この記事でわかること
- 空き家特例とは
- 空き家特例の適用要件
- 空き家特例を適用する際の注意点
近年、適切な管理がされていない空き家等が防災、衛生、景観など地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしています。
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」によると、2023年の空き家の戸数は900万2,000戸で、2018年の848万9,000戸に比べ、51万3,000戸の増加で過去最多となっています。さらに総住宅数に占める空き家の割合は13.8%で、これも過去最高の数値となっています。
国土交通省が作成した「空き家対策の現状について」という資料によると、空き家を取得する経緯の54.6%が相続であることがわかります。
このような現状を踏まえ、国は相続した住居が空き家となることを抑制するため、「空き家特例」という空き家の売却で優遇を受けられる制度を新設しました。
この記事では、空き家特例の概要や適用要件、申告に必要な書類などについて解説します。
目次
空き家特例とは
空き家特例とは、相続によって取得した一定要件を満たした空き家を売却したときの譲渡所得から最高3,000万円の特別控除を適用して、譲渡所得税の負担を軽減できる税制優遇制度です。
空き家特例の対象は、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する12月31日までに売却した空き家と定められていますが、この特例は時限立法のため、令和7年3月時点では、対象期間が令和9年12月31日までの売却に限られています。
譲渡所得とは、譲渡所得税の対象の財産を売却したときの利益のことで、売却価格(譲渡価格)からその財産を購入したときの価格(取得費)と売却にかかった費用(譲渡費用)を差し引いた金額です。
譲渡所得の計算
譲渡所得=譲渡価格-取得費-譲渡費用
譲渡所得税の計算で空き家特例などの適用できる特別控除がある場合、税率乗じるまえの譲渡所得から差し引くことができます。
譲渡所得税の計算
譲渡所得税=(譲渡所得-特別控除額)×税率
譲渡所得税の税率はその財産の所有期間によって異なり、下記のように定められています。
短期譲渡所得(所有期間5年以下) | 39.63% (内 所得税30.63%、住民税9%) |
---|---|
長期譲渡所得(所有期間5年超) | 20.315% (内 所得税15.315%、住民税5%) |
譲渡所得税の税率は、土地転がしのような営利目的の短期的な売買を抑制するために、短期所有の税率が長期所有の約2倍に定められています。
なお、相続した不動産の所有期間は相続による取得ではなく、被相続人が取得したときから起算されます。
空き家を共有している場合それぞれが特別控除を適用できる
空き家の取得者が複数人の場合、売却時にそれぞれが空き家特例の特別控除の適用を受けられます。複数人で適用を受ける際は人数によって控除額の上限が異なるため注意が必要です。
空き家特例を複数人で適用する場合の控除額は下記のようになります。
2人までの場合 | 1人あたり3,000万円 |
---|---|
3人以上の場合 | 1人あたりの控除額は2,000万円 |
空き家特例の適用要件
空き家特例を適用するためには家屋の要件とその他の要件のすべてを満たす必要があります。
空き家特例の対象となる家屋
空き家特例の適用を受けるための家屋は下記の要件を満たしている必要があります。
- 相続または遺贈により取得した被相続人が居住していた家屋とその敷地である
(どちらか一方のみの場合、適用は受けられません) - 相続直前にその家屋に居住していたのが被相続人のみである
- 家屋が昭和56年5月31日以前に建築された建物である
- マンションなどの区分所有建物ではない
空き家特例の対象となる空き家は、相続によって取得した被相続人が亡くなる直前に居住していた家屋で、昭和56年5月31日以前に建築された、いわゆる旧耐震基準の建物です。
マンションや二世帯住宅などの区分所有建物は適用の対象外となります(区分所有建物として登記されていない二世帯住宅は適用可能)。
空き家特例のその他の要件
空き家特例を適用するためには、家屋の要件以外にも下記の要件を満たしている必要があります。
- 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却である
(かつ令和9年12月31日までの売却) - 売却先が第三者である
- 売却価格が1億円以下である
- 売却までに更地にするか耐震リフォームをしている
- 相続してから空き家を事業や貸付に利用していない
空き家特例を適用できるかどうかは国税庁が作成している「相続した空き家を売却した場合の特例チェックシート」でも確認することができます。
空き家特例の必要書類
空き家特例を適用するためには、売却した年の翌年の確定申告の際に下記の書類を添付する必要があります。
- 被相続人居住用家屋等確認書
- 被相続人の居住用家屋またはその敷地等の売買契約書の写し など
(売却代金が1億円以下であることを証明するための書類) - 被相続人居住用家屋の耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
※家屋を取り壊していない場合 - 相続により取得したことがわかる書類
- 家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたこと及び区分所有建物として登記されている建物でないことがわかる書類
相続による取得であることや建築の年月日を証明する書類は通常、「被相続人居住用家屋及びその敷地等の登記事項証明書」を提出しますが、申告書等への記載により以下の必要事項を税務署に提供する場合、添付を省略することができます。
建物 | 建物の所在する市区町村、字、土地の地番及び当該建物の家屋番号又は不動産番号 |
---|---|
土地 | 土地の所在する市区町村、字及び当該土地の地番又は不動産番号 |
空き家特例を適用する際の注意点
空き家特例を適用する際の注意点についてみていきましょう。
納税額が0円でも確定申告が必要
空き家特例の適用を受けるためには、空き家を売却した翌年の2月16日から3月15日までに確定申告が必要です。
そのため、適用により納税額が0円となる場合でも確定申告をしなければいけません。
被相続人が老人ホーム等に入居していても適用可能
要介護認定または要支援認定を受けていた被相続人が亡くなる直前に老人ホーム等に入居していた場合、空き家特例の適用を受けられます。
しかし、被相続人が居住しなくなった自宅を事業や貸付のために使用したり、他の親族が居住したりしてしまうと適用を受けられなくなってしまうため注意が必要です。
小規模宅地等の特例を適用した空き家にも適用できる場合がある
被相続人と「別居していた配偶者」や被相続人と同居しておらず一定要件を満たしている親族、いわゆる「家なき子」が被相続人の居住していた家屋とその敷地を相続した場合、小規模宅地等の特例と空き家特例を併用することができます。
小規模宅地等の特例も空き家特例も、被相続人が相続開始時に老人ホームに入居していても適用が認められていますが、制度の立法主旨の違いから、小規模宅地等の特例では生計一の親族が被相続人が老人ホームに入居した後も住み続けていても適用できますが、空き家特例は生計一の親族が居住していると適用でききないため注意が必要です。
家なき子が被相続人の自宅敷地を取得した場合、相続税の申告期限まで売却せずに所有する必要があります。反対に、空き家特例は期限までに売却しなくてはなりませんが、上述のように相続開始から3年の経過する日の属する年の12月31日までに売却すれば大丈夫です。
併用住宅に適用する場合
適用要件を満たしていれば、賃貸併用住宅や店舗併用住宅にも空き家特例の適用が認められています。しかし、適用の対象となるのは被相続人が自宅として使用していた部分に限定されます。
なお、賃貸併用住宅は被相続人の死亡時に入居者がいると空き家特例の適用を受けられないため注意が必要です。
まとめ
空き家特例の概要や注意点について解説しました。この特例はその名の通り空き家でなければ適用することができません。その他にも複雑な要件を満たす必要があり、遺産分割のときから気をつけなくてはなりません。
しかし、空き家特例の適用を受けることができれば、ひとりあたり最大約600万円もの譲渡所得税を減額できます。このような大きな節税の機会を逃さないためにも、相続税の申告は遺産分割の段階からしっかりサポートしてもらえる相続専門の税理士に依頼するようにしましょう。
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