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最終更新日:2023/6/30

不動産管理会社設立の節税シミュレーション【設立時の注意点とは?】

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、横浜、千葉、大宮、名古屋、大阪、神戸など全国の主要都市22拠点にオフィス展開し、年間2,200件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。 業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

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書籍:今さら聞けない 相続・贈与の超基本
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この記事でわかること

  • 不動産管理会社の設立により節税ができる仕組みについて
  • 不動産管理会社を設立した場合の節税シミュレーションについて
  • 不動産管理会社を設立する際に注意すべき点について

ある程度の事業規模である個人事業者の場合、不動産管理会社を設立することで節税対策になることが多いです。

そこで今回は、不動産管理会社を設立した場合の節税シミュレーションを中心に、節税の仕組みや注意点について分かりやすく解説していきます。

不動産管理会社設立で節税できる仕組み

個人事業主である場合の収入は「不動産所得」に分類され、総収入金額から必要経費等を差し引いた残額(所得金額)に応じて所得税率が決定し、所得税が課税されます。

一方、法人の場合は、当期純利益に対して法人税等(法人税、法人住民税、法人事業税)が課税されます。

法人成りして役員報酬を受け取ることで給与所得控除を利用することができるため、個人事業主の不動産所得に比べて負担税額を抑えられます。

また、法人の従業員として配偶者などの親族を雇い給与を支払うことでも利益を圧縮できるため、さらに節税効果が高まります。

不動産管理会社の運営形態

不動産管理会社の運営形態は以下の3種類に大きく分類することができます。

管理料徴収方式
不動産の所有者はあくまでも個人のままで、不動産管理会社は管理業務を行う方式です。
不動産管理会社は対価として管理料収入を得ます。
サブリース方式
サブリースとは転貸のことであり、個人オーナーが所有している不動産を一括で不動産管理会社に貸付ける方式です。
不動産管理会社はその不動産を入居者に転貸することで家賃収入を得ます。
自社所有方式
不動産管理会社が不動産の個人オーナーから当該不動産を取得して、自らで物件の貸付けを行う方式です。

不動産管理会社を設立した場合の節税シミュレーション

どのくらいの事業規模であれば法人成りすべきなのか、個人・法人それぞれのパターンでシミュレーションしていきます。

前提条件として、東京都在住で社会保険料等や扶養・配偶者は考慮していません。

所得金額※1 所得税及び復興特別所得税※2 住民税※3 合計
3,000,000円 157,700円 259,500円 417,200円
5,000,000円 486,500円 459,500円 946,000円
8,000,000円 1,116,500円 759,500円 1,876,000円
10,000,000円 1,639,300円 959,500円 2,598,800円
12,000,000円 2,313,100円 1,159,500円 3,472,600円
役員報酬 法人利益 法人税等※4 役員報酬に対する所得税及び復興特別所得税、住民税※2※3 合計
3,000,000円 0円 70,000円 240,100円 310,100円
5,000,000円 0円 70,000円 530,400円 600,400円
6,500,000円 1,500,000円 510,000円 872,900円 1,382,900円
7,500,000円 2,500,000円 850,000円 1,143,700円 1,993,700円
8,500,000円 3,500,000円 1,190,000円 1,417,500円 2,607,500円
  • ※1 青色申告の場合は特別控除額65万円あり(表は白色で計算)
  • ※2 基礎控除48万円
  • ※3 基礎控除43万円、調整控除額2,500円
  • ※4 実効税率は34%として計算

1
不動産管理会社を設立しない場合

個人事業主Aさんの事業が下記だった場合

  • Aさんの不動産賃貸による収入 30,000,000円
  • Aさんの不動産賃貸に係る経費 19,000,000円
  • Aさんの親族(従業員)への給与 1,000,000円

→Aさんの所得金額 30,000,000円-(19,000,000円+1,000,000円)=10,000,000円
所得金額10,000,000円に対する所得税及び復興特別所得税、住民税の合計額 2,598,800円

 

2
不動産管理会社を設立した場合

自社所有方式により設立された不動産管理会社(法人B)の事業が下記だった場合

  • 法人Bの不動産賃貸による収入  30,000,000円
  • 法人Bの不動産賃貸に係る経費  19,000,000円
  • Aさんへの役員報酬        7,500,000円
  • Aさんの親族(従業員)への給与  1,000,000円

→法人Bの利益 30,000,000円-(19,000,000円+7,500,000円+1,000,000円)=2,500,000円
 法人利益2,500,000円に対する法人税等の額 850,000円
Aさんの所得税及び復興特別所得税、住民税の合計額 1,143,700円
合計税額 850,000円+1,143,700円=1,993,700円

 

上記例では、不動産管理会社を設立することで60万円程の節税につながります

当然ながらこれは一例に過ぎないため、上記ケースで必ず60万円程の節税になるとは限りません。

それぞれの個人事業主に適した節税スキームを利用するとよいでしょう。

不動産管理会社を設立するときの注意点

不動産管理会社の設立は、節税につながるケースが多いものの、気を付けなければならない点があります。

ここでは、不動産管理会社を設立する際の注意点をいくつか紹介します。

ある程度の事業規模でなければ節税にならない

前述のとおり、節税をするためには給与所得控除による所得削減や、幅広い経費を利用した利益の圧縮が主なパターンです。

つまり収入がそこまで高くないような事業規模の場合は、不動産管理会社を設立しても節税効果を得られないということです。

扶養や配偶者の有無によって所得税額は変わってきますので一概には判断できませんが、個人事業主で所得金額がおおよそ400~500万円を超える場合には法人成りの目安といえるでしょう。

法人経営による諸費用の増加

法人を設立する際には登記費用などおよそ20~30万円ほどの費用が掛かります

資本金に関しては1円から認められていますが、社会的信用を考えると低すぎてもよくありません。

また法人の場合、たとえ赤字であったとしても法人住民税の均等割り(東京都は最低7万円)が発生します

さらに税理士に確定申告等を依頼する場合には、事業規模にもよりますが年間で数十万円程かかることもあります。

事務的負担の増加

法人は個人事業主と比べて年間で役所に提出しなければならない書類が増えるため、事務的負担が大きくなることも注意すべき点です

提出漏れがあると場合によってはペナルティが科されることもあります。

たとえば、作成しなくてはならない書類として、確定申告書の他に法定調書や償却資産申告書、給与支払報告書などが挙げられます。

そのため、年間の行政や税務に関するスケジューリングをしっかりと組む必要があります。

必須の資格はない

不動産管理会社を設立する際には、必須の資格はありません

混同されやすい業態として不動産仲介会社が挙げられますが、不動産管理会社は「宅地建物取引業」には該当しないため、宅地建物取引士などの専門家を必要としない業種です。

まとめ

今回は、不動産管理会社を設立した場合の節税シミュレーションを中心に、節税の仕組みや注意点について解説しました。

不動産管理会社を設立して収入を親族や法人に分散させること、役員報酬の給与所得控除を利用すること等で結果的に負担する税額を安く抑えられるという仕組みとなっています。

ただし必ずしも節税効果を得られるというわけではないので、不動産管理会社の設立を検討している方は一度税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

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