この記事でわかること
- 親の不動産賃貸業を相続するときの手続き
- 個人事業主の親が亡くなったときの遺産分割方法
- 親の不動産賃貸業を相続するときの注意点
個人事業主として不動産賃貸業をしていた親の事業を相続する場合は、相続に関する手続きと事業を引き継ぐための手続きが必要となります。
この記事では、不動産賃貸業をしていた個人事業が死亡した場合の相続手続きと注意点を解説します。
相続手続きと注意点を理解することで手続を正しく行い不動産賃貸業の相続手続きがスムーズに進みます。
目次
親の不動産賃貸業を相続するときの手続き
親の不動産業を相続する場合に必要となる代表的な手続きは以下のとおりです。
各手続の期限を確認し、期限までに手続を行いましょう。
親の不動産業を相続する場合に必要となる代表的な手続き
- 相続税申告
- 準確定申告
- 相続登記
では、それぞれの手続きの内容と手順について解説していきます。
相続税申告
親の不動産業を相続する場合、正味の遺産総額(相続財産)が基礎控除額(3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える場合は、相続税の申告が必要となります。
相続税の申告が必要な場合は、期限内(被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内)に申告手続きをしましょう。
基礎控除額を超えていない場合は、相続税に関する手続は不要です。
しかし、相続人が特例を適用して納税額が0円になった場合は、税務署へ適用した旨の申告が必要となります。
相続税申告における相続税の計算は、相続税の課税遺産総額から法定相続人ごとに計算をします。
相続税の計算は以下の手順で行います。
- 課税遺産総額を法定相続分で分割
- 各相続人で仮の相続税額を計算
- 相続税の総額を算出
- 相続税の総額に各相続人が実際に取得した相続割合を適用
1.課税遺産総額を法定相続分で分割
相続人が法定相続分によりそれぞれ相続したとし、相続税の課税対象となる課税遺産総額を、法定相続分で分割。
2.各相続人で仮の相続税額を計算
法定相続分で分割した取得金額に相続税率をかけ各相続人で仮の相続税額を計算。
3.相続税の総額を算出
各相続人の仮の相続税額を合計して相続税の総額を算出する。
4.相続税の総額に各相続人が実際に取得した相続割合を適用
算出した相続税の総額を、遺言書の内容や遺産分割協議で各相続人が実際に取得した相続割合を適用し計算し直す。
準確定申告
不動産賃貸業をしていた親が取得していた不動産収入に関して、準確定申告をする必要があります。
準確定申告とは、被相続人の所得を相続人がかわりに確定申告手続をすることをいいます。
申告期限内に申告と納税手続が必要です。
準確定申告の申告期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」です。
提出先は、被相続人の死亡時点において生活を拠点としていた住所を管轄している税務署になります。
相続登記
不動産賃貸業をしていた親の所有していた不動産を相続するには、相続登記を行う必要があります。
相続登記とは、不動産を相続した相続人が、法務局において被相続人から相続人へ名義変更する手続のことをいいます。
法務局の相続登記手続で一般的に必要となる書類等は以下のとおりです。
必要書類 | 取得方法 |
---|---|
相続不動産の登記事項証明書(登記簿謄本) | 法務局 |
被相続人の住民票の除票(本籍記載) | 市区町村役場 |
被相続人の死亡時から出生時までの戸籍・除籍・改製原戸籍の謄本 | 市区町村役場 |
相続人全員の現在の戸籍謄本 | 市区町村役場 |
遺産分割協議書もしくは遺言書 | 公正証書遺言:公証役場 自筆証書遺言:裁判所(検認調書) |
相続人全員の印鑑証明書 | 市区町村役場 |
不動産を取得する相続人の住民票 | 市区町村役場 |
固定資産評価証明書 | 市区町村役場 |
登録免許税(収入印紙) | 郵便局 |
個人事業主の親が亡くなったときの遺産分割方法
被相続人が遺言書を作成していた場合は、遺言書に従うのが原則です。
遺言書がない場合や、遺言書と異なる分割が可能な場合は、相続人全員(受遺者がいる場合は受遺者を含む全員)で遺産分割の協議をおこない、相続する人を決定します。
不動産収入の分割方法
不動産賃貸業をしていた親の不動産収入を相続した場合、相続人は所得税の確定申告が必要となる可能性があります。
確定申告方法は、遺言書の有無により異なります。
遺言書がある場合
遺言書がある場合、相続人は遺言書で指定された割合で取得した不動産収入について確定申告を行います。
遺言書がない場合
遺産分割協議が成立するまでは、法定相続人が法定相続分で不動産収入を取得します。
遺産分割成立後は、遺産分割協議において取得することになった割合で不動産収入を取得し、確定申告を行います。
不動産の相続登記方法
相続登記は、不動産を取得した相続人が不動産の名義変更手続を行います。
相続登記の方法は遺言書がある場合と、遺産分割協議による場合によって異なります。
遺言書と遺産分割協議それぞれの相続登記で必要となる代表的な必要書類は以下のとおりです。
遺言書での相続登記 | 遺産分割協議での相続登記 |
---|---|
被相続人の戸籍または除籍謄本 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍、除籍、改製原戸籍謄本 |
被相続人の住民票の除票または戸籍の附票(除票) | 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票(除票) |
相続人(遺言書により不動産を相続する人)の戸籍謄本、住民票 | 相続人全員の戸籍謄本(または除籍、改製原戸籍) |
遺言書(自筆証書遺言の場合は裁判所の検認調書が必要) | 相続人(分割協議書により不動産を相続する人)の住民票 |
不動産の固定資産税評価証明書 | 遺産分割協議書 |
遺産分割協議書に押印した人全員の印鑑証明書 | |
不動産の固定資産税評価証明書 |
親の不動産賃貸業を相続するときの注意点
親の不動産賃貸業を相続した場合、廃止届や開業届が必要となる場合があります。
また、各種名義変更手続きも忘れず行い、賃借人に迅速に通知をすることが大切です。
個人事業主の場合は廃止届が必要
親が個人事業主で不動産賃貸業をしていた場合、廃止届が必要になります。
廃止の届出に必要となる書類は以下のとおりです。
必要書類 | 内容 |
---|---|
個人事業の開業・廃業等届出書 | 廃業の届出 |
所得税の青色申告の取りやめ届出書 | 青色申告をしていた場合 |
消費税の事業廃止届出書 | 課税事業者が事業を廃止した場合 |
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 給与等の支払事務を取り扱う事務所等の届出をしていた場合 |
個人事業主として開業する場合は開業届が必要
親の不動産賃貸業を子が個人事業主として相続する場合は、開業届が必要となります。
開業届に必要な書類は以下のとおりです。
必要書類 | 内容 |
---|---|
個人事業の開業・廃業等届出書 | 開業の届出 |
所得税の青色申告承認申請書 | 青色申告の適用を希望する場合 |
消費税課税事業者選択届出書 | 消費税課税事業者の適用を希望する場合 |
青色事業専従者給与等に関する届出書 | 青色事業専従者給与額を必要経費に算入する場合 |
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 給与等の支払事務を取り扱う事務所等の解説を希望する場合 |
各種名義変更手続を忘れずに行う
不動産賃貸業をしていた親名義で契約していた各利用料や契約の名義変更、家賃振込先の変更を忘れずに行いましょう。
代表的な手続は以下のとおりです。
手続 | 手続先 |
---|---|
水道光熱費(賃貸物件の共用部分等)の名義変更 | 電力会社、水道局等 |
保険の契約者名義変更 | 各保険会社 |
振込先口座の変更 | 金融機関 |
ローンの契約名義変更(借入がある場合) | 金融機関 |
賃借人への通知を迅速に行う
不動産業を相続した場合、賃借人が今後の家賃振込先や連絡先が分からずに困ることのないように、迅速に通知しましょう。
相続人間で争いがあり、遺産分割協議に時間がかかりそうな場合は、相続人の代表口座の作成を検討しましょう。
今後の事業に支障のない分割を検討する
複数の相続人間で不動産賃貸業をしていた相続人の不動産を相続する場合は、今後の事業に支障のない分割方法を検討しましょう。
相続した不動産を複数の相続人間で共有にすると、後々売却や修繕や管理について意見が割れてしまい、不動産賃貸業に影響を及ぼす可能性があるためです。
遺言書がある場合でも、以下の条件を満たせば遺産分割協議での分割が可能となります。
遺言書の内容と異なる遺産分割協議ができるケース
- 遺言書内で遺産分割が禁止されていない
- 相続人全員の合意がある
- 遺言執行者の同意がある
- 法定相続人ではない受遺者が遺贈の放棄をするか遺産分割協議に参加する
まとめ
個人事業主として不動産賃貸業をしていた親の事業を相続する場合は、賃借人に迷惑がかからないように相続税の申告や相続登記などの手続きを正しく行い、事業の相続手続きをスムーズに進めることが大切です。
また、今後の事業に支障のない分割を検討することも必要になります。
相続税の申告手続きや分割の方法が心配な場合は、専門家に相談しましょう。
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