 相続放棄 できる
相続放棄 単純承認 できる
単純承認 相続放棄 できない
単純承認 単純承認 できる

一次相続について単純承認し、二次相続において相続放棄することはできません。

二次相続で相続放棄すると、一次相続における相続人としての地位もなくなるため、一次相続だけ承認することはできないので注意が必要です。

再転相続時の相続放棄の熟慮期間

再転相続が発生した場合、二次相続の相続人が相続放棄できるケースがあることがわかりました。

この場合、相続放棄をいつまでにしなければならないのか、その期間の考え方を整理しておきましょう。

通常の相続放棄は、相続が発生したことを知ってから3か月以内にしなければならないとされています。

一方、再転相続の場合は、一次相続と二次相続があり、さらに自身が再転相続人となっているかどうか分からないこともあります。

たとえば、叔父が亡くなった後に子が相続放棄したため父親が相続し、その後に父親も亡くなった場合などです。

このようなケースでは、父親から詳しく話を聞いていない限り、再転相続人となっていることに気づいくことは難しいでしょう。

再転相続人が相続放棄できる期間について、従来は「二次相続が発生してから3か月以内」とされていました。

しかし、二次相続が発生してからも再転相続人であることを知らなければ、この熟慮期間を過ぎてしまうことがあります。

そこで、再転相続については、再転相続人となったことを知ってから3か月以内であれば相続放棄が認められるとされました。

これは最高裁判所が2019年8月9日の判例で示した考え方であり、これにより一次相続の相続放棄が認められる可能性が広がりました。

再転相続が発生したときの注意点

再転相続が発生したときの注意点

再転相続が発生した場合、どのような点に注意しなければならないのでしょうか。

通常の相続でも様々な手続きをスムーズに進めることは大変ですが、より注意しなければなりません。

相続放棄の判断はできるだけ早く

再転相続が発生した場合、相続放棄の判断は原則として、二次相続が発生してから3か月以内です。

この時、2つの相続についていずれも相続放棄することもできますが、手続きもそれぞれ行う必要があります。

いずれか一方だけの手続きでは、債務を思わぬ形で引き継ぐことも考えられるため、注意しましょう。

遺産分割協議書は原則、別に作成する

再転相続が発生すると、一次相続と二次相続の遺産分割協議を並行して進めることがあります。

そこで、遺産分割協議書をまとめて1通にすることができないかと考える方がいるかもしれません。

しかし、再転相続となった場合、原則として遺産分割はそれぞれ別に作成しなければなりません

これは、再転相続となった場合、一次相続と二次相続の相続人の構成が異なるためです。

一次相続についての相続人の中には、二次相続の被相続人が含まれているため、遺産分割協議書を別にしなければなりません。

ただ、一次相続と二次相続の相続人がまったく同じになるケースもあります。

たとえば、父親が亡くなった後すぐに母親が亡くなり、子どもだけが相続人となる場合です。

このような場合には、遺産分割協議をまとめて行うことができ、遺産分割協議書も1通にまとめることができます。

登記手続きを省略できる場合がある

再転相続の場合、相続が2回発生しているため、不動産の登記手続きも2回行わなければならないように思うかもしれません。

しかし、最初の相続で相続したのが二次相続の被相続人だけの不動産については、最初の相続登記を省略できます

まとめ

相続放棄するかを熟慮する期間は、相続があってから3か月以内とされており、時間的な余裕はありません。

再転相続となった場合は、被相続人についての状況がよりわかりづらく、その判断には時間がかかることもあります。

しかし、相続放棄までの時間に余裕はないため、できるだけ早く決断できるよう、多くの情報を集めるようにしましょう。

また、遺産分割や登記に関しては、通常の相続とは異なる点があるため、注意して手続きを進めていきましょう。

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