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最終更新日:2023/2/10

75歳以上の親を税法上の扶養に入れるメリットと注意点

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

この記事でわかること

  • 扶養には「税法上の扶養」と「健康保険の扶養」があること
  • 税法上の扶養に入れる条件やメリットについて
  • 税法上の扶養と介護費用の関係性について

扶養という言葉は、よく耳にするでしょう。

扶養に入ることにより、所得税や住民税の負担が軽減されることや、保険料を負担せずに保険に加入できるなど、様々なメリットがあります。

配偶者や子を扶養に入れるというイメージが多く持たれていますが、条件を満たすことでご自身の親を扶養に入れることも可能となります。

本記事では、どのような条件を満たせば親を扶養に入れることができるのか、またその際に注意すべきことはあるのかということに焦点を当てて分かりやすく解説します。

75歳以上の親を税法上の扶養にできる

前述のとおり、扶養に入ることで様々な恩恵を受けることができます。

なお、扶養は「税法上の扶養」と「社会保険の扶養」の2種類に分かれており、それぞれ加入条件が異なっています。

結論を述べると、税法上の扶養についてのみ75歳以上の親を加入させることができます

具体的には、税法上の扶養に入れることで、扶養控除により所得税や住民税の負担が軽減されます。

税法上の扶養に入れるための条件

75歳以上の親を税法上の扶養に入れるための条件は3つあります。

  • 生計を一にしていること
  • 親の年間の合計所得金額が48万円以下であること
  • 青色申告者の事業専従者または白色申告者の事業専従者でないこと

上記すべての条件を満たしている75歳以上の親は控除対象扶養親族に該当し、扶養控除を受けることができます。

では、具体的に見ていきましょう。

生計を一にしていること

生計を一にしているとは、一般的には共に生活をしているということです。

ただし、必ずしも同居を要件としているわけではありません

たとえば、療養等の都合で別居している場合であっても、常に生活費等の送金が行われている場合には、生計を一にしているとみなされます。

なお、同一の家屋で生活している場合には、明らかに独立した生活を営んでいる状態でなければ生計を一にしているとされます。

年間の合計所得金額が48万円以下であること

年間の合計所得金額は、年間の収入から必要経費等を差し引くことにより算出します。

その金額が48万円以下である場合に、条件を満たすことになります。

たとえば、親の収入がパートやアルバイト等の給与のみである場合は、収入金額から給与所得控除額(55万円)を差し引いた金額が所得金額になるため、収入のボーダーは103万円以下となります。

また、収入が公的年金等のみである場合は、65歳未満の方は108万円(控除額60万円)、65歳以上の方は158万円(控除額110万円)以下が収入のボーダーとなります。

青色申告者の事業専従者または白色申告者の事業専従者でないこと

青色申告者や白色申告者とは、個人事業主の確定申告の際のカテゴリーです。

また、事業専従者とは、以下の条件すべてを満たす者を指します。

  • 個人事業主と生計を一にする配偶者またはその他の親族であること
  • 15歳以上であること
  • 個人事業主の事業に専ら従事していること

事業専従者に該当し給与を受け取る場合、個人事業主はその給与を必要経費に計上できるため、扶養控除の対象外となってしまいます。

社会保険の扶養に入れることは不可能

75歳以上になると後期高齢者医療制度に加入することになります。

後期高齢者医療制度では、各々が被保険者となって保険料を負担することになるので、子の扶養に入ることはできません。

75歳以上の親を税法上の扶養に入れるメリット

75歳以上の親を税法上の扶養に入れるメリットは、一言でいえば扶養控除による節税効果です。

被扶養者の年齢等に応じて、以下のように控除額が変動します。

 所得税住民税
一般扶養親族0~15歳0万円0万円
16~18歳、23~69歳38万円33万円
特定扶養親族19~22歳63万円63万円
老人扶養親族70歳~(別居)48万円38万円
70歳~(同居)58万円45万円

参考:扶養控除の金額(国税庁)

それぞれの税金について具体的に見ていきましょう。

所得税の控除

上記の表のとおり、75歳以上の親を税法上の扶養に入れることで、所得金額から最大で58万円が控除されます。

所得金額が少なくなることで結果的に所得税が軽減されます。

住民税の控除

住民税に関しても同様に、所得金額から最大で45万円が控除されます。

所得税に比べて控除額は若干少ないですが、住民税率はどの市区町村でも基本的に10%なので、45,000円程節税されます。

75歳以上の親を扶養に入れる際の注意点

75歳以上の親を税法上の扶養に入れるメリットを説明しましたが、令和3年8月より高額介護サービス費の負担限度額について改正があったことで、思わぬ費用がかかってしまう可能性があります。

なお、前述のとおり、75歳以上であれば社会保険の扶養に入れることはできないので、ここではあくまでも「税法上の扶養」に入れる際の注意点として解説します。

高額介護サービス費とは

高額介護サービス費とは、1ヶ月の間に介護サービスとして支払った金額の合計額が負担限度額を超えたときに、その超過負担分につき払戻しがされる制度です。

負担上限額を区分する際に重要になってくるのが、世帯の所得金額です。

支払い負担能力に応じた負担を図る観点から、高額所得世帯には負担上限額が高く設定されています。

そのため親が子の扶養に入り、同一世帯になった場合には、介護費用が今までよりも高くなる可能性があります。

介護サービス費の負担限度額

世帯の所得に応じた介護費用の負担上限額は以下のとおりとなっています。

区分負担上限額
課税所得690万円以上140,100円
課税所得380万円~690万円未満93,000円
市町村民税課税~課税所得380万円未満44,400円
世帯全員が市町村民税未課税24,600円
生活保護を受給している方等15,000円

参考:高額介護サービス費(厚生労働省)

たとえば、公的年金等の収入が200万円のみの親の場合、介護費用の負担上限額は44,400円となります。

しかし、課税所得が690万円以上の子の扶養に入った場合には、負担上限額がはね上がり140,100円となってしまいます。

扶養に入る子の所得金額や、実際に負担が見込まれる介護費用によって最善の選択は変わってきますが、思わぬ費用がかかる可能性があるということを理解しておきましょう。

今後、高額の介護費用が見込まれるような場合には、扶養控除のみで判断せず、高額介護サービス費についても検討することが大切です。

まとめ

今回は、「扶養」とは「税法上の扶養」と「社会保険の扶養」の2種類に分けられることから、75歳以上の親を加入させる条件やメリット、注意点について解説しました。

税法上の扶養に入れるためには、3つの条件をすべて満たす必要があります。

一方で、社会保険の扶養に入れるためには前提として親が75歳未満でなければなりません。

75歳以上の親を税法上の扶養に入れることは可能であり、節税効果というメリットを享受できる一方で、介護費用の負担が大きくなる可能性という注意点をそれぞれ理解し、自分にとってより良い選択をしましょう。

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