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最終更新日:2023/7/3

遺言書にかかる費用を詳しく解説

本間 剛 (行政書士)
この記事の執筆者 行政書士 本間剛

ベンチャーサポート行政書士法人 代表行政書士。山形県出身。

はじめて相続を経験する方にとって、相続手続きはとても難しく煩雑です。多くの書類を作成し、色々な役所や金融機関などを回らなければなりません。専門家としてご家族皆様の負担と不安をなくし、幸せで安心した相続になるお手伝いを致します。

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もし、あなたの残す遺言が法律のルールに定められた要件を満足していない場合には、遺言の一部または全部が無効となってしまう可能性がありますので注意が必要です。

遺言は自筆証書遺言の形式を選択すれば、自力で作成することも不可能ではありません。

しかし、より確実にあなたの意思を家族に伝えるためには、専門家のアドバイスを受けながら遺言を作成するのが適切といえます。

専門家を利用した場合には費用が必要になりますので、その金額相場についても知っておきましょう。

専門家のアドバイスを受けながら遺言を作成する方法としては、公正証書遺言の方法があります。

公正証書遺言作成にかかる費用

公正証書遺言とは公証役場という役所に所属する公証人という専門家と相談しながら遺言を作成する方法です。

公正証書遺言を作成するためには、公証人に対して手数料を支払う必要があります。

公証人に対して支払う手数料は基本手数料が1万1,000円で、遺言書に記載する財産の価額に応じて以下のように加算額が決まります。

遺言書に記載する財産の価額 加算額
100万円以下 5,000円
100万円超~200万円以下 7,000円
200万円超~500万円以下 1万1,000円
500万円超~1,000万円以下 1万7,000円
1,000万円超~3,000万円以下 2万3,000円
3,000万円超~5,000万円以下 2万9,000円
5,000万円超~1億円以下 4万3,000円
※公証人の手数料 早見表 参考:日本公証人連合会|公証人手数料令第9条別表

これ以降の金額は、財産の価額5,000万円刻みで手数料が加算されます。

3億円以下までの金額の場合は1万3,000円加算、10億円以下は1万1,000円加算、10億円超の場合は8,000円ずつ加算となります。

その他、公証役場まで出向くのが難しい際に公証人に自宅まで出張してもらったような場合には、交通費などの実費が必要になります。

公正証書遺言作成にかかる費用の具体例

例えば、妻に1億円、息子に5,000万円を相続させる旨、公正証書遺言に記載するときには、以下のように公証人に支払う費用が発生します。

1万1,000円 4万3,000円 2万9,000円 8万3,000円
基本手数料 妻の分 息子の分 公証人に支払う費用
1万1000円 4万3000円 2万9000円
基本手数料 妻の分 息子の分
8万3000円
公証人に支払う費用

公正証書遺言を作成するときに準備するもの

公正証書遺言を作成するときには、公証役場に行く前にある程度遺言の内容を決めておく必要があります。

遺言の内容を決めるためには、何よりも遺言として残す遺産の内容を正確に把握することから始めます。

不動産などの遺産がある場合には法務局に行って登記簿謄本を取得するとともに、戸籍謄本や印鑑証明、住民票なども必要になります。

役所でこれらを発行してもらうためには発行手数料が必要になりますから、それらの費用についても考慮しておきましょう。

なお、印鑑証明や住民票の発行手数料は1通につき300円程度、登記簿謄本の発行手数料は1つにつき600円程度です。

公正証書遺言を作成するときの流れ

公正証書遺言を作成するときの流れは、①公証役場に行く前の準備と、②公証役場内で行う手続きの2つに分かれます。

①公証役場に行く前の準備

まず、どのような遺言を残したいかの内容について、遺言者自身の考えを整理しておきましょう。

具体的には、だれを相続人として指定するのかと、それぞれの相続人にどれだけの割合の遺産を相続させるのかを決めておきます。

また、以下のような書類は公正証書遺言を作成するために必ず必要になりますから、事前に役所で取得しておきましょう。

1 遺言者の印鑑証明
2 遺言者の戸籍謄本
3 相続人として指定する人の住民票
4 遺産に不動産がある場合には、登記簿謄本と固定資産税の明細
5 証人2名の職業や名前、住所や生年月日がわかるもの

②公証役場内での手続き

以上のものが準備できたら、いよいよ公証役場に連絡をして公証人とアポイントをとりましょう。

指定した日程に必要書類を持っていき、公証人にあなたが残したい遺言の内容を説明します。

公証人は遺言の内容についてさまざまなアドバイスをしてくれますので、希望をあまさず伝えることが大切です。

決定した遺言の内容については公証人が法律上必要な書式をそろえてくれます。

遺言の内容が固まったら、後日、証人2名を連れて公証役場にいき、承認の立ち合いのもとで正式に公正証書遺言が作成されます。

作成した公正証書遺言は原本を公証役場で保管してもらえますので、紛失の恐れはありません。

また、正本と謄本を渡してくれますので、自宅などで大切に保管しましょう。

公正証書遺言を作成するときの注意点

公正証書遺言を作成する際には、以下のような点にも注意しておきましょう。

遺言執行者を指定する

遺言の内容をより確実に実現するためには、遺言の中で遺言執行者を指定しておくことが望ましいです。

遺言執行者は、その名の通り相続が発生した後に遺言の内容を執行するべく事務を行ってくれる人です。

遺産として残された銀行口座の管理を行ったり、不動産の名義変更などの事務を行ってもらったりする人ですので、法律的な実務知識がある人を指名するのが良いでしょう。

遺言執行者に必要な資格などはありませんが、司法書士や弁護士といった法律の専門家に依頼するケースが多いです。

証人になってもらう人の選び方

公正証書遺言を作成するためには、2名の証人が必要になります。

その際、証人となる人に次のような資格を満たしているかを確認しておいてください。

1 未成年者は不可
2 遺言に利害関係のある人や、その親族や配偶者は不可
3 遺言書の内容を確認できない人は不可
4 公証人の関係者や役場の職員は不可

こちらについても、法律家に遺言執行を依頼した場合には証人2名を準備してくれることが多いです。

遺言の作成を専門家に依頼した場合の費用

上記のように、公正証書遺言の作成では公証人に対して費用を支払いますが、遺産相続の内容については自分で考えるより、法律に詳しい専門家を利用する方が遺言書の作成がスムーズに進み適切です。

遺産相続に関する法律問題を相談できる法律家としては、行政書士や司法書士、弁護士が考えられます。

一般的には弁護士がもっとも専門性が高い専門家とみなされており、司法書士、行政書士と続きます。

また、銀行や信託銀行でも遺言書を作成するプランを用意していることがあります。

金融機関の遺言書作成プランの場合、相続財産の総額の1~2%前後で報酬を設定しているケースが多いです。ただし、30万~150万円程度の最低報酬額が定められている場合が多く、弁護士などの専門家に依頼する場合と比較して、費用が高くなる傾向にあります。

各専門家へ支払う費用

各専門家に遺言作成を依頼した場合、依頼する専門家・財産状況にもよりますが、15~30万円程度の費用がかかります。

財産が多い・複雑な場合は更に費用がかかってきます。

弁護士に依頼する場合

遺産分割で相続人同士がトラブルになっている、遺留分を明らかに侵害する場合など、間違いなく争いとなるであろうことが予想される内容の遺言書の場合には弁護士に依頼するのがいいでしょう。

司法書士に依頼する場合

遺産に不動産が含まれる場合には、不動産を特定した上で遺言書を作成する必要があります。不動産の登記を同時に行う場合には不動産登記をすることができる司法書士へ依頼するのがいいでしょう。

行政書士に依頼する場合

他の専門家と比較すると費用が低くなる傾向にあります。不動産などが含まれず、財産が現預金のみの場合などの場合は行政書士に依頼してみるのもいいでしょう。

自分が信頼できる専門家を選ぶことが重要

専門家へ支払う費用には専門家の違いの他にも、実際に相談する事務所の相談スタンスによって、費用や印象は大きく異なるというのが実際のところです。

実際に依頼をしてみると「もっと詳しく説明してほしいのに…」という不満が出たり「なんだか料金が相場より高いかも…」というような不満を感じたりすることもあるでしょう。

また、専門家にもそれぞれ得意分野があり、遺言書作成を依頼する場合は相続に詳しい専門家に依頼するべきでしょう。

どの専門家に相談するかは、実際に相談をしてみて、具体的な状況について親身に解決策を模索してくれる人かどうかを見極めるほかはありません。

相談のみであれば無料で受け付けている専門家も少なくありませんから、実際に専門家の事務所に足を運んでみることが大切です。

まとめ

今回は、遺言書の作成のために必要になる費用について説明しました。

自筆証書遺言を選択すれば、まったくお金をかけずに遺言書を作成することも可能です。ただ、せっかく作成しても無効になってしまっては意味がないので、実際作成する際には遺言書の書き方・文例・見本・サンプル集のページを参考にしてみてください。

有効性の面から言えば、圧倒的に公正証書遺言をお薦めします。

遺言内容は決まっているけれど遺言の書式について不安がある方は公正証書遺言を選択すれば問題ありません。

さらにくわしく遺言書の内容についてもアドバイスを受けたい方は、弁護士や司法書士といった専門家に相談してみることをおすすめします。

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