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合同会社とは?設立するメリット・デメリット、株式会社との違いを解説
この記事の執筆者 税理士 森健太郎
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
合同会社は、株式会社に次いで選ばれている会社形態です。その理由には、株式会社よりも設立にかかる費用を抑えられたり、経営の自由度が高かったりすることが挙げられます。一方で、合同会社は資金調達方法や信用力の面では株式会社よりも限定されることがあるので、特徴を知って、自社の事業形態や将来像にマッチしているか確認しておきましょう。
本記事では、合同会社の特徴や設立するメリット・デメリット、株式会社との違いについて解説します。
- 合同会社は2006年に新設された会社形態
- 合同会社の特徴
- 合同会社と株式会社の違い
- 株式会社と比較した合同会社のメリット
- 株式会社と比較した合同会社のデメリット
- 合同会社に向いているケース
- 合同会社か株式会社かで迷ったら、専門家に相談しよう
合同会社は2006年に新設された会社形態
合同会社は、2006年の新会社法施行に伴って新しく設けられた会社形態です。アメリカ合衆国のLLC(Limited Liability Company)をモデルに導入されており、日本版LLCと呼ばれることもあります。
現在日本で設立できる会社形態は、合同会社のほか、株式会社、合名会社、合資会社があります。有限会社は、2006年の新会社法施行によって新設できなくなっていますのでご注意ください。有限会社が新設できなくなった理由は、新会社法によって株式会社設立のハードルが下がり、有限会社と区別する必要がなくなったためです。
現在では、資本金1円以上、発起人1名以上で設立できて、出資した範囲の中で責任を負う有限責任となる株式会社と合同会社が多く選ばれています。法務省「登記統計 商業・法人 年次 2022年」(2023年5月公開)によると、2022年の設立登記の件数は、株式会社が9万2,371件、合同会社が3万7,127件、合名会社が20件、合資会社が30件でした。設立登記件数が最も多いのは株式会社ですが、知名度の広がりとともに年々件数を伸ばしてきているのが合同会社です。
合同会社の特徴
合同会社の特徴は大きく3つあります。特徴は株式会社との違いでもあるため、しっかり理解しておきましょう。
- 所有と経営が一致している
- 出資者のことを社員と呼ぶ
- 全社員が有限責任になる
所有と経営が一致している
合同会社の特徴は、「所有と経営が一致」していることです。株式会社には「所有と経営の分離」と言われる原則があり、会社を所有する株主(出資者)と経営を行う役員が異なります。そのため、会社の意思決定にあたっては株主と役員の意見をすり合わせる株主総会を開催する必要があり、その分の時間がかかります。
一方、合同会社は出資者と経営者が同じため、会社の意思決定をスピーディーに行うことができるのです。
出資者のことを社員と呼ぶ
合同会社の特徴として、出資者を「社員」と呼ぶことが挙げられます。合同会社の社員は、株式会社の取締役の立場にあたる役割で、従業員ではありません。また、合同会社では取締役といった株式会社の役職を名乗れませんので注意してください。
合同会社では、出資している人が経営に参加できます。しかし、株式会社と違って出資比率に関係なく、議決権の割合が同じになるので、社員が複数人いる場合は意見がまとまらなかったり、最終意思決定を誰に委ねるかでもめたりする可能性があります。こうした混乱を避け、円滑に経営ができるよう、株式会社の代表取締役にあたる「代表社員」や業務を執り行う「業務執行社員」を定款に定め、経営に関わる社員を限定することが可能です。
全社員が有限責任になる
合同会社の特徴として、全社員が有限責任になることが挙げられます。有限責任とは、会社が倒産したときなどに、債権者に対して、出資した額を限度として責任を負うことを指します。つまり、出資した資本金がなくなるということです。
現在設立できる合資会社と合名会社は無限責任社員を認めているため、自分の財産を含めて無限の範囲で責任を負わなくてはなりません。株式会社も有限責任のため、株式会社と合同会社が選ばれやすいのは、万一のリスクを抑えられるからだといえます。
合同会社と株式会社の違い
合同会社と株式会社との違いは、設立費用をはじめ、所有と経営の関係、役員の任期などがあります。株式会社との主な違いは以下の表のようになります。
■合同会社と株式会社の主な違い
項目 | 合同会社 | 株式会社 |
---|---|---|
設立費用 | 約11万円~ | 約23万円~ |
所有と経営の関係 | 原則同じ | 原則分離 |
代表者 | 代表社員 | 代表取締役 |
役員の任期 | なし | あり(最長10年) |
資金調達 | 融資を受けられるが信用力はやや低め | 銀行や日本政策金融公庫ともに信用力が高め |
決算公告 | 不要 | 必要 |
株式公開 | できない | できる |
利益配分 | 定款で自由に定められる | 出資比率に応じる |
採用 | 認知度が低く、やや集まりにくい | 集まりやすい |
この表を踏まえて、株式会社と比較した場合の合同会社のメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
株式会社と比較した合同会社のメリット
合同会社のメリットのうち、特に下記の箇条書きの上から2つ「設立費用が抑えられる」と「重任登記がない」という点は、合同会社を選ぶ理由にもなります。これから会社設立をする人は、会社形態を選ぶ際の参考にしてください。
- 会社の設立費用が抑えられる
- 役員の任期がないので重任登記がない
- 決算公告の必要がないので手間や費用が省ける
- 所有と経営が一致しているので自由度が高い
会社の設立費用が抑えられる
合同会社のメリットは、株式会社よりも会社設立に伴う費用が抑えられることです。例えば、株式会社を設立する場合、公証役場での定款認証手続きが必要で、認証の手数料として3万~5万円がかかります。合同会社を設立する場合、定款の作成は必要ですが認証は不要のため、認証手数料はかかりません。また、法人登記に必要な登録免許税についても、株式会社は最低15万円なのに対し、合同会社は最低6万円と半額以下です。
一般的に株式会社の設立費用が約23万円、合同会社の設立費用が約11万円なので、12万円ほど安く設立できるのは合同会社の大きなメリットです。
役員の任期がないので重任登記がない
合同会社のメリットは、役員の任期がないので重任登記がないことも挙げられます。株式会社では役員の任期があり、最長10年です。そのため、同じ人が継続するにしても、最低10年に一度は重任登記が必要で、登記の費用や手間がかかります。役員の重任登記費用としての登録免許税は、資本金1億円以下の会社なら1万円、資本金が1億円を超える会社なら3万円です。こうしたイニシャルコストや重任登記の手間がかからないことは合同会社のメリットといえます。
決算公告の必要がないので手間や費用が省ける
合同会社のメリットには、決算公告の必要がないので手間や費用が省けることもあります。株式会社の場合、株主総会後に決算公告が義務付けられており、官報で公告する場合は年間6万円ほどがかかります。
一方、合同会社は「出資者=経営者」のため、株主総会を開く手間も、株主総会後に行う決算公告の費用も不要です。
所有と経営が一致しているので自由度が高い
合同会社のメリットは、所有と経営が一致しているので自由度が高いことも挙げられます。合同会社では、社員が事業展開や撤退などの経営判断を行うので、第三者が介入することはありません。また、定款に定めれば、社員の出資比率に関わらず、個人の貢献度などに応じて自由に利益を配当できるのもメリットいえるでしょう。
一方、株式会社の場合は、株主の出資額や所有株式数に応じて議決権や利益配分が決まります。
株式会社と比較した合同会社のデメリット
合同会社のデメリットは大きく3つあります。いくら設立費用が安くなるといっても、デメリットになる部分が作りたい会社のイメージとマッチしない場合、会社形態を変更する理由にもなります。設立手続きの時間や費用が二度手間になるので注意してください。
- 株式会社よりも知名度が低い
- 経営者自身にとってコンプレックスになることがある
- 社員間で対立すると解決しづらい
株式会社よりも知名度が低い
合同会社のデメリットは、株式会社よりも知名度が低いことです。合同会社の知名度が上がってきたとはいえ、会社といえば、株式会社といったイメージを持っている人は多くいます。また、合同会社は設立費用を抑えられ、上場できないことから、規模が小さい会社と見られることがあります。そのため、融資を受ける、採用募集する、新規で取引をするといった場合に、株式会社よりも不利になることはあるかもしれません。
ネガティブなイメージを持たれることに不安がある場合は、株式会社を選ぶのもひとつの方法です。
経営者自身にとってコンプレックスになることがある
合同会社のデメリットのひとつに、経営者自身にとってコンプレックスになることがあります。合同会社は株式の発行による資金調達ができなかったり、取引や採用で苦労したりすることがあり、経営者同士で集まった際に引け目を感じてネガティブにとらえてしまうことがあります。
合同会社から株式会社への形態変更は可能ですが、手間と時間がかかるため、将来的に上場を目指したい、従業員を増やしたいといった、今後の会社の方針をもとに会社形態を決めるようにしましょう。
社員間で対立すると解決しづらい
合同会社のデメリットは、社員間で対立すると解決しづらいことが挙げられます。株式会社は出資比率に応じて議決権が異なりますが、合同会社は出資比率に関わらず社員全員が平等に議決権を持つため、意見が対立したときに支障が出る恐れがあります。
最終的に誰が決定するのか、どのような利益配分にするのかなど、解決方法をあらかじめ定款で定めておくようにしましょう。合同会社の社員同士でもめてしまうと解決までに時間がかかる傾向があります。よくあるトラブルや定款に定める内容について、設立前に税理士をはじめとする専門家に相談しておくことをおすすめします。
合同会社に向いているケース
これから起業を考えていて、合同会社か株式会社かで迷ったら、次のようなケースで判断してみるのもひとつの方法です。主に合同会社に向いているケースは以下の3つです。
- 費用を抑えたい
- 屋号でビジネスをする
- 取引先がほぼ決まっている
費用を抑えたい
設立費用やイニシャルコストを抑えたい場合は、合同会社に向いているといえます。合同会社は、株式会社よりも約12万円安く設立できるのが特徴です。また、官報の掲載費用や役員の重任登記に必要な登録免許税もかからないため、ランニングコストも抑えられます。上場など大きな成長を目指す予定がなく、費用を抑えられることがメリットになる場合は合同会社が向いているでしょう。
屋号でビジネスをする
美容師や介護職など屋号でビジネスをする職種や、一般消費者向けのBtoC事業も合同会社に向いている傾向があります。こうしたビジネスの場合は、株式会社という会社の知名度よりも、個人の知名度や商品・サービスの魅力といった点が重要ともいえます。合同会社であることによって信用面でデメリットがないような場合は、合同会社に向いているといえるでしょう。
取引先がほぼ決まっている
起業した時点で取引先がほぼ決まっていて、知名度や信用面を強化する必要がない場合は、合同会社に向いているといえます。例えば、個人事業主から法人化するので取引先が決まっている場合、今の副業の範囲で仕事をする場合などが挙げられます。
ゆくゆくは上場して会社を大きく成長させたい、集客や融資のために知名度と信用面がほしいといった場合は、株式会社を選択したほうがいいでしょう。最初はスモールスタートでも、いずれ人を雇用して事業を拡大していく予定がある場合は株式会社が望ましいといえます。
合同会社か株式会社かで迷ったら、専門家に相談しよう
合同会社は現在設立できる会社形態のひとつです。合同会社のメリットには、株式会社よりも設立費用を抑えられ、所有と経営が一致しているので自由度が高いといったことが挙げられます。一方で、株式会社よりも知名度が低く、株式発行による資金調達ができないといったデメリットもあります。初期費用を抑えられるからといって合同会社を選択しても、経営者が目指すべき会社の方針や事業形態とミスマッチしていれば、事業継続に影響がでるので注意しましょう。
「合同会社で本当にいいのか」「費用を詳しく比較したい」といった場合は、税理士に相談してみるのもおすすめです。税理士なら、金銭面でトラブルが起こりそうなことや費用のシミュレーションをもとに最適なアドバイスをもらえます。また、インボイス制度の開始に伴って、課税事業者になるべきか否かなども幅広くサポートしてもらえるので、まずは税理士に相談してみてください。
例えば、ベンチャーサポート税理士法人では顧問契約にかかわらず、会社設立時の無料相談に対応しています。その上で、税理士顧問とセットであれば設立の代行手数料も0円になります。また、税理士が窓口となってグループ内の他の士業とも連携してサポートする体制が整っているため、法律相談もワンストップで対応することが可能です。依頼内容ごとに士業を探す手間が省けるので、ぜひお気軽にご相談ください。
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