約3割が相続時にトラブルが起こると想定。兄弟や親戚間での財産分与についての懸念が最多。
ベンチャーサポート相続税理士法人 (東京都中央区 代表税理士 古尾谷裕昭 https://vs-group.jp/sozokuzei/supportcenter/ )は、「親の相続」に関する実態調査を実施いたしましたので、お知らせいたします。
<親の相続に関する調査結果トピックス>
- 約3割が相続でトラブルが起こると想定
- 具体的なトラブルの内容で最多なのは「兄弟や親戚間での財産分与の方法」
- 相続の対策をしている人は約1割
<調査概要>
- 調査方法:ゼネラルリサーチ株式会社のモニターを利用したWEBアンケート方式で実施
- 調査の対象:ゼネラルリサーチ社登録モニターのうち、全国40代~50代男女(両親がご存命の方)を対象に実施
- 有効回答数:1,017人
- 調査実施日:2022年5月18日(水)
3割近くが相続でトラブルを想定
今回、全国40代~50代男女(両親がご存命の方)1,017人を対象に調査を実施。
「ご両親から相続を受けるときにトラブルが起こると思いますか?」と質問したところ、約3割がそう思う(とてもそう思う6.8%、ややそう思う21.4%)と回答。
具体的なトラブルの内容で最多なのは「兄弟や親戚間での財産分与の方法」
続いて、想定しているトラブルについて調査(複数回答可)。
結果、「約7割(70.7%)が「兄弟や親戚間での財産分与の方法」と最多。その他「不動産の処理」、「税金対策」への懸念もみられた。
具体的にどのようなトラブルが起こる想定か聞いたところ、
- 兄弟がいるので、株や持ち家、土地の財産分与で揉めると思う(40代/女性/会社員/福岡県)
- 親に借金があるので相続を放棄したいのですが、うまく放棄できるか心配です(40代/女性/無職/奈良県)
- 親の住む家は私が半分名義になっているので、財産分与がどうなるのか?揉めそうな気がしています(50代/女性/パート・アルバイト/大阪府)
- 両親が遺言書を用意していないし資産の把握も出来ていない(50代/男性/パート・アルバイト/千葉県)
などの回答が得られた。
相続トラブルを避けるための対策をしている人は約1割
「相続のトラブルを想定している」が3割近くであった一方、実際に対策を「している」と回答したのは約1割(13.9%)に留まった。
実際にどのような対策をしているのかについても調査(複数回答可)。
結果、半数以上が「兄弟や親族と相続について話し合いをする」と回答。他にも「親に遺言状を書いてもらう」が4割、「親の財産を把握する」などが挙げられた。
【まとめ】
相続にまつわるトラブルを避けるための対策は不十分である方が多い
親の相続をどうするか、子の視点から相続の際のトラブルについて調査した結果、3割近くがトラブルを想定しているものの、具体的な対策を行っているのは約1割程度であった。
相続の際のトラブルを避けるための準備不足が目立つ結果となった。
専門家からのアドバイス
「相続トラブルになりやすい要因6つ」
相続トラブルの多くは家族とのコミュニケーションに関係しています。
一度トラブルが起きると家族関係の修復は難しくなるため、以下の6つの要因が想定されるときには事前に対策する必要があります。
根本的な解決が難しい場合は、専門家への相談も検討しましょう。
要因1 相続財産の内容がわからない
相続財産の内容が家族に伝わっていなければ、一部の相続人が財産隠しを疑われる可能性があります。
特に亡くなった方の同居親族(配偶者や長男など)が疑われやすく、他の相続人から「独り占めしている財産があるのでは?」と思われてしまう可能性があります。
相続財産は以下のように目録化し、相続人全員に伝わるようにしてください。
- 預貯金口座
- 不動産
- 有価証券(株式や債券など)
- 自動車や船舶など
- 貴金属や美術品
- 生命保険
- 暗号資産(仮想通貨)
- 住宅ローン
不動産には登記識別情報(権利書)や登記事項証明書、株式の場合は取引残高報告書など、財産に関連する書類も添付しておくと良いでしょう。
要因2 主な相続財産が不動産のみ
不動産は分割しにくいため、高額な自宅を相続する人がいる一方で、わずかな預金しか相続できない人がいるなど、不公平が生じやすくなります。
共有状態にすると、活用や処分には共有者全員の同意が必要になり、世代交代とともに権利関係者が増えるため、将来的には塩漬け状態になる可能性があります。
分筆した土地はそれぞれの評価額に差が出てしまうので、分筆方法や測量費の負担を巡ってトラブルが起きる可能性もあるでしょう。
主な相続財産が不動産だけの場合、不公平の解消手段も考えておかなければなりません。
要因3 特別受益となる生前贈与がある
生前贈与による特別な利益を「特別受益」といい、遺産分割するときには相続財産と合算します(特別受益の持ち戻しといいます)。
特別受益があった相続人は、そうではない相続人よりも少ない取得額になるよう調整しますが、何が特別受益にあたるかで揉めてしまう可能性があります。
遺産の前渡しとみなされる贈与、生計の資本となる贈与が特別受益にあたるとされていますが、専門家以外の判断はかなり難しいでしょう。
良かれと思って行った贈与がトラブルに繋がることもあるので、相続発生後の影響にも考慮が必要です。
要因4 遺言書の遺産配分が不公平
一定要件を満たした遺言書には法的効力があり、遺産配分に偏りがあっても従わなければならないため、相続人の間にしこりを残す可能性があります。
また、民法では最低限の取得分となる「遺留分」を定めていますが、遺言内容が遺留分を侵害している場合、相続人同士の対立も発生するでしょう。
公平な遺産配分が不可能な場合は、遺言書の付言事項に遺留分を主張しないよう書き添える、または生命保険を活用するなど、何らかの対策が必要です。
要因5 介護などの寄与分が考慮されていない
被相続人(亡くなった方)の財産維持や増加、介護などに貢献した相続人がいるときは、寄与分を考慮して遺産分割する必要があります。
ただし、寄与分が認められる条件はかなり厳しく、専門知識がなければ寄与分相当額の算出もできません。
家庭裁判所に調停を申し立てるケースもあるので、寄与分を考慮した遺言書を遺す、または専門家に対策を練ってもらうと良いでしょう。
要因6 各相続人の立場が影響する
関係性の薄い人が相続人になる場合、遺産分割を巡って対立するケースがあります。
例えば代襲相続によって相続人となった孫や、前妻との間に生まれた子供がいる場合、他の相続人が好意的に受け入れてくれない可能性があるでしょう。
また、子供がいない夫婦で夫が死亡したときは、配偶者(妻)と夫の父母が相続人となりますが、もともと嫁・姑が不仲という例も少なくありません。
同じ立場の相続人というより、自分達の取得分を脅かす存在にみられるため、遺言書を遺すなどの対策が必要です。