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最終更新日:2023/2/10

不動産の消費税還付申告を税理士に依頼すべき理由と手続きの流れについて

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、横浜、千葉、大宮、名古屋、大阪、神戸など全国の主要都市22拠点にオフィス展開し、年間2,200件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。 業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

PROFILE:https://vs-group.jp/sozokuzei/supportcenter/profilefuruoya/
書籍:今さら聞けない 相続・贈与の超基本
Twitter:@tax_innovation
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不動産の消費税還付申告を税理士に依頼すべき理由と手続きの流れについて

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この記事でわかること

  • 消費税の還付についてわかる
  • 消費税還付申告を税理士に依頼すべき理由についてわかる
  • どのような税理士に依頼すべきかについてわかる
  • 消費税還付申告の流れについてわかる

不動産の購入などによって多額の設備投資を行った場合には、その設備投資に係る消費税の還付を受けることができます。

ただし、すべてのケースにおいて消費税の還付を受けられるわけではなく、消費税の仕組みについて理解した上で還付申告を行う必要があります。

そこで今回は、不動産の消費税還付の仕組みや流れ、還付申告を税理士に依頼すべき理由について分かりやすく解説していきます。

不動産の消費税還付とは

そもそも消費税還付とは、売上に係る消費税額よりも仕入れに係る消費税額が大きい場合にその差額が還付金として事業者のもとに還ってくることをいいます。

計算式としては以下のようになります。

計算式

不動産の消費税還付

納付すべき消費税額=売上に係る消費税額-仕入れに係る消費税額

還付される消費税額=仕入れに係る消費税額-売上に係る消費税額

不動産業を営む場合には建物の購入など高額の仕入れを行うため、その際に支払った消費税額について還付請求することで、事業者は金銭的なメリットを受けることができます。

消費税の課税対象となる売上・仕入れ

消費税が還付される仕組みは前述のとおりですが、すべての売上・仕入れが消費税の課税対象になるわけではありません。

たとえば、不動産業を営んでいる事業者は家賃収入が売上として計上されます。

この家賃収入については、アパートなどの居住用としての賃貸や、事務所などの事業用としての賃貸に分けることができます。

この場合、前者は非課税売上(消費税の対象外)、後者は課税売上(消費税の対象)となります。

また、不動産を賃貸する場合は土地や建物の購入が仕入れとして計上されます。

土地の購入は非課税仕入れ(消費税の対象外)、建物の購入は課税仕入れ(消費税の対象)となります。

つまり、課税売上に係る消費税よりも課税仕入れに係る消費税が大きい場合に、消費税の還付を受けることができる、ということです。

不動産の消費税還付を受けられるケース

では、具体的にどんなケースが還付対象になるのかをみていきましょう。


不動産の消費税還付を受けられるケース

  1. 事業者Aは不動産賃貸業を始めるために土地1億円、建物3,300万円(税込み)を購入した
  2. その建物を事業用店舗として事業者Bに貸付け、年間で660万円(税込み)の家賃収入を得た
  3. 事業者Aは消費税の還付請求を行い、240万円の還付を受けた

上記のケースでは、課税仕入れ(建物の購入)に係る消費税300万円に対して課税売上(事業用店舗の貸付け)に係る消費税は60万円であるため、差額の240万円が還付請求を行うことにより還付されます。

不動産の消費税還付を受けられないケース

次に、消費税還付を受けられないケースをみていきます。


不動産の消費税還付を受けられないケース

  1. 事業者Cは不動産賃貸業を始めるために土地1億円、建物3,300万円(税込み)を購入した,300万円(税込み)を購入した
  2. その建物を居住用マンションとしてDに貸付け、年間で600万円の家賃収入を得た
  3. 事業者Cは消費税の還付請求を行ったが、還付を受けることはできなかった

上記のケースでは、課税仕入れ(建物の購入)を行っているが「居住用」のマンションとして貸し付けているため、家賃収入は非課税売上となります。

この場合、課税売上割合(全体の売上のうち、課税売上が占める割合)がゼロであるため、課税仕入れに係る消費税が控除できません。※

また、令和2年度の税制改正において、居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の控除が制限されることとなりました。

前述の消費税還付を受けられるケースのような、明らかに居住用として貸し付けることがない建物の取得等に限り、課税仕入れに係る消費税額の控除が認められます

※課税仕入れとして支払った消費税のうち、課税売上割合の分が控除される

不動産の消費税還付申告を税理士に依頼すべき理由

不動産の消費税還付申告は前述のとおり、専門的かつ高度な知識を必要とするため、素人が自力で行うことはかなり困難であるといえます。

また、還付申告は税務署からのチェック(税務調査)の対象になりやすい分野であるため、そこを突破するためにも税理士に一任することをお勧めします。

消費税の還付申告を税理士に依頼すべき理由について、いくつか解説します。

事務的負担を軽減できるかつ正確に申告できる

消費税の還付申告には、主に「消費税および地方消費税の確定申告書」「課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算書」「消費税の還付申告に関する明細書」の作成・提出が必要です。

また、還付を受ける際には、不動産の購入時に交わした契約書やインボイスの提出を求められることもあります。

不動産関連は金額が大きくなることが多いので、注意しなければなりません。

上記書類の作成は消費税の仕組みについて理解していなければ作成することが困難な上に、仮に作成できたとしても不備やミスが多くなります。

税理士などの専門家でも課税区分の判断が分かれるようなケースもあるので、消費税の還付を考えている方は速やかに税理士に相談すべきでしょう。

税務調査に立ち会ってもらえる

消費税還付申告は内容に応じて、税務署の調査(税務調査)が実施されることがあります。

還付申告は不正も多いため、税務署は特に厳正な調査を実施しています。

消費税の還付申告の中には、各取引に関する課税取引や非課税取引といった区分の誤りや、不動産の取得時期の誤りなども見受けられます。

還付申告の原因を確認するため、行政指導として電話等による書類確認、設備投資(不動産の購入など)である場合には契約書や請求書等の写しの他、取引実態の確認できる資料の提出を要請することや、実地調査を行う場合もあります。

税理士に還付申告を依頼する場合には、基本的に税務調査への対応を行ってくれるので調査がスムーズに進みます。

また、還付申告の添付書類を税理士が作成していることにより、申告書の信憑性を高めることができ、税務調査そのものを回避する要素にもなります。

不動産の消費税還付申告を依頼する税理士の選び方

消費税還付申告を税理士に依頼する場合、どのような税理士を選ぶべきなのか迷う方が多いでしょう。

ここでは、税理士の選び方について解説します。

不動産関連に強い税理士を探す

不動産関連で消費税の還付申告を依頼する場合は、当然ながら不動産関連の知識や経験が豊富な税理士に依頼することが最善といえます。

前述のとおり、消費税の還付を受けるためには正しく申告した上で税務署の調査を突破する必要があるため、日頃から消費税の還付申告を請け負っている税理士だと強い味方になります。

税務調査では経験の有無がとても重要になってくるので、元税務署の職員などに依頼する方も多いです。

また、消費税の還付申告を行っている知人などに担当税理士を紹介してもらうのも、有効な手段となるでしょう。

知識や経験が浅い税理士に消費税の還付申告を依頼してしまうと、期待したような還付が受けられないことや、申告内容に不備があるなど手間が増えてしまうケースもあるので、ご注意ください。

セミナーやインターネットを活用する

税理士法人や税理士事務所が定期的に主催しているセミナーがあり、不動産関連をテーマにしていることもあります。

このようなセミナーに参加することのメリットは、実際に税理士と話すことができる上に実績や経験を知ることができるということです。

また、インターネットを使って、お住まいの地域で税理士を検索することもできるでしょう。

そこで税理士法人や税理士事務所のホームページを確認することもできますし、他の方法に比べると気軽に税理士探しを行うことができます。

ただ、インターネット検索では経歴や実績を確認しにくい面もあるので、信頼できる税理士かどうかは直接話す機会を設けるなどして検討する必要があります。

不動産の消費税還付申告をする流れ・必要書類

ここでは、実際に消費税の還付を受けるまでの流れや必要書類について解説します。

消費税還付申告の対象になるには

課税売上に係る消費税よりも、課税仕入れに係る消費税が大きい場合に消費税の還付を受けることができるということを説明しましたが、大前提として還付を受けようとする方が「課税事業者」である必要があります。

「課税事業者」とは個人事業主の場合、原則2年前の1月1日から12月31日までの課税売上高が1,000万円を超える方を指し、1,000万円以下である場合には「免税事業者」に区分されます。

なお、これから事業を開始しようと考えている方は「課税事業者選択届出書」をその年の12月31日までに提出することで、課税事業者になることができます。

すでに事業を開始している方は、還付を受けたい年の前年12月31日までに「課税事業者選択届出書」を提出する必要があります。

消費税還付申告を行う

消費税の計算方法には「原則課税」と「簡易課税※」があります。

還付を受けるためには「原則課税」で消費税を計算しなくてはなりません。

個人事業主の場合、還付を受けようとする年の12月31日から2ヶ月以内(翌年2月末日以内)に消費税の還付申告書を所轄の税務署に提出します。

※売上に係る消費税額のみに着目して消費税を計算する方法

消費税還付に必要な書類

必要な書類

  1. 課税事業者選択届出書…課税事業者の方は、この届出書を提出しなければ還付を受けることができません。,300万円(税込み)を購入した
  2. 消費税および地方消費税の確定申告書、課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算書、消費税の還付申告に関する明細書…これらの書類は申告期限内にまとめて所轄の税務署に提出します。
  3. 消費税科目別明細書…提出が義務付けられている書類ではありませんが、還付申告をする際には高確率で提出を求められます。売上や仕入れの科目毎に消費税区分などを記載した書類です。
  4. 設備投資の契約書や請求書…こちらの書類も提出が義務付けられているものではありませんが、税務署が還付を根拠付ける資料として、多くの場合、後日提出を求められます。

不動産で還付申告を行う場合には、必ず契約書や請求書はまとめて保管しておきましょう。

まとめ

今回は、不動産の消費税還付の仕組みや流れ、還付申告を税理士に依頼すべき理由について解説しました。

消費税の還付を受けるためには、大前提として「課税事業者」でなければならず、その申告には専門的で高度な知識が必要となります。

専門家でも意見が分かれるようなケースがあるため、自力で還付申告を行う前に一度税理士に相談することをお勧めします。

また、事業開始前から税理士に依頼することで、どのタイミングで設備投資をすべきかなどのアドバイスも受けることができます。

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