私は現在、結婚して35年になる妻と2人で生活しています。
すでに子供2人は独立しており、現在は週3回ほど会社に出勤しながら、空いた時間を趣味や妻との時間に使っています。
第一線を離れてから相続対策をしなければならないと感じるようになり、遺言書や遺産分割について情報を集めながら勉強をしているところです。
そんな中、先日、2019年に相続税の改正が行われたという記事を目にしました。特に気になったのが、妻に対する贈与についての変更ですが、何しろ改正が行われる前の制度を知らないため、どのような改正が行われ、それによってどのような影響があるのかを理解することができませんでした。
そこで、この妻に対する贈与の改正点について教えて下さい。また、それによってどのような影響があるのでしょうか。
2019年に配偶者に対する贈与に関する改正として行われたのが、「贈与税の配偶者控除」の適用を受けた場合の相続税の計算に関する改正です。まずは「贈与税の配偶者控除」の制度について、その内容を確認していきましょう。
「贈与税の配偶者控除」とは、結婚して20年以上経過した夫婦間で、自宅の土地や建物、あるいは居住用の不動産を購入するための資金の贈与が行われた場合には、婚姻期間中に一度だけ2,000万円まで非課税になるという制度です。
通常の暦年贈与の計算と同じく、110万円までの基礎控除もあわせて利用することができるため、最高で2,110万円までの財産を無税で贈与することができます。
ただし、この制度を利用して贈与された不動産については、相続税の課税対象とされます。例えば、夫から妻に2,000万円の自宅の敷地を贈与し、その贈与の後10年後に夫が先に亡くなったとすると、すでに妻の名義とされた2,000万円分の自宅の敷地についても相続税の課税対象とされるのです。
「贈与税の配偶者控除」を利用して所有権が移転した財産であっても、その後の相続税の負担軽減にはならないため、贈与を受けた人にとっては大きなメリットはなく、ただ夫が亡くなった後も自宅に住み続けるためだけの制度となっていたのです。
また、贈与した自宅の財産が相続財産に含まれることで、妻の法定相続分の内容が自宅だけとなって、現預金をほとんど相続できないケースがあることも問題となります。
例えば、相続財産の合計が5,000万円でそのうち自宅の財産に関する金額が2,000万円あったとします。相続財産を妻と子供2人で法定相続分どおりに分割した場合、妻の法定相続分は2,500万円となります。ところが、このうち2,000万円は自宅を相続することとなるため、現預金など他の財産は多くても500万円しか相続できないのです。
今回の改正では、「贈与税の配偶者控除」で贈与された財産を相続財産に含めないこととされました。そのため、贈与された財産については相続税の対象にならず、相続税の負担を減らすことができます。
遺産分割の場面でも、特例を利用して贈与された財産については相続財産に含めなくていいため、妻が預貯金など相続後の生活を送るために必要な財産を相続することができるようになります。
奥様に安心して生活してほしいという思いを実現することができます。もしこれまでに「贈与税の配偶者控除」を利用していないのであれば、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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