最終更新日:2022/10/14
個人事業主が経費にできるものできないものを一挙解説
この記事でわかること
- 個人事業主が経費にできるものについて理解できる
- 家事按分が自分でできる
- 個人事業主が経費にできないものがわかる
個人事業主は色々なものが経費として計上できると聞いたことはありますか?
実際には、何でも経費にできるというわけではなく、一定のルールに沿って経費に計上する必要があります。
今回は、個人事業主が経費にできるものについてご説明します。
うっかり不正会計をしないためにも、きちんと経費にできるものとできないものの区別をつけておきましょう。
目次
経費とは何か?
そもそも、経費とは事業をするために発生した費用のことを言います。
したがって、事業と関係のない個人的な生活に関する支出は、経費にはなりません。
事業を続けて行くために、必要になる費用が経費です。
具体的な例で考えてみます。
例えば、取引先と打ち合わせをするために利用した喫茶店の代金は経費になりますが、個人的に単に趣味で行った喫茶店の代金は経費にはなりません。
個人の日常生活において、飲食をしたことになるからです。
事業とは関係のない飲食です。
しかし、喫茶店の評論をするのが仕事の人の場合は、喫茶店の評論をするためには喫茶店を利用しなければなりませんから、経費になるでしょう。
このように、どういった費目だから必ず経費になる、もしくはならないというのではなく、仕事の内容によって経費にできる範囲が変わってくるということです。
個人事業主が、自宅を仕事場として使っているのであれば、自宅の家賃も経費になります。
しかし、その場合であっても全額を経費にするのではなく、個人の生活に使っている部分をのぞかなければなりません。
経費にできるもの9つ
それでは、一般的にどのようなものが経費として算入できるのかご紹介します。
大前提として、これらの費目を全部計上するのではなく、本当に必要な部分だけを按分する必要があります。
旅費交通費
仕事に関係ある場所へ出かけた場合は、旅費交通費としてカウントできます。
バスやタクシーなどの公共交通料金の他、駐車場代や宿泊費などが旅費交通費になります。
車両費
仕事のために使ったガソリン代は、車両費として経費に計上できます。
旅費交通費として計上しても大丈夫です。
ただし、コロコロと勘定科目を変えることは、財務諸表を比較するという観点からはあまり良くないことなので、一旦旅費交通費として処理したのなら今後もそのようにしてください。
ちなみに、ガソリンの中でも経由の場合は軽油取引税がかかります。
消費税区分は非課税ではなく、不課税仕入れになるので気をつけましょう。
租税公課
個人事業税、固定資産税、自動車税などは租税公課として経費になります。
通信費
仕事で使っているスマホや携帯電話の代金、インターネット料金、サーバー代や切手代などが当てはまります。
接待交際費
取引先や顧客との飲食、お祝いや贈答品が当てはまります。
保険料
火災保険や自動車保険などが経費として認められます。
ちなみに、個人事業主本人にかかる生命保険については経費にはできませんが、確定申告の際に生命保険料控除を利用することができます。
消耗品費
文具などの事務用品は、消耗品費になります。
10万円未満のものは、消耗品として計上します。
減価償却費
パソコン、カメラ、自動車などの10万円以上の高額な固定資産は減価償却が必要な資産として計上します。
仕事のために使っているパソコンやカメラなどの高額な品があったら、減価償却をしてください。
減価償却とは、簡単にいうと価値の目減り分を費用として計上したものです。
パソコンやカメラは、いつまでも買った当初の価値があるわけではありません。
時間が経過するにつれてどんどん価値が目減りして行きます。
目減り分を費用として計上したものが減価償却費です。
<地代家賃>
事務所の家賃や、駐車場代などは地代家賃として計上できます。
事務所として物件を全部使っているのであれば全額算入も考えられますが、自宅と一緒の場合は仕事に使っている部屋だけなど、一部分を経費として計上します。
<その他>
この他、外注工賃や給料賃金など、仕事を依頼した人に支払ったお金や、売掛金や貸付金などが回収できなくなった場合は貸倒金が経費として算入できます。
ところで、仕事で使った部分と私生活で使った部分を分けるという方法をいくつかの費目で案内しています。
つまり、自宅を事務所にしている人の場合は、自宅家賃全部を経費にするのではなくて、実際に仕事に使っている部分だけを経費として算入するというルールを適用する必要があるのです。
これを家事按分と言います。
家事按分の考え方や、具体的なルールについては次の項で説明します。
家事按分として認められる経費とは?
家事按分をして認められる経費についてご紹介します。
家事按分は法的なルールがありませんが、税務署から経費についての説明を求められることがあります。
本当に全額を計上して大丈夫?
万が一そのまま全額を経費に計上してしまった場合、きちんとした説明ができるでしょうか。
携帯電話について考えてみます。
例えば、プライベートと仕事用と分けて持っていた場合であれば、仕事用の携帯電話の代金を経費として計上しても問題ないでしょう。
というのも、仕事以外に使っていないわけですから、仕事のための経費だと説明できるためです。
一方で、プライベートの電話もかかってくる携帯電話の費用を全額経費として計上していたら、どうでしょうか。
本当は仕事に使っている部分は8割しかなく、後の2割はプライベートの電話であった場合は、全額を経費計上するのは、実態にあっていません。
そこで、家事按分を行って、経費とそうでない部分に分けます。
一旦、携帯電話の費用を全て計上した後、家事按分を行い、8割を経費に、2割をプライベートに振り分けます。
もし、税務署から説明を求められたとしても、普段の通話履歴から8割を経費、2割をプライベートに分けましたと説明することができます。
<家賃>
家賃を家事按分するときは、面積ベースで計算します。
普段仕事に使っているスペースに応じた家賃を経費にします。
<水道光熱費>
就業時間、コンセントの数など、使用量を何らかの形で計算して費用に計上します。
<通信費>
通話履歴などから平均して割合を出します。
<自動車関連>
仕事目的と、プライベートと、走行距離を平均して割合を算出します。
経費にできないもの5つ
個人事業主の経費にできないものをご紹介します。
プライベートの支出はもちろん経費にできませんが、それ以外にも経費にできないものがあります。
個人事業主の税金や保険料
個人事業主の所得税と住民税については、経費に計上することができません。
なぜならば、事業とは関係なく支払っていかなければならないものだからです。
一方で、個人事業税については経費に計上することができます。
また、個人事業主の健康保険料や国民年金も、事業とは関係なく支払っていくものなので経費になりません。
ただし、国民健康保険料や国民年金保険料、生命保険料などについては、社会保険料控除の対象となります。
経費にはなりませんが、確定申告書を作るときに、最後の部分で控除するための計算欄があります。
生計を同一にする家族や親族へ支払った給料
生計が一緒の家族や親族へ支払った給料については原則として経費にすることができませんが、一定条件を満たせば給与に算入することができます。
福利厚生費と健康診断費
福利厚生は、個人事業主にはありません。
また、健康診断にかかる費用についても、個人事業主の場合はプライベートの費用になります。
会社の従業員の場合は、福利厚生や健康診断にかかる費用については経費になりますが、個人事業主にはそのような考え方がありませんので、間違って経費に計上しないように注意してください。
損害賠償金
仕事をする上で損害賠償をしなければならない場合でも、損害賠償金は経費に入りません。
各種罰金など
加算税、加算金、延滞税や罰金などのペナルティについても経費になりません。
確定申告で気をつけたいこと
個人事業主は、毎年確定申告を行います。
確定申告には、青色申告と白色申告があります。
青色申告の方が、控除額が大きくメリットがあります。
青色申告で節税しよう
経費をできるだけたくさん計上する以外にも、青色申告をすることで最大65万円の控除額を受けて節税するという方法があります。
青色申告は、事前に税務署への届け出が必要です。
経費にはできないが控除されるもの
社会保険料控除のほか、小規模企業共済や確定拠出年金、付加年金、ふるさと納税なども控除できます。
必要経費の算入時期について
必要経費の算入時期について、国税庁は以下の指針を出しています。
- (1) その年の12月31日までに債務が成立していること。
- (2) その年の12月31日までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
- (3) その年の12月31日までに金額が合理的に算定できること。
引用元:国税庁ホームページ「No.2210 やさしい必要経費の知識」
つまり12月31日で一旦締め切るということです。
12月31日までに発生した費用(金額が確定しているもの)で、まだ支払っていないものについては未払金として計上します。
まとめ
今回は、個人事業主が経費にできるものとできないものについてご紹介しました。
国税庁のホームページでは、やさしい必要経費の知識として、必要経費に算入する場合の注意事項が解説されています。
今回は、大震災などの被害にあった場合の経費算入については解説しませんでした。
イレギュラーな経費ついては、国税庁のホームページを参照することをおすすめします。