相続対策として高層マンションを購入する人が増えています。
東京都内では多くのタワーマンションが作られ、人気のエリアにある物件は即完売となってしまうこともあるくらいです。
どうして高層マンションが相続対策に有効なのでしょうか。
その理由と節税額について解説します。
相続財産の評価額が下がる
相続税の課税対象となる相続財産については、それぞれ評価方法が定められています。
建物は固定資産税評価額が相続税評価額となります。
土地はその所在地によって評価方法が異なりますが、都心の高層マンションが建てられている地域は路線価方式により相続税評価額を計算します。
建物も土地も、その評価額は時価より低い金額になります。
相続対策として高層マンションを購入しておくと、同額の現金を持っている場合に比べて2割~5割もその評価額が減少するのです。
土地の比率が低い
高層マンションの購入価格は建物部分と土地部分から構成されています。
マンションの土地部分の評価額は、敷地全体の評価額をマンションの専有部分の面積で按分して計算しますが、高層マンションで戸数が多いほど按分した後の土地の評価額は低くなります。
したがって、高層マンションを購入すると建物部分の占める割合が大きく、土地部分の占める割合が小さくなります。
建物部分の方が相続税評価額の減額割合が大きいため、土地の比率が低いのは相続対策としてより効果的になるのです。
賃貸した場合の減額
相続税評価額を計算する際に、財産の種類だけでなく、その財産の利用状況も考慮しなければなりません。
特に不動産の場合、その物件を自分で使用しているか他人に賃貸しているかによりその相続税評価額は大きく変わります。
建物を賃貸している場合、その相続税評価額は自ら使用している場合に比べて3割減額されます。
また、土地については「貸家建付地」に該当し、自ら使用している場合に比べて借地権割合に応じた減額があるほか、貸付事業用宅地として5割の減額も適用されます。
これらの減額が適用されると、相続税評価額が当初の購入価格の2割程度となることもあります。
相続後も値下がりしにくい
せっかく相続税が安くなっても、相続した後にその高層マンション自体の価値が下がってしまっては意味がありません。
しかし、都心部の高層マンションの需要はさらに高まっているため、特に人気のエリアであれば相続後に売却するようなことになっても、売却時の価格はそれほど大きく下がらないことが想定されます。
また、損をするどころかかえって利益が出る可能性もあります。
相続した高層マンションをそのまま持ち続けるだけでなく、価格によっては売却することも視野に入れておくといいでしょう。
節税となる金額の試算
それでは、実際に高層マンションを購入するとどれくらい節税効果があるのでしょうか。
ここではトータルの相続財産3億円のうち1億円を使って高層マンション(建物部分9,000万円、土地部分1,000万円)を購入して賃貸したものとして計算します。
⑴建物
建物の固定資産税評価額は購入価格の5~6割程度になると言われるため、ここでは5,000万円として計算します。
貸家である場合にはそこからさらに3割減額した3,500万円が相続税評価額となります。
⑵土地
土地の固定資産税評価額は時価の8割程度となるため、相続税評価額は800万円とします。
マンションを賃貸している場合は貸家建付地としての評価となるため、借地権割合80%の場所だとその評価額は約600万円となります。
ここで貸付事業用宅地の適用ができれば、さらに5割の評価減となり、その相続税評価額は300万円となります。
⑴と⑵から、現金として持っていれば3億円の相続財産となったものが、2億3,800万円の相続税評価額となり、6,000万円以上相続財産を減らすことができました。
相続人が配偶者と子ども2人で相続財産が3億円の場合、配偶者控除を適用して相続税の額が2,860万円となりますが、相続財産が2億3,800万円の場合は1,825万円となり、節税額は1,000万円を超えます。
実際には、マンションの評価額や配偶者の相続分などによって節税となる額は変わりますが、大きな差になることは間違いありません。
まとめ
高層マンションを購入すると、相続税の大きな節税になることがお分かりいただけたと思います。
ある程度大きな相続財産をお持ちの方は、ぜひ検討してみるといいでしょう。
ただ、この節税については「タワマン節税」として国税当局が問題視している側面もあり、今後利用できなくなるおそれがあります。
高層マンションを購入する場合には、最新の情報に注意しましょう。