【ECサイト運営者の必須知識】特定商取引法の「法定返品権」とは

色々なものがネットで注文できて、すぐに自宅に届く時代。

ネット通販はとても便利で、愛用している人も多いのではないでしょうか。

新しい店舗を作るより低コストで開業でき、企業側にも色々なメリットがありますね。

でも、便利だからこそ、返品などの時などにトラブルが起こることもあります。

ネット通販の返品制度は、どのように規制されているのでしょうか。

EC取引にもクーリング・オフ制度は適用されるのか?

クーリング・オフ制度は耳にされたことはありますか。

特定の取引に適用される制度ですが、ネット通販などのEC取引にも適用されるのでしょうか。

クーリング・オフ制度とは?

一度は申し込みをした契約であっても、申込や契約後、一定期間内であれば、無条件で申し込みの撤回や契約を解除できる制度です。

民法では、通常の契約は、一度契約を結ぶと無条件で解約はできないのですが、特定商取引法によって、特定の販売方法の場合は一定期間内であれば無条件で解約できる、と規定されています。

クーリング・オフが適用される取引は、以下の6つの類型です。

  • 訪問販売
  • 電話勧誘販売・特定継続的役務提供
    (エステや美容医療、家庭教師、学習塾など)
  • 訪問購入
  • 連鎖販売取引
    (個人から個人へと連鎖して商品を販売する方法)
  • 業務提供誘引販売取引
    (仕事に必要だとして商品を販売する方法)

EC取引は該当する?

インターネットでの販売は、通信販売に該当します。

通信販売は、クーリング・オフ制度が適用される類型には入らないため、この制度が適用されないことになっています。

EC取引は、クーリング・オフの対象ではありませんが、特定商取引法では、通信販売における別の規定があります。

それが、消費者の法定返品権です。

特定商取引法の法定返品権とは

EC取引などの通信販売に適用される法定返品権とは、どんなものなのでしょうか。

法定返品権とは

法定返品権は特定商取引法に規定されていて、消費者が返品できる制度ですが、無条件で解約できるクーリング・オフ制度とは別の制度です。

通信販売が対象のため、ネット通販などのEC取引にも適用されます。

また、適用されるためには、決められた要件を満たす必要があります。

特約があると認められない

法定返品権には、事業者が返品を認めないという特約を設定することが可能です。

特約が認められるためには、返品についての特約を広告に表示し、加えて申込確認画面においても返品特約を掲載している必要があります。

特約に関する要件を満たしていれば、事業者は返品を認めず、消費者には法定返品権が認められないことになります。

法定返品権が認められるケース

法定返品権が認められるためには、どんな要件が必要なのでしょうか。

法定返品権の要件

法定返品権が認められるには、大きく三つの要件が必要になります。

まずは、事業者が商品または指定権利の販売条件について広告することが必要です。

販売条件を明らかにするのは、売買の上では必須ですね。

さらに、売買契約にかかる商品の引き渡し、または権利の移転を受けた日から数えて8日以内であることが必要です。

加えて、返品したいという消費者の返品の意思表示が、事業者に到達することも必要です。

これらの要件が全部そろえば、法定返品権が認められ、消費者は返品することができます。

要件を満たす特約がないこと

法定返品権では、事業者は特約を付けることができます。

そのため、事業者の特約が要件を満たし、返品不可が認められれば、返品できないことになります。

法定返品権が認められるには、特約がないことも条件ですね。

EC取引の返品

特定商取引法では、一定期間、無条件で解約できるクーリング・オフ制度がありますが、ネット通販などの通信販売は、適用外になります。

通信販売については、特定商取引法で消費者に法定返品権が認められていますが、商品の販売条件の表示や引渡後の一定期間内であることや返品意思の到達など、要件を満たすことが必要です。

法定返品権では、販売側が返品不可の特約を付けることができます。

返品不可の特約を付けるにも要件があります。

便利なネット通販ですが、トラブルも多く、特定商取引法の適用もあります。

EC取引でトラブルが起こったら、早めに弁護士に相談することをおすすめします。