この記事でわかること
- 前妻の子と法定相続人の関係がわかる
- 前妻の子に相続させない7つの方法がわかる
- 前妻の子に相続させたくないときの注意点がわかる
離婚した妻との間に子供がいた場合、人によっては自分の財産を渡したくない事情があるでしょう。
再婚後の家族にすべての財産を渡したい、または何らかの理由で前妻の子に愛情を注げないケースもあります。
また、財産の状況から前妻の子に相続させたくないケースも考えられます。
持ち家が遺産相続の対象になる場合、後妻の財産となるケースが一般的ですが、前妻の子が権利を主張すると、共有分割しなければならない可能性もあります。
しかし、前妻の子を相続から外すわけにはいかないため、生前に何らかの対策を打っておかなければなりません。
そこで今回は、前妻の子に相続させない方法をわかりやすく解説します。
目次
前妻の子も法定相続人に含まれる
子供の相続権は親の離婚に影響されないため、前妻の子も法定相続人に含まれます。
血縁のある子供は第1順位の法定相続人になるので、後妻との間に生まれた子供がいれば、どちらも父親の財産を相続できます。
しかし、後妻と前妻の子は対立関係になることが多く、夫の死亡を前妻の子に知らせないケースもありますが、相続人全員が揃わなければ遺産分割はできません。
何らかの事情で前妻の子に財産を相続させたくないときは、以下のように対策してください。
前妻の子に相続させない方法7つ
前妻の子に財産を相続させたくない場合、以下の方法を検討してください。
- 生前贈与する
- 遺言書を作成する
- 遺贈や死因贈与する
- 生命保険を活用する
- 財産の名義を変更する
- 相続放棄してもらう
- 相続人の廃除を行う
組み合わせによっては財産をまったく相続させないことも可能ですが、メリットやデメリットも理解しておいてください。
では、具体的な内容や手続きの方法などをみていきましょう。
生前贈与する
相続財産は死亡時に保有していた財産を指すため、生前に後妻や後妻の子に贈与しておけば、相続財産がほとんどない状態にできるでしょう。
生前贈与は贈与税の課税対象になりますが、年間110万円の非課税枠もあるため、時間をかければ1,000万円以上の財産を移転しても贈与税がかかりません。
ただし、生前贈与が特別受益になる可能性もあるので注意が必要です。
生前に受けた特別な利益を特別受益といいますが、後妻だけに贈与が集中すると、後妻の子供が特別受益を主張し、後妻の相続財産が減少する可能性もあります。
なお、贈与契約は口頭でも成立しますが、相続トラブルの防止や税務調査回避のため、贈与契約書は必ず作成しておきましょう。
遺言書を作成する(遺贈)
遺言書には法的効力があるため、原則として遺言内容に従った相続を行わなければなりません。
後妻や後妻の子供を受遺者(遺言によって財産を取得する人)に指定し、財産の配分も多めにしておけば、後妻の子が相続できる財産を減らすことができます。
ただし、法定相続人には遺留分があるため、全財産を後妻や後妻の子に相続させた場合、前妻の子から遺留分の返還請求があれば応じなければなりません。
また、遺言書の書き方には厳密なルールがあるため、些細なミスでも無効になる可能性があります。
確実な遺言書にしたいときは、公証役場で公正証書遺言を作成してもらった方がよいでしょう。
死因贈与する
死因贈与とは、贈与者と受贈者の間で死因贈与契約を結び、贈与者が死亡したときに贈与を実行する方法です。
あらかじめ「自分が死亡したら不動産○○は△△さんにあげる」といった死因贈与契約書を作成し、双方が署名捺印して契約を成立させます。
相続税の負担が大きい不動産でも、事前に受贈者の同意を得ているため、スムーズに贈与を実行できるメリットがあります。
なお、死因贈与が前妻の子の遺留分を侵害しているときは、返還請求の対象になるので注意が必要です。
生命保険を活用する
生命保険(死亡保険金)は受取人固有の財産になるため、遺産分割する必要がありません。
後妻や後妻の子供を死亡保険金の受取人にしておけば、前妻の子に法定相続分や遺留分を渡したとしても、まとまったお金を後妻などに残せます。
生命保険は相続税の課税対象なので、一定額を超えると相続税が発生しますが、以下の非課税枠もあるため、現金相続よりもメリットは大きいでしょう。
計算式
生命保険(死亡保険金)の非課税枠:500万円×法定相続人の数
法定相続人の数には前妻の子も含めるので、相続人が後妻・後妻の子・前妻の子の3人であれば、1,500万円(500万円×3人)までが非課税になります。
財産の名義を変更する
父親(夫)が亡くなった場合、相続の対象になるのは父親名義の財産です。
財産の名義を後妻や後妻の子にしておけば、前妻の子に行き渡ることはありません。
特に後妻や後妻の子の協力で取得できり、価値が上がったりした財産であれば、名義を変更しておいた方がよいでしょう。
相続人の廃除を行う
相続人に著しい非行があったときや、被相続人を侮辱・虐待していた場合は、遺言書や家庭裁判所への申立てで相続人から廃除することもできます。
ただし、廃除が妥当であることを証明しなくてはならないため、非行や虐待の事実がわかる証拠が必要です。
非行などを理由に前妻の子を相続人から廃除するときは、弁護士にも相談されることをおすすめします。
相続放棄してもらう
かなり難易度の高い方法ですが、前妻の子が相続放棄すれば、財産はすべて現在の家族が相続します。
しかし、相続放棄は本人(前妻の子)が家庭裁判所に申し立てる必要があり、相続放棄の理由が強制や脅迫であった場合は、認めてもらえない可能性が高いでしょう。
他に手段がない場合は打診してみるべきですが、あくまでも本人の意思で相続放棄しなければなりません。
前妻の子に相続させたくないときの注意点
前妻の子には法定相続人の地位があるため、必ず遺産相続の当事者になります。
しかし、後妻とその家族からみると、自分達の財産を脅かす存在になるので、好意的に受け入れる可能性は低いでしょう。
感情論で対立すると遺産分割が難航し、いつまで経っても財産の承継者が決まらない状況になるので、現在の家族にも以下の注意点を理解するように伝えてください。
前妻の子は必ず遺産分割協議に参加させる
遺産分割協議は相続人全員の参加によって成立するため、前妻の子に連絡しないで協議を行っても無効となります。
また、前妻の子の居場所がわからないことを理由に、後妻が夫(父親)の死亡を知らせない可能性もあるため、必ず連絡先や住所は伝えてください。
前妻の子を参加させずに遺産分割協議を決着させても、銀行や法務局は相続手続きに応じてくれないことも伝えておきましょう。
また、前妻の子が行方不明の場合は、まず警察や探偵事務所に依頼して探すところから始めなければなりません。
残された家族がいつまでも遺産分割協議が行えないということがないよう、様々な可能性を考えておくことをおすすめします 。
前妻と遺産分割協議する可能性がある
前妻の子が未成年者だった場合、法律行為となる遺産分割協議には参加できないため、本人の代わりに法定代理人が遺産分割協議に加わります。
未成年者の法定代理人は親権者になることが多いため、前妻が遺産分割協議に参加することも想定しておかなければなりません。
前妻と後妻がもめてしまう可能性も十分ありますが、相続権や法定相続分の主張は当たり前なので、対等な立場と認めて話し合う必要があります。
感情的にどうしても無理な場合や、前妻との話し合いが後妻のストレスになるときは、弁護士に代理人を依頼することも検討してください。
前妻の子にも相続財産はすべて伝える
相続財産を明らかにしないまま遺産分割協議をすると、後で発覚したときに大きなトラブルになります。
前妻の子に知られると不都合な財産があっても、自分達と同じ法定相続人に変わりないため、相続財産はすべて開示するようにしてください。
あくまでもフェアな話し合いで遺産分割を決着させましょう。
遺産分割調停も視野に入れておく
遺産分割協議が難航するときは、遺産分割調停も検討しましょう。
遺産分割調停は家庭裁判所に申し立てますが、一般的な裁判とは異なり、調停委員を交えた話し合いによる解決方法です。
話し合いは調停委員と進めるため、前妻の子と顔を合わせることもありません。
中立的な第三者がいれば冷静に話し合いもできるので、前妻の子ともめてしまったときは調停も視野に入れておきましょう。
なお、遺産分割調停が決着しなかったときは審判に移行しますが、審判では裁判官が判決を下すため、法定相続分を目安とした決定になる可能性が高いでしょう。
まとめ
父親に前妻の子がいる場合、相続ではもめてしまう確率が高いため、何らかの対策が必要です。
前妻の子に財産を相続させたくなくても、本人には相続権や法定相続分もあり、最低限の保障となる遺留分の侵害請求権も認められています。
財産をまったく相続させない方法もありますが、本来、前妻の子に親の都合は関係ないため、同じ立場の相続人として受け入れるべきでしょう。
自分が亡くなった後に、残された家族に対応させることにどうしても感情的に抵抗があるときや、前妻家族と建設的な話し合いができずに困ったときは、相続の専門家に相談してください。
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