- TOP|会社設立
- ›
- 定款作成の完全ガイド!定款は自分で作成できる
- ›
- 定款にない事業をしたら罰則は?経費や売上はどうなるのか
定款にない事業をしたら罰則は?経費や売上はどうなるのか

ベンチャーサポート行政書士法人代表行政書士。
東京都行政書士会 中央支部所属(登録番号:07080055)
1980年生まれ、山形県出身。
都内にある行政書士法人での勤務経験を経て、2014年1月ベンチャーサポート行政書士法人を設立。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-hon

この記事でわかること
- 定款にない事業をした場合の罰則の有無
- 定款にない事業の経費や売上の取り扱い
- 定款違反のリスク
ですが、実際のビジネスでは、予定外の事業を始めるケースも少なくありません。もし定款にない事業を行った場合、法的な罰則はあるのでしょうか?また、その事業の売上や経費はどのように扱われるのでしょうか?
この記事では、定款にない事業のリスクや影響、定款変更の必要性について詳しく解説します。目的外行為がもたらす取引先や金融機関からの信用低下、融資への影響、契約無効のリスクなど、企業運営に関わる重要なポイントを解説しますので、会社運営の参考にしてください。
目次
定款にない事業をしたら罰則はあるのか
定款に必ず書かなければならない事業目的ですが、もし定款にない事業をしてしまった場合には、罰則はあるのでしょうか。
定款にない事業をしても罰則はない
定款とは、会社の根本規則を定めた書類であり、事業目的は絶対的記載事項という「必ず記載しなければならない事項」であるため、必ず記載します。
会社は、定款に従ってその範囲内で法人としての活動を行います。ですが、仮に、定款に記載されていない事業を行なった場合でも、罰則はありません。定款にない事業をしたからといって、例えば、代表者が逮捕されたり会社に罰金が命じられたりするというものではないのです。
もちろん、会社は登記された目的の範囲内で事業を行うべきですが、定款にない事業をしても罰則はありません。
事業目的の定款の絶対的記載事項
事業目的は、絶対的記載事項という「記載が義務づけられている事項」です。すべての会社の定款には必ず事業目的が記載されていて、記載がない場合は定款として成立しません。
会社がどのような目的のために設立されたのかを明確にする事業目的は、定款の中でも特に重要な記載事項のひとつです。
定款の絶対的記載事項については、以下の記事で詳しく解説しています。
新規事業の場合は必ず定款を変更する
新たな事業を始めるときに、そのビジネスが定款に記載されていない場合、まずは定款の変更が必要です。
定款にない事業をすることを「目的外行為」といいます。目的外行為には、罰則こそなくてもさまざまなリスクが伴います。そのため、可能な限り目的外行為は避けるべきです。
定款の変更は、株式会社であれば株主総会の特別決議を経て、定款に議事録を追加する形で行われます。また、事業目的を変更したら、法務局で登記した情報も変更しなければなりません。
新規事業をスタートするときには、定款を確認し、定款にない事業の場合は定款の変更をしましょう。
罰則はなくてもリスクはある
定款にない事業を会社が行なっても罰則はありませんが、会社を運営していく中ではさまざまなリスクがあります。
信頼性の低下
定款にない事業を行うと、取引先や金融機関の信用を失う可能性があります。目的外行為には罰則はないものの、会社は定款の事業目的の範囲内でビジネスをするべきであって、定款にない事業を進めることは誠意に欠けています。
銀行から事業資金の融資を受ける際には、定款が必ずチェックされます。実際に行なっている事業と定款の内容にずれがあると、銀行などの金融機関に疑念を持たれるきっかけになります。定款にない事業のための融資と判断されれば、融資審査は厳しいものとなるでしょう。
許認可への影響
許認可が必要な業種(介護事業など)の場合は、事業目的が定款に記載されていないと申請できないケースがほとんどです。
許認可の申請をすると、許認可権を持つ官庁は必ず会社の定款をチェックします。
一例ですが、以下の業種では、定款に明確な事業目的が記載されていないと許認可が取得できません。
- 介護
- 建設業
- 飲食業
- 人材派遣業
- 金融業
定款にない事業で得た利益はどうなる?
ここまで、定款にない事業を行う目的外行為に「罰則がないこと」や「リスクが伴うこと」を解説しました。とはいえ、うっかり定款にない事業をして利益が出ることもあり得ます。そのような場合の利益はどうなるのでしょうか。
定款にない事業でもただちに無効ではない
定款にない事業だからといって、すべての取引や契約がすぐに無効になるということはありません。定款にない事業であっても、会社が得た利益は会社の収益となります。
当然、会社の収益ですので税金もかかります。定款にない事業を行うことは決して推奨されることではありませんが、それだけで利益が「なかったことになる」というわけではありません。
取引が無効になる可能性はある
定款にない事業だというだけで、無条件で取引が無効になるということはありません。ただし、取引の相手から「定款にないこと」を理由に取引を無効にされてしまう可能性はあります。
罰則がなかったとしても、会社は定款の範囲内で事業を行うものです。定款にない事業であることを理由に取引の無効を主張されたら、認めざるを得ないでしょう。
定款にない事業の経費と利益の取扱い
定款にない事業の経費や利益の扱いはどうなるのでしょうか。
代表者が行う事業は原則として会社の収益
まず、定款にない事業でも、原則として会社代表者が行う事業から生じた利益はすべて「会社の収益」となります。会社の収益ということになれば、当然、かかる費用は会社の経費として計上されます。
ですが、定款に書いてある事業に関連するものだからといって、すべてのものが経費として認められるということではありません。経費として認められるのは、会社の事業として行なったかどうかがポイントです。
例外もある
代表者が行なった事業とその収益はすべて「会社の収益」であると前述しましたが、例外もあります。
例えば、個人の持ち物をフリマアプリやネットオークションで販売した場合は、会社の収益にはなりません。また、資産運用で得た利益や親から受け継いだ飲食店、印税なども代表者個人の収益として会社とは切り離して考えるのが一般的です。
定款にない事業を行うと違法になる?
もし、会社が定款にない事業を行うと、罰則はなくても違法とされてしまうのでしょうか。
法律上は定款にない事業はできない?
定款にない事業を行なったからといってただちに違法となるとはいえません。ですが、もちろん会社は定款の範囲内で事業を行うべきではあります。
定款にない事業をした場合、銀行から融資を打ち切られたり、取引先から契約などを無効にされたりする可能性があります。
また、会社に損害を与えたということで、取締役が株主から責任を追及される可能性も否定できません。
定款になくてもOK?目的の達成に必要な行為とは?
定款にない事業であっても会社の目的を達成するために不可欠な行為であれば、定款に記載されていなくても許容されることがあります。
たとえば、製造業が販促イベントを行う場合、その販促行為自体は製菓業ではありませんが、目的の達成に必要な行為といえるでしょう。
「事業を達成するために必要な行為」として認められるものなら、許容されます。
定款にない事業をした事例と判例
定款にない事業を会社がしてしまったという判例があります。八幡製鉄事件について簡単に解説します。
定款にない「政治献金」をした八幡製鉄事件
会社が定款に記載されていない政治献金をしたことが問題になったのが「八幡製鉄事件」です。政治献金はビジネスではありませんが、会社からお金が動いているということで問題になりました。
株主が「定款にない事業にお金を使った」として訴訟を起こしたのです。
この訴訟は最終的に最高裁で争われることとなり、最高裁判所大法廷は「会社による政治献金を認める」としました。
定款にない事業をするときには必ず「定款変更」をする
罰則はなくても、定款にない事業をすることはリスクが大きく、決しておすすめできるものではありません。新規事業が定款にない事業の場合は必ず変更手続きをしましょう。
定款の事業目的は変更や追加ができる
定款の事業目的は、株主総会の特別決議で可決されれば変更できます。会社設立をした当初に想定していなかったビジネスチャンスが舞い込む可能性はあるわけで、そのようなときには「定款の事業目的を追加」すればいいのです。
定款の事業目的の変更や追加は必要であれば何度でも可能です。
定款は一度作成したら変更できないという性質のものではありません。そのときの会社の状況に合わせて更新していくことで対応します。
また、定款の変更は自分で進めることができます。自分で定款の事業目的を追加する方法については、以下の記事で解説しているので、自分で定款変更をしたいという方は参考にしてください。
定款にない事業をする前に定款の変更が必須
新規事業が定款にない場合は、まず先に定款を変更しましょう。特に、銀行からの融資を受ける場合は、仕事をスタートさせる前に定款の変更が必要です。
銀行の融資では「どのような目的の事業への融資なのか」ということがとても大切です。銀行は、融資した資金が目的とは異なることに使われる懸念があれば、融資をしないと決断する可能性が高くなります。
定款にない事業のために「融資しますよ」という金融機関はまずありません。
事業の変更は登記が必要
定款を変更した場合には、その変更内容によって法務局の登記も変更する必要性が出てきます。事業目的を変更した場合は、法務局で変更登記の手続きが必要です。
定款変更については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
定款の事業目的は慎重に記載しましょう
定款の事業目的は、会社にとって非常に重要な記載事項です。事業目的を設定する場合は、慎重に内容を精査する必要があります。
将来的に行う予定の事業目的は入れない
従来は「将来的に行うかもしれない事業は事業目的に入れておく」ことが推奨されていました。過去には、そうして設立された会社もあったのですが、最新の会社設立の実務では様子が変わってきています。
前述のとおり、事業目的はあとで何度でも変更や追加ができるため、将来的に「するかもしれない」事業目的は現時点では入れないケースが多くなっています。
これは、今すぐにしない事業目的を入れると、会社の目的があいまいになるためです。事業目的には、今すぐ行う事業のみを記載して、のちに新規事業が出てきた場合には定款変更で対応します。
附帯関連する事業は入れる
定款には「今すぐ行う事業のみを記載する」と解説しましたが、附帯関連事業に関しては入れておくほうがいいでしょう。
附帯関連事業を入れるというのは、定款の事業目的の最後に「前各号に附帯する一切の業務」という言葉を記載することです。
附帯関連事業を事業目的に記載しても、目的があいまいになるリスクは低いと考えられます。附帯関連事業は定款に入れておかないと業務がスムーズに行えなくなる可能性があるからです。
定款にない事業をしても罰則はないがリスクは大きい
定款にない事業を行なってもそれだけで「違法」というわけではなく、罰則もありません。
ですが、だからといって定款にない事業をして問題がないということではなく、大きなリスクが伴います。銀行や取引先からの信頼が低下する可能性がありますし、融資を受けている場合では打ち切られてしまう可能性もあるでしょう。
また、定款にない事業であることを理由に、取引の相手先から取引を無効にされてしまう可能性も否定できません。それが原因で会社に損害を与えた場合、株主代表訴訟を提起される可能性もあります。
定款は株主総会の特別決議で変更ができますので、新規事業をスタートするときには必ず定款を確認して、必要であれば事業目的の変更や追加をしましょう。