茨城県水戸市、東京都千代田区を拠点に、事業承継や相続相談を手掛ける「税理士法人コンパス・ロイヤーズ」。顧客の相談に税理士目線のみで対応するのではなく、弁護士や行政書士等の士業とケースバイケースで手を組み、的確にサポートできる体制を強みとしている。同法人の代表社員CEOであり、運営する「茨城県相続相談センター」のセンター長でもある井野 武士氏に、事業承継の課題や相続相談の傾向、今後の思いを聞いた。
目次
事業承継と相続相談を柱に事業を展開。拠点の茨城は、仕事に対する自信を持たせてくれた土地
税理士法人コンパス・ロイヤーズの事業内容をお聞かせください
私たちは本拠地である茨城県水戸市と、東京都の神田で税理士法人を運営しています。会計、資産税、コンサルティングの3部門に分かれていて、計27人が在籍し、うち3人が税理士です。
資産税の中でも特に事業承継を得意とし、年間20件以上の依頼を受けています。いわゆる相続に相当する「親族内承継」、従業員に事業を渡す「親族外承継」、M&Aに代表される「社外承継」に関してコンスタントに依頼を受けています。
相続税の相談や依頼は年間100件以上で、茨城県内ではトップクラスと自負しております。
最も大切にしている企業理念は「地域貢献」で、その一環としてインターネットから利用できる「茨城県相続相談センター」を運営しています。これまで2,000人以上から相談を受け、いずれもなかなか好評で、ホームページには「お客様の声」を載せています。
「茨城県相続相談センター」はどのような役割を果たしているのでしょうか?
税理士法人コンパス・ロイヤーズが運営し、主にホームページを通じて相続で困っている方々の相談に乗っています。内容に応じて、提携する弁護士、行政書士、司法書士、社会保険労務士など約30人の中から、最も適切に対応できる人を紹介できる点が最大の特徴です。
いずれも初回は無料で、その後の手続きなども低価格を原則としています。
2,000人以上から相談を受ける中、印象に残っている出来事はございましたか?
「4人のきょうだい間で相続の話し合いが成立せずに困っている」と、茨城県内の方から相談を受け、初回は私が対応しました。相手に電話をかけても出なかったり、話が全くかみ合わなかったりするとのことで、内容から判断して行政書士と弁護士に連携して担当してもらうことにしました。
詳細は伏せますが、2人に任せたところスムーズに事が運びました。弁護士を通じて裁判を起こすのではなく、話し合いで解決する方向を選んでくれたのがうれしかったです。また全てを弁護士に対応を任せるのではなく、行政書士と協調して対応することで費用面も割安に抑えることができました。
お客さまに心から喜んでもらえた案件の一つで、改めて困りごとに細かく対応できる体制を整えて良かったと実感しました。利益も大切ですが、こうした方針は今後も優先させたいです。
相談される方々の年齢や職業などに傾向はございますか?
引用元:茨城県相続相談センター
茨城県相続相談センターでは、40代や50代からの相談が多いです。農家や公務員の方が多い印象ですね。
茨城県は米の生産量で全国6位に入るような米どころです。広い土地の地主でもある稲作農家から「不動産を名義変更したい」「相続税の申告をお願いしたい」といった相談もよくお受けします。
また「預金をどう解約すればいいの?」といった問い合わせもあります。行政書士が電話や対面で解約方法を伝えますが「面倒だから任せたい」という相談にも対応しています。
一方の「税理士法人コンパス・ロイヤーズ」にはどんな特徴がございますか?
弊社の法人顧問業務については、関与先様の売上規模の中央値は1億円から5億円程度で社長の年齢が40~50代と比較的若い傾向にあります。
相続税については、9割程度が相続が発生した後の相談で、60~70代の方からの相談が一番多いです。
事業承継については「社長が健在のうちに相続の対策をしておきたい」という相談が一番多く、30代~80代と幅広い年齢層からのご相談になっています。
井野様は茨城県を気に入って定住を決められたそうですが、茨城という土地の魅力を教えてください
茨城の方々の人柄に引かれました。私がサラリーマンだったころ、茨城に来るまでは頑張ってもなかなか結果につなげられず苦しい思いをすることが多かったです。しかし、茨城に来てからは周りの方々が「井野さんのために頑張るよ」と応援してくださり、初めて自分に自信を持つことができ、結果につなげることもできました。
「皆さんのために私も前に進もう」と、気力をもらえたおかげで今に至っています。人々の温もりを感じるとともに、茨城のみなさんから頂いた恩は一生かけて恩返しをしようと決めています。
なお茨城県という地域性については「人柄が良い」「農家が多い」という特徴が影響しているのか、相続については「長男がすべてを引き継ぐ」という家督制度のようなものが今も面影を残しています。他のきょうだいも異議を唱えることも少なく、先祖代々の土地を守っていこうという意識が強いですね。
事務所の強みや特徴について、どうお考えでしょうか?
他士業との提携が強みです。お客様の相談内容や属性に合わせ、ピンポイントで対応できる外部の方々とタッグを組めるのは効果的です。この連携が他にはない魅力ですね。
例えば、司法書士も得意分野はさまざまです。「従業員持株会を作りたい」「種類株を導入したい」「ホールディングス化したい」といった異なる要望に、的確に対応できる先生に都度お声がけして協調してお客様の幅広いご要望にお応えしています。
AIの登場はチャンス。コンサルティングや事業承継など、人間にしかできない仕事に注力できる
相続税の納付後に税務調査が入ることもあると聞きますが、どのようなケースがございますか?
すべての方が調査対象ですが、中でも「財産規模が大きい」「すでに税務署側が申告漏れを把握している」といった場合に実施されることが多い印象を受けています。
特に現金周りでは「引き出したお金を誰かに贈与したのか」「お金が手元にあるのに未申告では」などと指摘されます。大金を引き出したのに用途が明確でない場合、調査では指摘されるものと考えておきましょう。
遺言書の役割について、どう理解すればよろしいでしょうか?
遺言書は財産の分配方法を示すだけでなく、被相続人の思いを伝えるものだと認識しています。
相続が発生した時、相続人が被相続人の思いを知らない状態では、金額や土地の大小を問わず争いの元になりかねません。遺言書が無いばかりに配偶者やきょうだいが離れ離れになるのは、被相続人も望まない結果でしょう。遺言書には付言事項という欄があり、思い思いの言葉を添えられます。財産の分配について明記したら、この項目ではぜひ、残される人への感謝の気持ちを記したり、遺言書を書こうと思った経緯等を書いてあげてほしいです。
弊社のお客様で、付言事項に動画でメッセージを残した方がいました。遺言書本文は定型的な文章になりがちですが、付言事項は自由に作成できます。動画で本人が感情を込めて「ありがとう」と伝えていたのは言葉の重みを感じましたね。また奥さまや子どもに対し「これからも健康で仲良く暮らしてほしい」と呼びかけていました。動画自体に法的効力はありませんが、遺言書と合わせて残すのも、争いも避けられ、今の時代ならではの素晴らしい方法だと思います。
「AIにより税理士の仕事がなくなるのでは?」という説に対し、どのような意見をお持ちですか?
税理士の業務にはデータの集計や入力など、確かにAIが得意とする単純作業も含まれます。これらが機械中心になるのは間違いなく、その部分での税理士の作業量は確実に減少します。
しかし私はAIの台頭をうれしく思っています。実は私自身は計算や処理が苦手でいつもスタッフに任せてきましたが、一方で「彼らに単純作業ばかりさせては申し訳ない」とも考えていました。今後は機械にできる業務は機械に委ね、生み出した余力で人間にしかできない仕事を増やしていきたいです。
これは例えばコンサルティングのような業務であり、スタッフに経験するチャンスを幅広く提供することで税理士事務所で働くことの魅力がより高まるでしょう。税理士自身も「考えて提案する」という作業が増え、税理士という職業の魅力を向上させるまたとないチャンスと考えています。
コンサルティングの他に「人間にしかできないこと」はございますか?
冒頭で話した事業承継もまた、人間だからできる仕事です。会社を親族に引き継ぐのか、従業員に委ねるのか、社外に売却するのか、あるいは無くしてしまうのか。数字よりも、経営者や従業員の思いのほうが圧倒的に重要になるため、AIには答えを選べないでしょう。
これからは中小企業の経営者の高齢化がさらに進みます。いかに寄り添って会社の未来を考えられるか……まさに「人間にしかできないこと」ですね。
オンラインの時代、あらゆる情報が東京から全国へ。埋もれていた地方の知見にも出合えるように
インターネットでの検索も含め、相続に強い税理士の見つけ方を教えてください
▲お客様の真の利益を考え行動し続ける税理士法人コンパス・ロイヤーズのスタッフ
「相続税の申告件数」はひとつの重要な指標です。税理士の中には専門分野が異なるため、相続の案件を扱うのは年に1回程度という方も少なくありません。ホームページに申告件数が載っているかもしれません。ぜひ事前に目を通しましょう。
また、実際に依頼する前に面談を設けてください。実績だけでなく「相談しやすい」「アドバイスしてくれる」といった姿勢を持っていることも大切です。もちろん、対面で相続税の申告件数も聞けたら尋ねてみましょう。
相性の良い税理士と出会うにはどうすれば良いでしょうか?
ウェブ面談も浸透している今、オンラインで数人と話すことです。「相性が良い」の基準は人それぞれですが、話に耳を傾けてくれる方が良いかもしれません。
税理士は「話をしてくれる人は多いが、聞いてくれる人は少ない」です。最善策を見つけるには、その要望を正しく受け取ってもらうことが大切なので、まずは「話を聞いてくれる税理士」を探すこと大事だと思います。弊社ではまずお客様のご要望をしっかりとお聞きすることを社内で徹底しております。
コロナ禍で相続税の申告期限が延長されていますが、それでも手続きが難しい場合はどうすればよろしいでしょうか?
個別の延長措置はありますが、感染者数などの状況が日々変化する中で国税庁の対応も流動的です。そのため都度、税理士や税務署に相談することをお勧めします。ちなみに税理士は申告の延長手続きを代行したり、捺印などが不要な電子申告を案内したりすることも可能です。
以前は「緊急事態宣言で銀行や市区役所に行けない」「身近に感染者が出たから待ってほしい」との理由から、申告が遅れる人も多数いました。しかし現在は、本人が感染しない限り、申告期限に間に合わないケースはほぼ無くなりました。
配偶者居住権とは、どのような権利ですか?
被相続人の配偶者が、相続後も無償で自宅に住み続けられる権利のことです。
配偶者が自宅で暮らしていくには、これまで所有権を取得するのが通例でした。ところが、不動産評価額が高くなるため預貯金の相続分が減少し、生活費がままならなくなるケースが見られました。そのため自宅を手放してお金を確保する方もいたほどです。
そこで所有権に代わり、評価額を下げられる居住権の取得が可能になりました。預貯金の相続分も確保でき、そのまま自宅で生活できます。
一方でデメリットは、不動産を処分する際に各種制限や税金が発生する可能性があることです。また、節税目的だけで行うと租税回避行為と捉えられかねませんので注意が必要です。
成年年齢が18歳に下がったことで相続税や贈与税への影響はいかがですか?
2,500万円までなら贈与税を納めずに贈与を受けられる「相続時精算課税制度」を、18歳から利用できるようになりました。これまで20歳までは1年間で110万円を超えると贈与税がかかる「暦年贈与」しかありませんでしたが、選択肢の幅が広がったのはメリットです。
一方でデメリットは、20歳まで受けられていた相続税の未成年者控除が2年間分引き下げられたことです。今までより未成年者控除の恩恵が20万円減少します。
税制改正大綱で相続税と贈与税の一体化が見送られましたが、今後どうなるとお考えですか?
税制改正大綱でも長く取り上げられているテーマであり、一体化はいずれ訪れるものと考えています。根本には「財産を相続しても、贈与しても、同じ税額に」という考え方があります。
暦年課税から相続時精算課税に統一するという考え方に近いですね。しかし、いま改正しても過去の贈与を全て把握するのは困難なので、一気に改正されるというよりも経過措置は長めにとられるものと予想しています。
暗号資産の相続ではどのようなトラブルが考えられますか?
暗号資産のIDとパスワードを被相続人しか知らない場合、そのまま亡くなられると誰も何もできません。暗号資産による相続税よりも「受け取れるはずの財産が見当たらない」「そもそも資産の存在さえ知らない」といったケースのほうが、相続人にとっては大きな問題です。
暗号資産は国家や企業が管理しているわけではないため、管理者は存在していません。ID、パスワードが不明になった時のフォローがされないウォレット(取引所)も数多く存在し、その場合「あなたの資産が口座に残ったままです」といったアナウンスもありません。相続人にメモを残すなどしなければ永遠に手にすることができなくなってしまうため、しっかり管理しておくことが重要です。
その他、注目している業界の動きはございますか?
コロナ禍の税理士業界では、セミナーなど情報収集の場がリアルからオンラインへと大きく変化しました。これまでは多くのイベントやセミナーが東京に一極集中していましたが、その多くがインターネットの世界に移行しました。東京に行かなければ分からなかった情報が全国に分散し、逆に地方の優れた知見も簡単に得られるようになりました。
非常に便利な反面、時代の変化が加速し、情報格差の拡大は避けられないでしょう。私たちのお客様の中には高齢者もいて、時代の変化に乗り遅れてしまうことも十分にあり得ます。だからこそ常に我々が最新の情報を収集し、必要とする方々に適宜提供することで、格差を減らすことに努めたいですね。
後継者が見つからずに会社を畳む前にM&Aも選択肢に加えてほしい
これからチャレンジしていきたいことをお聞かせください
中小企業の経営者は今後さらに高齢化が進み、自分の代で会社を畳もうと考える人も少なくないかもしれません。企業の減少は日本経済にとっても大きなダメージであり、政府も危惧しています。
この状況を救うのに最も重要なのは事業承継であり、私たちはM&Aにも積極的です。この選択は都市部では盛んになってきましたが、地方ではまだ浸透していません。廃業しか選択肢がないと考えている方々に、企業存続の選択肢として提案し、消えゆく企業を1社でも多く救っていきたいです。
加えて、次年度に埼玉に新オフィスを出店したく準備しています。私は「地域貢献」そして「恩返し」をキーワードにビジネス展開しており、自信を持たせてくれた茨城と、成長させてくれた東京にはすでに拠点を設けました。あとは生まれ故郷の埼玉で「相続」「事業承継」「士業のネットワークづくり」などをテーマに事業を展開させたいです。
井野武士 様
税理士法人コンパス・ロイヤーズ 代表社員CEO
茨城県相続相談センター センター長
■企業プロフィール
社名:税理士法人コンパス・ロイヤーズ
[水戸オフィス]茨城県水戸市五軒町2-2-7 AOI COURT 6F
TEL.029-227-1105
[神田オフィス] 東京都千代田区内神田1-12-14 廣瀬ビル2F
TEL:03-3518-2277
相続専門税理士の無料相談をご利用ください
ご家族の相続は突然起こり、何から手をつけていいか分からない方がほとんどです。相続税についてはとくに複雑で、どう進めればいいのか? 税務署に目をつけられてしまうのか? 疑問や不安が山ほど出てくると思います。
我々ベンチャーサポート相続税理士法人は、相続人の皆さまのお悩みについて平日夜21時まで、土日祝も休まず無料相談を受け付けております。
具体的なご相談は無料面談にて対応します。弊社にてお手伝いできることがある場合は、その場でお見積り書をお渡ししますので、持ち帰ってじっくりとご検討ください。
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