この記事でわかること
- 公正証書遺言の証人の役割
- 公正証書遺言の証人に、なれる人となれない人
- 公正証書遺言書の作成手順と、証人になった場合の注意点
2024年の1年間に全国で作成された公正証書遺言は「12万8,378件」となり、2023年と比べ、約9,300件増加しました。
背景には、公証人という専門家の確認のもと、遺言書の不備を極力抑え、スムーズに相続を進めたいというニーズの高まりがあります。
ただし、公正証書遺言を作成するには「2人以上の証人」が必要です。
証人は、誰に依頼すればいいのでしょうか?
どのような人が証人になれるのでしょうか?
この記事では、公正証書遺言の証人になれる人や、証人の役割などを、遺言書作成当日の流れも踏まえながら紹介します。
目次
公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、遺言者本人が、公証人と証人2名の前で遺言の内容を口頭で伝えた内容を、公証人が文章にまとめて作成する遺言書です。
遺言書には、他に自筆証書遺言と秘密証書遺言がありますが、公正証書遺言は、遺言書の方式の適法性を担保できる公証人が作成し、公証役場で保管します。そのため、紛失や偽造を疑われる心配が少ないというメリットがあります。
公正証書遺言の作成には、最低2人の証人が必要
公正証書遺言の作成には、2人以上の証人の立ち会いが必要です。
証人が必要な理由は、「遺言者が自分の意思で遺言書を作成した」ことを確認するためです。
証人は公証人とともに、さまざまな角度から遺言書の有効性を確認・担保します。その重要性から、複数人の証人が必要とされます。
証人の役割とは
証人には、遺言の作成が適法に行われたか、第三者の視点から確認する役割があります。
そのため証人には、一定の判断能力が要求されます。
- 遺言者が人違いでないか
- 遺言者の判断能力は正常か
- 遺言者は自らの意思で遺言内容を伝えているか
- 公証人の筆記内容が、遺言者の口授内容と一致しているか
公正証書遺言の証人は誰に頼めばいいのか
証人は遺言の内容を知る立場にあるため、中立公平性が求められます。
ここからは、証人になれる人やなれない人について紹介します。
公正証書遺言の証人になれない人
先に、証人に「なれない人」から説明します。
証人になれない人(欠格者)は、遺言作成の公正性や信頼性を担保できないとみなされる人です。
欠格者 | 証人になれない理由 |
---|---|
未成年者 | 判断能力が充分ではない、とみなされるため。 |
推定相続人、推定相続人の配偶者や直系血族 | 遺言内容によって相続内容が変動する立場であり、利害関係が深いため。 |
受遺者、受遺者の配偶者や直系血族 | 遺贈を受けることで利益を得る立場であり、推定相続人と同様、利害関係が深いため。 |
公証人の配偶者や四親等内の親族、書記、使用人 | 公証人と関係が近い立場にあり、証人としての独立性・中立性が保証できないため。 |
欠格者は、相続人や受遺者本人ばかりではありません。「相続人・受遺者の配偶者や子、両親など直系血族」や「公証人の家族、親族、職員」など、遺言者や公証人とつながりが深い人も該当します。
公正証書遺言の証人になれる人
公正証書遺言の証人になるにあたり、特に資格などは必要ありません。
上記の欠格者以外の人なら、誰でも証人になれます。一般的には、以下の人に依頼する場合が多いです。
- 信頼できる知人や親族
- 行政書士、司法書士、弁護士などの専門家
- 公証役場から紹介を受けた人
基本的に、証人は遺言者側が手配します。
欠格事由に当てはまらなければ、知人や親族でも構いませんが、証人は遺言書作成に立ち会い、遺言の有効性を証明する重要な役割を担っています。そのため、弁護士や司法書士などの専門家へ依頼するほうが、信頼性が高く安心と言えます。
また、自分で証人を見つけるのが難しい場合は、公証役場に紹介してもらうこともできます。
証人が欠格者だった場合、遺言書は有効か、それとも無効か
公正証書遺言は「無効」となります。
「部分的に有効」や「訂正可能」といった例外的救済も認められません。
証人が欠格事由に当てはまってしまった結果、遺言書の有効性を巡り裁判に発展する可能性もあります。
遺言者の「兄弟姉妹」は証人になれるか
未成年や推定相続人・受遺者などの欠格事由に該当しなければ、証人になることはできます。
兄弟姉妹は、遺言者の直系血族(親・子・孫)ではありません。
また、推定相続人(例:遺言で相続させる予定の人)でなければ証人資格に問題はありません。
ただし、遺言者に子どもがおらず、両親も亡くなっている場合は、兄弟姉妹が「推定相続人」になります。この場合は、証人になることはできません。
また、兄弟姉妹が受遺者に指定された場合も証人にはなれません。
なお、「おじ」「おば」「いとこ」も直系血族ではないため証人になることができますが、そもそも親族は、相続関係次第で欠格者になる可能性が高いです。
親族を証人にすることは、極力避けたほうが無難でしょう。
公正遺言証書作成時に証人に支払う費用
公正証書遺言の作成には、証人への謝金や、公証役場に支払う手数料などの費用がかかります。
証人に支払う費用は、以下のとおりです。証人となる人によって、費用の目安が異なります。
証人となる人 | 1人当たりの費用 | 備考 |
---|---|---|
知人や親族 | 約5,000円~1万円 | ・お礼の気持ちとして一般的には支払うことが多い |
弁護士、司法書士、行政書士などの専門家 | 約1万円~3万円 遺言書案作成とのセット料金:約5万円~30万円 |
・遺言書案作成とセットになっていることが多く、価格も士業によって異なる ・信頼性や秘匿性が高い |
公証役場からの紹介 | 約6,000円~1万円 | ・出張費などがかかることがある |
公正証書遺言を作成するには、他に「遺言公正証書作成手数料」や「公証人の出張交通費、日当」「各種証明書の交付手数料」など、公証人に支払う手数症・費用もかかります。
遺言作成当日の証人の持ち物
証人は本人確認書類と印鑑を持参のうえ、公証役場に向かいます。
印鑑は、朱肉を使うものであれば認印でも構いません(シャチハタは不可)。
公正証書遺言作成の流れ
公正証書遺言は、以下の流れで作成します。
遺言者と公証人の間では事前に打ち合わせをしており、当日は遺言書の原案ができている状態です。証人は、遺言者の意思能力や、遺言書の内容が遺言者の意思に合致しているか確認します。
当日の所要時間は、およそ30分から1時間程度です。
- 遺言者は、遺言の内容を口頭で告げる(あらかじめ相談している)
- 公証人は、遺言内容を筆記する(あらかじめ筆記し、原案を作成している)
- 公証人は、遺言者および証人に対し、公正証書遺言の内容を読み聞かせる
- 遺言者および証人は、公正証書遺言の原本に署名・押印をする
- 公証人も、公正証書遺言の原本に署名・職印を押捺する
- 完成した遺言書は公証役場で保管する
完成した公正証書遺言は、遺言者の死亡後50年、公正証書遺言の作成後140年、または遺言者の生後170年間にわたり、公証役場で保管されます。
なお、遺言者が亡くなった場合、法定相続人は公正証書遺言が保管されていないか、最寄りの公証役場の「検索システム」で確認する必要があります。
公正証書遺言の詳しい作成手順は、下記の関連記事や動画をご参照ください。
公正証書遺言の証人となった場合の注意点
厳格な手順のもとに作成される公正証書遺言ですが、絶対に有効というわけではありません。
遺言書の有効性を巡りトラブルが起きた結果、証人も責任を問われる可能性があります。
公正証書遺言が無効になることもある
証人が欠格者である場合のほかにも、公正証書遺言の有効性に疑義が生じるケースがあります。
例えば、遺言者が認知症等の影響で判断能力が不十分な場合には、「自分で考えた遺言内容を公証人に口授する、という要件を満たしていない」と裁判所に判断されることがあります。その場合、公正証書遺言は無効とされる可能性があります。
遺言書の有効性を巡り、出頭を求められる可能性がある
遺言書の有効性に問題点があったことに気づかず、署名・捺印をした場合、遺言書を巡るトラブルに巻き込まれる可能性があります。
遺言書の有効性が裁判で争われることになった場合は、証人も遺言無効確認訴訟への出頭を求められることがあります。
遺言書の内容が漏れた場合、守秘義務違反と見なされる可能性がある
公正証書遺言の作成には、最低でも公証人および2人の証人が関わります。
そのため、遺言内容は遺言者の胸の内だけに秘めることはできません。
もし、証人が遺言書の内容を漏らした場合、民法上の秘密保持義務を破ったとみなされる可能性があります。
また、証人の発言や行動により利害関係者が損害を被った場合は、民法上の不法行為責任を問われ、損害賠償請求をされる恐れもあります。
公正証書遺言の作成は、専門家に相談しよう
公正証書遺言には、家庭裁判所の検認が不要・遺産分割がスムーズに進められるといったメリットがあります。
しかし、証人が欠格者だった場合は、遺言書は無効になってしまいます。
また、公証人の役割は、口授内容に基づいて公正証書遺言を作成することです。遺言内容の妥当性や、相続財産の分割方法にまで踏み込むことはありません。
一方、士業の専門家に遺言書作成と証人をセットで依頼すると、法律や税務知識に基づいた、質の高い遺言書を作成することができます。
ベンチャーサポートグループには、相続に強い税理士や司法書士、行政書士などが所属しており、グループ全体で遺言書案の作成や証人対応、節税対策も含めたサポートをしています。
相続の専門家であれば、遺言書の作成から相続発生後の手続きも、スムーズに進めることができます。
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