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最終更新日:2025/12/9

保佐人とは?後見人との違いとできること・できないこと

本間 剛 (行政書士)
この記事の執筆者 行政書士 本間剛

VSG行政書士法人 代表行政書士。山形県出身。

はじめて相続を経験する方にとって、相続手続きはとても難しく煩雑です。多くの書類を作成し、色々な役所や金融機関などを回らなければなりません。専門家としてご家族皆様の負担と不安をなくし、幸せで安心した相続になるお手伝いを致します。

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記事の要約

  • 保佐人とは、判断能力が「著しく不十分」な人をサポートする制度のこと
  • 借金や不動産売買など重要な行為の「同意権・取消権」を持つが、「代理権」は別途申立てが必要
  • 成年後見(判断能力なし)と補助(不十分)の中間に位置し、本人の意思を尊重できるのが特徴

「最近、親の物忘れがひどくて心配…」
「ひとりで大事な契約を任せるのは不安…」

ご家族の判断能力に変化が見られると、将来の財産管理や生活のことで、大きな不安を感じますよね。

そんなとき、ご本人を法的にサポートする「成年後見制度」が助けになります。この制度には「後見」「保佐」「補助」の3つの類型があり、中でも「保佐(ほさ)」は、判断能力が著しく不十分な方を対象としています。

この記事では、成年後見制度の中でも特に「保佐人(ほさにん)」に焦点を当て、そもそも保佐人とは何か、後見人や補助人と何が違うのか、そして具体的に「できること」と「できないこと」は何かを、専門用語を避けて分かりやすく解説します。

ご家族のために何ができるか、その第一歩としてぜひお役立てください。

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保佐人とは?わかりやすく解説

まずは「保佐人」の基本的な役割と、どのような方が対象になるのかを見ていきましょう。

保佐人制度の目的と役割

保佐人とは、精神上の障害により判断能力が著しく不十分な方の財産管理や契約などを支援する人のことです。

この制度は、本人の意思決定能力が完全になくなったわけではないため、その意思を尊重しながら、不利益な契約を結んでしまったり、財産を失ったりすることを防ぐ目的があります。

保佐人は、家庭裁判所によって選任され、以下の役割を担います。

  • 本人が行う重要な法律行為に対して「同意」を与える
  • 本人が不利な契約をしてしまった場合にそれを「取り消す
  • (申立てにより)特定の行為を本人に代わって「代理」する

あくまで本人の自立を尊重し、必要な部分だけをサポートするのが保佐人の特徴です。

対象となる方(被保佐人)の判断能力の目安

保佐の対象となるのは「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者」と法律で定められています。

これを分かりやすく言うと、日常的な買い物程度なら一人でできるけれど、不動産の売買や高額なローンの契約といった重要な判断を一人で行うのは難しいという状態の方が対象です。

例えば、以下のような状況が目安となります。

  • お金の管理が難しくなり、同じものを何度も買ってしまう。
  • 複雑な契約書の内容を理解するのが難しい。
  • 訪問販売などで不要な高額商品を勧められると、断れずに契約しそうになる。

完全に判断能力がないわけではないが、重要な財産に関する法律行為には支援が必要、という方が被保佐人(ひほさにん:保佐を受ける本人)となります。

保佐人の権限「同意権」「取消権」「代理権」とは

保佐人には、本人をサポートするために主に3つの権限が与えられています。

  • 同意権:本人が不動産の売買や借金など、法律で定められた特定の重要な行為(後述)を行う際に、事前に「同意」を与える権限です。保佐人の同意なく本人が行ったこれらの行為は、後から取り消すことができます。
  • 取消権:本人が保佐人の同意を得ずに、重要な法律行為を行ってしまった場合に、その契約などを後から「取り消す」ことができる権限です。これにより、悪質な契約から本人を守ることができます。
  • 代理権特定の法律行為について、本人に代わって契約などを行う権限です。ただし、この代理権は自動的に付与されるものではありません。保佐人選任の申立てとは別に、「代理権付与の申立て」を家庭裁判所に行い、認められる必要があります。どの行為について代理権を与えるかは、本人の状況に応じて個別に定められます。

後見人・補助人との違いを一覧表で比較

成年後見制度には「保佐」のほかに「後見」と「補助」があります。これらは本人の判断能力のレベルに応じて使い分けられます。それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。

判断能力の程度の違い

3つの類型の最も大きな違いは、対象となる本人の判断能力の程度です。

  • 後見判断能力が常にない状態の方が対象です。重度の認知症などで、日常的な買い物も一人ではできず、常に誰かの支援が必要な状態を指します。
  • 保佐判断能力が著しく不十分な方が対象です。日常の買い物はできても、不動産売買などの重要な財産行為を一人で行うのは難しい状態です。
  • 補助判断能力が不十分な方が対象です。重要な財産行為も自分でできるかもしれないけれど、不安があるので誰かに支援してもらった方が良い、という比較的軽度な状態です。

権限(同意権・取消権・代理権)の範囲の違い

判断能力の程度に応じて、支援する人(後見人・保佐人・補助人)に与えられる権限の範囲も異なります。

  • 成年後見人:幅広い法律行為について包括的な代理権を持ち、本人の財産を管理・処分できます。また、本人が行った契約などを(日用品の購入等を除き)取り消すことができます。同意権はありません。
  • 保佐人:法律で定められた重要な行為に対する同意権と取消権を持ちます。さらに、申立てにより特定の法律行為についての代理権を得ることができます。
  • 補助人:申立てにより、特定の法律行為について同意権・取消権・代理権のいずれかまたは全部を得ることができます。本人の意思が最も尊重され、支援の範囲を柔軟に決められるのが特徴です。

申立てができる人の違い

制度の利用を開始するために、家庭裁判所に申立てができる人の範囲は、後見・保佐・補助のいずれも共通しています。

  • 本人
  • 配偶者
  • 四親等内の親族(子、孫、親、兄弟姉妹、甥・姪、いとこ等)
  • 検察官
  • 市区町村長 など

比較まとめ表「成年後見・保佐・補助」

後見 保佐 補助
対象者 判断能力が常にない方 判断能力が著しく不十分な方 判断能力が不十分な方
支援する人 成年後見人 保佐人 補助人
同意権 なし あり(申立ての範囲内の行為) あり(民法13条1項の行為のうち、申立ての範囲内)
取消権 あり(日常生活に関する行為を除く) あり(同意のない申立ての範囲内の行為) あり(同意のない申立ての範囲内の行為)
代理権 あり(包括的) あり(申立ての範囲内) あり(申立ての範囲内)
本人の同意 不要 不要 必要

保佐人ができること・できないこと

では、具体的に保佐人はどのようなことができ、何ができないのでしょうか。権限を詳しく見ていきましょう。

保佐人の同意が必要な10の法律行為

民法第13条第1項では、被保佐人が行う際に保佐人の同意が必要な行為として、以下の10項目が定められています。もし保佐人の同意なくこれらの行為を本人が行ってしまった場合、後から取り消すことが可能です。

民法 第十三条(保佐人の同意を要する行為等)

  1. 元本を領収し、又は利用すること(預貯金の払い戻しや、貸したお金の返済を受けること、お金を誰かに貸すことなど)
  2. 借財又は保証をすること(お金を借りたり、誰かの借金の保証人になったりすること)
  3. 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること(土地や建物を売買・贈与したり、抵当権を設定したりすること)
  4. 訴訟行為をすること(裁判を起こしたり、訴えられた裁判に対応したりすること)
  5. 贈与、和解又は仲裁合意をすること(誰かに財産を無償で譲ったり、争いごとを解決するために和解契約を結んだりすること)
  6. 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること(遺産を相続するか放棄するかを決めたり、他の相続人と遺産の分け方を話し合ったりすること)
  7. 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること(他人からの贈与や遺言による財産の受け取りを断ったり、負担付きの贈与や遺贈を受け入れたりすること)
  8. 新築、改築、増築又は大修繕をすること(建物を新築したり、大規模なリフォームを行ったりすること)
  9. 民法第602条に定める期間を超える期間の賃貸借をすること(山林は10年、それ以外の土地は5年など、長期にわたる賃貸借契約を結ぶこと)
  10. 上記の行為を制限行為能力者の法定代理人としてすること(本人が誰かの法定代理人(親権者など)である場合に、その代理人として上記の1~9の行為をすること)

代理権でできることの具体例(金銭管理・契約)

前述の通り、保佐人は申立てによって特定の行為に関する「代理権」を持つことができます。代理権が認められると、本人の代わりに以下のような行為が可能になります。

預貯金の管理
銀行での入出金手続き、定期預金の契約・解約など
公共料金や家賃の支払い
電気、ガス、水道、電話料金や家賃などの支払い手続き
介護サービスや福祉サービスの契約
デイサービスの利用契約や、介護保険に関する申請手続き
施設への入所契約
老人ホームや介護施設への入所に関する契約手続き
不動産の管理
アパートや駐車場の賃貸借契約の締結や更新、家賃の受け取り

どの行為について代理権が必要かは、本人の状況や希望によって異なります。申立ての際に、必要な範囲を慎重に検討することが重要です。

保佐人だけではできないこと

保佐人であっても、単独では行えない行為があります。特に重要なのが、本人の居住用不動産(自宅など)の売却や取り壊し、担保設定などです。

これらの行為を行うには、保佐人の権限だけでは不十分で、別途、家庭裁判所の許可を得る必要があります。これは、本人の生活基盤を失わせる重大な影響があるため、より慎重な判断が求められるからです。

また、結婚、離婚、養子縁組、遺言といった本人の一身専属的な権利(身分行為)については、保佐人が同意したり代理したりすることは一切できません。これらは本人の意思のみによって決定されるべき事柄だからです。

日用品の購入など日常生活に関する行為

食料品や衣類、雑貨といった日用品の購入など、日常生活に関する行為については、本人が自由に行うことができます。

これらの行為に保佐人の同意は不要ですし、後から取り消すこともできません。保佐制度は、あくまで本人の自立を尊重する制度だからです。

保佐人が必要になるケースの具体例

どのような状況で保佐制度の利用が考えられるのでしょうか。具体的なケースを見てみましょう。

ケース1:不要な高額商品を契約してしまった

訪問販売や電話勧誘で、必要のない高額な布団や健康食品などを次々と契約してしまうケースです。本人は契約したことを忘れていたり、断り切れなかったりします。

このような場合、保佐人がいれば、その契約が民法13条の行為に該当しなくても、本人の判断能力の低下を理由に契約を取り消せる可能性があります。また、保佐人の同意なく行われた重要な契約であれば、取消権を行使して契約を無効にできます。

ケース2:預貯金の管理や引き出しが一人では不安

認知症の症状が進み、ATMの操作が難しくなったり、暗証番号を忘れてしまったりして、生活費の引き出しに困るケースです。

この場合、保佐人に預貯金管理に関する代理権があれば、本人の代わりに銀行で手続きを行い、計画的に生活費を管理することができます。これにより、本人の生活の安定を図ることができます。

ケース3:介護施設への入所や介護サービスの契約

本人が自宅での生活が困難になり、介護施設への入所を検討するものの、契約内容の理解や手続きが難しいケースです。

保佐人に代理権があれば、本人に代わって施設側と交渉し、入所契約を締結することができます。複雑なサービス内容や料金体系を理解し、本人にとって最適なプランを選択する手助けができます。

ケース4:所有する不動産の売却やリフォーム

空き家になっている実家を売却して介護費用に充てたい、あるいは自宅をバリアフリーにリフォームしたいが、本人がその判断や契約をできないケースです。

保佐人がいれば、本人の意思を確認しつつ、不動産業者や工務店との交渉、契約手続きを進めることができます。前述の通り、居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要ですが、その手続きも保佐人が行います。

保佐人選任までの手続きと流れ

保佐人を選任するには、家庭裁判所に申立てを行う必要があります。一般的な手続きの流れは以下の通りです。

ステップ1. 専門家への相談

まずは、本当に保佐制度が必要か、どの類型が適切かなどを専門家に相談しましょう。

相談先としては、市区町村の高齢者福祉担当窓口、地域包括支援センター、社会福祉協議会などがあります。また、具体的な申立て手続きについては、弁護士や司法書士に相談するのがスムーズです。

ステップ2. 家庭裁判所への申立て

申立ては、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。申立てには以下の書類などが必要です。

保佐開始に必要な書類

  • 申立書
  • 申立事情説明書
  • 本人の戸籍謄本、住民票
  • 保佐人候補者の住民票
  • 本人の財産に関する資料(預貯金通帳のコピー、不動産登記事項証明書など)
  • 医師の診断書(成年後見制度用のもの)

必要な書類は事案によって異なるため、事前に裁判所のウェブサイトで確認するか、専門家に相談しましょう。

ステップ3. 審理(調査・鑑定・審問)

申立てが受理されると、家庭裁判所の調査官が、申立人や保佐人候補者、本人と面談し、事実関係を調査します。これを審問といいます。

また、本人の判断能力の程度を医学的に判断するため、医師による精神鑑定が行われることがあります。ただし、診断書の内容で判断できる場合は省略されることもあります。

ステップ4. 審判と保佐人の選任

調査や鑑定の結果を踏まえ、裁判官が保佐を開始するかどうかを決定(審判)し、同時に最も適任だと思われる人を保佐人に選任します。選任された内容は法務局で登記され、誰でも確認できるようになります。

保佐人に関するよくある質問


Q. 保佐人になるには?家族もなれますか?

はい、ご家族やご親族も保佐人になることができます。

実際に、配偶者や子どもが保佐人に選任されるケースは多くあります。

ただし、家庭裁判所は本人の利益を最優先に考えます。そのため、親族間で財産をめぐる対立がある場合や、管理する財産が多額で複雑な場合などには、弁護士、司法書士、社会福祉士といった第三者の専門家が選任されることもあります。


Q. 申立てや保佐人の報酬など費用はいくら?

費用は大きく分けて「申立てにかかる費用」と「選任後の保佐人の報酬」の2つがあります。

  1. 申立てにかかる費用
    • 収入印紙代: 800円(代理権付与の申立てをする場合は別途800円)
    • 郵便切手代: 数千円程度(裁判所からの連絡用)
    • 登記手数料: 2,600円
    • 鑑定費用: 精神鑑定が必要な場合、5万~10万円程度が目安です。
  2. 保佐人の報酬
    保佐人の報酬は、保佐人が無償で引き受けない限り発生します。報酬額は家庭裁判所が、管理する財産の額などを考慮して決定します。目安として、月額2万円程度が基本となり、管理財産額が多い場合はそれに応じて増額されます。この報酬は、本人の財産の中から支払われます。

Q. 弁護士や司法書士が保佐人になるケースとは?

以下のようなケースでは、中立的な立場で専門知識を持つ弁護士や司法書士が保佐人に選任されることが望ましいと判断されることがあります。

  • 親族間に意見の対立があり、候補者を一人に絞れない場合
  • 本人が多額の不動産や有価証券を所有しており、管理が複雑な場合
  • 親族が虐待や財産の使い込みを行っている疑いがある場合
  • 身近に保佐人候補者となる親族がいない場合

Q. 保佐人を解任することはできますか?

はい、正当な理由があれば家庭裁判所に申立てて保佐人を解任することができます。

「正当な理由」とは、保佐人が不正な財産管理を行った、本人の財産を私的に流用した、などの不正行為(任務懈怠)があった場合を指します。単に「気に入らないから」といった理由では解任は認められません。

まとめ

今回は、判断能力が低下したご家族を支える「保佐人」について解説しました。

  • 保佐人とは、判断能力が著しく不十分な方の重要な契約や財産管理をサポートする人
  • 後見(常に判断能力なし)・保佐(著しく不十分)・補助(不十分)は、本人の判断能力のレベルで分かれる
  • 保佐人は、法律で定められた重要な行為への「同意権」「取消権」を持つ
  • 預貯金管理などの「代理権」は、別途申立てが必要
  • 居住用不動産の売却などには、さらに家庭裁判所の許可が必要

ご家族の将来を考えたとき、成年後見制度は非常に心強い選択肢の一つです。しかし、どの制度が最適か、誰が担うべきかなど、ご家庭の状況によって最適な答えは異なります。

もし少しでも不安や疑問を感じたら、一人で抱え込まず、まずはお住まいの市区町村の窓口や地域包括支援センター、あるいは弁護士や司法書士といった専門家へ相談することから始めてみてください。専門家の力を借りることで、ご本人とご家族にとって最善の道がきっと見つかるはずです。

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