この記事でわかること
- 相続税の申告を行う際に必要となる添付書類を知ることができる
- 自宅や預貯金以外の財産がある場合に必要な書類がわかる
- 相続税の控除や特例の適用を受けるために必要な書類がわかる
相続税の申告書を作成するには、相続財産の内容や評価額の計算方法を正しく把握する必要があります。
また、作成した申告書に誤りがないことを税務署に確認してもらう必要があり、そのために多くの書類の提出を求められます。
ここでは、相続税申告書を提出する際に、申告書に添付すべき書類としてどのようなものがあるか解説していきます。
財産の種類や適用を受ける控除・特例によってはまた多くの書類が必要となるため、早くから準備しておきましょう。
【自宅と預貯金】相続税申告の添付書類
多くの被相続人は自宅や預貯金を保有しており、自宅や預貯金を相続税の計算に含めて申告書に記載する必要があります。
まずは、この自宅と預貯金について相続税の申告を行う場合に必要となる書類をご紹介します。
自宅を申告する場合の添付書類
書類の種類 | 取得する目的など | 取得先 |
---|---|---|
固定資産税名寄帳 | 被相続人名義の不動産が他にないかを確認する | 土地の所在地の市区町村役場 |
登記事項全部証明書 | 所有者として登記されていることを確認する | 法務局(管轄外の法務局からも取得可) |
公図(測量図) | 土地の形状や間口・奥行き距離などを計測する | 法務局(管轄外の法務局からも取得可) |
住宅地図・航空写真など | 被相続人の自宅の周辺状況を把握し、評価額の参考とする | インターネットなど |
固定資産税評価明細書 | 土地や建物の相続税評価額の計算の基礎とする | 土地の所在地の市区町村役場 |
自宅を相続して申告する場合、ポイントとなるのは、その自宅が被相続人の名義となっているかどうかです。
また、地積や床面積が正しく申告されており、相続税評価額の計算に誤りがないことも重要です。
固定資産税名寄帳
自宅を相続して申告する場合、まずは固定資産税名寄帳(以下 名寄帳)を取得します。
名寄帳は、同一市町村内に1人の人がどれだけの不動産を保有しているのかを明らかにするための書類です。
なお、名寄帳は各市町村で取得する必要があるため、複数の市区町村に不動産がある場合は、その所在地にも注意が必要です。
遺言書に載っていないからと安心して、そもそも名寄帳を取得していなかったということにならないようにしましょう。
登記事項全部証明書、公図・測量図
登記事項全部証明書や公図・測量図は、いずれも法務局で取得するものです。
必ずしも、相続した土地を管轄する法務局に出向く必要はありません。
どこの法務局からでも、全国各地の書類を取得することができます。
住宅地図・航空写真など
住宅地図や航空写真などで、相続した不動産の形状や周辺の状況などを確認します。
住宅地図を提供するサイトもあるため、こちらはわずかな負担で入手することができます。
固定資産税評価証明書
固定資産税評価証明書は、土地や建物の相続税評価額の計算に使います。
被相続人の自宅に、市区町村役場から郵送されていると考えられますが、ない場合は役場で入手しましょう。
預貯金を申告する場合の添付書類
書類の種類 | 取得する目的など | 取得方法 |
---|---|---|
残高証明書 | 亡くなった日の残高を確認し相続税評価額を求める | 金融機関 |
通帳のコピーや取引履歴 | 過去に被相続人から相続人に贈与された金額を確認する | 被相続人の自宅や金融機関 |
預貯金の額について申告する際は、基本的に預貯金の残高をそのまま申告すればいいこととなります。
そのため、それほど難しいことではないように思うかもしれません。
しかし実際には、預貯金の額を申告する際には注意しなければならない点があります。
亡くなる前3年以内に贈与された金額は、相続税の計算をする際に相続財産に含めなければなりません。
贈与を行う場合は預金から払い出されることが多いため、過去の履歴を確認して、現金の贈与が行われていないか確認します。
【財産種別】相続税申告の添付書類
自宅や預貯金以外の財産を保有する方が亡くなった場合には、その財産の内容がわかるように申告しなければなりません。
どのような添付書類を準備する必要があるのか、その財産別に確認していきましょう。
有価証券を申告する場合の添付書類
書類の種類 | 取得する目的など | 取得方法 |
---|---|---|
取引残高報告書 | 保有する有価証券の残高を確認する | 証券会社や証券の発行会社から送付される |
配当金支払通知書 | 配当金の金額や支払時期を確認する | 証券会社や証券の発行会社から送付される |
発行会社の決算書 | 非上場株式の評価額を求める | 発行会社から送付される |
有価証券の相続税評価額の計算方法は、上場会社と非上場会社では大きく異なります。
上場会社の場合は、相続した有価証券の銘柄と株数が重要なため、それらがわかる書類を準備します。
また配当金がある場合、その配当金の額が相続財産に含まれるケースもあるため、支払時期や確定時期がわかるようにします。
一方、中小企業などの株式を保有している場合は、その会社の財務状況などから相続税評価額の計算を行います。
そのため、直近3期分の決算書などを準備して、評価額の計算をどのように行ったかわかるようにしましょう。
生命保険金を申告する場合の添付書類
書類の種類 | 取得する目的など | 取得先 |
---|---|---|
保険証券 | 保険契約の契約者や受取人を確認する | 被相続人の自宅 |
保険金の支払調書 | 支払われた保険金額を確認する | 被相続人の自宅や保険会社 |
被相続人が亡くなったことで受け取る生命保険金は、500万円×法定相続人の数で計算される非課税枠があります。
そのため、生命保険金を受け取っても、相続税の課税対象となる金額がないケースもあります。
ただ、実際にどれだけの金額の生命保険金をいつ受け取ったのか、わかるように申告しなければなりません。
また、保険契約上の受取人が実際に受け取っていることも、確認できるようにする必要があります。
債務を申告する場合の添付書類
書類の種類 | 取得する目的など | 取得方法 |
---|---|---|
残高証明書 | 亡くなった日現在の借入金の残高を確認する | 金融機関 |
金銭消費貸借契約書 | 借入金の金額や返済の方法を確認する | 借入先 |
未払税金の納税通知書 | 被相続人が支払うべき税金の発生時期や金額を確認する | 被相続人の自宅や税務署、市区町村役場等 |
未払金の請求書 | 被相続人が支払うべき金額を確認する | 自宅 |
被相続人が支払うべき債務を支払わずに亡くなった場合、その返済義務は相続人に引き継がれます。
債務を引き継いだ相続人は、その債務の額を相続財産の額から差し引いて相続税の申告を行うこととなります。
そのため、債務があると相続税の負担は少なくなります。
ただし、債務を引き継ぐということは、相続後に返済が発生することを意味します。
どのような債務を引き継いだのか、その金額はいくらなのかといったことは、税務署にも相続人にも非常に重要な情報です。
債務の種類には様々なものがあり、金融機関に対するものの場合は残高証明書で亡くなった時点の残高を確認できます。
一方で、金融機関以外に対する債務については、誰に対してどのような債務が発生したのかがわかるようにしなければなりません。
また、住宅ローンの利用者はほぼ団信に加入しているため、亡くなった時点でゼロとなることに注意しましょう。
葬式費用を申告する場合の添付書類
書類の種類 | 取得する目的など | 取得方法 |
---|---|---|
葬儀費用の請求書や領収書 | 支払った金額を明らかにする | 相続人が保管 |
支払いメモ | お布施や戒名など領収書がない費用の支払金額を明らかにする | 相続人が保管 |
葬儀費用として支払った金額も、相続財産の額から差し引くことができます。
葬儀費用の額が大きくなるほど相続税の負担は少なくなるため、実際に支払った金額を控除することが重要です。
葬儀会社などに支払った金額は、請求書や領収書などが必ずあるはずです。
一方、お布施や戒名については領収書などが発行されません。
そのため、支払内容のメモを作成し、申告書に添付するようにしましょう。
控除や特例利用時に必要になる添付書類
相続税の申告を行う際には、控除や特例の適用を受けて、相続税の負担を軽減することができます。
中には、相続税額がゼロとなる一方で、申告書だけは税務署に提出することもあります。
この場合も、控除や特例の適用を確実に受けられるよう、書類を準備しておく必要があります。
配偶者の税額軽減の適用を受ける場合
書類の種類 | 取得する目的など | 取得方法 |
---|---|---|
戸籍謄本 | 法律上の配偶者であることを証明する | 市区町村役場 |
遺言書又は遺産分割協議書の写し | 配偶者の相続分が確定していることを確認する | 自宅 公正証書遺言の場合は公証役場 |
印鑑証明書 | 遺産分割協議書に押された印鑑と照合する | 市区町村役場 |
申告期限3年後以内の分割見込書 | 未分割財産がある時は3年以内に分割が完了した場合に適用を受ける | 相続人が作成 |
配偶者の税額軽減は、1億6,000万円と法定相続分とのいずれか大きい金額まで、配偶者が相続した財産に相続税が発生しない特例です。
この特例を利用することで相続税の負担を大幅に減額できるため、実際に利用する人が多い制度の1つとなっています。
ただ、配偶者の税額軽減を利用する際には、注意しなければならない点があります。
それは、配偶者の相続分が確定していなければならないことです。
適用を受ける上限額は、配偶者の相続分の額から計算されるため、遺産分割が終わっていない状態では適用を受けられません。
そこで、遺言書や遺産分割協議書などで、配偶者がどれだけの財産を相続するのかを確認できるようにします。
また、そもそも配偶者以外は適用を受けられないため、配偶者であることがわかる戸籍謄本が必要となります。
相続税の申告期限である10か月以内に遺産分割協議がまとまらない場合は、分割見込書を提出します。
この書類を作成して提出することで、遺産分割協議がまとまった時に配偶者の税額軽減の適用が受けられます。
小規模宅地等の特例の適用を受ける場合
書類の種類 | 取得する目的など | 取得方法 |
---|---|---|
財産を取得した人の住民票の写し | 被相続人と同居していた人が適用を受ける場合 | 市区町村役場 |
財産を取得した人の賃貸借契約書の写し | 同居していなかったが持ち家のない相続人が適用を受ける場合 | 相続人の自宅 |
印鑑証明書 | 遺産分割協議書に押された印鑑と照合する | 市区町村役場 |
申告期限3年後以内の分割見込書 | 未分割財産がある時は3年以内に分割が完了した場合に適用を受ける | 相続人が作成 |
老人ホームの入居契約書 | 被相続人が老人ホームに入居している場合 | 被相続人の自宅や老人ホーム |
介護保険被保険者証 | 被相続人が老人ホームに入居している場合 | 被相続人の自宅 |
小規模宅地等の特例は、自宅の敷地の相続税評価額が最大8割減額される制度です。
自宅を相続する場合には多く利用される特例ですが、配偶者や同居している親族、持ち家のない相続人でなければ適用されません。
また、被相続人が老人ホームに入居している場合でも適用できる場合があります。
このような適用要件を満たしていると証明するため、相続人や被相続人の状況に合わせて書類を準備しましょう。
まとめ
相続税の税額は大きな金額になるため、慎重に計算をしなければなりません。
相続税額に誤りがないことを確認するためには多くの書類が必要となりますが、税務署に提出すべき書類もまた多くあります。
相続税評価額の計算基礎となった書類や相続財産の数量を確認するための書類は、相続税額の計算にそのまま結びつきます。
また、控除や特例の適用を受けて税額を軽減する際も、要件を確認するための書類が必要となるため、忘れないようにしましょう。