この記事でわかること
- 相続税申告に強い税理士の選び方
- 相続税申告を税理士に依頼するメリット
- 相続税申告を自分で行うリスク
相続税申告は相続開始を知った日の翌日から10カ月以内に申告と納付を行わなければならず、仕事や介護、家事、子育てなどの合間を縫って、自分で相続税申告をしようとすると相当な負担がかかります。また、相続税申告書に間違いがあると、追徴課税される可能性があるため注意が必要です。
相続税申告の手間やミスをなくすには、税金の専門家である、税理士に相続税申告を依頼するのがおすすめです。ただし、相続税に強い税理士でなければ、その恩恵を最大限活かすことはできないかもしれません。そのため、相続税に強い税理士の選び方を知っておきましょう。
本記事では、相続税申告を税理士に依頼したほうが良い理由、相続税に強い税理士の選び方、税理士に依頼するメリットについて解説します。
相続税申告を税理士に依頼したほうが良い理由
相続が発生したら、すぐに税理士の無料相談を受けるのがおすすめです。その理由は、相続税の申告期限が相続開始を知った日の翌日から10カ月以内という短期間の間に、相続人の確定、財産や債務の洗い出し、誰が何を相続するかを決めなくてはならないからです。
財産にはさまざまな種類があるため、被相続人が多額の資産を持っていなかったとしても、相続財産の確定は手間がかかる作業です。例えば、相続財産確定のために収集・調査しなければならないものには以下のようなものが挙げられます。
- 被相続人名義の預金通帳
- 保険証券
- 株券や証券会社からの通知
- 骨董
- 家財
- 車
- 電話加入権
- その他金銭に見積もることができる財産
- 被相続人の不動産の権利証や登記識別情報
- 借入金
- 未払いの税金や各種支払い(医療費、水道光熱費、クレジットカードなど)
- 葬式費用
- 被相続人から生前に贈与された財産のうち相続開始前7年以内に贈与されたもの
- 相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産
このように多くの財産の確認が必要です。
また、法定相続人を確定させるために、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や除籍謄本、改製原戸籍を集めることも手間がかかります。さらに遺産をどのように分けるのかを決めるのに、何カ月もかかるケースも少なくありません。相続人確定と遺産分割で半年以上の期間を要するケースもあるほどです。
仕事をされている方は、日中に市区町村の窓口を回って戸籍謄本などを集めることは大変です。
自分で財産の評価や遺産分割協議書の作成をし、相続税の申告書を作成することはなかなかの大仕事となるため、自分で相続税申告をするのはおすすめできません。
まずは相続専門の税理士に無料相談を依頼して、相続税がかかるか、かかる場合は何から始めるのかを相談するといいでしょう。
相続税に強い税理士の選び方
相続税は複雑なしくみのため、税理士にも高い専門知識と経験が求められます。一口に税理士といっても、得意とする領域が異なるため、相続税に強い税理士を選ぶことが大切です。相続税に強い税理士を選ぶには、以下のような選び方を押さえておきましょう。
- 相続税専門で実績の豊富な税理士を選ぶ
- 税務調査対策に力を入れている税理士を選ぶ
- 弁護士など他の専門家と連携している税理士を選ぶ
相続税専門で実績の豊富な税理士を選ぶ
相続税に強い税理士の選び方のひとつは、相続税専門で、相続税申告の実績が豊富な税理士を探すことです。
相続税の申告に不慣れな税理士や、年に1~2回程度しか相続税申告を担当しない税理士事務所もあります。
相続税専門の税理士事務所は、自社のWebサイトに相続税申告の件数を記載しています。例えば、最低でも年間100件以上、できれば1,000件以上行っている相続専門の税理士事務所に依頼することをご検討ください。また、相続に関する書籍を執筆していたり、YouTubeなどで相続税に関する情報を発信していたりすることも実績の豊富さの参考になります。
ほかにも、元国税調査官より推薦文をもらっている税理士事務所であれば、相続税の申告書の作成手順やチェック体制、税務署対応などに優れていると認められているため、参考にするといいでしょう。
税務調査対策に力を入れている税理士を選ぶ
相続税に強い税理士を選ぶ際には、税務調査対策に力を入れているかどうかも確認しておきたいポイントです。
相続税申告後、相続財産の評価などが正確でないと疑われる場合、税務調査が入ります。税務調査は、相続税申告した年の翌年や翌々年に行われることが多く、実地調査のほか、電話・文書による簡易な調査などが行われ、申告に不備が見つかれば追徴課税されます。
相続税に強い税理士の場合、「書面添付制度」を利用して、税務調査の確率を低くすることが可能です。書面添付制度とは、税理士が申告書に添付する品質保証書のようなもので、国税局がこれを尊重して税務執行を円滑にする目的があります。書面添付しておけば、税務調査の対象になっても、申告した法定相続人にいきなり税務署から連絡が来ることはありません。
代わりに「意見聴取」といって、申告を担当した税理士に意見陳述の機会が与えられます。この意見聴取で税務署の調査官の疑問を解消できれば、税務調査が実施されないメリットがあります。また、意見聴取における質疑から、調査通知前に行った修正申告は、自主申告扱いとなるため、本税や延滞税を納める必要はありますが、加算税はかかりません。ほかにも、法定相続人が税務署から直接質問される可能性が低くなるメリットもあります。
ただし、全ての税理士が書面添付を行うわけではありません。書面添付に真実と異なる内容を記載した場合、税理士は最長で2年間の業務停止処分を受けるリスクがあるからです。
逆に、実務に自信のある税理士は積極的につける傾向にあります。例えば、相続税専門のベンチャーサポート相続税理士法人の場合は、積極的に書面添付をつけています。
このように書面添付をつけられるかどうかは、相続税に強い税理士を選ぶ際のポイントになるため、対応しているかを税理士事務所に確認しましょう。
弁護士など他の専門家と連携している税理士を選ぶ
相続税に強い税理士を選ぶ際には、弁護士など他の専門家と連携しているかどうかも重要なポイントになります。相続税申告では、税理士の業務外となる、次のような法律手続きを並行して行うことがあります。
- 不動産登記(相続財産に不動産が含まれる場合)
- 相続放棄、限定承認
- 遺産分割調停や審判の申し立て
例えば、不動産登記がある場合は司法書士に依頼し、相続人同士で紛争がある場合は弁護士に依頼する必要があります。いずれも自分で手続きすることも可能ですが、相続税申告と同様に時間と手間がかかります。専門知識がないと紛争では不利になる可能性もあるでしょう。
そのため、相続税申告で法律手続きが必要な場合に迅速に対応できるよう、司法書士や弁護士などと連携できる、または他の専門家が在籍しているグループ法人などを選ぶのもおすすめです。
相続税申告を税理士に依頼するメリット
相続税申告を税理士に依頼するメリットは、主に以下の4つが挙げられます。1つずつ詳しく見ていきましょう。
- 相続税の節税につながる
- 税務調査の確率を下げられる
- 相続手続きをスムーズに進められる
- 問題を整理して適切な専門家につなげられる
相続税の節税につながる
税理士に依頼するメリットは、相続税の節税につながることです。自分で相続税申告を行うと、特例や税額控除を知らないことで、本来抑えられたはずの税金を納めることになるかもしれません。
たとえ、税務署に相談したとしても、税金の優遇制度を利用するための遺産分割方法などを詳細には教えてもらえず、教えてもらえるのは申告手続きなどの相談内容に限られます。
一方、相続税申告を税理士に依頼すれば、特例や税額控除のほか、二次相続で高額な相続税がかからないようにする対策なども検討してもらえます。
例えば、配偶者が相続する財産が法定相続分または1億6,000万円以下の場合は、相続税の配偶者控除(配偶者の税額軽減)を適用することで、相続税は0円となります。
また、農業を継ぐ相続人が農地を相続する場合には、農地などの納税猶予の特例もあります。
ほかにも、被相続人の配偶者が高齢のケースでは、二次相続が数年以内に起こる可能性があります。一次相続で相続税を抑えても、二次相続で高額の相続税がかかるかもしれません。
相続税申告を税理士に依頼すれば、将来の相続税についてもアドバイスをもらえるため安心です。
税務調査の確率を下げられる
税理士に依頼するメリットには、税務調査の確率を下げられることも挙げられます。自分で相続税申告を行った場合、申告内容や計算に間違いがあっても気づけないため、税務調査の可能性が高くなります。
しかし、相続税申告を税理士に依頼すれば、申告内容や計算の間違いを防げるだけでなく、申告内容を保証する書面添付制度を利用して、税務調査の可能性を下げることが可能です。
相続手続きをスムーズに進められる
相続手続きをスムーズに進められることも、税理士に依頼するメリットのひとつです。相続税申告の期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内で、この間に戸籍収集を行って法定相続人を確定させるだけでなく、相続財産の確定と評価額の算出、遺産分割協議も行わなければなりません。
また、相続税申告は準備も大変ですが、相続税の申告書の作成も専門家以外が行うのは非常に困難です。国税庁のWebサイト「相続税の申告書の記載例」のように、さまざまな項目の金額を記載する必要があります。例えば、自宅のある土地(宅地)は小規模宅地等の特例の適用を受けるため、所定の手順で計算した価額を相続税申告書に記載しなければなりません。
このように相続税申告の準備や、申告書の作成にかかる膨大な時間を短縮できるのが、相続税申告を税理士に依頼する大きなメリットといえます。
■相続税の申告書の記載例
※国税庁「相続税の申告書の記載例」
問題を整理して適切な専門家につなげられる
問題を整理して適切な専門家へつなげられることも、税理士に依頼するメリットです。相続税申告では、場合によっては法律手続きなど、さまざまな相続手続きを行わなければなりません。
税理士に相続税申告を依頼すれば、司法書士や弁護士など各分野の専門家を紹介してもらえるでしょう。
また、他士業と提携しているグループ法人などでは1つの窓口で手続きを行えるケースもあるため、他の専門家を探す時間や手間を省くことができます。
相続税申告を税理士に依頼した場合の報酬
税理士事務所によって相続税申告の報酬は異なりますが、報酬相場は遺産総額の0.5~1%といわれています。そのため、相続財産、土地や相続人の数が多ければ多いほど、相続税申告を依頼する際の税理士報酬は高くなる傾向にあります。
例えば、ベンチャーサポート相続税理士法人の料金体系は、報酬相場より低い遺産総額の0.4%程度で、相続税申告の基本報酬額は以下のとおりです。
遺産総額 | 申告料金 |
---|---|
~4,000万円 | 13万円 (税込14.3万円) |
~5,000万円 | 23万円 (税込25.3万円) |
~6,000万円 | 28万円 (税込30.8万円) |
~7,000万円 | 33万円 (税込36.3万円) |
~8,000万円 | 38万円 (税込41.8万円) |
~9,000万円 | 43万円 (税込47.3万円) |
~1億円 | 48万円 (税込52.8万円) |
~1億5,000万円 | 63万円 (税込69.3万円) |
~2億円 | 78万円 (税込85.8万円) |
~3億円 | 110万円 (税込121万円) |
3億円以上 | 別途お見積り |
※相続税申告の税理士報酬・料金表|ベンチャーサポート相続税理士法人
また、税理士事務所の多くは、相続税申告の報酬を基本報酬と加算報酬に分けて定めています。
基本報酬以外に、相続税申告期限が迫っている場合や、特殊なケース、別途の申告などにおいては報酬が加算されるため注意しましょう。
例えば、ベンチャーサポート相続税理士法人では、以下のようなケースで報酬が加算となります。その他に報酬が加算される事由の例もありますので、参考にしてください。
■加算報酬額(消費税抜き)
項目 | 加算報酬額 |
---|---|
税務調査事前対策(書面添付) | 一律5万円(税込5.5万円) |
土地の評価 | 1利用区分ごとに5万円(税込5.5万円)を加算 ※倍率方式で評価額を算出する地域の土地は、1筆あたり5千円加算 |
相続人が複数の場合 | 2人目以降、1人あたり申告料金の10%を加算 ※ただし加算は4人目まで |
非上場株式 | 1社につき15万円 (税込16.5万円)~ |
相続税申告の報酬が加算される事由の例
事由の例 | 加算される費用 |
---|---|
相続税申告の依頼日が申告期限まで3カ月を切っている場合 | 報酬総額の10~30% |
申告後に税務調査があった場合 | 税務調査立会報酬 |
書面添付についての意見聴取があった場合 | 日当 |
現地調査や訪問があった場合 | 旅費・交通費などの実費 |
戸籍や金融機関残高証明書などの資料の取り寄せを代行した場合 | 取得代行の手数料および実費 |
遺産分割せずに相続税申告した後の申告がある場合 | 修正申告の費用 |
相続財産に特殊な土地が含まれている場合 | 不動産鑑定士の報酬 |
相続税申告は相続税専門の税理士に依頼しよう
相続税申告では、期限内に正確な申告書を提出し、納税することが大切です。そのためには、相続税に強い税理士に依頼する必要があります。
税理士を選ぶ際には、相続税申告の実績や報酬を参考に検討しましょう。また、相続税申告が終わるまで、税理士と何度もやりとりすることになるため、「この税理士や事務所を選んでよかった」と思えるように、ご家族の視点でしっかりと税理士を選んでください。
ベンチャーサポート相続税理士法人では、親身でわかりやすい説明を心がけ、無料相談を実施しています。また、税理士だけでなく弁護士、司法書士も在籍しているためワンストップで相談することが可能です。初めて相続税の申告を行う方もお気軽にご相談ください。