この記事でわかること
- 不動産登記のオンライン申請について理解できる
- 相続登記のオンライン申請のやり方がわかる
- オンライン申請で相続登記が自分でできる
不動産登記は、登記所で不動産を表示し、権利を記録するものです。
そのため、不動産登記の手続きは厳格なもので、以前は当事者もしくは代理人が必ず法務局へ出向く必要がありました。
けれども、今はオンラインで申請できるので、法務局に出向く必要はありません。
しかも、マニュアルどおりに手続きするだけなので、自分でできるかもしれません。
不動産登記のオンライン申請について解説し、相続登記のオンライン申請のやり方について説明します。
目次
オンライン申請で相続登記の手続きができる
平成17年の法改正により、不動産登記のオンライン申請が可能となりました。
それ以前は出頭主義といって、当事者もしくは代理人が必ず法務局へ出向いて申請を行わなければなりませんでした。
また昔は、今ほど法務局の職員も親切ではなかったので、必要な書類を丁寧に教えてくれるということもありませんでした。
当事者が自分で手続きをするということは、ごくごくまれなケースだったのです。
相続登記となると、司法書士にお願いして複雑な書類を作成してもらい、相当な費用を負担しなければなりません。
しかし、オンライン申請が可能になったことで、手続きの手順が明確になり、必要書類も明記されるようになりました。
そのため、自分で相続登記を行うというハードルはぐっと低くなったといえます。
法務局は8:30~17:15が受付時間ですが、オンライン申請は8:30~21:00までと受付時間が長いため、日中忙しい人でも夜に手続きにできます。
オンライン申請で不動産登記ができる場合と対象外の場合
不動産登記は、基本的にはオンライン申請が可能ですが、、できない場合もあります。
なぜかというと、いわゆる事故簿といわれるもので、電子化できなかった不動産があるからです。
オンライン申請を可能にするためには、登記簿を電算化する必要があります。
しかし、登記簿には事故簿という、間違った登記簿がありました。
登記簿が間違いということは基本的にはありませんが、ごくまれに存在します。
具体的には、登記簿が二つある、情報が欠けているなどです。
登記簿は、もともとは戦前、町村が地租、家屋税の課税台帳として作成されたものをベースにしています。
土地では、町村境界で二重に登載されているとか、国土調査未実施区域の誤りなどがあります。
それでも土地については、国土調査や農地の区画整備などのたびに登記簿が更新されました。
しかし家屋では、最近まで登記するという習慣がなかったのです。
金融機関からの住宅資金の融資を受けるために、家屋を登記簿に載せるようになり、根付いたようにも思います。
そのような事情がなければ登記簿をみることもなかったでしょうから、登記簿は戦前のままということもあります。
相続があったとしても、登記簿をそのまま所有権移転しただけのものもありました。
相続登記(不動産登記)のオンライン申請のやり方
それでは実際に、相続登記のオンライン申請のやり方について、手順にそって説明します。
相続登記のオンライン申請の準備
相続登記のオンライン申請は、申請しようと思ってすぐに手続きができるわけではありません。
不動産登記のオンライン申請は、あらかじめ準備をしておく必要があります。
パソコンを用意する
オンライン申請ですので、当然パソコンが必要になります。
オンライン申請には、専用のソフトウェアをインストールしなければなりません。
ソフトウェアの起動には、Windows10であれば、NET Framework4.6をインストールしたWindows環境が必要です。
公的個人認証サービス電子証明書(マイナンバーカード)とカードリーダーを用意する
公的個人認証サービス電子証明書、つまりマイナンバーカードと、カードを読み取るカードリーダーを用意します。
所得税などの税金の申告でも使いますので、すでにお持ちの方も多いかと思います。
申請用総合ソフトをインストールする
オンライン申請用の申請用総合ソフトをインストールします。
登記・供託オンライン申請システムのホームページでダウンロードできます。
このソフトを使って登記申請書を作成し、添付書類と共に送信します。
申請者情報を登録する
インストールが終わったら、登記・供託オンライン申請システムのホームページで申請者情報を登録します。
オンライン申請の際のパスワードは、この時に発行されます。
相続登記の準備
オンライン申請の準備ができたら、次に相続登記の準備です。
オンライン申請で登記が簡単になったといっても、登記原因を証明することはこれまでと同じです。
必要書類を用意する
相続登記の必要書類を用意します。
- ・被相続人の戸籍謄本・改正原戸籍・住民票除票
- ・相続人の住民票
- ・固定資産税評価証明書
被相続人の戸籍謄本等は、被相続人が亡くなったことと、相続人を明らかにするために必要になります。
生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍が必要です。
戸籍関係の書類は本籍地で請求する必要がありますので、亡くなった住所地と本籍地が異なる場合は注意しましょう。
相続人の住民票は、複数人いる場合はそれぞれの住民票を用意します。
固定資産税評価証明書は、登録免許税の算定に必要です。
相続関係説明図を作成する
被相続人の戸籍謄本等で相続関係説明図を作成します。
相続関係説明図は申請時に必要になりますので、PDFにして保存しておきます。
相続登記のオンライン申請
それではいよいよ、相続登記のオンライン申請です。
詳しい操作はマニュアルを見ていただき、ここでは、簡単な流れだけ押さえておきます。
申請書を作成する
申請用総合ソフトを起動させたら、申請書作成に移りましょう。
不動産登記の登記申請書(権利に関する登記)から入ります。
相続登記は、相続を原因とする所有権移転になります。
ここでは相続登記というメニューはありませんので注意してください。
所有権移転(相続)を選択したら、申請書を作成します。
登記の目的、原因を入力し、原因の日付は被相続人の亡くなった日を記入します。
続けて必要事項を入力します。
相続人が複数いる場合は、それぞれ相続人の情報を入力し、持分も入力します。
この時、住所氏名で外字が必要なときは、略字での登記はできませんので、外字登録しなくてはなりません。
それが終わったら、添付情報を入力します。
添付書類は、登記原因証明情報、住所証明情報です。
登記原因証明情報は被相続人の戸籍謄本等で、住所証明情報は相続人の住民票です。
添付書類は郵送か持参かを選べる特例式という制度がありますので、次のように記載します。
- ・登記原因証明情報(特例)
- ・住所証明情報(特例)
被相続人の戸籍謄本等の還付を希望する場合は次のように記載します。
- ・登記原因証明情報(原本還付)(特例)
申請先登記所の選択は、その不動産の所在する管轄の登記所になります。
登録免許税に関する項目は、固定資産税評価額から課税額を算出します。
登記完了証の交付方法を選択します。
次に申請物件の不動産についての入力をし、最後に内容をチェックしたら、申請書は完成です。
申請書を送信する
作成した申請書を送信します。
送信する前に、添付書類を忘れずに添付してください。
相続登記では相続関係説明図の添付が必要ですので、作成しておいた相続関係説明図のPDFファイルを添付します。
この時、外字登録して申請書を作成した場合は、外字ファイルも添付します。
被相続人の戸籍謄本等で相続関係説明図を作成します。
相続関係説明図は、申請時に必要になりますので、PDFにして保存しておきます。
最後に電子署名を付与します。
到達通知と受付確認
送信した時点で到達通知、受付が終了した時点で受付確認が届きます。
それぞれ念のためプリントアウトしておくことをおすすめします。
登録免許税を電子納付する場合は、受付確認の時点で納付の手続きを行います。
申請日を含め二日以内に納めなくてはなりませんので注意してください。
添付書類の提出
添付書類の提出は、持参するか、書留郵便(レターパックや簡易書留でも可)で郵送します。
ただし、受付日から三日以内に登記所に到着していなくてはなりません。
この時、申請用総合ソフトから、送付する文書の鑑をつけます。
登録免許税納付用紙及び書面により提出した添付情報の内訳表を印刷して、添付書類と一緒に送付します。
登録免許税を電子納付しない場合は、登録免許税納付用紙に収入印紙を貼って同封します。
固定資産税の評価証明書は、登録免許税の算出の根拠となりますので、電子納付か否かにかかわらず送付しなければなりません。
登記の完了
申請の内容に問題があれば通知が来ますが、問題がなければ登記の完了です。
最後に、登記完了証が交付されます。
オンライン申請で必要な添付書類は?郵送になる場合もあるのか
相続登記で必要な添付書類は繰り返しになりますが、以下のとおりです。
- ・相続関係説明図
- ・登記原因証明情報
- ・住所証明情報
もちろんこれらの書類を電子データ化することは可能ですが、印鑑証明書や戸籍謄本など、簡単にはデータ化できません。
オンライン申請で電子データ化する必要があるのは、相続関係説明図だけですので、他の添付書類は郵送にした方が簡単です。
被相続人の戸籍謄本等は必ず取得しなければなりません。
被相続人の除籍謄本、戸籍謄本、改正原戸籍は、ページにしてかなりの数になります。
旧民法では家督相続というものがあって、改正前の戸籍はそのたびに戸主が変わり、戸籍もその分だけ多くなってしまいます。
そうなると、戸籍関係の書類だけでも相当の量になりますし、その分の手数料もかかります。
それほどの量の戸籍関係の書類をすべてスキャナーで取り込んで、PDF化するのは結構な手間となります。
そうなると、多少面倒でも持参するか郵送した方が簡単なのです。
郵送で古銭基幹系の書類の原本を送っても、希望すれば原本を還付してもらえます。
ですので、オンライン申請は、必ずしもすべてをオンライン化するほうがいいとはいえません。
オンライン申請には行政のソフト・一般ソフトどちらが良いのか
登記のオンライン申請で検索すると、前述の登記・供託オンライン申請システムだけでなく、民間の一般ソフトがあります。
行政のソフトは無料であるものの、使い勝手が悪くマニュアルも不親切で、サービスもイマイチというデメリットがあります。
それに比べると民間の一般ソフトは大変優秀ではありますが、そもそも司法書士、土地家屋調査士に向けた専門的な業務用ソフトウェアです。
そのため、値段も高く、オンライン申請だけでなく、司法書士、土地家屋調査士業務に特化した機能が加わっています。
ですので、オンライン申請には行政のソフトを使うのが一般的です。
個人で行うのが不安な場合には
登記簿が完全に整っていれば、自分で相続登記のオンライン申請ができます。
しかし、説明したとおり、登記簿が完全に整っているわけではありません。
土地にしても、特に家屋においては、あらかじめ確認しておく必要があります。
登記簿を確認したら、表示登記からやり直さなければならないケースは少なくありません。
個人で行うのが不安な場合には、司法書士に依頼することをお勧めします。
オンライン申請で知っておきたいこと
ここからは相続登記のオンライン申請でミスしがちなポイント・知っておきたいことを紹介します。
相続登記のオンライン申請を検討している人は、これらのポイントに注意しましょう。
書類送付・登録免許税の電子納付は期限がある
相続登記のオンライン申請では、すべての書類を電子化してデータ送付することが少ないです。
紙で出力する書類も多いため、わざわざ電子化するよりも、紙の書類を法務局に送った方が手間がかかりません。
そのためオンライン申請をしたあとに、手元にある必要書類を法務局に持っていったり、郵送したりすることもあるでしょう。
書類送付は、オンライン申請から3日以内と期限が決まっています。
また登録免許税を電子納付する場合は、オンライン申請から2日以内が期限です。
期限を過ぎてしまうと、手続きができないので、必ず期限内に書類送付・電子納付をしましょう。
補正のお知らせにはすぐ対応する
相続登記のオンライン申請では、ミスがあった場合に「補正のお知らせ」という通知が届きます。
補正のお知らせが届いたら、すぐに修正対応をしてください。
些細な入力ミスであったとしても、法務局が対応してくれることはなく、自分で修正して申請しなければいけません。
また申請の間違っているポイントによっては、再提出の期限が設定される場合もあります。
せっかくオンライン申請をしたのに、補正のお知らせに対応しなかったら、期限が切れて再度申請をし直すことになるかもしれません。
面倒なことにならないためにも、補正のお知らせが届いたら、すぐに対応しましょう。
相続相関図のミスは申請し直し
相続登記のオンライン申請では、相続関係説明図という資料を送付します。
相続関係説明図とは、亡くなった被相続人・土地を相続する相続人の関係・個人情報などを記載した図です。
相続関係説明図に関しては、もしミスがあったら申請を取り下げて、再度申請する必要があります。
他の項目のように修正対応ができないため、相続関係説明図はミスがないように注意してください。
相続税で損をしたくないなら税理士に相談しよう
相続では手続きだけでなく、相続税の支払いも発生します。
土地・不動産を相続する場合は、相続財産も多く、その分相続税も高くなるかもしれません。
「なるべく相続税で損をしたくない」という人は、税理士への相談がおすすめです。
相続に精通している税理士であれば、相続の状況を見て、一番節税できる方法を教えてくれます。
ベンチャーサポート相続税理士法人では、初回の相談を無料で受け付けています。
まずは気軽に無料相談から利用して、実際に依頼するとどれぐらい節税できるのか?を聞いてみるのがいいでしょう。
まとめ
不動産登記のオンライン申請について解説しました。
意外と簡単だと思っていただけたと思います。
ソフトは無料ですし、パソコンがあれば、特別に用意するものもありません。
正しく表示登記されている不動産であれば、マニュアルどおりに相続登記することができます。
しかし、表示登記からやり直しとなる事を考えると、費用がかかったとしても司法書士や土地家屋調査士に依頼することをお勧めします。
また2024年4月から相続登記義務化が施行されました。最新情報は「相続登記の義務化が2024年4月スタート。申請期限や罰金とその回避方法、登記の手続きについて解説」のページをご確認ください。
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ご家族の相続は突然起こり、何から手をつけていいか分からない方がほとんどです。相続税についてはとくに複雑で、どう進めればいいのか? 税務署に目をつけられてしまうのか? 疑問や不安が山ほど出てくると思います。
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