この記事でわかること
- 土地の名義変更について理解できる
- 土地の名義変更方法と費用がわかる
- 名義変更の際に発生する税金がわかる
相続や贈与、財産分与、売買など、土地の所有者が変わる場合は名義変更が必要です。
そのため親が亡くなった場合、親の名義になっている土地は相続人の名前に名義変更しなければなりません。
この場合の名義変更とは、法務局に相続により土地の権利者が変わったことを登記する「相続登記」です。
一般的には、親と同居していた相続人が土地を相続し、その相続人の名義に変更することが多いです。
しかし、実際に同居していない相続人へ名義変更することもあります。
本記事では、亡くなった親の土地を名義変更する場合の流れや必要な費用を解説します。
誰の名義にすべきか迷っている人は、ぜひこの記事を参考にしてください。
目次
亡くなった親の土地は名義変更が必要
亡くなった親が所有する土地は、名義変更しなければなりません。
2021年4月21日に可決された「相続登記を義務化する改正案」には、名義変更の義務化が定められており、2024年に施行される予定です。
施行されるまでの期間中は、名義変更は義務付けられていません。
しかし、施行後のことを考慮すると手続きを済ませておく方が安心です。
名義変更しないと売却や賃貸ができない
名義変更をしない場合、法律上では土地の名義は亡くなった親のままであるため、土地の相続人であっても名義変更なしでは土地の売却や賃貸などの契約ができません。
共有持分によって亡くなった親が所有する土地を相続する場合は、全ての共有者から同意を得ることができれば持分のみ売却できます。
共有持分とは、土地の所有権を複数人の共有者で分けることです。
ただし、共有持分の土地だけでは不動産業者から買い取りを拒まれる可能性があります。
手続きせずに放置する罰則を科せられる
土地の名義変更の手続きをしない場合、違法に当たるため罰則を科せられる可能性があります。
名義変更の期限は、相続が発生してから3年以内と定められています。
3年以内に手続きせず正当な理由もないと、10万円以下の罰金を支払わなければなりません。
3年以内の手続きが難しい場合は、あらかじめ法務局に申請することをおすすめします。
事前に申請しておくことで、罰金を科せられるリスクを避けられるでしょう。
亡くなった親の土地を自分で名義変更する流れ
土地の名義変更を行ったことがない場合、どのように手続きを進めればいいのかわからない人もいるでしょう。
以下では、亡くなった親の土地を自分の名義に変更する際の流れを解説します。
土地の名義人を決定する
亡くなった親の財産の相続人が複数人いる場合は、遺産分割協議を行い土地の名義人を決める必要があります。
遺産分割協議とは、相続人同士で遺産をどのように分けるのかを決めるための話し合いのことです。
相続人の取り分は法律で定められているため、相続順位や法定相続分を考慮した上で土地の名義人を決めましょう。
例えば、相続順位1位は配偶者と子または孫で、いずれも法定相続分は2分の1です。
遺産分割協議を行っても土地の名義人が決まらなかった場合は、裁判所の調停委員を含む「遺産分割調停」で話し合うのが一般的です。
それでも名義人が決まらない場合は、裁判官が判断を下す「遺産分割審判」で土地の名義人を決定します。
名義変更のために相続登記する
土地の名義人が決まったら、次は名義変更のための相続登記を行います。
相続登記とは、被相続人が所有している土地の名義を相続人に変更するための手続きです。
相続登記は、法務局で行う必要があります。
一般的に、法務局の窓口で担当者と相談しながら手続きを進めるため、不明点は担当者に確認できます。
親名義の土地を名義変更に必要な書類と費用
ここでは相続を原因とした名義変更について説明していきます。
相続による土地の名義変更を行うには、必要書類を準備して法務局に相続登記を行わなければなりません。
法務局への登記申請に関しては、法務局の窓口に相談しながら自分自身で手続きを行うことができます。
また、登記の専門家である司法書士へ報酬を支払って手続き代行してもらうこと可能です。
相続登記の場合、相続人同士の遺産分割協議がしっかりまとまっていれば、法務局への手続き自体は簡単です。
必要書類や費用について確認していきましょう。
登記申請に必要な書類
登記申請に必要な書類は、以下の通りです。
登記申請に必要な書類
- 登記申請書
- 被相続人が生まれてから死ぬまでの連続した戸籍謄本及び除籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人の戸籍謄本または抄本(相続人全員分)
- 相続人の住民票(相続人全員分)
- 相続関係説明図
- 固定資産税評価証明書
- 遺産分割協議書(相続人全員の実印を押印)
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺言書(公正証書遺言書、検認調書、自筆証書遺言書保管の証明書など)
これ以外の書類が必要とされる場合もあります。
できるだけスムーズに手続きを進めたい場合や時間に余裕がない場合は、事前に法務局へ確認してください。
登記申請の費用
相続登記の申請には、登録免許税が必要になります。
登録免許税=固定資産税評価額×0.4%の計算式で求められます。
固定資産税評価額は、毎年送られてくる固定資産税通知書の中に記載されているので確認してみましょう。
固定資産税通知書が手元にない場合は市町村役場で確認することも可能です。
名義変更する不動産が土地と建物である場合は、その評価額の合計に対して登録免許税が計算されます。
たとえば、土地4,000万円と建物1,000万円の場合、合計5,000万円×0.4%で20万円が登録免許税として必要です。
これに加え、相続登記を司法書士へ依頼した場合は、登録免許税とは別に5万円~10万円程の依頼報酬額がかかります。
報酬額は決まった設定はありません。
依頼する司法書士によって金額は異なるため、複数の事務所で見積もりを取るといいでしょう。
土地の名義変更で発生する税金はいくら?
相続に関しては土地だけでなく、預貯金や有価証券といった遺産すべてに対して、相続税が課税されます。
また、基礎控除や配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例などにより、課税されない場合もあります。
そのためここでは相続ではなく、贈与により親名義の土地を名義変更する際に発生する税金をみていきましょう。
ちなみに贈与に伴う名義変更の登記手続きに関しては、必要書類も少なく相続登記よりも簡単です。
贈与税
親が生きている間に子などへ土地の名義変更を行った際は、贈与とみなされて贈与を受けた子に贈与税が課されます。
贈与税の計算は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の価額の合計に対して課税されます。
そのため土地の名義変更以外に現金を贈与された場合は、その金額も合計額に加算するルールです。
続いて、この年間の贈与額の合計から基礎控除額110万円を差し引き、その残りの金額に税率をかけて贈与税が計算されます。
税率は、贈与金額が多い程高い税率となる累進課税方式です。
また、贈与する側、受ける側が誰かによって、一般贈与財産用の一般税率と特例贈与財産用の特例税率に分かれます。
たとえば父から子(20歳以上)への贈与の場合は、特例税率を使用する仕組みです。
参考として、親から20歳上の子に600万円の贈与を行った際の贈与税を計算してみましょう。
600万円-基礎控除額110万円=490万円
490万円×税率20%-控除額30万円=68万円
※特例税率の場合
ちなみに特例税率の場合で1,500万円以下の税率40%、4,500万円以下で税率50%と非常に高い税率です。
相続税の税率と比較してもはるかに高い税率となっているため、贈与による名義変更は慎重に検討しましょう。
登記の際の登録免許税
名義変更の登記に関して必要な登録免許税は、相続登記の場合よりも高額です。
登録免許税=固定資産税評価額×2%の計算式で求められます。
たとえば、土地と建物の合計が5,000万円の場合、相続登記では税率0.4%で20万円です。
一方贈与による名義変更登記の税率は2%であるため、100万円が登録免許税となります。
土地の相続税はどれぐらい?
土地を相続するときに、名義変更と同じぐらい気になるのが相続税だと思います。
「相続税がどれくらいかかるのか分からない」という人もいるでしょう。
相続税は、相続財産の全体から控除金額引いた部分に、課税されて金額が算出されます。
相続税では、どんな場合でも3,000万円の基礎控除と、法定相続人の人数につき600万円が控除されます。
例えば、配偶者1人・子供2人の相続であれば、3,000万円+600万円×3人=4,800万円が基礎控除になります。
もし相続財産が6,000万円あれば、6,000万円ー4,800万円=1,200万円となり、1,200万円に相続税が課税されます。
さらに金額によって控除・税率が変わります。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | – |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億以下 | 45% | 2,700万円 |
6億以下 | 50% | 4,200万円 |
6億超 | 55% | 7,200万円 |
上記の例であれば、1,200万円から50万円の控除があり1,150万円、税率が15%になるため173万円の相続税が発生します。
計算が複雑ですが、「財産が3,600万円以下なら相続税はかからない」と覚えておきましょう。
相続税を抑える方法
「自分の場合は相続財産が多くて、相続税がかかる」というケースもあります。
できれば相続税を抑えたいのではないでしょうか。
相続税を抑えるには、特例という仕組みを活用しましょう。
特例とは、相続税を計算するときの控除金額を増やす仕組みです。
特例を使うための条件がありますが、条件を満たして申請を出せば、相続税を大きく抑えられます。
例えば配偶者控除といって、配偶者が相続した財産の1億6,000万円まで非課税になる特例もあります。
特例を有効活用するには、相続の経験が豊富な専門家に相談するのがおすすめです。
亡くなった親の土地の名義は誰にするのがいい?
亡くなった親の土地の名義人を決める際、誰にすればいいのでしょうか。
以下では、2つのケースを解説します。
被相続人の子どもに名義変更した場合
土地の名義を被相続人の子どもに変更すると、相続税や贈与税の面で負担を軽減できます。
例えば、被相続人の配偶者が土地の名義人になっても、いずれは子どもに名義変更することになるため、相続税や贈与税が発生します。
子どもが土地を受け継ぐなら、子どもの名義にした方が節税対策として有効です。
ただし、子どもが複数人いる場合は兄弟間の相続争いにつながりやすくなります。
また、共有名義にすると、持分の土地を自由に売却・賃貸できないなどの問題も起こりやすくなるため注意が必要です。
被相続人の配偶者に名義変更した場合
被相続人の配偶者が土地の名義人になった場合は、上記のような兄弟間の相続争いやトラブルを避けられます。
ただし、被相続人の配偶者が認知症を患うなど、判断能力がないと見なされれば、子どもであろうと土地の売却や賃貸などの契約は交わせません。
また、配偶者が亡くなれば、再び相続登記の必要性が出てきます。
相続登記には手続きの手間や登記費用などもかかるため、2倍の労力やコストが発生することになります。
共有名義は注意が必要
不動産の名義を単独ではなく、相続者全員にする「共有名義」という方法があります。
「共有名義にすれば、みんな平等になるから良い方法」と思うかもしれません。
しかし共有名義に変更すると、単独名義よりも相続トラブルに発展しやすくなります。
なぜなら共有名義だと、売却など不動産を手続きする場合に、名義人全員の合意が必要になります。
例えば4人で共有名義にしている場合に、ひとりでも反対をすれば、不動産の手続きができません。
単独名義であれば、ひとりが意思決定できますが、共有名義は話し合いが難航する可能性が高いです。
また共有名義人にしていると、名義人が亡くなって2次相続が発生したときに、さらに名義人が増える可能性があります。
例えば最初の相続で3人の相続人がいて共有名義に変更したとします。
その名義人がひとり亡くなって、さらに3人が不動産を相続したら、名義人が5人に増えます。
人数が増えるほど、不動産の処分・売却などの手続きで話し合いする手間が発生するため、トラブルに発展しやすくなります。
「相続でトラブルになりたくない」という人は、なるべく共有名義を避けておきましょう。
【事例1】相続した実家の名義を母親にしたケース
ここで、相続でよくあるケースについて考えてみましょう。
父親と母親には、2人の子(長男・次男)がいますが、ともに独立しており、父親は自身が所有する実家に母親と一緒に暮らしていました。
そんな中、父親が他界し、実家の相続が発生しましたが、誰の名義にするのがよいか長男と次男は考えました。
現在、その実家に住んでいるのは母親だけですし、法定相続分も1/2は母親のものですから、長男も次男も「これからも住んでいく母親が相続し、名義も母親にするのが当然」と考え、実家の名義を亡くなった父親から母親へ変更することを決めました。
確かに、これからも住み続ける母親が相続し、名義も母親にするのが実態に即した考え方ですが、何も考えずに、母親名義にしてしまうと問題が生じる可能性があります。
これから説明する問題について、母親へ名義変更して本当によいのか検討してみてください。
将来的に母親が認知症になってしまった場合のリスク
母親に名義変更した時点では問題がなくても、それから数年経過し、母親が認知症となり判断能力が十分ではないと判断されることがあります。
そうなった場合、認知症になった母親は土地の売却などの法律行為を行うことができません。
相続時、実家を売却する予定がなかったとしても、母親が認知症となり自宅での介護が困難となった場合は、施設への入所費用を捻出するために、実家を売却する必要がでてくる可能性もあります。
名義変更のタイミングで母親が元気だと、将来の健康上のリスクを子どもが考えることは少ないかもしれません。
しかし、父親が亡くなって一人暮らしになった場合などは、話し相手もいなくなり急速に認知能力が衰えてしまうことがあります。
そのため子どもが同居していない場合は特に、将来的に実家を売却することも想定できます。
名義を母親ではなく、子どもにしておくことも検討しましょう。
子ども名義の場合でも、そのまま実家で母親が暮らすことは何の問題もありません。
また、いざという時は所有者である子どもが自分の権限で実家を売却して、施設入所費用などを捻出できます。
母親が亡くなったときの相続税のリスク
父親が亡くなったときは、相続人は母親、長男、次男の3人です。
その後、母親が亡くなった時の相続人は、長男と次男になり、これを二次相続といいます。
まず、最初の相続(一次相続)の時は、遺産の中でもウエイトの大きい不動産(実家)を母親名義として相続しても、基礎控除が4,800万円(3,000万円+法定相続人数3人×600万円)分あり、かつ配偶者の税額軽減も受けられます。
そのため相続税額は大きくはありません。
しかし、母親が亡くなった時の相続(二次相続)では、配偶者の税額軽減はもちろんありません。
また基礎控除額も法定相続人が減ることから、4,200万円となります。
また、実家に同居しておらず、別に家を所有している場合は、小規模宅地等の特例も利用できません。
そのため一次相続ではあまり相続税がかからなかったとしても、二次相続で相続税が高額となってしまう可能性があります。
一次相続時と二次相続時の相続税は、父親、母親の資産状況や、不動産以外の遺産額、父親死亡後の実家での同居の有無など、ケースによってさまざまです。
一次相続で名義を母親にすると必ず損するわけではありませんが、二次相続もあることを理解しておきましょう。
複雑な場合は税理士に相談するなどの相続税対策を行うことをおすすめします。
相続登記が2回分必要になる
一次相続で母親名義、二次相続で子ども(長男・次男)名義とする場合、2回登記申請が必要です。
またそれぞれの登記で登録免許税と司法書士報酬(依頼した場合)が発生します。
費用が2回分かかることはもちろん、司法書士に依頼した場合でも、必要書類の収集など手間も時間も倍かかります。
最終的に、相続する子どもが一次相続の段階で決まっているなら、母親への名義変更を行わず、ダイレクトに子どもへの相続登記をする方が合理的といえるでしょう。
【事例2】亡くなった親の名義のまま家に住み続けたケース
事例2として、所有者である親が亡くなっても、名義変更せずに、そのまま今の家に住み続けた場合の問題点について考えてみましょう。
親が亡くなった後、何ヵ月以内に相続登記を行わなければならないという決まりはありません。
そのため名義変更しないまま放置していても、法律違反にはなりません。
しかし亡くなった方の名義のままにしておくと、さまざまな問題が発生します。
名義変更を行わないデメリットについて、いくつか紹介しましょう。
所有権を主張できないリスク
たとえば父親が亡くなった時点で、同居していた母親と長男家族が名義変更しないまま家に住み続けたとしましょう。
名義変更には少なからず登記費用も手間もかかるため面倒な気持ちもあるでしょう。
しかし最初は名義変更を行わなくても特に問題はありませんが、時間の経過とともに問題が発生するケースはめずらしくありません。
たとえば、独立して暮らしていた次男夫婦の事業がうまくいかず、実家の相続分の金銭を要求してきたらどうでしょう?
父親が亡くなったときに次男が相続分を請求していなくても、遺産分割協議書や相続登記がない場合、実家の所有権が母親や長男にあるとは言えません。
相続人が増えていくリスク
また、次男が死亡した後、実家の共有持分は次男の配偶者や子どもに相続されます。
次男が生前、実家の所有権について何の主張もしなくても、代が替わって相続人が増えればトラブルへ発展するケースもあるでしょう。
このようなパターンで名義変更しないまま時間が経過してくと、どんどん相続人が増えていってしまい、相続手続きを行うことが困難になっていきます。
まとめ
親名義の土地を相続する場合、法務局で名義変更の相続登記を行わなければなりません。
父親が亡くなって、相続人が母親、子どもとなるような場合は、最終的に誰が相続するのかについて家族でよく検討し、税金やその他のリスクに備えた名義変更を行いましょう。
また、名義変更の相続登記を行わないまま放置すると、その後、トラブルに発展していきます。
法律で期限が規定されているわけではありませんが、早めに遺産分割協議を行い登記することをおすすめします。
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