枕営業は不貞行為にあたらない?不倫とは違う?裁判例も紹介
クラブのママやホステスなどが、お店の顧客に対して枕営業を行うことがあります。
顧客の妻からすると、枕営業とはいえ、夫の不貞行為の相手になりますが、慰謝料請求はできるのでしょうか。
枕営業にまつわる裁判例などから、不貞行為になるのかどうか、詳しく解説します。
枕営業とは
そもそも枕営業とは、どういうことでしょうか。
顧客を取るための性交渉
枕営業とは、顧客あるいは顧客になりそうな人と性交渉をし、それによって顧客をつなぎ留め、あるいは顧客にするための営業方法です。
倫理的には好ましくないものですが、現実には行われているものです。
顧客獲得が目的の性交渉であり、恋愛としての性交渉とは目的が異なっています。
枕営業を行う例
裁判例では、クラブのママやホステスが枕営業をする事例があります。
クラブのママやホステスは、優良な顧客がお店に通ってもらうために、その顧客と定期的に性交渉を行います。
それによってお店の売上が上がり、またホステスへの指名料が入る商売を目的として性交渉を行います。
枕営業は不貞行為にはあたらない
枕営業は、不貞行為にはあたらないのでしょうか。
風俗営業と同類
枕営業と似たような形態として、風俗営業における性行為が参考としてあげられます。
風俗営業では、商売として性行為が行われており、特定の1人との性行為ではなく、顧客との性行為によって収入を得ています。
枕営業も、商売のうちのひとつとして行われており、顧客の獲得・維持を目的とし、その顧客がお店に来ることによって、最終的には収入につながります。
商売という点では、枕営業も風俗営業と同じと見ることができます。
営業での性行為は不貞にあたらない
風俗営業は、それ自体が商売であるため、夫が風俗店に通っていたとしても、不貞行為にはあたらないとされています。
性処理をすることをサービスとし、夫はその対価を支払い、サービスを受けているだけなので商売という点では、他のお店と同じと言えます。
枕営業も風俗営業と同じであれば、不貞行為にはあたらない、と考えられます。
枕営業は不貞行為にあたるのかの裁判例
枕営業が不貞行為にあたるのかどうか、争った裁判例があります。
不貞行為にあたらない、とされた判例
平成26年の東京地裁の判例では、クラブのママが7年間にわたって枕営業をしたものの、不貞行為にあたらないとされました。
枕営業の期間が長期間でしたが、クラブに通う頻度と性交渉の回数が一致していました。
さらに、昼食を取ってホテルへ行き、性交渉をして別れる、といったパターン化されたものであったため、長期間であっても、枕営業であると判断されたようです。
一緒に旅行に行くことやママの自宅へ行くなどの行為があれば、枕営業ではなく、不貞行為とされた可能性があります。
この判例では、性交渉への過程と、お店に通う頻度などから判断されました。
不貞行為だとされた過去の判例
昭和54年の最高裁判例では、ホステスと性交渉した事案で、慰謝料請求が認められました。
この判例では、恋愛感情ではない目的であっても、既婚者と肉体関係を持つことはその配偶者の権利を侵害していて、違法であるとされました。
古い判例ではありますが、営業とはいえ性交渉をしており、もう一方の配偶者側の気持ちを考えた判決になっています。
枕営業と慰謝料
枕営業は、クラブのママやホステスが、優良顧客をつなぎとめるために行うことがあります。
近年の判例では、慰謝料請求はできないとされていますが、古い判例では、慰謝料請求ができるとする判例もあります。
枕営業とは言っても、一緒に旅行に行く、自宅に行くなど、一般的に男女交際と思えるような行動があれば、枕営業にはならない可能性もあります。
また、クラブのママや風俗店の女性に対して慰謝料は請求できなくても、夫に対しては慰謝料を請求できる場合もあります。
慰謝料請求をする場合、あるいは請求された場合には、早めに弁護士に相談されることをおすすめします。