2年ほど前に私の叔父が72歳で亡くなりました。
叔父は資産家というほどではありませんが、かなり大きな自宅を構えて悠々自適の生活を送っておりました。亡くなる直前まで夫婦で海外旅行に出かけていたほか、息子と娘がそれぞれ1人ずついるため、それぞれの家族と温泉に出かけたりして、かなり生活には余裕があるように見えました。
そのため、相続税の支払が大変だっただろうと想像していたのですが、どうも相続税がかからなかったようだという話を耳にしたのです。
まだ年齢も若く、突然自宅で倒れてそのまま亡くなってしまったため、特に相続対策もしていなかったと思いますが、ある程度の財産がある場合でも相続税がかからない方法があるのでしょうか。
相続税がかかるか、あるいはかからないかを判断する場合、大きく2つの段階に分けて判定することとなります。
1つ目の段階は、相続財産の額が基礎控除を上回るかどうかです。基礎控除の額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」として計算されます。預貯金や不動産などの評価額の合計から借入金などの債務を控除した後の金額がこの基礎控除の額を下回った場合、相続税は発生しませんし、相続税の申告を行う必要もないのです。
叔父様の財産の額が分からない以上何とも言えませんが、基礎控除の額の方が大きかったために相続税がかからなかったという可能性もあります。
2つ目の段階は、相続税にはいくつかの税額控除の制度があり、その適用状況によっては相続税がゼロとなる場合がるということです。
中でも最も大きな影響があるのが、配偶者の税額軽減です。相続税における配偶者の税額軽減は、配偶者が相続により取得した財産の評価額が、①配偶者の法定相続分(つまり相続財産の2分の1)までの金額、あるいは②1億6,000万円のいずれか大きい方の金額までであれば、相続税額は全額が控除されます。
今回の相続で考えれば、課税対象となる相続財産の合計額が1億6,000万円までであり、そのすべてを配偶者である叔母様が相続したとすれば、相続人全員で負担すべき相続税の額はゼロとなるのです。
このほか、相続人が未成年である場合の未成年者控除、障害者である場合の障害者控除といった制度もありますが、これらの税額控除を適用するためには相続税の額がゼロとなった場合でも申告書だけは提出しなければなりません。
また、大きな自宅を相続したとのことですが、自宅を相続した場合にはその敷地について最大80%評価額を減額することができる特例があることも大きな影響があります。
おそらく叔父様の自宅は叔母様がそのまま住み続けるために相続したと思われますが、配偶者が自宅を相続した場合は無条件で、その敷地の評価額を330㎡まで80%減額することができます。
例えば自宅敷地の評価額が8,000万円であったとしても、この特例が適用されると、評価額は1,600万円まで下がることとなるため、非常に大きな影響があるのです。
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