録音データには裁判の証拠になる?証拠能力や違法になるケースについて

口頭だけだと、言った言わないの争いになることがあり、それを防ぐために録音をすることがあります。

相手に同意を得て録音する場合だけでなく、中には会話の相手に秘密にして録音する場合もあります。

録音されたデータは、裁判の際、証拠として使用できるのでしょうか。

秘密裏に録音されたデータであっても、裁判の証拠として認められるのでしょうか。

録音データの証拠能力

録音データを証拠にする場合、刑事訴訟と民事訴訟では扱い方が異なります。

それぞれどのような証拠能力があるのでしょうか。

刑事訴訟での証拠能力

刑事事件の場合は、録音内容によって証拠能力が異なります。

証言などを録音した供述録音は、証言した人に対して反対尋問を行わなければ、証拠として不十分で、証拠能力は否定されます。

悲鳴など現場の音などを録音した現場録音の場合は、一般的な証拠能力が問題として採用の有無が判断されます。

刑事裁判では、厳密な手続きが求められ、盗聴など違法に録音されたデータは証拠として否定されます。

ただ会話当事者が、相手の同意なく録音したものについては、刑事訴訟においても相手の利益を大きく侵害しているとは言えないため、証拠として認められると考えられています。

民事訴訟での証拠能力

民事訴訟においては、訴訟能力に制限はなく、刑事訴訟に比べると録音データも証拠能力があるとされる例が多々あります。

刑事訴訟では、手続きの公正さも厳しく求められますが、日々の争いを解決していく民事訴訟では、刑事訴訟ほど厳しく求められません。

そのため、無断録音であっても、民事訴訟では証拠能力が認められます。

無断録音・秘密録音に証拠能力はある?

民事訴訟では、無断録音や秘密録音も証拠能力はありますが、ケースによっては、証拠能力が否定される場合もあります。

どんな時に認められ、あるいは否定されるのでしょうか。

認められる事例

相手方を料亭に招き、自分に有利な発言をするように誘導し、その発言を隣の部屋でふすま越しに録音をした、という事例がありました。

相手に無断、秘密で録音したものですが、証拠として認められました。

認められなさそうな事例ですが、裁判所は、酒の席での発言を、単に会話者が知らない間に録音しただけで、著しく反社会的な手段方法で侵害したとは言えない、として証拠能力を認めました。

民事訴訟においては、単に話者に無断で録音したのみであれば、証拠能力が認められると判断された事例です。

認められない事例

大学職員の上司から部下へのパワハラ・セクハラに関して、学内のハラスメント防止委員会での審議を第三者が録音し、学内便で送付した、という事案です。

この審議は非公開のものであり、委員の守秘義務・録音の禁止がされているもので、それを破った上での録音でした。

そのため、録音の違法性が高いとして、証拠能力が否定されました。

証拠能力が否定されるかどうかは、違法性の高さや、証拠価値等総合的に評価されて決められます。

録音データを扱うときの注意点

録音データは、どのように扱えばよいでしょうか。

保管上の注意

改ざん等をされないように、データの保管には十分に気を付ける必要があります。

裁判で録音データを使用する場合、一般的な形式に限定される場合もあり、保存する音声形式にも気をつけておく必要があります。

また、同意を得ていない相手との録音であれば、相手にその録音を知られれば、関係のさらなる悪化を招く可能性もあります。

データの保管には、十分に注意する必要があります。

録音内容について

録音データは、誰が何を話しているか、はっきりと言葉が聞き取れるものがベストです。

また、長時間の会話を録音した場合、真に必要な部分が分からなくなってしまう可能性もあります。

その際には、録音データを文字にすれば、聞き逃しをすることなく、チェックできます。

録音データを証拠で出す時には

上司からのパワハラ発言や暴言の多い相手など、言ったことの証拠を取るために録音をすることがあります。

民事裁判では、相手の同意を得ずにした録音であっても、証拠能力が認められ、証拠として提出できます。

証拠能力がある録音だったとしても、聞き取れない場合や、録音内容自体が証拠になかった場合は、証拠として提出できないケースもあります。

録音データを証拠として扱いたい場合は、一度弁護士に相談されることをおすすめします。