この記事でわかること
- 土地の遺産相続の流れがわかる
- 兄弟で遺産相続した土地の分割方法がわかる
- 土地分割に伴う費用や相続税の計算方法がわかる
- 兄弟で土地を遺産相続するときの注意点がわかる
親が亡くなった場合、遺産相続するのは配偶者と子です。
配偶者が既に亡くなっているときは、子のみが相続人となりますが、兄弟(姉妹)がいる場合は、兄弟同士で遺産を分割する必要があります。
遺言書で、誰に何をどれくらい相続させるか指定されていた場合は、その遺言書の内容に従えばよいのですが、遺言書がない、または指定されていない遺産があるときは、遺産分割協議を相続人全員で行わなければなりません。
特に兄弟で不動産を遺産相続する場合、その分割方法によってはトラブルに発展することもあります。
本記事では、兄弟で土地を遺産相続する場合の分割方法について解説していきます。
目次
土地の遺産相続の流れ
まず、被相続人が死亡してからの遺産相続の流れについて説明しましょう。
故人の死亡届を提出する
死亡届とは、被相続人が亡くなったことを証明する書類です。
被相続人の死亡の日から7日以内に市区町村役場へ提出しなければなりません。
親が亡くなった後で気落ちしている時期ですが、期限内に提出を行わなかった場合、戸籍法によって5万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、死亡届を提出しないと、火葬する際に必要となる死体火葬許可証の発行を受けられませんので、注意しましょう。
遺言書がないか確認する
遺言書があれば、基本的に遺産分割が指定されていますから、遺産分割について話し合う必要はありません。
ですから、故人から遺言書の有無を聞いていない場合は、遺言書がないかを確認しましょう。
遺言書には、公正証書遺言、秘密証書遺言、自筆証書遺言の3種類がありますが、自筆証書遺言以外は公証役場で確認することができます。
秘密証書遺言は、ほとんど利用されていませんから、基本的には公証役場に公正証書遺言が保管されているかどうか確認します。
公正証書遺言の有無の確認は、全国どこの公証役場でも申請できます。
公正証書遺言がない場合、故人の知り合いの専門家(弁護士や司法書士など)へ確認したり、自宅内の保管していそうな場所を探したりします。
自宅などで自筆証書遺言書を発見したときは、勝手に開封しないようにご注意ください。
公正証書遺言でない場合、家庭裁判所の検認が必要ですから、勝手に開封した場合は、その遺言書が無効となる可能性があります。
また、2020年7月から始まった法務局での自筆証書遺言保管制度を故人が利用していた場合は、法務局への申請が必要になります。
相続人が誰か確定する
遺言書で相続する人が指定されていない場合、基本的に法定相続人が相続することになります。
法律では、被相続人に配偶者がいる場合は、どんなときでも相続人となります。
その他の相続人には順位が決まっており、順位に従って相続します。
被相続人の子どもが第1順位、被相続人の父母・祖父母などが第2順位、被相続人の兄弟姉妹が第3順位です。
被相続人に子どもがいる場合は、第2順位以降に相続は発生しません。
ですから、被相続人に子がおらず、父母などが既に他界している場合に限り、被相続人の兄弟姉妹まで相続が回ってくるということになります。
相続分も法律で定められています。
たとえば、相続人が配偶者と子2人の場合、配偶者1/2、子はそれぞれ1/4となります。
配偶者がおらず子2人だけが相続人となる場合は、子は1/2ずつ相続します。
相続財産を調査する
自宅などの不動産、預貯金、現金、有価証券といったプラスの財産だけでなく、借金やローン、連帯保証人契約などのマイナスの財産も調査しましょう。
この調査で、マイナス財産がプラス財産を上回るような場合は、相続放棄の検討も必要です。
相続財産の調査が完了したら、財産目録を作成します。
特に決まった書式などはありませんが、財産の内容と金額が一覧になっていると、この後の相続人同士の話し合いでも便利です。
遺産分割協議を行う
遺産分割協議とは、被相続人の遺産を、誰が何をどれくらい相続するのかを話し合いで決めることです。
これまでに作成した財産目録を確認しながら、相続人全員で協議を行わなければなりません。
遺産分割内容が決まったら、その内容を「遺産分割協議書」にまとめ、相続人全員が署名捺印します。
このとき、相続人のうち誰かひとりでも署名捺印しない場合は、この協議書は無効となりますので、ご注意ください。
また、印鑑は実印で捺印し、印鑑証明書とセットにしておきます。
この遺産分割協議書は、相続した不動産の登記変更や預貯金を引き出す際に提出を求められますので、必ず作成しておきましょう。
遺産分割協議書は、対外的な相続手続きに必要なのはもちろん、相続人同士で後に「言った、言わない」などのトラブル防止のためにも必要です。
相続登記を行う
遺産分割協議で、土地・建物といった不動産を誰が相続するか決まったら、法務局へ相続登記の申請を行います。
相続登記には、以下のような書類が必要となります。
- ・登記事項証明書(登記簿謄本)
- ・被相続人の住民の除票(本籍記載のもの)
- ・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- ・相続人全員の現在の戸籍謄本
- ・不動産を取得する相続人の住民票
- ・固定資産評価証明書
- ・遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書
相続登記することで、第三者に対しても所有権を有効に主張することができます。
兄弟で遺産相続した土地の5つの分割方法
相続財産の中でも不動産が占める割合は高く、また誰が相続するかで揉めることが多いのも不動産です。
不動産の場合、預貯金や現金と違って分割することが簡単ではありません。
たとえば、兄弟2人が相続人で、相続財産が不動産4000万円、預貯金4000万円という場合なら、どちらかが不動産、もう一方が預貯金という風に分割することができます。
ですが、一般的には自宅などの不動産が4000万円、預貯金は1000万円という感じで、不動産の占める割合が高く、きれいに分割することができないのが現状でしょう。
ここでは、兄弟が相続人で土地を遺産相続する場合の、分割方法について説明していきます。
(1) 換価分割
換価とは現金化することです。
土地は分割しづらいものですから、一旦土地を売却してしまって現金とします。
現金ならば、公平に分割することができますから、兄弟からの不満も出ないのはないでしょうか。
ただし、相続する土地によっては、すぐに売却できるとは限らず、売却できた場合でも兄弟たちが想定していた額ではない可能性もあります。
また、仲介の不動産業者と兄弟の代表者の癒着などを疑われると、遺産分割協議がまとまらない可能性がでてきます。
さらに、この方法では思い出の家を売却し手放すことになるため、心情的な問題も出ますし、売却した金額に所得税と住民税がかかるというデメリットもあります。
ただ、被相続人の死亡の後、誰もその土地に住まないという状況であれば、不要な不動産を抱えたままでいるよりは、多少でも現金化できた方がよいかもしれません。
(2) 代償分割
土地を兄弟の誰かが一人で相続し、残りの兄弟へは遺産相続の不足分を現金で補てんするという方法が代償分割です。
たとえば、相続財産が不動産4000万円、預貯金1000万円で、相続人が兄弟2人の場合、兄が不動産を相続し、弟が預貯金を相続するとします。
このままでは、遺産分割が不公平ですから、4000万円の不動産を相続した兄が、法定相続の不足分1500万円を弟に現金で支払います。
この方法なら、先祖代々の土地を守ることもでき公平な分割となりますが、補てんする金額が多い場合は、ある程度の資金力が必要となります。
資金力がない場合は、代償分割の方法をとることは現実的ではなく、難しいでしょう。
(3) 土地の分筆
相続する土地が大きい場合は、土地を分筆して兄弟で分けることが可能です。
分筆は、一筆の土地(登記簿で1つの土地とされているもの)を、数筆の土地に法的に分割することをいいます。
この方法であれば、兄弟それぞれの取り分を面積で均等に分けることができますので、遺産分割協議もスムーズに進みます。
土地の大きさは、分筆した後、それぞれの土地が30~40坪程度になると活用しやすいですが、それ以下になると売却も難しくなってくるため、細かすぎる分筆はおすすめできません。
ですが、それ以外にもこの方法にはデメリットがあります。
きれいな長方形の角地など、分筆しやすい土地形状であれば問題ありませんが、同じ土地でも分筆後は面積以外にも、道路に面していないとか、日当たりが悪くなるといった不平不満がでることもあります。
そして、相続する土地に建物が建っている場合は、その建物を取り壊すのかどうかも問題となってきますので、十分な検討が必要になるでしょう。
(4) 共有分割
共有分割とは、誰か一人がその土地を相続するのではなく、兄弟全員がその土地を共有相続することです。
兄弟全員が、その土地に関しての共有者となりますので、それぞれが土地全体を利用することが可能です。
共有分割は、一見公平な分け方に見えますが、共有分割した時点の兄弟仲がよくても、その後関係性が悪化してしまうこともあります。
また、兄弟のうち誰かが死亡した場合、共有分が次の相続人に相続されますので、揉める原因となります。
さらに、土地の売却や建物の改築にあたっては、共有者である兄弟全員の同意が必要となることもデメリットと言えるでしょう。
(5) 現物分割
現物分割とは、土地自体の分割ではなく、相続財産の現物ごとで相続割り振りを行うことです。
たとえば、長男が土地建物、二男が預貯金、三男が有価証券といった分け方です。
たいていの場合、土地建物の価値と、預貯金、有価証券の価値は釣り合いませんが、兄弟同士で話し合って合意すれば問題がありません。
相続する土地建物が地方にあって長男がそこに住んでいる場合、二男、三男が遠方で暮らしていれば金額的に公平とは言えませんが、スムーズに遺産分割協議が整うこともあります。
ですが、相続の場合、金額も大きいですから、兄弟同士が納得したとしても、それぞれの配偶者が納得しないなど、問題が出ることも多いです。
遺産分割協議が決着した場合は、後々のトラブル回避のためにも、「遺産分割協議書」は必ず作成しておきましょう。
土地の分割で発生する費用や相続税の相場
ここでは、土地を分割して遺産相続した場合に発生する費用や、相続税に関して説明します。
土地の分割相続にかかる費用
どのような分割方法をとった場合でも、土地を相続するには、「遺産分割協議書」の作成と「相続登記」が必要となります。
それぞれにかかる費用について説明しましょう。
遺産分割協議書の作成
まず、遺産分割協議書の作成は相続人自身で行うこともできますが、司法書士、行政書士、弁護士といった専門家に依頼することも可能です。
その場合、戸籍の収集なども依頼するのかどうか、他に付随して依頼することがあるのかにもよって、報酬額は異なりますが、相場としては10万円~20万円程度でしょう。
遺産分割協議書作成のためには、相続登記でも必要となる被相続人の住民票除票、戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書が必要となります。
これらの書類の実費は、相続人の人数などによって異なりますが、平均的には1万円弱となります。
法務局への相続登記
不動産の相続登記は法務局で行います。
相続登記は個人で行うこともできますが、兄弟で土地を分割して登記するような場合は特に司法書士へ依頼することをおすすめします。
司法書士の相続登記に関する報酬額は5~8万円程度必要になりますが、正確を期するためには、司法書士に任せた方が安心です。
この他、法務局へ支払う「登録免許税」が必要です。
登録免許税は、相続した土地の名義変更のために必要な費用です。
相続登記の場合は、下記の計算式で算出します。
- ・登録免許税=土地評価額×0.4%
土地評価額は、「固定資産評価証明書」に記載されています。
固定資産評価証明書は、該当する不動産を管轄する市区町村で発行されていますので、本人確認ができる証明書を持参して交付を受けましょう。
土地の相続税について
相続税は、相続したすべての人が支払うというわけではありません。
それは、基礎控除と呼ばれる金額があるからです。
また、土地の相続税がいきなり算出できるわけではなく、一旦相続税の総額を算出してから、各相続人が実際に負担する相続税を計算した後、土地にかかる相続税も計算することができるようになります。
まず相続税の総額を算出する
まず相続税の総額を、以下の計算式で算出していきます。
例えば、相続財産総額が4800万円で法定相続人が兄弟3人の場合
となりますから、相続税は課税されないことになります。
相続税課税額がプラスの場合は、その額を法定相続分通りで分割し、各相続人の取得額を算出します。
そして、その金額に応じた相続税率を掛け、控除額を差し引いた額が相続税額になります。
相続税率は、取得金額が増えれば増える程、高くなっていきます。
各相続人の相続税をすべて合計すると、相続税の総額です。
実際の取得分に応じて相続税を負担する
ですから、法定相続分が1/2でも、実際の取り分が1/4の場合は、相続税の負担額も1/4になります。
同じ仕組みで、(土地の評価額/相続財産総額)を相続税総額に掛ければ、土地分の相続税を算出することができます。
兄弟で土地を遺産相続するときの注意点
土地の相続は、取得できる金額も大きく、簡単には分割できないため、トラブルに発展するケースが多いです。
ここでは、兄弟で土地を遺産相続する場合に、トラブルになる原因や、注意点について説明していきます。
共有分割は保留手段
土地の分割方法のひとつとして説明しましたが、出来るだけ共有分割で相続することはおすすめできません。
土地を共有相続した場合、売却や建物の改築リフォームには、兄弟全員の同意が必要です。
ですが、兄弟のうち誰か1人亡くなった場合、その兄弟の共有持分は、配偶者と子どもに相続されます。
そうなると、売却等をする場合の同意は、兄弟に加え、新しく相続した配偶者や子ども全員分が必要となってしまいます。
また、毎年の固定資産税は、共有者ごとに個別で支払うことができません。
兄弟の誰かが代表者となって、他の兄弟から固定資産税を集めて支払わなければならないのです。
支払いが遅れる兄弟がいたり、代替わりして新しく共有者となった兄弟の子どもがいたり、お金を集めるのに苦労することもあります。
ですから、遺産分割協議がまとまらず、誰か一人に土地相続させることができない場合でも、共有分割は保留手段として捉え、共有の登記を行った後も、話し合いを続けることが望ましいです。
土地を換価分割する場合
土地を売却し、売却額を兄弟で分ける方法をとった場合、売却額に対して兄弟間で揉めることはよくあることですが、その売却費用に関しても、トラブルになることがあります。
土地を売却する場合は、不動産会社との窓口は、兄弟のうちの一人となります。
売却額については、兄弟同士、承認するかどうかをしっかりと話し合うと思いますが、売却費用に関しては考えていない場合が多いです。
土地を売却するには、不動産会社の仲介手数料、登記のための登録免許税などが必要になります。
仲介手数料は、基本的に「土地の売却価格×3%+6万円」となりますので、兄弟同士で認識していないと後々取り分が当初よりも減ったとトラブルになることがあります。
不動産の売却に関しては、不動産会社からしっかりと見積書、明細書を入手して、兄弟で共有するようにしましょう。
寄与分を主張する人がいる場合
寄与分とは、被相続人が亡くなる前に、被相続人の財産の維持や増加に貢献した分を遺産分割で考慮するというものです。
寄与分の考慮は、基本的に遺産分割協議の話し合いで決めなければなりません。
被相続人の介護を行ったなど、寄与分の主張を認め、遺産分割協議が成立する場合もありますが、納得できない場合は、家庭裁判所で遺産分割調停を行うしかありません。
ですが、調停では寄与分の認定ハードルは高く、単に被相続人を介護していたというだけでは、ほとんど認められません。
不動産の相続に関与しない程度の額だったとしても、相続人全員の合意がなければ寄与分の主張を認めた遺産分割協議書を作成することができませんので、注意しましょう。
土地分割は専門家を交えて冷静に話し合おう
土地分割では、関わる金額が大きいため、普段仲のよい兄弟でも揉めることはよくあります。
不動産に関しては不動産業者、相続税に関しては税理士と、分からないことは各専門家に相談することができます。
また、兄弟でお互いの主張がまとまらず、紛争性が出てきた場合は、弁護士に相談しましょう。
身内だからこそ揉めてしまう内容でも、専門家が入ることで冷静に話し合いができるようになります。
まとめ
兄弟で土地を遺産相続する場合、その分割方法はいくつかありますが、それぞれの事情に合わせて慎重に検討するようにしましょう。
土地を共有相続することは、一見公平な分割方法に見えますが、将来的に兄弟の配偶者や子どもが共有持分を相続すると、複雑になりトラブルに発展するケースも多いです。
兄弟同士で納得の上、遺産分割協議を成立させることが望ましいですが、どうしても揉めてしまった場合は、専門家である弁護士を交えて冷静に解決していくことも検討しましょう。
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