最終更新日:2021/8/2
独立で成功するコツ|失敗の原因を知って取り除こう
「これから独立しよう!」と意気込んでいる人が、つい見落としがちなことがあります。
独立には、「成功する人」と「失敗する人」の2種類が必ず存在しているということです。
はじめのうちは、誰もが不思議と自分はうまくいくような気がするもので、独立前はある種冷静さを欠いた状態になることが珍しくありません。
独立前にこの事実を冷静にとらえておかないと、独立後の事業運営に苦労することになりかねないのです。
独立で成功するためにはいくつかのコツがあります。
「成功する人」に仲間入りするための成功のコツをこの記事で押さえ、十分な準備のもとで先行き明るい独立を果たしていきましょう。
独立起業の7割が失敗する
独立起業した会社は1年で3割、10年で7割が失敗するといわれています。
起業して軌道に乗せて、経営を安定させるまではかなりハードルが高いです。
ただしゼロからの起業と違い、独立する場合は事前に準備ができます。
起業して失敗しないためには、事前にしっかりと準備をして、独立後のトラブルを乗り越えていく必要があります。
そこで下記では、独立起業で失敗する人の特徴を説明します。
「どんな人が独立を失敗しているのか?」を知っておけば、事前に対策ができます。
自分の現在地を知ってからスタートすること
「やってみないとわからない!とりあえず始めてみよう!」といきなり脱サラ、独立して事業を始めてしまう人は決して少なくありません。
実は、そんな人たちの独立は大半が失敗に終わってしまうものなのです。
それは、以下のようなことを把握しないまま事業をスタートさせているからです。
- ・自分は何を知っていて、何を知らないのか
- ・自分は何ができて、何ができないのか
これらをきちんと把握できていないと、いざとなった時に適正な対処をすることができないのです。
「自分の知識や能力の現在地がわからない」という状態で独立して事業をスタートさせてしまっては、誰に何を聞けばよいのか、誰に何をどれぐらい頼ればいいのかといったことさえも的確に判断できず、右往左往している間に事業が行き詰まり、失敗してしまうのです。
そうならないためにも、独立して成功するためのコツを事前に学んでおくことが重要です。
自分の知識や能力がどれぐらいあるのか把握し、自分の現在地を知ってから独立を果たせるように備えていきましょう。
成功のコツは失敗から学べる
独立には成功する人と失敗する人がいると前述しましたが、そのどちらから学べばより効果の高い成功のコツを知ることができるのでしょうか。
ずばりそれは、「独立に失敗した人」です。
独立に成功した人が成功を収めた背景には、「運」や「人の縁」などの要素があることが少なくありません。
しかし、こうした事例を真似ようとしたところで、望んで手に入れることが難しいものなので、再現性は低いと言えます。
一方、独立に失敗した人には、失敗した明確な理由があります。
その失敗から学んで備えることを考えた方が、再現性の高い成功のコツとして正解であると言えるのです。
過去の失敗事例を的確にとらえて成功のコツを見出すことは、独立時に限らずいろいろな場面で通用する再現性の高い考え方です。
この記事でもありがちな失敗例を紹介しつつ、それらを踏まえた成功のコツを解説します。
個人ではなく経営者の役割を果たすこと
個人が持っている感覚と、経営者が持つべき感覚は違うものです。
たとえば、成績優秀な営業マンが独立して失敗するケースがあります。
独立後も培った人脈や営業のスキルを生かして、営業成績はそのまま高い水準をキープできるかもしれません。
しかし、それはあくまでも一人の社員としての役割です。
経営者であれば、全体最適化の視点をもってその役割も同時に果たさなければなりません。
一人の営業社員という感覚で、スライド式に経営者としての役割をこなせることはありません。
果たすべき役割の守備範囲が違うのです。
スポーツの世界でも、名プレイヤーが名監督になれるとは限らないでしょう。
これも果たすべき役割が違うからです。
その違いを明確に認識できていない人が独立すると、その経営は失敗してしまう可能性大です。
問題を見つけ出し解決策を作り出すこと
与えられた役割の中で最大限のパフォーマンスを発揮することは、一人の社員として会社の中で出世していくためにも必要な能力です。
しかし、経営者に必要なのは「全くのゼロから問題を見つけ出し、その解決策を作り出す」能力。
自社事業に対してどんな役割を与えることができるのか、客観的な視点で社会を読み解いて見つけていくことが必要です。
枠組みの中で力を発揮することも欠かせませんが、まっさらな状態から枠組みを作っていくことこそ、経営者に求められる最大の役割と言えるのです。
同業他社との比較からスタートしないこと
枠組みの中ではなく枠組みを作ること、とは具体的にはどんなことでしょうか。
飲食店を新しく開業する例を考えてみましょう。
たとえば出店予定地が決まったら、近隣の同業他社をまず調べるはずです。
- ・どんなメニューがあるのか
- ・どんな価格帯で提供されているのか
- ・どんなサービスが支持されているのか
これらの現状を踏まえて自社の強み・売りを作り出していくのです。
これがありがちな飲食店開業のパターンと言えるかもしれません。
しかし、これは見ようによっては「同業他社が作り出した枠組み」の中でパフォーマンスを考えているという風にもとらえられます。
ここで言う枠組みを作り出すこととは、たとえば「顧客のターゲットを明確に設定して、まだ表面化していない未知なるニーズを掘り起こすメニューやサービスは無いだろうか」といった視点で考えることです。
- ・店舗型ではない新しい飲食サービスの形を見つけ出す
- ・飲食の知識、技術を応用した全く新しいビジネスの可能性を見つけ出す
このようなこともできるかもしれません。
ゼロの状態から問題を提起して解決策を提示することが、経営者には欠かせない視点なのです。
事業計画書を作成すること
事業計画書を作成していない中小企業は少なくありません。
事業計画書が存在しない事業運営において一番問題となるのは、事業がうまくいっているのかいないのか、明確に判断できないということです。
- ・事業がどんな方向に向かっているのか
- ・どれぐらいの進捗で進んでいるのか
- ・予測と結果にどれだけの開きがあるのか
これらの判断には、すべての大元となる事業計画書が欠かせません。
今月の収支実績だけを見て黒字赤字に一喜一憂する、それではとても計画的な経営などできないのです。
3年~5年にわたる長期の事業計画書を作成し、その計画に対して今の進捗がどの程度なのか、随時その位置を確認していかなければ、思い描く事業のゴールにたどり着ける可能性は低いでしょう。
事業計画書を作成する際のポイント
事業計画書に正式なフォーマットはありませんので、各々の形式で作成することになります。
ただし、必ず押さえておきたいポイントは存在します。
それは、全ての計画が最終的に財務計画に落とし込まれていることです。
簡単に言えば、全てが数字で説明できる状態である、ということになります。
まず、毎月の収支見込みを出しましょう。
それを積み重ねて年間の収支見込みが出たら、決算期末の貸借対照表は資産と負債がどんなバランスになっているかを確認します。
あらゆる事業の施策がその財務計画上に、数字としての結果を出している必要があるのです。
注意する必要があるポイント
事業計画書作成時に一番やってしまいがちな失敗が、「根拠のない売上予測を立ててしまうこと」です。
本業において唯一「入ってくるお金」となる売上がきちんと作れていないと、すべての財務計画が台無しになってしまいます。
これぐらいは売れるだろうという思い込みだけで作られた売上予測は、詰めが甘いと言わざるをえません。
それらの売上予測の数値を裏付けるため、算出の根拠となる以下のような資料を必ず用意して作成しましょう。
- ・過去の売上データ
- ・自社事業が属するマーケットのデータ
- ・商圏内での具体的な過去事例
資金繰りを計画的に実施すること
資金繰りを管理して計画的に実行することは、事業運営において欠かせません。
やってしまいがちな失敗は、「収支と資金の動きが一致していないことを理解しないまま経営をすること」です。
会社同士の取引においては「掛け売り」が基本になるので、当月上がった売上は当月内にはまず入金されず、1カ月後、2カ月後の支払いになることが当たり前です。
支払手形を使う場合は、数カ月先の入金スケジュールになることもあります。
その入金までのタイムラグを考慮した資金繰りをしていないと、黒字が出ているのに資金が残っておらず、支払いができなくなって会社を倒産させてしまう「黒字倒産」のような事態を招くこともあります。
資金繰りは経営における生命線とも言えるのです。
現金の動きを予測して資金繰り表を作成すること
毎月の現金の動きを予測して、月毎の資金繰り表を作成しましょう。
- ・売上金を早期に回収できる方法はないか
- ・支払いをできる限り遅らせる方法がないか
これらを考慮しながら作成していくことが資金繰り表の基本となります。
これらがきちんと作成されていれば、毎月どれだけのお金が入るのか、毎月どれだけのお金が出ていくのか、月末にいくら残るのかを把握できるようになります。
ここまでできて初めて、資金繰りをきちんと計画できていると言える状態になります。
年間で予測を立てて波を把握しておくこと
月毎の資金繰り表を12カ月分作成し、年間の資金繰り表にしましょう。
ここでポイントになるのは、時期による変動を確認することです。
極端に支出が増加する時期、収入が減少する時期があれば、現金の残高が不足し、そこで資金がショートしてしまう可能性もあります。
そんな時期があることを事前に把握できていれば、あらかじめそのタイミングで借入れをするように早めに準備をすることもできます。
「気づいたら手元の現金が足りなくっていた」では遅すぎるのです。
一年の中での資金残高の変動について、必ず把握するようにしましょう。
投資はリターンを考える
独立したばかりは、強気に投資をしてしまうかもしれません。
会社の設備にお金を使ったり、事務所を構えたりすることもあるでしょう。
しかし会社への投資は、リターンを考えなくてはいけません。
投資した以上の利益が出れば成功、投資した金額よりも利益が出なかったら失敗になります。
独立当初はスピード感も必要で、バンバン投資したい気持ちもありますが、リターンを見極めて投資していきましょう。
固定費を増やさないこと
「この事業運営のためにはどれだけの売上が最低限必要になるか」を示す基準となるのが、損益分岐点売上高です。
この損益分岐点売上高は、変動費と固定費によって構成されます。
かかる費用を超える売上を確保できなければ、収支は赤字を計上してしまいます。
この黒字・赤字のラインの売上のことを損益分岐点売上高といいます。
損益分岐点売上高は、できる限り低く抑えることが理想的です。
変動費は売上に連動して上下する数字ですが、固定費は売上にかかわらず発生するものなので、この固定費のとらえ方が特にポイントになります。
このことを把握しないまま、やみくもに固定費を決めてしまうのはよくある失敗例です。
固定費をできるだけ下げ、損益分岐点売上高を下げていかなければ、必要な売上のハードルが上がり続けて苦しい経営状況になってしまいます。
項目ごとに減らす手段がないかを検討すること
固定費を削減するには、ひとつひとつの項目について方法を検討してく必要があります。
例えば事務所家賃が発生していれば、家主に家賃交渉をしてみるのもいいでしょう。
水道光熱費や通信費などであれば、利用しているプランを見直すことで削減が見込めます。
コピー用紙へのプリントが大量に発生しているのであれば、それらすべてをPDFデータでやり取りすることで、印刷代と用紙代を抑えられるかもしれません。
- ・金額を減らす方法はないか
- ・代替えの方法を採用することはできないか
こういった視点で個別に削減案を策定していきましょう。
減らしすぎて悪影響が出てしまうこともある
固定費はできるだけ削減する必要がありますが、場合によってはそれが事業に悪影響を及ぼすこともあります。
たとえば、人件費の削減です。
残業時間の圧縮、人員の削減などは働く社員の労働意欲に直結し、生み出されるパフォーマンスの低下につながる可能性があります。
なぜ削減を実施する必要があるのかを社員間で情報を共有し、どんな方法を採用するのか慎重に検討しながら、くれぐれも本業に悪影響が出ないように施策を進めるようにしましょう。
手堅い収入源を確保しておくこと
事業がスタートして本業が軌道に乗り始めるためには、その間にPDCAサイクルをひたすら回し続けていくことが欠かせません。
- ・PLAN:計画
- ・DO:実行
- ・CHECK:評価
- ・ACTION:改善
これを繰り返すことで、徐々にビジネスモデルをブラッシュアップしていくのがPDCAサイクルです。
このサイクルを回し続けて一定の結果が獲得できるようになるまでは、どうしても売上が十分に確保できないことが考えられます。
この見込みが甘い売上予測を立ててしまい、資金が尽きてしまうのはよくある失敗例と言えるでしょう。
この軌道に乗るまでの期間を乗り切るため、手堅い収入源を確保することを考えてみましょう。
脱サラの時期をずらしてみる
独立をする前の段階であれば、事業が軌道に乗るまでサラリーマンを辞めないというのもひとつの手です。
サラリーマンとしての収入源を確保したまま、PDCAサイクルを回して本業を軌道に乗せていく。
その方法が取れないか、まず検討してみる価値はあるでしょう。
一定の収入が確保できていると精神面での安定も得られ、より冷静に経営の判断ができることにもつながります。
事業運営とサラリーマン生活を両立することは決してたやすいことではありません。
しかし、独立した後はいくらでも厳しい状況に立たされることは考えられます。
この段階で逆境を乗り越える工夫や能力を身に着けておきたいものです。
本業が軌道に乗る時の2つのタイプ
本業が軌道に乗るまでという話で進めてきましたが、本業が軌道に乗る際には2つのタイプが存在します。
- ・狩猟型:個別案件をひたすらに取り続けるタイプ。継続的な営業が必要。
- ・農耕型:継続的な取引契約を前提とするタイプ。安定的な収益が見込める。
農耕型でビジネスが展開できれば言うことなしですが、事業によっては狩猟型でしか展開ができないことも十分にあり得ます。
その場合は継続的な顧客獲得の営業活動を実施していく必要があり、売上の変動に大きな波が起きる可能性もあります。
どの段階で「軌道に乗った」と判断を下すかあらかじめ明確にしておき、他の収入源との折り合いがつくように調整を図る必要があるでしょう。
初めから事業の手を広げすぎないこと
先ほどの話にも通じますが、本業が軌道に乗るまで事業の拡大を図ることは控え、小さく手堅く展開をしていくことを心掛けましょう。
- ・身の丈に合わない大きな事業所や店舗を借りる
- ・いきなり大量の在庫を抱えてスタートさせる
これらはよくある失敗例と言えるでしょう。
事業計画作成時の売上予測が裏付けのない数字である場合、このような事態に陥りがちです。
ひたすらPDCAサイクルを繰り返し、その結果に応じて事業を拡大していけるよう、段階的な展開を計画していきましょう。
2店舗目を出すときに失敗しがちなこと
飲食店などで事業が軌道に乗ってくると、2店舗目を開店することがよくあります。
この時にありがちなのが、1店舗目と全く規模の違う店舗を作ってしまうことです。
店舗を構える際に好物件に巡り合えるかどうかは、運の要素も大きいです。
そんな物件に巡り合えた時、つい事業規模の違う大きな店舗を作ってしまうことがあるのです。
当然ながら、1店舗目のスケール感でのノウハウが通用しませんから、2店舗目の経営で四苦八苦することが少なくありません。
そして、継続的にPDCAサイクルを回していく余裕も徐々になくなってしまうのです。
しかも、1店舗目ではオーナーが直接管理できたものでも、2店舗目では人にマネジメントを任せるといっうように、1店舗目と全く異なる運営スタイルを取らざるを得ないことも考えられます。
事業を拡大していくときには、くれぐれも小さく手堅く段階的に進めていくことを忘れないようにしましょう。
プロをうまく活用すること
サラリーマンとしての現職とつながる分野での独立を検討している場合、その分野でのプロフェッショナルである自信がある人もいるでしょう。
個人で開業する、会社を設立する、いずれの手段を選択するにしても、事業開始までの手続きを個人で進めることは可能です。
しかし、開業には以下のような開業のプロフェッショナルが存在しています。
- ・司法書士
- ・社会保険労務士
- ・税理士
プロに頼らずすべて自分で手掛けることで、手続きの際の出費を抑えることもできます。
しかし、プロの力を借りながら手続きを進めた方が、結果的に後々の支出が抑えられることもありますし、何よりも自分の手を空けることで本業の準備に力を入れることができます。
加えて、独立開業後にはあらゆるシーンで相談先として心強い味方になってくれるでしょう。
目先の出費のことだけを考えず、うまくプロを活用することで、長期的で無理のない事業運営にも繋げることはできないか、しっかりと検討したいものです。
環境の変化についていけるか?
ビジネスは周囲の環境・トレンドに合わせていくことが大切になります。
独立前に「このビジネスならうまくいく」と思っても、独立後に環境が大きく変化するかもしれません。
長年続いた大企業が、環境の変化によって業績が悪くなり、倒産するケースもあります。
そのため「自分のビジネスが環境の変化に適応できるのか?」はしっかりと意識しましょう。
具体的には固定費を下げたり、事業を複数行ったり、なるべくリスクが大きくならないような対策が必要です。
またトレンドを追うことも大切ですが、旬があるビジネスはすぐに人気がなくなる可能性もあります。
流行りに乗れば、短期間でもグッと売上が伸びますが、その後も勢いが続くかわかりません。
トレンドを意識したビジネスを行う場合は、流行りが終わったあとでも継続できるようなビジネスモデルを考えておきましょう。
独立前に経験を積んでおこう
「早く独立して自分の会社を立ち上げたい!」と思うかもしれませんが、できれば独立前に経験を積んでおいた方がいいです。
なぜなら未経験の分野で、ゼロからスタートさせるのは難易度が高いからです。
独立前に小さいビジネスを始めてみて、うまく伸ばせそうな見通しができれば、実際に独立する方法がおすすめです。
いきなり未経験の分野で独立するのではなく、なるべく独立前に経験を積んでおきましょう。
まとめ
サラリーマン経験しかない人が独立する時、無鉄砲に飛び出して事業が行き詰ってしまうことはよくあります。
その失敗例から、独立が成功するためのコツを十分に拾い上げ、脱サラする前にできる限り準備をしておくことが望ましいでしょう。
経営が軌道に乗って本来の事業の目的を達成していけるように、十分な知識と計画を携えて、独立を成功へと導いていきましょう。