最終更新日:2024/2/6
クラウドファンディングで資金を集める時の節税方法【どんな税金がかかる?】
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
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YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
この記事でわかること
- クラウドファンディングには全部で3種類あることがわかる
- クラウドファンディングで資金を集めたら税金がかかることがわかる
- クラウドファンディングで資金を集めて節税する方法がわかる
事業を行っている方や何らかのプロジェクトを進めている方が、クラウドファンディングを利用することがあります。
クラウドファンディングで資金を集めるのは、比較的手軽な方法であることから、広く利用されています。
しかし、利用するにあたり資金を集めた場合には税金が発生すること、そのために確定申告が必要になることは知っておく必要があります。
一方で、資金を集めた時に節税できる方法があるため、その内容を解説していきます。
目次
クラウドファンディングには3種類ある
クラウドファンディングは、その形式によって3種類に分けることができます。
その3種類とは、(1)寄付型、(2)購入型、(3)投資型です。
これらは、クラウドファンディングに資金を提供する人と、資金を提供される人との間で発生する取引により区分されます。
(1)寄付型
資金提供する人から資金提供される人に対して、何の見返りもなく資金が提供されるものです。
資金提供者は、クラウドファンディングを実施した人に対して資金を寄付するため、このように呼ばれます。
(2)購入型
クラウドファンディングにより資金提供した人に対して、資金提供を受けた人から商品やサービスのリターンが行われます。
通常は資金提供が行われた後、その金額に応じたリターンが提供されます。
(3)投資型
提供された資金を事業やプロジェクトに使い、その結果利益が発生した場合には、その利益から分配を受けます。
一方で、利益が出なければ資金提供者に対するリターンはない場合もあります。
その名のとおり、資金調達する人に投資を行っているのと同じです。
一口にクラウドファンディングといっても、資金調達する人と資金提供者との間でどのような取引が行われるかには違いがあります。
この違いにもとづいてクラウドファンディングを分類し、それぞれどのような税金が発生するのかを整理しなければなりません。
クラウドファンディングで資金を集めたら確定申告が必要
クラウドファンディングで資金提供を受けた人は、3種類のいずれに該当するかにより、確定申告しなければならない場合があります。
確定申告が必要になるのは、具体的にどのような場合なのか、確認していきます。
寄付型
寄付型のクラウドファンディングにより資金を集めた場合は、資金提供を受けた金額が課税対象となります。
そのため、実際に資金提供を受けた年に確定申告しなければならないこととなります。
購入型
購入型のクラウドファンディングにより資金を集めた場合は、資金調達を受けた金額が収入金額となります。
収入金額は課税対象となる金額ですが、そのまま課税されるわけではありません。
リターンを提供するために支出した金額が、売上原価となります。
また、所得を得るために支払った金額は必要経費となるため、「収入金額-売上原価-必要経費」の計算を行い、所得を計算します。
この所得金額が課税対象となるため、確定申告しなければなりません。
投資型
投資型のクラウドファンディングにより資金を集めた場合は、資金調達を受けた時に確定申告の必要はありません。
資金調達された時は、資金提供された人が全額を事業用の資金として用いることができます。
提供された資金を使った事業で利益を上げれば事業所得が発生しますが、クラウドファンディングを行ったことが申告対象とはなりません。
クラウドファンディングで集めた資金にかかる税金の種類
クラウドファンディングで資金を集めると、課税対象になる金額が発生することがわかりました。
それでは、具体的にどのような税金がどれくらい発生するのでしょうか。
クラウドファンディングの種類ごとに、発生する税金の種類について解説していきます。
寄付型の場合
寄付型の場合、資金を調達したのが法人か個人か、資金提供したのが法人か個人かにより、発生する税金が変わります。
(1)資金調達したのが法人の場合
法人がクラウドファンディングを行った場合、提供された資金はすべて法人の収入となります。
この考え方は、資金提供したのが法人であっても個人であっても変わりはありません。
そのため、クラウドファンディングにより資金調達した法人は、提供された金額を「受贈益」として計上し、法人税の計算を行います。
法人税と地方税を合わせた法人に対する実効税率は、中小企業の場合は約33%となります。
たとえばクラウドファンディングで100万円の資金を集めた場合、約33万円の税負担となる計算です。
法人の場合、収益を得る手段に関係なく、すべての収益を合計して法人税の計算を行います。
たとえ寄付によって得た金額であっても、法人の収益であれば通常の売上と同じように課税対象となります。
また、寄付したのが法人・個人のいずれであっても、法人税の計算には何ら影響しないこととされています。
(2)資金調達したのが個人で法人から資金提供を受けた場合
個人がクラウドファンディングで法人から資金調達した場合、提供された資金は一時所得となり所得税が課されます。
そのため、一時所得があったものとして確定申告を行わなければなりません。
一時所得に該当すると、「寄付による収入金額-50万円」の計算を行います。
仮に寄付された金額が50万円以下であれば、一時所得の金額はゼロとなるため、課税対象となる金額はないこととなります。
課税対象となる金額がある場合は、この金額に1/2を乗じた金額に税率をかけて、所得税を計算します。
たとえば100万円の資金提供を受けた場合、一時所得の金額は50万円、課税対象となる金額は25万円となります。
所得税の税率は所得金額により変わりますが、仮に20%とすれば所得税の負担は5万円となります。
また、これとは別に住民税(税率10%)も課され、この場合25,000円の負担となります。
(3)資金調達したのが個人で個人から資金提供を受けた場合
個人がクラウドファンディングを行い、個人から資金提供を受けた場合、所得税ではなく贈与税が課されます。
贈与税が発生した場合も、所得税の確定申告とほぼ同時期に申告しなければなりません。
ただ、使用する申告書は所得税のものではなく、贈与税のものとなることに注意が必要です。
贈与税の計算を行う際には、「個人から贈与された財産の合計額-110万円」の計算により、課税対象となる金額を求めます。
クラウドファンディングに限らず、あらゆる方法で個人から贈与された財産すべてを含める必要があります。
また、110万円の基礎控除内の贈与であれば、贈与されたとしても贈与税は発生しません。
この場合は贈与税が発生しないだけでなく、申告の必要もなくなります。
たとえばクラウドファンディングにより個人から合計200万円の資金提供を受けたとします。
この場合、基礎控除を除いた90万円が課税対象となる金額です。
90万円に対する贈与税の額は9万円となります。
購入型の場合
購入型のクラウドファンディングの場合は、提供された資金が事業者にとっての売上に相当します。
一方、リターンとして提供した商品やサービスを調達するための支出は、原価にあたります。
クラウドファンディングを行うために必要な経費もあるので、「売上-原価-必要経費」の計算により、所得金額を求めます。
資金提供を受けたのが法人の場合、この所得金額を他の所得金額と合算して法人税の計算を行います。
一方、個人の場合はこの所得金額が事業所得に該当します。
ただし、その人が事業者でなく、別に給与所得などがある場合は、雑所得として計算しなければなりません。
クラウドファンディングが赤字となった場合でも、事業所得に該当すれば他の所得と相殺することができます。
しかし、雑所得のマイナスは給与所得や不動産所得など、他の区分の所得金額と相殺することはできません。
投資型の場合
投資型のクラウドファンディングの場合、資金を提供された時には税金が発生しません。
提供された資金は事業用の資金として使われ、その結果、事業上の利益を計上することとなります。
クラウドファンディングが成功すれば、結果的に事業所得が増加し、その分税負担も増える結果となる仕組みになっています。
クラウドファンディングで資金を集めるときの節税方法
クラウドファンディングで資金を集めると、どうしても税負担が増えてしまいます。
そこで、少しでも税負担を軽減できるような節税の方法はないのでしょうか。
青色申告特別控除の適用を受ける
個人で購入型のクラウドファンディングを行う場合、事業所得で青色申告特別控除を適用すれば、55万円の特別控除が適用できます。
青色申告特別控除の適用を受けることで、節税になるばかりでなく、所得が発生しないことも考えられます。
事業所得に該当する場合は、青色申告承認申請書を税務署に提出し、青色申告できるようにしておきましょう。
寄付の金額を贈与税の基礎控除110万円以下にする
個人で寄付型のクラウドファンディングを行う場合、贈与税の対象となる金額が発生することがあります。
贈与税の計算は、1年間に寄付された金額に対して、必要経費などの計算をすることなく税金の計算を行います。
ただし、年間110万円の基礎控除額は寄付された金額からマイナスするため、この基礎控除をうまく利用しましょう。
必要経費を計上する
クラウドファンディングで資金調達を行うことで、所得が発生することがあります。
この所得金額が少なくなれば、結果的に税負担を軽減することができます。
所得金額から控除できるのは、売上原価と必要経費に相当する金額です。
特に必要経費の金額は、集計から漏れてしまうことが多く、結果的に税負担が増えてしまう要因となります。
正しく必要経費を計上することが、節税への近道となるといえます。
【補足】クラウドファンディングで出資するときの節税方法
寄付型のクラウドファンディングに資金提供した人は、寄付金控除の適用を受けることができます。
寄付金控除の適用を受けるには、確定申告しなければなりませんが、確定申告すれば所得税や住民税の負担が軽減されます。
また、投資型のクラウドファンディングで分配金を受け取った人は、分配金を受け取った時に所得税が源泉徴収されています。
この所得税の税率は20.42%となりますが、これより税率が低い人は、確定申告で税金が還付されます。
少しでも税負担を軽減したい場合には、確定申告義務がなくても確定申告するといいでしょう。
まとめ
クラウドファンディングを利用して、新たな分野や商品にチャレンジしようとする方が増えています。
簡単に資金を集めることができ、知名度も上がっていることから、今後さらに利用する機会が増えることも予想されます。
ただ、クラウドファンディングを行った場合には、税金が発生する可能性があることに注意しましょう。
クラウドファンディングの種類によって、発生する税金の種類や計算方法が異なるため、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。