この記事でわかること
- 土地の登記簿謄本に記載されている地目とはどのようなものかわかる
- 地目を変更する登記の手続きの流れを知ることができる
- 地目変更登記の必要書類やかかる費用について知ることができる
土地を所有している人や相続登記を行った人は、土地の登記簿謄本の内容についてある程度知っているのではないでしょうか。
土地の登記簿謄本には様々な事項が記載されていますが、その中に地目が記載されていることもご存知でしょう。
ところで、この地目が現状の土地の状況と一致していない場合、どのように変更するのでしょうか。
ここでは、地目の変更登記の手続きの流れや必要書類、そして費用について解説していきます。
目次
地目とは
地目とは、一言でいえば土地の用途を表すものです。
地目には登記地目と課税地目があり、このうち登記地目は不動産登記法に定められた、全部で23種類の地目のことをいいます。
土地の所在地や所有者などを登記簿謄本に登録する際に、必ず23種類の地目から1つを選択して登記されます。
一度登記された地目は、何もなければその後も変更されることはありません。
そのため、実際の用途と異なる地目となっている場合もあるのです。
地目の変更を行うためには、土地の登記申請者が自身で地目変更登記を行うこととされています。
これに対して、課税地目とは固定資産税を計算する際の根拠として用いられる地目です。
課税地目は9種類に分類され、その状況に応じて指定されています。
土地の現在の状況に応じた地目となり、市区町村により利用状況に応じて変更されることとなっています。
地目変更登記の手続きの流れ
地目変更登記は、登記地目を変更する際に行う手続きです。
たとえば、それまで田や畑だった土地に家を建てた場合などは、「田」「畑」から「宅地」に変更する必要があります。
不動産登記法では、地目に変更が生じたら1か月以内に申請を行うこととされています。
この申請を忘れてしまうと、10万円以下の過料が科されるため、注意しなければなりません。
では、地目変更登記を行う際の流れや、必要書類について確認しておきましょう。
なお、ここでは専門家に依頼をした場合の、地目変更登記の流れについて解説します。
専門家に依頼する
地目変更登記は、専門家に依頼しなくてもその土地の所有者が自分で行うことができます。
しかし、相続によって所有権が移転する場合や、分筆が必要な場合など、専門家に依頼しなければ難しい場合も少なくありません。
そのため、専門家に依頼して地目の変更を行う方がスムーズに進められます。
資料調査
その土地について、法務局や市町村役場などの役所にある書類の調査を行います。
法務局には、その土地の登記簿謄本があります。
また、市町村役場には、その土地の固定資産課税台帳など、固定資産税に関する書類があります。
これらの書類を取り寄せて、書類上の調査・確認を行います。
現場調査
資料調査で取り寄せた書類をもとに、その法務局や市町村役場などの役所が土地の現況調査を行います。
登記上の地目と実際の土地の状況が合っているかどうか、実際に土地の状況を見て確認を行うのです。
そして、実際に地目変更の必要性が確認できるのであれば、次の段階に進むこととなります。
農業委員会での手続き
田や畑といった農地から、原野などそれ以外の地目へ変更するためには、農業委員会での手続きが必要です。
また、そもそも農地法に用途が制限されているため、農地以外への転用が認められない場合もあります。
そのため、農業委員会で農地の転用に関する届出または許可を得る手続きが必要となるのです。
農業委員会の手続きは、行政書士が専門家として行う業務となります。
自分ですべてを行うことは難しいため、早めに農地転用について行政書士に相談するようにしましょう。
登記申請書等の作成
法務局には「土地地目変更登記申請書」と呼ばれる書類が準備されています。
そこで、この土地地目変更登記申請書を作成し、法務局へ提出できるよう準備を行います。
登記の目的は地目変更であり、申請書にはどの土地について地目を変更するのか、その内容を記載します。
また、土地家屋調査士が代理で土地の地目変更を行う場合は「不動産調査報告書」を作成し提出することとされています。
この書類は、専門家が資料調査や現場調査を行った結果をまとめたものです。
土地の詳細な情報や、地目変更登記を行う原因、実際の現地の状況を写した写真などを添付します。
登記申請
登記に必要な書類を作成したら、それらの書類を法務局に提出し、地目変更登記を申請します。
土地の所在する場所によって管轄の法務局が決まっており、その管轄の法務局に提出することとされています。
登記完了証の受領
申請した登記が完了したら、登記完了証が発行されます。
登記完了証が発行されたら、法務局に行って登記完了証を受け取ります。
これで、地目変更登記はすべて完了となるのです。
地目変更登記の必要書類
地目変更登記を行う際には、様々な書類が必要となります。
おもな書類は、以下のとおりです。
- 土地地目変更登記申請書
- 土地の所有者が亡くなっている場合は除籍謄本、相続人の戸籍謄本と住民票
- 農地から農地以外に変更する場合は非農地証明または農地転用書類
- 土地家屋調査士に依頼する場合は委任状、不動産調査報告書等
どのような状況で地目の変更を行うかにより、必要となる書類が変わってきます。
たとえば、相続した土地を農地から宅地に変更したいなどの場合は、多くの書類をそろえなければなりません。
土地家屋調査士に依頼している場合は、確認しながら準備するようにしましょう。
地目変更登記にかかる費用
地目変更登記を行う際には、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。
自分ですべてを行う場合と専門家に依頼する場合で、どれくらいの違いがあるのか確認しておきましょう。
自分で地目変更登記を行う場合
自分で地目変更登記を行う場合、発生する費用は法務局での法定費用だけです。
所有権の移転などの登記で発生する登録免許税は、地目変更の場合には発生しません。
また、地目変更を行うために土地の測量を行う必要もないため、費用はかからないのです。
実際に必要となるのは、法務局までの交通費、役場で戸籍謄本などの書類を取得する際の手数料などです。
一般的に、自分で地目変更登記を行う場合の費用相場は、1筆あたり1万円〜2万円程度になります。
土地家屋調査士に地目変更登記を依頼する場合
地目変更登記に法定費用は発生しませんが、土地家屋調査士に依頼するとその費用が発生します。
土地の状況に問題がなく、地目変更を行うのに支障がなければ数万円程度ですべてを依頼することができます。
一般的に、専門家に依頼した場合の地目変更登記の費用相場は、1筆あたり5万円前後です。
地目変更登記の手続きは自身で行うことも可能ですが、時間と労力を節約するために専門家に依頼するのも選択肢になります。
地目変更に関するよくある質問
地目変更を行う場合、あるいは地目変更しなければならないのか考える場合に、様々な疑問が浮かんでくるのではないでしょうか。
ここでは、その中でよくある質問についてお答えします。
地目変更しなければならないのか
地目変更しなくても、大きな支障はないように思う方もいるでしょう。
しかし、実際には地目変更をしなければならない理由があります。
それは、宅地以外の土地に住宅を建てると、住宅ローンが組めなくなるためです。
よくあるのが、もともと農地だった土地を造成して家を建てるケースです。
このような場合、田や畑から宅地に地目変更しないと、金融機関が住宅ローンの抵当権を設定できません。
抵当権が設定できなければ、金融機関は融資を行うことはないため、住宅ローンは組めません。
そのため、実態に合わせた形で宅地に変更しなければならないのです。
このようなケース以外でも、地目変更が必要なのに地目変更登記を怠った場合のために、罰則規定が設けられています。
そのため、土地の用途が変わった場合には、地目の変更を行う必要があるのです。
地目変更すると土地の価値は変わるのか
たとえば、畑を宅地に転用した場合、通常は地目変更登記を行います。
しかし、宅地になると評価額が上がるため、固定資産税や相続税が高くなると考え、地目変更登記を行わないケースがあります。
しかし、このような理由で地目変更を行わなかったとしても、固定資産税や相続税の評価には影響はありません。
固定資産税も相続税も地目に関係なく、その土地の利用状況に応じて評価額の計算を行うためです。
そのため、登記地目が畑でもその上に家が建っていれば、評価額を計算する際は宅地として取り扱うのです。
地目を宅地に変更しなかったからといって、税金が安くなるわけではないため、実態に合わせて登記を行うようにしましょう。
登記上の地目が田となっている宅地の所有権移転の方法
中には、実際に宅地として利用しているのに、登記上の地目が田などの農地のままになっていることがあります。
現在の宅地として利用していても、所有権移転を行うためには地目変更登記が必要となります。
過去に農地を宅地に転用することについて農業委員会の許可を得ている場合は、過去の許可書を使って地目変更登記が可能です。
また、農業委員会から証明書を発行してもらうことができるため、その証明書を使って地目変更登記を行うこともできます。
一方、過去に農業委員会の許可を得ていない場合は、農地法違反となります。
農業委員会の現況証明書を使って、地目変更登記が可能な場合もあるため、農業委員会に相談する必要があります。
この場合、農地法違反について罰則を受けることや、原状回復命令を受けることがあります。
まとめ
土地の登記地目は、最初に登記された時から一度も変更されていない可能性があります。
そのため、田や畑、山林となっている場所に住宅が建っているというケースも少なくありません。
しかし本来は、土地の地目は土地の利用状況に応じて変更しなければならないのです。
罰則規定も設けられているため、余分な支出となるリスクを避けるためにも、正しく地目変更登記を行いましょう。
2024年4月には相続登記の義務化もスタートされました。今後はよりスピーディーに、実態をしっかりと登記に反映させるようにすることが重要です。
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