この記事でわかること
- 自宅の土地・建物の相続税評価額の計算方法がわかる
- 相続税の課税対象となる金額の求め方がわかる
- 相続税の計算上設けられている特例の概要を理解できる
マイホームを持っている人にとって、相続の際にどれくらいの相続税がかかるのかは大きな関心事であると同時に、大きな不安となっているでしょう。
はたして、自宅に発生する相続税額はどれくらいの金額になるのでしょうか。
ここでは、自宅の相続税の評価方法や相続税の課税対象となる金額の考え方について解説しています。
相続についての不安を少しでも解消するため、相続に関する知識を今のうちに付けておきましょう。
目次
家に関する相続税の基礎知識
相続税とは、亡くなった人が保有していた財産を相続した場合や遺言によって引き継いだ場合、その財産の金額と相続人の数に応じて計算される税金のことです。
自宅の建物や敷地のほか、預貯金や有価証券などすべての財産を合計して相続税の計算を行います。
ただ、相続が発生した場合にすべて相続税が発生するわけではなく、財産の額が少ないほど、また相続人の人数が多いほど相続税の額が低くなり、実際には半分以上の人は相続税が発生しないと言われます。
相続税が発生する場合は、亡くなってから10か月以内に所轄の税務署に相続税の申告書を提出し、相続税を納付しなければなりません。
一方、相続税が発生しない場合には申告書を提出する必要はありません。
相続税の計算を行う際には、自宅を相続した分の相続税額がいくらで、預金を相続した分の相続税額がいくらかという計算は行いません。
あくまで、亡くなった人が保有していた財産すべての評価額を計算したうえで、その金額に対する相続税額の計算を行うことになります。
家の評価方法を知ると同時に、財産全体に対する相続税額の計算方法を知ることも重要となります。
相続税の計算に必要となる家の評価方法
持ち家を相続した人が支払う相続税の計算を行うためには、まずその持ち家の敷地と建物の相続税評価額を求める必要があります。
それでは、実際にどのように相続税評価額を求めるのでしょうか。
ここでは土地と建物の評価方法についてそれぞれ解説します。
また、自宅がマンションの場合の評価方法についても確認しておきます。
自宅の敷地の評価方法
土地の相続税評価額の計算方法は、路線価方式と倍率方式の2つがあります。
この2つの評価方法のいずれによるのかは、その土地が所在する地域ごとに決められているため、自分でどちらかを自由に選択できるわけではありません。
まずは路線価方式と倍率方式のいずれの評価方法によるのかを確認するところから始めます。
路線価方式と倍率方式のいずれかを確認する方法
自宅の敷地の相続税評価額を求める際に、路線価方式と倍率方式のいずれによるのかを確認するためには、まず国税庁ホームページのトップページから「路線価図・評価倍率表」にアクセスして、相続が発生した年分の財産評価基準書を検索します。
路線価図は都道府県別に作成されているため、自宅の所在する都道府県をクリックすると、財産評価基準書の目次が開き、路線価図を調べることができます。
路線価図はさらに市区町村別・町または大字で検索することができるため、該当するページを開いて自宅がある場所を探しましょう。
そして、自宅の面する道路に「240D」といった数字とアルファベットの組み合わせが記載されていれば、その数字が路線価となるため路線価方式によることとなります。
逆に、自宅の前の道路に数字とアルファベットの組み合わせが記載されていない場合は、倍率方式によることとなります。
また、倍率方式の土地については路線価に掲載されていない地域も多くあります。
路線価図に載っていない地域は倍率方式によることとなります。
路線価方式による場合の計算方法
路線価図に載っている数字とアルファベットの組み合わせのうち、自宅の敷地の評価額を計算する際に用いるのは、数字の部分です。
この数字は、1㎡あたりの土地の相続税評価額を千円単位で表しています。
たとえば、路線価図に「240D」となっている道路に面した200㎡の土地があるとします。
するとこの土地の相続税評価額は、240千円×200㎡=4,800万円となるのです。
ただ、「路線価×土地の広さ」で計算できるのは、形がいびつでなく1つの路線にしか面していない土地です。
2つ以上の路線に面している土地はその利便性が高いため、1つの路線だけに面している土地より評価額が高くなります。
また、形がいびつな土地や奥行きが極端に長い土地は、利用しづらいために評価額が低くなります。
このような調整を行ったうえで相続税評価額を求める必要があります。
倍率方式による場合の計算方法
倍率方式により相続税評価額を求める土地については、固定資産税評価額と倍率の2つの数字を調べる必要があります。
そして、「固定資産税評価額×倍率」の計算を行って相続税評価額を求めます。
固定資産税評価額は、毎年4月の終わり~5月頃に土地が所在する市町村から郵送されてくる「固定資産税・都市計画税課税明細書」に記載されています。
固定資産税の税額や納付書があることは知っていても、その評価額について詳しく確認したことがないという方が多いかもしれませんが、価格(評価額)として記載されている土地の固定資産税を確認してみましょう。
倍率は国税庁のホームページで路線価を調べる時にアクセスした財産評価基準書の中にある「評価倍率表」に載っています。
市町村別になっており、町または大字ごとに区分されて記載されています。
また、市街化区域・市街化調整区域に分けて倍率が定められている場合や、農用地区域だけ別に倍率が定められている場合などがあるため、評価対象の土地がどの項目に当てはまるのかを間違えないように、その倍率を確認しましょう。
自宅の建物の評価方法
建物の相続税評価額は、固定資産税評価額と同額です。
そのため、倍率方式による土地の場合と同じように、市町村から送られてくる「固定資産税・都市計画税課税明細書」に記載されている家屋の価格(評価額)を確認します。
この固定資産税評価額に倍率をかけることはありません。
倍率方式による土地と混同しないように気を付けましょう。
マンションの評価方法
マンションも、一戸建ての住宅と同じように建物部分と土地部分から構成されています。
普段意識することはないかもしれませんが、マンションの所有者は土地についても敷地権という持分を有しているのです。
そのため、土地の相続税評価額と建物の相続税評価額をそれぞれ、一戸建ての場合と同じように計算することとなります。
敷地権の割合はマンションの登記事項証明書や固定資産税・都市計画税課税明細書に記載されているため、確認してみましょう。
他の財産と合わせた財産総額を計算する
土地と建物の評価方法を確認し、自宅の相続税評価額を計算したら、他の財産と合わせて財産の総額を計算することとなります。
自宅以外に相続税の対象となる財産にはどのようなものがあり、どういった点に注意する必要があるのでしょうか。
相続税の対象となるのは自宅を含めた土地・建物のほか、預貯金、有価証券、貴金属や宝石・骨とう品など、金銭的に価値のあるすべての財産が対象となります。
わずかに、墓石や仏具などが非課税となる財産として定められています。
また、亡くなったことにより受け取る生命保険金や死亡退職金については、500万円×法定相続人の数で計算される非課税枠があるため、非課税枠を超える部分の金額について相続税の計算対象となります。
一方、亡くなった人が金融機関から借入をしている場合や、未払の税金・社会保険料などがある場合には、それらの金額を相続財産の額から控除することができます。
また、亡くなった後に支払う法要や葬儀の費用についても相続財産から控除することができます。
財産総額により相続税がかかるかどうかを判断する
相続した財産の総額から、引き継いだ債務や葬儀費用などを控除した後の金額が相続税の計算対象になることがわかりました。
ただ、この金額に対してただちに相続税が発生するわけではありません。
この後に基礎控除の金額を求めて、財産の額から差し引く計算を行います。
そして、財産の額から基礎控除の額を差し引いた残りの額に対して相続税の計算をします。
また、財産の額より基礎控除の額の方が大きい場合には、相続税は発生しません。
基礎控除の金額を財産の額から差し引く理由は、遺産がわずかしかない場合にも相続税を支払わなければならないとすると、相続税を支払った後の相続人の生活が立ち行かなくなる可能性があるためです。
仮に遺産の額が基礎控除の額より大きい場合でも、一定の額を相続税の計算対象から外すことで、相続人の相続後の生活を保障する目的があります。
また、ごく少額の相続税が発生するケースもあるため、税務署の徴税事務を効率的にするという目的もあります。
基礎控除の額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で求めます。
法定相続人の考え方は基本的には民法上の考え方と同じですが、養子がいる場合には注意しなければなりません。
実子がいる場合、基礎控除の計算に含めることのできる養子は1人までに制限されます。
また、実子がいない場合に、基礎控除の計算に含めることのできる養子は2人までです。
これは、基礎控除の額を大きくするためだけに、養子の人数を5人、10人と増やして相続税を免れることができないようにするためです。
基礎控除の額が相続した財産の額より大きくなった場合には、相続税は発生しません。
この場合、申告書を作成する必要もありませんので、遺産分割協議書など自宅の登記に必要な書類を作成すれば相続手続きは完了します。
一方、財産の額の方が基礎控除の額より多い場合には、相続税が発生することとなり相続税の申告書も作成しなければなりません。
相続税を減額するための税額控除
財産の額が基礎控除の額より大きいため相続税が発生する場合でも、税額控除の特例が適用できるために、実際には相続税が発生しない場合もあります。
相続税の計算で適用できる可能性がある税額控除の特例を確認しておきましょう。
配偶者の税額軽減
亡くなった人の配偶者は、亡くなった人とともに夫婦で財産の形成に尽力してきた人です。
そのような配偶者の相続後の生活を保障するため、配偶者が相続した財産については無税となる一定の枠を設けています。
このことを、配偶者の税額軽減といいます。
配偶者の税額軽減を受けられるのは、亡くなった人の戸籍上の配偶者に限られます。
一方、戸籍上の配偶者であれば、その婚姻期間の長短は関係ありません。
たとえ1年でも1日でも、戸籍上の配偶者である状態で相続が発生すれば、この特例の適用を受けることができます。
なお、相続税が無税となる上限額は、配偶者が相続した相続税の課税対象となる財産の額が1億6,000万円まで、あるいは配偶者の法定相続分までです。
このいずれか大きい方の金額までは、配偶者が相続しても相続税は発生しません。
配偶者の税額軽減は、相続税の納税においてとても大きな効果があります。
ただ、注意しなければならない点もあります。
それは、配偶者が相続した財産は、いずれその配偶者が亡くなった際に次の相続税の計算対象になることです。
配偶者の税額軽減をフルに活用して相続税額を減額しても、配偶者が亡くなった際には配偶者の税額軽減は適用できないため、かえって多くの相続税を負担しなければならないという結果になることもあります。
配偶者がその後の生活に必要な財産は何か、という視点でこの特例を活用するようにしましょう。
未成年者控除
未成年者控除とは、相続人が未成年者である場合に、18歳になるまでの年数×10万円で計算される金額を、その未成年者が負担すべき相続税の額から控除できる特例です。
本来であれば亡くなった方から扶養されるはずだった未成年者に対して、相続後の生活を一定程度保証するために設けられている特例です。
なお、その未成年者について計算された相続税額に未成年者控除を適用して引ききれない金額がある場合には、残額をその未成年者の扶養義務者が負担すべき相続税額から控除することができます。
ちなみに、民法改正により2022年4月1日より成年年齢が18歳に引き下げられましたが、2022年3月31日以前の相続または遺贈については、未成年者控除の適用を受けることができる年齢は20歳未満となります。
障害者控除
障害者控除とは、障害者が財産を相続した場合に、85歳になるまでの年数×10万円(特別障害者は20万円)で計算される金額を、その障害者が負担すべき相続税の額から控除できる特例です。
障害者は生活の基盤が不安定なケースが多く、相続によりほかの人より多くの財産を相続することがあります。
この場合、相続税の負担がほかの人より大きくなるのですが、多額の相続税を支払うことで相続後の生活を脅かすことのないように特例が設けられています。
障害者控除の額はかなり大きな額になります。
障害者本人の相続税額から引ききれない金額がある場合には、その残額を障害者の扶養義務者が負担すべき相続税額から控除することができます。
相次相続控除
父親が亡くなり、その5年後に母親が亡くなった場合のように立て続けに相続が発生すると、父親が亡くなった最初の相続(一次相続)で相続税を納めたのに、母親が亡くなった次の相続(二次相続)でさらに相続税を負担しなければならないこととなってしまいます。
そこで、一次相続から10年以内に二次相続が発生すること、そして二次相続の被相続人が一次相続で相続税を納めていることを条件として、相次相続控除の計算を行い、相続税額の一部を控除することができます。
一次相続の際に配偶者の税額軽減を適用し相続税を負担していない場合には、相次相続控除の適用を受けることはできないため、注意が必要です。
節税につながる?!小規模宅地等の特例について
相続税の税額が軽減される特例について説明してきました。
ただ、最も大きな税額軽減効果のある特例は他にあります。
それは、小規模宅地等の特例です。
小規模宅地等の特例とは、被相続人が住んでいた自宅の敷地や事業に用いていた土地の評価額を減額することができる特例です。
自宅について適用する場合は、330㎡まで80%減額という面積の上限はありますが、いくらまでという金額の上限はありません。
配偶者が被相続人の自宅を相続した場合は、小規模宅地等の特例を必ず適用することができます。
一方、配偶者以外の相続人が自宅を相続した場合は要件を満たす必要があります。
被相続人と一緒に住んでいた人が相続した場合は、そのまま相続税の申告期限までその家に住み続けることと所有することが必要です。
また、被相続人と一緒に住んでいなかった持ち家を持たない人が相続した場合は、その家を相続税の申告期限まで所有し続けることが必要です。
すでに自分で持ち家を持つ人が被相続人の自宅を相続しても、小規模宅地等の特例の適用を受けることはできないため、間違えないようにしましょう。
まとめ
自宅を保有している人、あるいは親の自宅を相続する予定の人の中には、相続が発生した際に自宅からどれくらいの相続税が発生するのか不安に感じている方もいるでしょう。
ただ、相続税が発生するかどうかは自宅だけでは判断できないことを覚えておきましょう。
また、相続税には数多くの特例が設けられているため、想像より少ない税負担で済むこともあり、反対に金額が大きく一括で払えない場合にも延納などの特例が設けられています。
不安だからこそ、一度ざっくりでいいので相続財産の評価額を計算し、相続税がかかるかどうかを確認してみましょう。
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ご家族の相続は突然起こり、何から手をつけていいか分からない方がほとんどです。相続税についてはとくに複雑で、どう進めればいいのか? 税務署に目をつけられてしまうのか? 疑問や不安が山ほど出てくると思います。
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