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LLPとは?有限責任事業組合の特徴・メリットや合同会社との違い、設立方法を解説

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
【公式】ベンチャーサポートグループチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:【公式】ベンチャーサポートグループチャンネル
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

LLPとは?有限責任事業組合の特徴・メリットや合同会社との違い、設立方法を解説

LLP(有限責任事業組合)は、複数の個人や企業が共同で事業を行うための組織です。

組合員の責任を原則として出資額までに限定できるほか、組織の運営や損益の分配を柔軟に決められ、LLP自体ではなく各組合員に課税される「構成員課税」が採用されています。

株式会社や合同会社と似た部分もあるため、「会社を設立する代わりにLLPを選んだほうがよいのか」と考える人もいるでしょう。
しかし、LLPは株式会社や合同会社に代わる一般的な起業形態というより、複数の企業や個人がそれぞれの強みを持ち寄って共同事業を行う場合に特徴を発揮する組織です。
1人で起業したい場合や、事業を継続的に拡大していきたい場合には、株式会社や合同会社のほうが適しているケースが多いです。

この記事では、LLPのしくみやメリット・デメリット、どのような事業ならLLPを選ぶ意味があるのかを実際の活用例とあわせて解説します。
合同会社・株式会社との違いや設立方法、税金についても紹介するため、LLPが自分たちの事業に適しているか判断する際の参考にしてください。

LLPとは「有限責任事業組合」のこと

LLPとは「Limited Liability Partnership(リミテッド・ライアビリティ・パートナーシップ)」の略で、日本では「有限責任事業組合」と呼ばれます。
これは一言で言えば、複数の個人や企業が出資し、それぞれが事業に参加しながら共同で1つの事業を行うための組織です。

参考:有限責任事業組合(LLP)制度について|経済産業省

たとえば、商品開発の技術を持つA社と、販売網を持つB社が共同で新規事業を始めるとします。
この場合、両社が契約を結んで業務提携する、あるいは新たに株式会社や合同会社を設立し、その会社で事業を行うといった方法が考えられます。

これに対しLLPでは、新しい会社を設立するのではなく、A社とB社が組合員となり「有限責任事業組合契約」を結んで、共同事業のための組織をつくります。

株式会社や合同会社との大きな違いは、LLPそのものには法人格がないことです。

株式会社や合同会社を設立すると、出資者とは別に「会社」という法人が成立し、会社自身が契約を結んだり財産を所有したりします。
一方でLLPでは、組合員同士が契約を結び、それぞれが出資したうえで共同して事業を行います。

LLP制度は、企業同士のジョイント・ベンチャーや専門的な能力を持つ人材による共同事業を促進する目的で設けられました。
そのため、一般的な会社設立の代わりとして幅広く利用されるというより、「複数の主体が一緒に事業を行うための器」と考えると理解しやすいでしょう。

税理士 森健太郎

代表税理士
森 健太郎

実際、法務省の登記統計では、2025年にLLPの「組合契約の効力の発生」が登記された件数は229件となっています。

株式会社や合同会社ほど一般的に利用されている組織形態ではなく、用途を限定して選ばれている形態だと言えるでしょう。

参考:登記統計 商業・法人 商業・法人登記(年次表) 25-00-30 種類別 有限責任事業組合契約の登記の件数(平成28年~令和7年) 年次 2025年|e-Stat 政府統計の総合窓口

LLPが向いているケース・活用例

LLPは、一般的な起業で株式会社や合同会社の代わりに幅広く選ばれる組織ではありません。
一方で、複数の企業や個人がそれぞれ独立した立場を維持しながら、技術・人材・ノウハウなどを持ち寄って共同事業を行う場合には、LLPならではの特徴を生かせます。

ここでは、どのような場合にLLPを選ぶ意味があるのか、実際の活用例も交えて見ていきましょう。

企業同士で共同研究や新規事業を行うケース

複数の企業が、それぞれの強みを持ち寄って共同研究や新規事業を行う場合は、LLPが選択肢になります。

たとえば、製造技術を持つA社と、販売網やマーケティングのノウハウを持つB社が、新商品の開発・販売を共同で行うケースを考えてみましょう。

新たな会社をつくる場合、A社とB社とは別に1つの法人が成立します。
一方、LLPであれば、両社はそれぞれ既存の会社として事業を続けながら、共同事業の部分だけをLLPの枠組みで運営できます。

さらに、LLPでは一定の条件を満たせば、出資額だけではなく、技術・人材・ノウハウなどの貢献度も考慮して損益の分配割合を設定できます。

実際の活用例として、「F-グリッド宮城・大衡有限責任事業組合」があります。

参考:スマートコミュニティ事業運営組織「F-グリッド宮城・大衡有限責任事業組合(LLP)」 国内初の非常時地域送電システムを運用開始|トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト

このLLPは2013年、トヨタ自動車、トヨタ自動車東日本、豊田通商、東北電力など複数の企業が参加して設立されました。
工業団地内で電力や熱を供給し、エネルギー設備の運用・管理などを共同で行う事業です。

経済産業省の2025年版LLP事例集では、この事業について「立ち上げ時には設備や人員が必要になる一方、運用段階では必要な専従者が限られるため、事業の段階に応じて柔軟に体制を設計できることもLLPを選んだ理由の1つ」として紹介されています。

参考:有限責任事業組合 LLP|経済産業省(PDF)

複数の独立した企業がそれぞれの役割を担いながら、1つの共同事業を継続して運営する必要があったことが、LLPのしくみと合っていた事例といえるでしょう。

専門家や個人事業主が共同で事業を行うケース

それぞれ異なる専門性を持つ個人事業主が、1つのサービスを共同で提供するときにもLLPを活用できます。

たとえば、システム開発を行うエンジニア、Webデザイナー、営業が共同で企業向けサービスを提供するケースです。

3人がそれぞれ個別に仕事を受発注するだけでは、サービス全体の売上や費用、役割分担、利益の分け方が複雑になりやすくなります。
LLPを設立すれば、3人がそれぞれ独立した事業を続けながら、共同サービスについては1つの事業として運営できます。
また、資金の出資額だけでなく、開発・デザイン・営業など、それぞれの事業への貢献を踏まえて損益の分配方法を決められる点も特徴です。

期間や目的が決まったプロジェクトを共同で進めるケース

LLPは、特定の目的を達成するために、一定期間だけ複数の企業・個人が協力するプロジェクトにも向いています。

たとえば、映像制作会社、クリエイター、ゲーム開発会社などが共同で一つのコンテンツを制作するケースです。

LLPでは、組合契約書に「組合の存続期間」を記載しなければなりません。
各参加者が本来の事業を続けながら、あらかじめ目的や期間を定めて共同事業を行う設計ができます。

新会社を設立して恒久的に事業を続けることが目的ではなく、「この商品を開発する」「この研究を5年間行う」といった共同事業であれば、LLPを利用する意味が出てきます。

一般的な起業ならLLPより株式会社・合同会社が向いている

LLPには有限責任や柔軟な組織運営などの特徴がありますが、これから1人または少人数で新しく事業を立ち上げ、継続的に成長させていく一般的な起業であれば、株式会社や合同会社のほうが適しているケースが多いでしょう。

特に、次のような場合はLLPより会社形態が適しています。

会社形態が適してる場合

  • 1人で起業したい
  • 継続的に事業を拡大したい
  • 株式で外部投資家から資金調達したい
  • IPOを目指したい
  • 法人自身の名義で契約・財産管理をしたい

LLPを検討する際は、「複数の当事者が共同で1つの事業を行う必要があるが、その共同事業のために独立した会社を設立する必要まではないか」という視点で考えることが重要です。

LLPの特徴とメリット

LLPの主な特徴とメリットを整理すると、次のとおりです。

特徴・メリット 内容
有限責任 組合員がLLPの債務について負う責任は、原則として出資額まで
内部自治 組合員の貢献度に応じて、経営上の権限や損益の配分を柔軟に決められる
構成員課税 LLP自体に法人税を課さず、損益を各組合員に帰属させて課税する
設立・運営の負担 株式会社と比べて設立手続きが簡素で、組織運営に関する制約も少ない

組合員は出資額の範囲内で責任を負う「有限責任」

LLPでは、組合員がLLPの債務について負う責任は、原則として自分が出資した金額までです。
これを「有限責任」といいます。

たとえば、ある組合員がLLPに100万円を出資した場合、その組合員がLLPの借金について自己の財産から負担する責任は、原則として100万円が上限です。
事業で大きな損失が出たからといって、LLPの借金すべてを各組合員が個人の預貯金や自宅などから返済することは、原則としてありません。

有限責任事業組合契約に関する法律第15条でも、「組合員は、その出資の価額を限度として、組合の債務を弁済する責任を負う」と定められています。

参考:有限責任事業組合契約に関する法律 第十五条|e-Gov法令検索

税理士 森健太郎

代表税理士
森 健太郎

ただし、組合員が自分の職務を行う際に、故意に近い悪質な行為や重大な不注意によって第三者に損害を与えた場合には、その組合員自身が損害賠償責任を負います。

LLPの債務に対する有限責任と、自分自身の不適切な行為によって生じた責任は分けて考えましょう。

有限責任の詳しいしくみについては、以下の記事をご確認ください。

経営や利益配分を柔軟に決められる「内部自治」

LLPでは、誰がどのような役割を担うのか、事業から生じた利益や損失をどの割合で分けるのかを、組合員同士で柔軟に決められます。
このように、組織内部のルールを組合員自身で決めやすいしくみを「内部自治」といいます。

特にLLPの特徴が表れやすいのが、損益の分け方です。

何も取り決めなければ、利益や損失は各組合員が実際に出資した金額の割合に応じて分配します。
一方、組合員全員の同意により、出資割合とは異なる損益分配割合を定めることもできます。

たとえば、A社とB社がLLPを作り、A社が700万円、B社が300万円を出資したとします。
通常であれば出資割合はA社70%、B社30%です。

しかし、B社が事業の中核となる技術や特許、専門人材を提供しており、その貢献度を考慮する合理的な理由があるのであれば、組合員全員の合意によって、損益をA社50%、B社50%とするといった設計も可能です。

つまり、「お金をいくら出したか」だけでは測れない技術・ノウハウ・人的貢献を、利益配分に反映しやすいことがLLPの大きな特徴です。

税理士 森健太郎

代表税理士
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ただし、税務上は利益分配の割合には経済的な合理性が求められます。

単に税負担を減らすことだけを目的として、自由な割合を設定できるわけではない点には注意してください。

LLP自体には法人税が課されない「構成員課税(パススルー課税)」

LLPでは、LLPそのものに法人税を課すのではなく、LLPで生じた利益や損失を各組合員に割り振り、それぞれの組合員側で税金を計算します。
このしくみを「構成員課税」または「パススルー課税」といいます。

たとえば、LLPで1,000万円の利益が生じ、そのうち600万円がA社、400万円がB社に帰属するとします。

この場合、LLPが1,000万円について法人税を支払うのではなく、A社は600万円、B社は400万円をそれぞれ自社に帰属する損益として税金の計算に反映します。

組合員が個人であれば所得税、法人であれば法人税の計算に反映するという違いはありますが、LLP自体に法人税が課されない点が株式会社や合同会社との大きな違いです。

個人・法人それぞれの具体的な税金や確定申告の扱いについては、後ほど「LLPにかかる税金と確定申告」で詳しく解説します。

株式会社より設立・運営コストを抑えやすい

LLPは、株式会社と比べて設立時に必要な法定費用や、設立後の組織運営にかかる負担を抑えやすい点もメリットです。

LLPを設立する際は有限責任事業組合組合契約書(以下は組合契約書と記載)を作成しますが、株式会社の定款のように公証人の認証を受ける必要はありません。
また、LLPの設立登記にかかる登録免許税は6万円と、株式会社の登録免許税(最低15万円)よりも割安です。

また、LLPには株式会社のような取締役という役職がないため、役員の任期満了に伴う重任登記なども必要ありません。

税理士 森健太郎

代表税理士
森 健太郎

ただし、LLPも会計上の手続きが不要になるわけではありません。
毎事業年度終了後2カ月以内に貸借対照表や損益計算書、附属明細書を作成し、財務諸表を10年間、主たる事務所に備え置く義務があります。

LLPのデメリット・注意点

LLPには、共同事業を柔軟に運営できるメリットがある一方、法人格がないことや、組合員自身が事業に参加するしくみから生じる制約もあります。

LLPを選ぶ際は、次のデメリットも確認しておきましょう。

LLP自体は契約主体になれない

LLPには法人格がないため、会社のように「LLPという法人そのもの」が権利や義務の主体になるわけではありません。

実際の取引では、たとえば「ABC有限責任事業組合 組合員◯◯」のように、組合員がLLPでの肩書を付けた名義で契約を締結します。
その組合員がほかの組合員を代理して適切に契約を結んだ場合、その契約の効果はほかの組合員にも及びます。

LLPの事業に使用する財産についても、法人が単独で所有するのではなく、組合員の共同財産として扱われます。

そのため、法人名義で契約や財産管理を一本化したい事業では、合同会社や株式会社のほうが扱いやすいでしょう。

組合員全員が原則として業務執行に参加する必要がある

LLPは、組合員全員が出資だけでなく、実際の事業にも関わることを前提としたしくみです。

たとえば、A社が商品開発、B社が営業、C社がシステム開発を担当するといった役割分担は可能です。
一方で、C社が「資金だけを出して、LLPの事業には一切参加しない」という形で組合員になることはできません。

このため、事業には参加せず、投資だけをしたい人から資金を集める目的にはLLPは適していません。

参考:有限責任事業組合契約に関する法律 第十三条|e-Gov法令検索

株式会社や合同会社へそのまま組織変更できない

LLPとして事業を始めたあとに事業規模が大きくなり、「株式会社へ移行したい」と考えても、LLPをそのまま株式会社や合同会社へ組織変更する制度はありません。

会社へ移行する場合は、新会社を別途設立し、事業用資産や契約などを新会社へ移したうえで、LLPを解散・清算するなどの手続きが必要になります。

一方、合同会社には株式会社へ直接組織変更する制度があります。
そのため、設立時点から将来的な株式会社化を想定しているのであれば、LLPより合同会社や株式会社を選ぶほうが移行しやすいでしょう。

株式による資金調達やIPOはできない

LLPには株式というしくみがありません。
そのため、株式会社のように新たな株式を発行して外部投資家から資金を集めたり、株式市場へ上場したりすることはできません。

また、前述したように、事業に関与せず資金だけを提供する組合員を設けることもできません。
外部投資家から大規模な資金調達を行いながら事業を成長させたい場合や、将来的にIPOを目指す場合には、LLPより株式会社が適しています。

士業はLLPとして事業を行うことはできない

有限責任事業組合契約に関する法律施行令では、公認会計士や弁護士、税理士などの士業について、法律で資格者等に限定されている一定の業務をLLPの事業として行うことを認めていません。

たとえば、税理士がLLPの組合員になること自体を一律に禁止しているわけではありませんが、LLPを作って、そのLLPの事業として税務代理などの税理士業務を行うことはできません。

参考:有限責任事業組合契約に関する法律施行令 第1条|e-Gov法令検索

LLPと合同会社(LLC)・株式会社の違いとは

LLPと比較されることが多い組織に、「合同会社(LLC)」と「株式会社」があります。

LLPは組合、合同会社と株式会社は会社であり、法人格の有無や税金のかかり方、事業への参加方法などに違いがあります。まずは、それぞれの主な違いを確認してみましょう。

比較項目 LLP 合同会社(LLC) 株式会社
組織の種類 組合 会社 会社
法人格 なし あり あり
設立に必要な人数 2人以上 1人以上 1人以上
出資者の責任 有限責任 有限責任 有限責任
経営への参加 原則として組合員全員が参加 定款で業務執行社員を定められる 株主と経営者を分けられる
課税 損益が各組合員に帰属 合同会社に法人課税 株式会社に法人課税
利益・損益の配分 条件を満たせば出資割合と異なる配分が可能 定款により出資割合と異なる利益配分が可能 原則として保有株式に応じる
株式の発行 できない できない できる
株式会社への組織変更 できない できる
IPO(株式市場への上場) できない 合同会社のままではできない 可能

それぞれ、どのような違いが事業形態の選択に影響するのかを見ていきます。

LLPと合同会社(LLC)の違い

LLPと合同会社は、非常に多くの共通点があります。

LLPと合同会社の類似点

  • 出資者の責任が原則として出資額まで(有限責任)
  • 組織運営を柔軟に決められる
  • 利益配分を出資比率と異なる割合で設定できる
  • 構成員に個人だけでなく法人も参加できる
  • 設立時の基本文書(LLP:組合契約書|合同会社:定款)は公証人の認証が不要
  • 決算公告が不要
  • 役員の任期がない

一方で、合同会社は「会社」であり、LLPは「組合」であることから、以下のような違いもあります。

LLPと合同会社の相違点

  • LLPには法人格がないが、合同会社には法人格がある
  • LLPは2人以上必要だが、合同会社は1人でも設立できる
  • LLPの損益は各組合員に帰属するが、合同会社には法人税が課される
  • LLPは原則として全組合員が業務執行に参加するが、合同会社では定款で業務執行社員を限定できる
  • LLPから株式会社へ直接組織変更することはできないが、合同会社から株式会社への組織変更はできる

特に重要なのが、法人格と税金の違いです。

合同会社を設立すると、出資者とは別に「合同会社」という法人が成立します。
合同会社自身が取引先と契約し、財産を保有し、会社が得た所得について法人税を負担します。
一方、LLPには法人格がありません。
LLPで生じた利益や損失は各組合員に帰属し、それぞれの組合員側で税金を計算します。

また、合同会社は1人でも設立できるのに対し、LLPは2人以上の組合員が共同で事業を行うことを前提としたしくみです。
そのため、これから1人または少人数で継続的に事業を成長させていくのであれば、一般的には合同会社や株式会社が選択肢になります。

LLPが候補になりやすいのは、複数の企業による共同研究や新規事業、異なる専門分野を持つ個人・法人が技術やノウハウを持ち寄って共同事業を行う場合です。

LLPと株式会社の違い

LLPと株式会社は、出資者の責任を原則として出資額までに限定できる点は共通していますが、事業の成長方法や資金調達のしくみは大きく異なります。

株式会社には法人格があり、株主と実際に経営を行う取締役を分けられます。
株式を発行して外部投資家から出資を受けることもでき、将来的にはIPOを目指すことも可能です。

これに対してLLPには法人格や株式という仕組みがなく、原則として組合員全員が事業に参加します。
また、LLPの損益は各組合員へ直接帰属します。

つまり、株式会社は1つの独立した会社を成長させ、外部から資本を集めて事業を拡大していくことに向いたしくみです。
一方、LLPは、複数の企業や個人が自ら事業に参加し、それぞれの技術・人材・ノウハウなどを持ち寄って共同事業を行うことに向いています。

LLPとLPS(投資事業有限責任組合)の違い

LLPと名称が似た制度に「LPS」があります。
LPSとは「Limited Partnership」の略で、日本では「投資事業有限責任組合」と呼ばれます。

参考:投資事業有限責任組合(LPS)制度について|経済産業省

LLPとLPSはいずれも法人格を持たない組合で、構成員課税が採用されていますが、利用する目的と組合員の役割が大きく異なります。

比較 LLP LPS
日本語名称 有限責任事業組合 投資事業有限責任組合
主な目的 組合員が共同で事業を行う 企業などへの投資を行う
責任 組合員全員が有限責任 無限責任組合員と有限責任組合員に分かれる
業務執行 組合員全員が担う 無限責任組合員が担う
有限責任の投資家 事業への参加が必要 原則として投資家として参加する
法人格 なし なし
課税 構成員課税 構成員課税

LPSには、組合の運営や投資判断を行う無限責任組合員(GP)と、主に資金を出す有限責任組合員(LP)がいます。
GPは組合の債務について無限責任を負う一方、LPの責任は原則として出資額までです。業務の決定・執行はGPが行うしくみになっています。

これに対してLLPでは、組合員全員が有限責任であると同時に、全員が共同事業の業務執行に関わります。

たとえば、複数の企業が技術を持ち寄って新製品を共同開発するのであればLLPが候補になります。
一方、複数の投資家から資金を集めてスタートアップ企業などへ投資するファンドを作るのであれば、LPSが利用されます。

LLPを設立する方法

LLPを設立する大きな流れは、次の4ステップです。

それぞれのステップで行うことや注意点について、詳しく解説します。

ステップ1:名称・事業内容・出資額などを決める

まず、LLPでどのような事業を行い、誰が参加するのかを決めます。

LLPは1人では設立できず、2人以上の個人または法人が組合員になる必要があります。
また、組合員のうち少なくとも1人は、国内に住所を有するなど一定の要件を満たす個人、または国内に本店・主たる事務所を有する法人でなければなりません。
そのため、外国人や外国法人だけで組合員を構成することはできません。

LLPの名称には「有限責任事業組合」という文字を入れる必要があります。

この段階では、以下のような運営上のルールについても話し合っておきましょう。

LLPであらかじめ決めておくこと

  • 誰がどの業務を担当するのか
  • いくら出資するのか
  • どのように意思決定するのか
  • 利益や損失をどの割合で分けるのか
  • いつまで共同事業を続けるのか

また、LLPではすべての事業を自由に行えるわけではありません。前述したとおり、税理士業務や弁護士業務など、法律上LLPの業務として行うことが認められていないものがあります。
許認可や資格が必要な事業を予定している場合は、LLPで実施できる事業か事前に確認しておきましょう。

ステップ2:有限責任事業組合契約書を作成する

基本事項を決めたら、内容を「有限責任事業組合契約書」にまとめます。
これは株式会社や合同会社の定款に相当する、LLPの基本的なルールを定める書類です。

有限責任事業組合契約に関する法律第4条では、契約書に記載しなければならない事項を次のように定めています。

組合契約書に記載しなければならない事項

  • 有限責任事業組合(以下「組合」という。)の事業
  • 組合の名称
  • 組合の事務所の所在地
  • 組合員の氏名又は名称及び住所
  • 組合契約の効力が発生する年月日
  • 組合の存続期間
  • 組合員の出資の目的及びその価額
  • 組合の事業年度

組合契約書には原則として組合員全員が署名または記名押印します。電磁的記録によって作成することも認められています。

実際にLLPを運営するためには、これら8項目のほかに、業務の分担や重要事項の決め方、損益分配割合、新たな組合員の加入・脱退などについても、必要に応じて具体的に決めておくことが重要です。
なお、LLPの組合契約書について公証人による認証を受ける必要はありません。

参考:有限責任事業組合契約に関する法律 第四条|e-Gov法令検索

ステップ3:各組合員が出資する

組合契約書を作成したら、各組合員が契約で定めた出資を行います。

LLPに出資できるのは、金銭またはその他の財産です。
不動産や有価証券などを現物で出資することもできます。
ただし、「自分が100時間働く」といった労務そのものを出資として扱うことはできません。

各組合員の出資額に法律上の下限はなく、1人あたり1円以上で設定できます。

ただし、実際にはLLPで行う事業に必要な資金を踏まえて出資額を決める必要があります。

ステップ4:法務局でLLPの登記を申請する

すべての組合員が出資を履行して組合契約の効力が生じたら、主たる事務所を管轄する法務局へ登記を申請します。

有限責任事業組合契約に関する法律第57条では、組合契約の効力が生じた日から2週間以内に登記することを義務付けています。

参考:有限責任事業組合契約に関する法律 第五十七条|e-Gov法令検索

主な提出書類は、登記申請書、有限責任事業組合契約書、各組合員が出資を履行したことを証する書面などです。
組合員に法人が含まれる場合には、その法人に関する登記事項証明書や職務執行者に関する書類など、追加の書類が必要になることもあります。

法務局では「有限責任事業組合契約効力発生登記申請書」の様式と記載例を公開しています。

参考:商業・法人登記の申請書様式|法務局

LLPの設立にかかる費用と期間

LLPの設立登記にかかる登録免許税は6万円です。
ただし、自分たちだけで組合契約書や登記書類を作成するのではなく、弁護士や司法書士などの専門家へ依頼する場合は別途報酬がかかります。

登記申請書類の審査には約1週間、契約書の作成から登記完了までを含めた設立全体では概ね10日間ほどかかるとされています。

ただし、登記完了までの日数は管轄する法務局や申請時期、書類の補正の有無などによって異なります。
法務局によっては登記完了まで数週間以上かかる場合もあるため、実際に設立するときは管轄法務局が公表している登記完了予定日を確認しましょう。

LLPにかかる税金と確定申告

LLPでは、株式会社や合同会社のように、LLPそのものが法人税を支払うわけではありません。

LLPの事業で得た売上から必要な経費を差し引いて利益や損失を計算し、その損益をあらかじめ定めた割合に応じて各組合員に割り振ります。
税金は、その割り振られた損益をもとに、それぞれの組合員が負担します。

ここでは、実際に誰がどのように税金を計算するのかと、LLPで損失が出た場合や消費税・インボイス制度の注意点を解説します。

個人の組合員は帰属する所得について確定申告する

LLPの利益や損失は、各組合員に直接帰属します。
そのため、組合員が個人なら個人の所得として、法人ならその法人の所得として税金を計算します。

たとえば、LLPの年間売上が1,000万円、事業に必要な家賃や広告費、外注費などの経費が600万円だったとします。
この場合、LLPの利益は400万円です。

さらに、その400万円をAさん60%、B社40%の割合で分けることになっていれば、Aさんには240万円、B社には160万円の利益が帰属します。

法人が組合員の場合も考え方は同じです。
たとえば、LLPの利益のうち160万円がB社に帰属するのであれば、B社はその160万円を自社の所得計算に反映します。

なおこの例では、LLP全体の利益を計算したうえで各組合員に配分する形で説明しています。
実際の税務上の所得計算について、国税庁では、組合事業の収入・支出・資産・負債などを分配割合に応じて各組合員に帰属させる方法を原則としています。

ただし、この方法によることが難しく、継続して適用する場合には、収入や費用などを配分する方法や、LLP全体の利益・損失を配分する方法も認められています。

参考:〔組合の所得計算〕|国税庁

「組合員所得に関する計算書」を税務署へ提出する

LLPでは、各組合員が自分に帰属する所得を申告するだけでなく、LLPの会計帳簿を作成する組合員が「有限責任事業組合等に係る組合員所得に関する計算書」とその合計表を税務署へ提出する必要があります。

この計算書には、LLPで生じた利益や損失、各組合員への分配額などを記載します。
提出期限は、組合契約で定めた計算期間が終了した日の属する年の翌年1月31日です。

参考:F1-34 有限責任事業組合等に係る組合員所得に関する計算書(同合計表)|国税庁

LLPで損失が出た場合の損益通算には制限がある

LLPで損失が出た場合も、その損失は各組合員に割り振られます。
ただし、割り振られた損失を無制限に他の所得や法人の利益から差し引けるわけではありません。

個人の組合員については、LLPから帰属する損失が「調整出資金額」を超える場合、その超えた部分をその年の必要経費に算入できません。

調整出資金額は、これまでの出資額に前年までのLLPから帰属した損益を加減し、LLPから受けた財産の分配額を差し引いて計算します。
たとえば、出資額100万円、前年までの利益30万円、財産の分配20万円であれば、調整出資金額は110万円です。

法人がLLPの組合員になっている場合にも、LLPの損失が出資額などを基礎として計算する金額を超えると、その超過部分を損金に算入できないという制限があります。

これは、LLPでは組合員が原則として出資額までしか責任を負わないためです。
実際に負担する範囲を超えた損失まで、税金の計算で自由に差し引けるわけではないという点に注意が必要です。

参考:有限責任事業組合の組合事業に係る事業所得等の所得計算の説明書|国税庁

消費税・インボイス制度は所得課税とは別に確認する

ここまで説明した構成員課税は、所得税や法人税の計算に関するしくみです。
消費税についてもLLPそのものを1つの事業者として扱うのではなく、原則として各組合員が自分に帰属する取引について税務処理を行います。

LLPが商品やサービスを販売した場合、その売上や仕入れについては、各組合員が持分割合または利益の分配割合に応じた部分を行ったものとして扱います。
そのため、消費税の納税義務についても、各組合員ごとに判断します。

インボイス制度にもLLP特有のルールがあります。
LLPの共同事業としてインボイスを交付するためには、原則として組合員全員が適格請求書発行事業者であり、業務執行組合員が所定の届出を税務署へ提出する必要があります。

税理士 森健太郎

代表税理士
森 健太郎

なお、LLP自身にインボイス制度上の登録番号が付与されるわけではありません。

LLPが交付するインボイスには、原則として組合員全員の氏名または名称と登録番号を記載します。

ただし、すべての組合員を記載する代わりに、いずれか1人以上の組合員の氏名または名称と登録番号に加えて、LLPの名称を記載する方法も認められています。

その場合でも、組合員のうち1人でも適格請求書発行事業者でなくなった際は、その日以後LLPの共同事業としてインボイスを交付できなくなります。

取引先が法人中心でインボイスの交付を求められる事業では、LLPを設立する前に、参加予定の組合員全員のインボイス登録状況を確認しておくことが重要です。

なお、この届出をしてもLLP自体が適格請求書発行事業者になるわけではないため、LLP独自の登録番号が付与されることはありません。

参考:D1-68 任意組合等の組合員の全てが適格請求書発行事業者である旨の届出手続|国税庁

この記事のまとめ

LLPは、複数の個人や法人がそれぞれの技術・人材・ノウハウを持ち寄り、共同で事業を行うための組織です。

一般的な起業では株式会社や合同会社が中心的な選択肢になりますが、企業同士の共同研究や新規事業、異なる専門性を持つ人材による共同事業などでは、LLPの柔軟な組織運営や損益分配を生かせます。

一方で、LLPには法人格がなく、組合員全員が原則として事業に参加する必要があります。
株式による資金調達やIPOもできないため、将来どのように事業を成長させたいのかまで考えて選ぶことが重要です。

また、LLPでは利益や損失が各組合員に直接帰属するため、個人・法人それぞれで税務処理が必要になります。
特に損失の計上やインボイス制度にはLLP特有のルールがあるため、設立を検討するときは、「設立できるか」だけでなく「LLPを選ぶことが自分たちの共同事業に合っているか」まで確認したうえで判断しましょう。

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