国際税務や相続・事業継承に関する税務を多く手がける、SUパートナーズ税理士法人。外国にある財産の相続、外国に居住する日本人が亡くなった場合の納税など、国境をまたぐような複雑な税務業務を得意としています。
代表社員の乾潤一様に、税務業務に関する取り組みや、相続に関する基礎知識や近年の動向などについてお聞きしました。
目次
国際間にまたがる税務を強みに。丁寧なヒアリングに基づくオーダーメイドのサービスを提供
SUパートナーズ税理士法人の業務内容・業態についてお聞かせください
SUパートナーズ税理士法人では、法人・個人のお客様の法人税、所得税、相続税などに関するサービスを提供しています。税務のご相談や申告書の作成、税務調査の際の税務調査対応などが主な業務です。
なかでも国際税務に関して知見と実績を持っていること、幅広いサービスを提供できることが私たちの強みだと自負しています。
国際税務の具体的な相談内容としては、日本に住む外国人の方の所得税申告や、日本人が海外資産に投資した場合の所得申告、海外にある財産についての遺産相続、相続人が海外にいらっしゃる場合の相続税対応などがあります。
国が異なれば、言語も法律も税額の計算方法も当然異なります。その国の法律に精通しているか、あるいは各国の弁護士・税理士と連携できる体制があるかといった点が非常に重要です。
国際税務を多く手がけられるようになった経緯を教えてください
ともに代表を務める阿部は元々、ニューヨークで設立されたシティバンク銀行で経理を務めており、私もかつて外資系の税理士事務所で国際税務に関わってきました。そういった経緯もあり、創業当初から今まで国際税務には注力してきました。
ただ、その中でも国際相続をより一層手がけるようになった一つの転換点がリーマンショックです。そのころ、不動産ファンドに関する業務を多く扱っていたのですが、リーマンショックが起きてそういったファンドが激減し仕事が徐々になくなっていく状況に直面しました。
ただ、元々シティバンク繋がりで富裕者層のお客様からの相談はいただいていたため、富裕者層の税務にも挑戦してみよういうことになり、2010年ぐらいからは富裕層のお客様に向けたサービス提供をスタートしました。
富裕者層のお客様はやはり海外資産をお持ちの方が多い傾向にあります。海外財産についての税務のご相談をいただく機会が増えたことで、国際相続により一層取り組むようになってきたという経緯です。
相談対応の中で重視していることを教えてください
引用元:SUパートナーズ税理士法人
まずは丁寧にヒアリングをすることです。相続対策は、オーダーメイドに近いと考えています。ご家族の形態はどうか、どこの国にいらっしゃるのか、財産の額、その財産が不動産か金融資産か。どの方もそれぞれに違ったご状況があります。
そのため、はじめに必ず「財産の棚卸をしましょう」という話をいたします。どの口座にいくらあるのか正確に把握されていなかったり、そもそも何を財産としてカウントするのかがわからないという方も多くいらっしゃいます。また、どなたが相続の対象になるのかについても同じく整理が必要です。
そういったご状況をはじめに丁寧にヒアリングして整理しておかないことには、相続対策のスタート地点に立てません。
さらに言うと、財産を残す方の気持ちもすごく大切です。相続する側は現実に受け取るものがあるから対策のメリットが明確ですが、亡くなる方というのは節税対策をすることで直接的に得をするわけではありませんよね。「自分に何もメリットはないのになんでこんなに悩まないといけないんだ」という思いの方もいらっしゃいます。
日本の法律上できることとできないことがある中で、その方の意向に添った一番いい方法は何だろうということは、いつも大事にしながら模索しています。
いざ相続対策が必要になったときどうする。確認しておくべき税務の基礎知識
納税後に税務調査に入られる例が多いと聞きます。どのような場合に調査が行われるのでしょうか。
納税後に税務調査に入られるケースはたしかに多いです。そもそもの前提として税務調査がおこなわれる割合を整理しておきますと、仮に亡くなった方が100人にいた場合、そのうち8人ほどは相続税の申告が必要となり、4人ほどに税務調査が入っているのではないかといわれています。
税務署もやはり職員の数は限られていますし、すべてを調査するわけにいきません。効果的に調査をしようとすると、どうやってその「4人」を選ぶかが税務署にとってのポイントとなります。その具体的な選択基準としてよく言われているのは「申告書に税理士の名前があるか」という点です。
申告書を自分で作ってみようという人は案外多くいらっしゃいます。もちろん問題なく申告できていることもあるのでしょうが、確率としては、プロの税理士が作成する場合よりも間違いが見つかる可能性は高いでしょう。実際に税務署内部の話はわからないですが、「税理士の記名がなく、間違いの多そうなところに目をつけて税務調査をしている」というのは合理的にうなずける話だと思います。
相続に向けて、生前にどのような準備を進めておくとよいでしょうか。
財産を残す被相続人側と、引き継ぐ相続人側に分けてお伝えしていきます。まず被相続人に関しては「遺言を残しておくこと」がやはり大切です。相続に関してなかなか自分ごととしては考えにくいでしょうし、「うちの家族は仲が悪くないから話し合って決めてもらえば大丈夫」と思うかもしれませんが、相続人のうち誰か1人がお金に困っていたり、過去に不平等感を持っていたりしたことで、死後、トラブルに発展するケースを私自身見てきました。「遺言さえあればこんな事態にならなかったのに」と思います。
また、被相続人が準備しておくことで言えば、「家族内で財産管理やお互いの考えについて話し合っておくこと」「相続についてある程度知識をつけておくこと」が大切です。
相続はなかなか口に出しづらい話題ではありますが、「認知症などの場合に備え、お父さんお母さんのためにお金を使えるように準備しておこうよ。信託銀行でこういった商品を設定しておくといざという時の備えになるよ」などと、あくまでリスクに備えるために把握しておきたいんだという文脈で、できる限り話し合っておくのがよいのではないかと思います。
加えて、相続についての基礎知識をある程度つけておくということも必要です。実際によくあるケースですが、旦那様の稼いだお金を奥様名義の口座に入れていて、奥様は「私名義の口座だから私の財産だ」と誤って認識していたことがありました。実際には旦那様の財産として課税の対象となります。
何が財産となるのかがわかっていないと、非課税だと思っていた財産について税金を支払う必要が出てくる、という事態も考えられます。昨今は相続に関する無料セミナーなども多く開かれていますので、そういったものを活用しながら基礎知識をつけておくことも大切ですね。
相続に強い税理士の選び方のポイントを教えてください
今の時代ですから、まずはホームページで検索されるのが一番よいと思います。相続に強い税理士事務所であれば、「相続専門税理士」と名乗っていたり相続についての情報発信を定期的に行っていたりと、ホームページ内には相続にまつわる文言が必ずあるはずです。
一般の人からすると「税理士は税金のことならなんでも知っている」と思うかもしれませんが、実際には、相続についてまったく経験のない税理士も実は多くいます。相続に強い税理士を選ぶことはやはり重要です。
当社のお客様でこのようなケースがありました。
地主をやっていた親から相続を受けた方だったのですが、顧問税理士が「相続はやったことないけれども、ぜひやらせてもらえないか」と言うので依頼をしたそうです。税理士ですから納税自体は間違えていなかったようですが、その税理士は、お金での納税ができない場合に物で納付できる『物納』という制度をとらず、金融機関から多額のお金を借りて納税するという形を取ったそうです。
十数年にわたって大変な金利を払い続けて大変な目に遭った後でそのお客様が当社に来られたのですが、私たちからすると「現金での納税ではなく物納しておけばよかったのではないか」ということを思うわけです。
相続対策の経験や知見がないとどうしても相続特有のポイントというものが分かりません。ただ「税理士だから」「値段が安いから」といった理由だけで選んでしまうのは怖いと感じたケースです。
税務に関する近年の動向。税制改正による相続への影響は
コロナ罹患などで相続税申告が期限に間に合わない場合、どうすれば良いでしょうか。
災害を受けて申告できないなど合理的な事情がある場合には、個別の事情に応じて申告期限の延長を申請できる制度があり、コロナ罹患もそのケースに該当します。相続税だけでなく所得税や法人税も申請の対象です。
申請申告する場合は事前相談ではなく、申告する際、申請書の中に一緒に理由を記載します。現時点ではまん延防止等重点措置なども解除されてきており、認められるかは個別の事情によるのではっきりと断言はできませんが、今の情勢の中でどうしても申告に行くこと自体が難しい事情はあるでしょうから、まずは税理士に相談してみるのがよいと思います。
2020年4月に施行された「配偶者居住権」について、概要と相続への影響を教えてください。
配偶者居住権は、残された配偶者の住む場所を守るための仕組みです。たとえば、亡くなった夫の財産を配偶者と子が相続する場合について考えてみましょう。
相続される財産が自宅のほかにあまりなかった場合、遺言がなければ基本的には法定相続分が適用されます。配偶者と子の関係が悪かったり、子がどうしてもお金に困っていたりすると、子としては家を売って法定相続分を相続したいということになりますが、そうすると、夫と一緒に財産を築いてきた配偶者は、家を失い住む場所に困ってしまいます。
そういった状況を国としても対策しようとして施行されたのが配偶者居住権という制度です。夫が生前に配偶者に対して配偶者居住権を設定しておけば、原則、配偶者は亡くなるまでそこに住めるようになりました。
これまでは「家」という一つの財産としか見なせなかったものを「配偶者居住権」と「所有権」に分割して相続できるようになったことで、節税対策になる場合もあります。配偶者居住権は、配偶者が亡くなった時点で消滅します。
配偶者が亡くなると、所有権だけを持っていた子どもは自動的に家を相続できるのですが、配偶者居住権がなくなっているため、配偶者から子への相続は発生しない、という仕組みです。
配偶者居住権の仕組みは、残された配偶者の居住地の確保にも節税対策にも有効な手立てとなりうる方法として注目されています。
今年4月の成年年齢の引き下げによって、相続への影響はありますか?
そもそもの前提として、相続人が成年か未成年かでもっとも大きく異なる点は親権者の有無にあります。
たとえば配偶者と未成年の2人の子どもがいる夫が亡くなった場合、遺言がなければ法定相続分として配偶者が1/2、子2人が1/4ずつもらう権利があります。しかし、未成年だと自分で判断できないとされていますので親権者の同意が必要です。
通常であれば親権者が同意すればよいだけという話になりますが、このケースでは、配偶者と子が利害関係にあります。3人で話し合ってきめるわけにはいかず、子に代理人を立てる必要があります。未成年の場合は自分で判断ができず代理人を立てて分割協議をする必要がある、という点が成年か未成年かで大きく異なる点です。
4月から成年年齢が18歳に下がったということは、子がより早く自分自身で判断できるようになったということです。それは「できるようになった」とも「判断しなくてはいけなくなった」とも言えると思います。良い影響となるか悪い影響となるかは、本人次第ということいえる点もありそうです。
諸外国と比べると、国内の相続税の動向をどのように感じますか?
そもそも相続税がある国とない国に分ければ、相続税がある国のほうが少ないのです。あったとしても超富裕層だけを対象にしていることもあります。たとえばアメリカは非課税枠がおよそ12億円、イタリアが1億4千万円です。米国などは相続にかかる税金の存在すら知らないという国民が多いでしょう。イタリアは税率が4%程度ですから負担感はありません。
一方日本では、相続税における非課税枠が平成27年には大幅に削減されました。課税すら珍しいなか課税強化の方向に進んでいる動きは、世界的にはかなり珍しい状況にあると思います。
国ごとにさまざまな考え方があって一概に良い悪いと言えない面はありますが、課税強化はお客様に直結する部分ですので、私も常に強く関心を持っています。同じく平成27年に、「国外転出時課税制度」という、富裕者層が1億円以上超の有価証券を持っていた場合にその含み益に課税する制度も創設され、日本から脱出するにも税金がかかるようになりました。
この課税強化の流れがどこまで向かうか懸念しています。暗号通貨も国外転出時課税の対象財産に追加されたり、預金に固定資産税のように税金がかかるようなことにもなってくるかもしれません。課税の動向には今後も注視していきたいです。
「複雑な相談でこそ強みが生きる」この先担っていきたい役割
今後目指したいことをお聞かせください
これまでお話してきたように、当社は国際相続をメインに手がけてきました。今後も引き続き注力していきたいと考えております。国で言えばアメリカや欧州の一部の経験や知見は重ねてきましたので、さらに国を広げて世界のほかの多数の国の相続、贈与関係にも挑戦していきたいです。
税理士事務所の中で担っていきたい役割などはありますか?
税に関する悩みがお客様それぞれによって違うということは、どのようなサービスが満足いただけるかもさまざまということです。簡単な内容であれば、安いことや早いことが喜ばれるでしょう。一方、複雑な内容には豊富な経験値と知識に裏打ちされた対応が求められます。
SUパートナーズでは、そのお客様にもっとも合う内容をオーダーメイドで提案しており、複雑な案件であればあるほど私たちの強みが生きると自負しています。原則2名以上で対応している分ある程度の報酬がかかりますが、報酬の比較だけでは測れない価値で選ばれる税理士事務所であり続けたいと考えています。

乾 潤一 様
SUパートナーズ税理士法人 代表社員
■企業プロフィール
社名:SUパートナーズ税理士法人
横浜事務所:神奈川県横浜市神奈川区金港町6-3 浜金港町ビル3階
TEL:045-442-0851
赤坂事務所:東京都港区赤坂2-23-1 アークヒルズフロントタワーRoP701
TEL:03-6435-5255
相続専門税理士の無料相談をご利用ください
ご家族の相続は突然起こり、何から手をつけていいか分からない方がほとんどです。相続税についてはとくに複雑で、どう進めればいいのか? 税務署に目をつけられてしまうのか? 疑問や不安が山ほど出てくると思います。
我々ベンチャーサポート相続税理士法人は、相続人の皆さまのお悩みについて平日夜21時まで、土日祝も休まず無料相談を受け付けております。
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