東京・麹町に拠点を構えながら、西東京エリアを中心に相続相談や顧問契約を引き受けている「BASE(ベイス)総合会計事務所」。代表税理士である米津氏は、中小企業を営む家に生まれたこともあり、経営者の思いをくみ取りながら日々の業務に臨んでいる。税制が複雑化する中、今後は特例などを活用した堅実な相続がますます主流になり、さらにオーダーメイド化が進むと話す。
目次
代々続く中小企業を営む家に生まれたからこそ、財産を受け継ぐ気持ちを理解できる
「BASE総合会計事務所」の概要や事業内容をお聞かせください
当事務所は2020年10月に開業しました。4人で運営しているコンパクトな組織ですが、個人のお客さまには相続税の申告や生前対策を、法人のお客さまには税務顧問業務を提供する“二刀流”で頑張っています。売上は後者のほうが6対4でやや多く、この規模としては珍しいバランスではないでしょうか。
限られた人数でスピーディかつ高品質に仕事を進めるためにも業務のデジタル化を進めていて、特にオンライン会議ツールであらゆる移動時間を削減しています。以前のような対面中心のやり方では、現在の業務量に耐えられなかったかもしれませんね。
どのような経緯で開業されたのでしょうか?
「BASE総合会計事務所」は3つの観点から立ち上げました。
1つ目は、私の実家が中小企業を営んでいるため、経営者の苦悩を心から理解して応援できると自負していることです。
2つ目は、その家業が長く続いているので、先代から授かった事業や不動産を大切に受け継いでいこうという価値観を持ち合わせていることです。
そして最後は、こうしたエモーショナルな部分に寄り添いつつ「国家資格でお金を頂いているのではない」と自らを律し、お客さまのフォローを最優先にしていることです。
なお、事務所名は開業時から入居しているシェアオフィス「THE BASE麹町」に由来しています。この先どこかに移転しても、いつでも原点回帰できると思い命名しました。
他の税理士法人や事務所には無い、独自の強みや特長をお聞かせください
引用元:BASE(ベイス)総合会計事務所
私たちは「お金の用心棒」を公言しています。あえてこの強い言葉を掲げることで「果たして、お客さまにそう思われているのか?」と自問自答しながら業務に臨んでいます。
また、仕事において重視しているのは、すでに顕在化しているニーズだけでなく、本質的な課題や悩みを探って解決策を提示することです。
例えばあるお客さまは、先代の方針で子どものうちの一人に集中的に資産を承継させることになっていました。当初は親族の誰もが「昔から決まっているので波風を立てたくない」と口にしていましたが、私としては先代が方針を決めた当時からさまざまな前提が変わっており、このままでは親族間トラブルの種になりかねないと懸念しておりました。そこで数年間かけ根気よく懸念点をお伝えし、今では方針を見直す方向で話が進んでいます。
こうした仕事ができた時にこそ、やりがいを覚えますね。機械的に動く税理士とは一線を画し、たとえ非効率でも、私たちらしい取り組みを続けていきたいと再認識しました。
故人から受け取った「相続のことは米津に任せるように」との言葉に、自らを奮い立たせる
相続に関して、どのような方々から、どんな相談を受けているのでしょうか?
東京都の三鷹市や武蔵野市、杉並区などに住む、元サラリーマンや公務員の高所得世帯からの相談が大半を占めます。事務所のある麹町からは離れていますが、エリアマーケティングに特化した専用ホームページを設け、Googleマップにも連携させているため反応は上々です。西東京を重視しているのは私の住まいがこの地域にあるためで、穏やかで上品な方が多く、ゆったりとしたテンポが性に合っていますね。
相談内容は申告関連が中心ですが、身内に不幸があった場合のみならず「生前の対策について知りたい」と訪ねてくる方もいます。中でも「小規模宅地の特例を使いたい」との依頼が多いでしょうか。この特例では、例えば亡くなった方が住んでいた家の土地を相続する際、一定の要件を満たせば相続税における土地の評価額を8割減にできます。節税効果が高いものの適用要件があるので、確実に要件を満たせるようサポートしています。
また、一人暮らしの親御さまが病院や介護施設に入居されているケースなどでは、小規模宅地の特例と合わせて「空き家の譲渡特例を活用したい」との相談も受けます。この特例では、亡くなった方の住居が空き家になった場合、同じく一定の要件を満たせば、不動産を売却して得た利益のうち3000万円までは税金が発生しません。
それぞれ相続すべき人、住居の築年数、建物を壊す場合はそのタイミングなどの適用要件が細かく決まっているので、私たち税理士が上手にガイドする必要があります。
中でも、どのような相談が印象に残っていますか?
独立前に勤めていた税理士法人で、懇意にしていた経営者がいました。開業に際し、その方に関する業務は法人に託しましたが、しばらくするとご家族から私宛に他界されたとの連絡が入りました。
話を伺うと、亡くなる前に「相続のことは米津に任せるように」との言葉を残されたそうです。そういった経緯で、申告業務を引き受けたことが最も記憶に残っていますね。お元気なうちにしっかりとご挨拶ができなかった点は悔いが残りますが、同時に「今後も頼られる存在を目指そう」という気持ちにさせてくれた出来事になりました。
相続に関して、一般家庭における遺言書の必要性をどのようにお考えですか?
遺言書の作成は、死後の財産や家族関係のあり方を自らデザインする行為ではないでしょうか。「こうなってほしい」という強い思いがあれば、実現できる可能性が高まります。
一方、先代や配偶者から引き継いだ財産の場合、自分で配分を決めることに抵抗感を覚える人もいるでしょう。「他人の人生を左右するかもしれない重要事項を決めるために遺言書を書かなければならない」という状況を負担に感じる方もいると思います。だから私としては「遺された人達で財産分配を決めてもらいたい」という気持ちも尊重すべきだと思っています。
とはいえ「相続人以外に財産を残したい」「子どもたちだけの遺産分割協議ではトラブルが想定される」といったケースでは遺言書が有効ですので、私から作成を勧めることもありますね。
また、遺言書だけでなく、生前贈与や生命保険契約、家族信託などを組み合わせた相続のアレンジも私たちに求められる仕事です。特に税理士は依頼者の一番近くにいるので、さまざまな知識や手段、コネクションを駆使できることがベストです。ツールやソリューションにこだわるよりも、お客さまの課題や心理的な壁にフォーカスできることが大事ですね。
税理士は相続争いを防ぐためのお手伝いはできますが、そもそも非常に悲しい状況が生じたといえます。そうならないよう、誰もが生前のコミュニケーションを大切にしてほしいものです。
AIに秘書の役割を与え、専門外の知識も身に付けながら顧客に寄り添う時代に
「税理士の仕事がAIに奪われる」という論調に対し、どんな考えをお持ちでしょうか?
技術的な話は分かりませんが、よくいわれる「税理士業務のうち、単純作業はAIに代替されてコンサルティング業務などが人間に残る」といった論調には懐疑的です。むしろ後者のほうでAIは本領を発揮する気がします。
先ほど小規模宅地の特例について話しましたが、どの条件であれば利用できるのか、もう少しAIチャットボットが向上したら人間よりもよほど正確に答えを出せるのが目に見えています。容易に想像できますね。
私はGPT-4(アメリカの人工知能研究所・Open AIが開発した次世代の大規模言語モデル)を利用していますが、すでに税務の専門的な質問に対してそこそこの回答がでてきます。まだそのままお客さまにご提示できるレベルではありませんが、人間の税理士見習いよりも的確に論点を出してくることもあります。リリース間もないものの事務所内のブレストには十分に使える内容であり、あと1年もすればさらに状況が変わるでしょう。
対して人間の税理士は、資金繰りの相談をはじめ、経営者から専門外の質問を受ける機会も多いと思います。その答えを、機密情報に注意しながらAIチャットボットと共に探していくことで、今まで以上にお客さまの課題や悩みを解決できるはずです。だから人間の税理士とAIは共存できると感じています。
ちなみにAIはコミュニケーションも巧みですね。先日、体調不良で取引先との約束をキャンセルしてしまったのですが、会いたかった気持ちと謝罪の気持ちをメールにするにあたりGPT-4を利用しました。すると、極めて流暢に私の思いを代弁してくれ、人間的な業務でも私たちを超えた気がしました。口下手な税理士も少なくないので、AIの力を借りることに可能性を感じています。
税制の複雑化が加速する中、生前贈与もオーダーメイドが増えていくと予測
インターネット検索の注意点などを踏まえ、相続に強い税理士の探し方を教えてください
少なくとも一度は実際に会うことです。ネット検索においても、複数の事務所に同じ質問を投げ掛け、その回答内容や対応でかなり絞り込めると思います。
税理士はネット上に掲載された料金で選ぶものでもありません。さらに、もし魅力的なサイトを見つけたとしても、ホームページ作成業者の腕が良いだけの話かもしれませんね。最終的には「話してみて信頼できるのか」「自分のことを理解しようとしてくれるのか」などと自分で確認することが必須です。
いわゆる「タワマン裁判」を経て、特に富裕層の相続対策はどうなると思われますか?
2023年度の税制改正大綱では、相続税評価の基準となる財産評価基本通達の見直しについて触れられましたが、まだ方針は定まっていません。従って、相続対策のために購入したマンションの評価がグレーな状態であることは認識しておくべきです。
いずれにしても「タワマン裁判」に限らず“大技”が封じられるのは間違いないでしょう。また、これらを計画しても実際に相続が発生するのは10年後や20年後であり、その時点でも有効な手段であるのかは未知数です。
とにかく、今回の件を通じ「常識的にやり過ぎ」と判断されるものは、いつどうなるか分からないと確認できました。繰り返しになりますが、生前贈与や小規模宅地の特例、生命保険といった手堅い手法を組み合わせることが相続税対策の主流になっていくと思います。
今後も同じような結果になるとは限りませんが、こうしたズレが生じるのであれば財産評価基本通達そのものを変えたほうが良さそうです。納税者が国の機嫌をうかがうのは健全ではないので、できる限り明確なルールを作っていただくよう期待しています。
相続税と贈与税の一体化や「暦年課税」「相続時精算課税」を踏まえ、税制改正大綱のトレンドを教えてください
税制改正大綱の動向を知るにあたり、各国の生前贈与の持ち戻し期間を調べたところ、アメリカでは一生涯、フランスでは15年、ドイツでは10年、イギリスでは7年でした。つまりイギリスの場合、ある人が亡くなってから7年前までの贈与は、相続した財産として扱われることになります。
対して日本の持ち戻し期間は3年ですが、2023年度の税制改正大綱では「2024年1月1日以降の暦年課税での贈与の持ち戻し期間は7年に延長される」と、イギリス並みになることが発表されました。
一方で日本には「2500万円までなら贈与税がかからずに生前贈与できる&持ち戻し期間は一生涯」という「相続時精算課税制度」も存在します。こちらは同年度の税制改正大綱において、さらに「2024年1月1日以降は年間110万円の基礎控除が受けられる」と追加されました。
2つの制度が同時に改正されてやや複雑ですが、ここが今回の税制改正大綱におけるポイントです。「相続時精算課税制度」に年間110万円のインセンティブを設けたことで、国からすると、この制度の利用を促したいのではないでしょうか。逆に「暦年課税」は持ち戻し期間が3年から7年に延び(ただし相続開始前4~7年の間に贈与した財産については、その合計額から100万円が控除できます。)、例えば年間100万円の贈与で考えると、従来の300万円分から600万円分が相続時に持ち戻しされ相続財産に加算して相続税が課税されることになります。明らかに使いづらくなりますよね。
「暦年課税」と「相続時精算課税」どちらが有利なのかはケースバイケースでして、一概にどちらがよいとは言えません。これまではほどんどのケースで「暦年課税」をおすすめしてきましたが、今後は贈与する方の年齢や健康状態を踏まえたアドバイスが不可欠ですね。生半可な知識では相談に応じられなくなり、生前贈与もオーダーメイドが増えるでしょう。私も事例を通じて知見を深め、この分野のサービス化を目指しているところです。
自分だけの発想を超えるために、考えを言葉にできる環境を整え、思いを共有できる人を集める
税理士業界において興味・関心を持っていることがあればお聞かせください
人材不足が気掛かりです。AIやクラウド会計ソフトで淘汰される職種といわれてきた影響なのか、やる気のある若手を見かけなくなり、私の時代に比べて税理士試験の受験者数も明らかに減っています。
一方で税制は複雑化し、お客さまのニーズも今まで以上に高まっています。そんな中でマンパワー不足が深刻化しているので、労働環境を改善するとともに、先輩である私たちが「こんなに頼られて夢のある仕事」と伝えることで根拠の無い不安を払拭したいですね。
ちなみに当事務所では、従業員の心理的安全性を重視し、何よりも彼らの自発性を優先しています。自ら挑戦と失敗を繰り返すことが何よりも成長につながるので、その機会を増やせるよう努めています。
“考える頭”が1つしか無い組織は目指していません。たとえ未熟でも、自分の考えを言葉にできる人が多いほうが、代表者一人のみの発想を超えていけるはずです。だから発言しやすい環境を作り、率先して行動したことを評価するよう意識しています。
相続について不安を抱える方々にアドバイスをお願いします
これから相続の準備を始めるのであれば、自分を理解してくれる税理士を見つけて早い段階から相談するよう勧めます。いくら優秀な人でも、顧客の価値観や置かれた状況をすぐには理解できず、徐々に分かり合う中で適切な答えを見つけていくことになります。相続には時間が掛かると認識しておいてください。
何を質問すればいいのか分からず、そもそも税理士は気軽に連絡できる相手なのかと不安になるかもしれませんが、私も含めて世話好きな人が多いです。まずはメールや電話で数人とコミュニケーションを取り、頼れそうな人と付き合いを始めてみてはいかがでしょうか。
未知のことに不安を覚える人へのサービスを充実させ、その精神を事務所内で伝えていきたい
Q.これから個人として、あるいは事務所として目指したいことは何ですか?
これまで話してきた、私が大切にしていることを今後も進めていくつもりです。特に相続の申告は人生で経験する機会が少なく、心配ばかりだと思います。身内が亡くなって悲しんでいる中、税金のことまで考えなければならないのは本当に大変なので、今以上に安心感をもたらせるよう注力したいです。
また、私のみで事務所を運営していくのは限度があるので、同じような考えを持つ人と組織的に動けるチームを作っていきたいですね。
実は昨年、人間ドックで初めての胃カメラを経験しました。不安に思う私に対し、担当医が検査の流れを細かく話してくれたので、使用する麻酔や機器、検査後に想定されることなどを理解できました。こうした説明が無くても検査内容は変わりませんが、未知の体験を前に「こんなことが起こるだろう」とイメージできたことは非常に価値があると思いました。
当事務所でも、こうしたサービス力を高めていくと共に、一緒に仕事をする人にもこのような精神を共有していきたいものです。
米津良治 様
BASE(ベイス)総合会計事務所 代表税理士
■企業プロフィール
社名:BASE(ベイス)総合会計事務所
所在地:東京都千代田区二番町9-3THE BASE麹町1階
TEL:03-6555-3920
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ご家族の相続は突然起こり、何から手をつけていいか分からない方がほとんどです。相続税についてはとくに複雑で、どう進めればいいのか? 税務署に目をつけられてしまうのか? 疑問や不安が山ほど出てくると思います。
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