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最終更新日:2022/6/6

世帯年収1000万家庭ができる税金対策7つ【手取りや税金はいくら?】

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

この記事でわかること

  • 世帯年収1,000万円の所得税と手取り額がわかる
  • 所得税の計算方法がわかる
  • 共働きの世帯年収1,000万円が得になる理由わかる
  • 世帯年収1,000万円家庭でできる7つの税金対策がわかる

夫婦共働きであれば世帯年収1,000万円も可能ですが、各種控除や手当も打ち切られるため、コストパフォーマンスのよい年収とはいえないでしょう。

世帯年収1,000万円はお金持ちとみられるため、公的支援の減少や打ち切りは致し方ない部分もありますが、手取りが減るようでは稼ぐ意味がありません。

とはいっても年収を下げるわけにはいきませんし、急激に年収を上げるのも難しいため、手取り額を増やすためには税金対策が有効になります。

今回は、世帯年収1,000万円家庭でできる税金対策7つを解説します。

世帯年収1000万にかかる所得税はいくら?

税金対策を考える上で所得税の把握は重要になるため、世帯年収1,000万円の所得税がいくらになるかシミュレーションしてみます。

また、同じ1,000万円でも片働きと共働きでは税額に差が出てしまうため、どちらが税制面で有利なのか理解しておくとよいでしょう。

所得税の計算方法

所得税は年収に対して直接課税するわけではなく、以下のように3段階で計算します。

  • (1)給与収入-給与所得控除=給与所得金額
  • (2)給与所得金額-所得控除=課税所得
  • (3)課税所得×適用税率-控除額=所得税

では順を追ってそれぞれの計算式を具体的に解説します。

給与所得金額の計算

まずはじめに給与所得金額を計算するため、給与収入から給与所得控除を差し引きます。

給与収入とは給与の総支給額であり、「基本給+残業手当+その他の手当」で計算します。

給与所得控除は給与収入額によって変わりますが、最低でも55万円を差し引くことができます。

給与収入に応じた控除額は、国税庁ホームページに掲載されているので参考にしてください。

参考:給与所得控除(国税庁)

課税所得の計算

課税所得は、給与所得金額から「所得控除」と「非課税手当」を差し引いて計算します。

主な所得控除には以下の種類があります。

  • ・基礎控除:合計所得2,400万円以下は48万円を控除
  • ・雑損控除:災害や盗難にあった場合の控除
  • ・医療費控除:入院治療費や薬代の控除
  • ・各種保険料控除:生命保険などの保険料負担控除
  • ・寄付金控除:寄付をした場合の控除
  • ・扶養控除:扶養家族がいる場合の控除
  • ・配偶者控除または配偶者特別控除:配偶者の収入が一定額以下の場合の控除
  • ・障害者控除
  • ・寡婦(夫)控除

非課税手当には一定額以下の通勤手当や宿直手当、一定範囲内の出張手当などがあるので、所得控除とともに給与所得金額から差し引きます。

なお、基礎控除の額も合計所得に応じて変わるので、詳しくは国税庁ホームページを参照してください。

参考:基礎控除(国税庁)

所得税の計算

課税所得がわかれば、金額に応じた所得税率と控除額を適用して所得税を計算します。

仮に課税所得が600万円であった場合、税率は20%、控除額は42万7,500円となり、所得税は以下のようになります。

  • 600万円×0.2-42万7,500円=77万2,500円

所得税率は課税所得額に応じた累進課税方式であり、最低5%~最高45%まで設定されています。

では次に、片働きと共働きの所得税や手取り額を計算してみます。

参考:所得税の税率(国税庁)

片働きで世帯年収1,000万円の所得税と手取り

ここまでに解説した計算式をもとに、片働きで世帯年収1,000万円の所得税と手取り額を計算します。

収入や世帯については以下の条件とします。

  • ・家族構成:夫43歳(会社員)、妻40歳(専業主婦)、長女15歳、長男12歳
  • ・給与所得控除:195万円
  • ・基礎控除:48万円
  • ・社会保険料控除:140万円(年収の14%で計算)
  • ・配偶者控除:38万円

順序どおり計算すると所得税と手取り額は以下のようになります。

  • ・給与所得金額:1,000万円-195万円=805万円
  • ・課税所得:805万円-(48万円+140万円+38万円)=579万円
  • ・所得税:579万円×0.2-42万7,500円=73万500円
  • ・手取り額:1,000万円-73万500円=926万9,500円

実際の手取り額は健康保険料や住民税なども差し引くため、600万円台後半から700万円前後になりますが、ひとまず所得税がいくらになるのか計算できました。

共働きで世帯年収1,000万円の所得税と手取り

夫婦それぞれが500万円ずつ稼ぐ共働きではどうなるでしょうか?

家族構成や年齢は片働きのケースと同じ条件とし、まず1人分の所得税を計算します。

  • ・給与所得控除:144万円
  • ・基礎控除:48万円
  • ・社会保険料控除:70万円(年収の14%で計算)

順序どおり計算すると所得税と手取り額は以下のようになります。

  • ・給与所得金額:500万円-144万円=356万円
  • ・課税所得:356万円-(48万円+70万円)=238万円
  • ・所得税:238万円×0.1-9万7,500円=14万500円
  • ・手取り額:500万円-14万500円=485万9,500円

所得税は2人分ですから、2倍すると28万1,000円となり、片働きに比べて44万9,500円も安くなっています

あくまでも所得税だけを比較した例ですが、年間約45万の差は大きいですね。

世帯年収1000万家庭ができる税金対策7つ

世帯年収1,000万円は税金対策の選択肢も多いため、年間100万円以上の節税も可能であり、やり方次第では老後資金も同時に準備できます

今回は代表的な税金対策7つを解説しますが、すでに条件を満たしたものがあるかもしれないので、保険料などの支出はよく確認してみてください。

配偶者控除や扶養控除

共働きの場合、配偶者の年収が48万円以下、または給与所得が103万円以下であれば配偶者控除を利用できます。

ちなみに納税者の年間所得が950万円超~1,000万円以下の場合、一般控除の金額は13万円になります。

また、扶養している親族が16歳以上の場合、一定条件を満たせば扶養控除も受けられます。

同一生計とみなせる親族がいる場合も扶養控除の対象になるので、条件次第では親への仕送りにも控除が認められます。

生命保険料控除や地震保険料控除など

生命保険や地震保険などの保険料は所得控除の対象であり、年末調整用の「給与所得者の保険料控除申告書」と証明書類を提出すれば、一定額の控除を受けられます。

たとえば年間の保険料が生命保険10万円、個人年金保険10万円だった場合、控除額はそれぞれ4万円になります。

つみたてNISAやiDeCo(イデコ)

つみたてNISAは金融庁審査をパスした投資信託やETF(上場投資信託)から選択でき、運用益や分配金にかかる20.315%の税金が最長20年間にわたって非課税になります。

年間40万円までの投資額で商品の安全性も高いため、投資の初心者にもおすすめできます。

iDeCo(イデコ)は個人型の確定拠出年金で、老後に備えて私的年金を積み立てられます。

掛金(積立金)の全額が所得控除の対象となるため、年収1,000万円の人が毎月2万円を積み立てた場合、4万8,000円程度の所得税を節税できます。

ふるさと納税

支援したい自治体への寄付がふるさと納税であり、2,000円以上の寄付金は所得控除(所得税)と税額控除(住民税)の対象になります。

給与所得者の場合、年間の寄付先が5自治体以下であればワンストップ特例制度が使えるため、翌年の確定申告も不要になります。

大まかな計算ですが、共働きの世帯年収が1,000万円で子ども2人の場合、約14万円程度の税金が還付されます。

住宅ローン控除

一戸建てやマンションの購入、新築や増改築に住宅ローンを利用した場合、10年間の優遇税制となる住宅ローン控除が使えます。

一例として、年収1,000万円の人が以下の条件で住宅ローン控除を受ける場合を計算してみます。

  • ・借入額:4,000万円
  • ・建物価格および種類:2,000万円、一般住宅
  • ・金利および返済期間:1.3%、35年
  • ・扶養家族:2人
  • ・控除額:387万2,000円

簡易的な計算ですが、10年間の控除額は387万2,000円ですから、年平均38万7,200円の減税になります

なお、控除限度額は400万円(年間40万円)であり、年末のローン残高の1%が所得税や住民税から控除される仕組みです。

医療費控除

医療費控除を受けるためには確定申告が必要となりますが、家族も含め年間10万円以上の医療費がかかった場合は一定額まで医療費控除が受けられます

控除額は年収や保険金の補てん額によりますが、年収1,000万円の人が20万円の医療費を支払った場合、4万3,000円が還付されます(保険金の補てんを考慮しない場合)。

特定支出控除

給与所得者が以下の費用を自己負担した場合、一定条件を満たせば特定支出控除が認められます。

  • ・通勤費
  • ・転居費
  • ・研修費
  • ・資格取得費
  • ・帰宅旅費
  • ・勤務必要経費(図書費や衣服費など)

会社から支払われる費用の立替払いは対象外であり、「特定支出に関する証明書」の提出も必要ですが、年収1,000万円超の場合は上限195万円の控除が認められます

特定のケースで利用できる節税対策3つ

以下のようなケースにも減税措置があるため、該当する場合は申請または確定申告しておきましょう。

  • ・配偶者との離婚や死別
  • ・災害や盗難にあった場合
  • ・株取引で損失が出た場合

では具体的な内容を解説します。

配偶者との離婚や死別

離婚や死別があった場合、一定条件を満たせば27万円、または35万円の寡婦控除を受けられます

  • ・27万円の寡婦控除:扶養家族や合計所得38万円以下の子どもがいる場合、または死別で寡婦となった人の所得が500万円以下の場合
  • ・35万円の寡婦控除:寡婦となった人の所得が500万円以下で子どもを扶養している場合

災害や盗難にあった場合

災害または盗難による損害は「雑損控除」および「災害減免法による税金の軽減・免除」の対象になります。

雑損控除の場合、災害による自宅家屋や家財などの損害、または家屋解体などの費用があり、保険金で賄えない部分が控除対象になります。

また、災害による住宅や家財の損害額が時価の1/2以上ある場合は、確定申告をすると災害減免法による税金の軽減・免除を受けることができます。

株取引で損失が出た場合

株式の売買で損失が出た場合は、同じ年の配当所得と損益通算できます

いわゆる「相殺」の形になりますが、損失額を含めずに計算すると配当金にだけ課税されるため、節税にはならないケースもあります。

また、損益通算で控除しきれない損失は翌年に繰越し、3年間にわたって利益から控除することもできますが、確定申告は必要なので忘れないようにしてください

まとめ

世帯年収1,000万円は裕福な家庭のモデルケースといえますが、年収に対する手取り割合は高くないため、何らかの税金対策が必要になります。

しかし保険への加入や保障の拡充、投資などに資金分散しやすいため、節税と同時に将来の資産形成やリスクヘッジもできるでしょう。

また、片働きか共働きかによって所得税や手取り額も変わるため、最適年収を求めるためには何パターンものシミュレーションが必要になります。

かしこい節税を検討する場合は、ファイナンシャルプランナーや税理士のアドバイスも参考にするとよいでしょう。

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