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最終更新日:2022/5/12

公正証書遺言の有無は公証役場の遺言検索システムで確認可能【確認時に必要な書類も解説】

本間 剛 (行政書士)
この記事の執筆者 行政書士 本間剛

ベンチャーサポート行政書士法人 代表行政書士。山形県出身。

はじめて相続を経験する方にとって、相続手続きはとても難しく煩雑です。多くの書類を作成し、色々な役所や金融機関などを回らなければなりません。専門家としてご家族皆様の負担と不安をなくし、幸せで安心した相続になるお手伝いを致します。

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公正証書遺言の有無は公証役場の遺言検索システムで確認可能【確認時に必要な書類も解説】

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この記事でわかること

  • 3種類の遺言書の特徴とメリット・デメリットが理解できる
  • 公正証書遺言があるかどうかの調べ方がわかる
  • 遺言検索システムの利用の仕方と必要書類がわかる

相続手続きを始める際にまず行うべきなのは遺言書の確認です。

被相続人が亡くなったあとできるだけ早く、故人が遺言書を残しているかどうかの確認が必要です。

遺言書の有無により、だれがどの財産をどのように相続するか大きく違ってくるからです。

しかし、遺言書がすぐに見つからないというケースも少なくありません。

遺言書の方式によって保管場所にも違いがあるので、遺言書を探すときにどこを探せばよいかも変わってきます。

ここではまず法的に有効な遺言書にはどんな方式があるのか、特徴とともにメリット・デメリットを解説していきます。

そしてその中の「公正遺言証書」について、遺言書があるかどうかの確認方法や必要書類について説明します。

遺言書は「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類

遺言は必ず文書にしなければ法的に認められません。

その遺言が本当に故人の意思なのかがはっきりしなければ争いのもととなってしまいます。

文書の仕方には民法によって定められた方式があり、それに従った書面でなければ法的に認められません。

ビデオで録画したものや誰かに口頭で伝えた遺言は法律上無効となるわけです。

長所・短所を考慮し自分にあったものを選択する

法律上有効な遺言の方式はいくつかありますが、一般に用いられる普通方式は3種類です。

公証人に頼む、自筆で書く、その中間の折中方式の3つです。

どれも一長一短あるので、自分の場合にはどれが一番合っているのかをよく考えて選択する必要があります。

また保管場所と方法も違ってきますので注意が必要です。

公証人に依頼して作成「公正証書遺言」

2人以上の証人立会いのもと、遺言者が口述で伝えたものを公証人が記して作成したのが「公正証書遺言」です。

完成した遺言書は、原本が公証役場に保管されるので紛失や偽造の心配がありません。

安心で確実な方法です。

亡くなったあと、家庭裁判所での検認も不要です。

デメリットとしては、遺言の内容を秘密にできないという点があります。

証人となった人から内容が漏れる心配が全くないとはいえません。

遺言者が自筆で作成「自筆証書遺言」

遺言者が自筆で全文、日付、氏名を書いて押印したものが「自筆証書遺言」です。

紙とペン、印鑑があればいつでもどこでも作成できます。

実印でなくても認印、拇印でかまいません。

証人、立会人も必要ないので、遺言書を作成したことや内容を秘密にできるのがメリットです。

反面、簡単に作成できるがゆえに内容が不明確になってしまったり、一定の要件を満たせず法的に無効になってしまう恐れもあります。

また亡くなったあと発見されないことや、紛失・偽造されてしまう可能性もあります。

封印した場合は家庭裁判所で開封して検認をしてもらわなければなりません。

署名だけが自筆「秘密証書遺言」

遺言内容を記した書面に遺言者が署名・押印したものが「秘密証書遺言」です。

封印したものを2人の証人の前で公証人に提出し、一定の事項を封紙(封筒)に記載してもらいます。

さらに遺言者と証人も署名、押印します。

秘密証書遺言は本人が持ち帰り、公証役場には遺言者が遺言を作成した事実が記録されることになります。

メリットは、遺言の内容は秘密にできること、紛失・偽造のリスクは自筆証書遺言よりは低いことでしょう。

また署名は自筆に限りますが、本文は代筆やパソコンで作成しても問題ありません。

とはいえ、自分で本文を作成した場合は書き漏らしや加筆訂正の方式不備の可能性があり得ます。

また亡くなったあとは裁判所での検認も必要です。

公正証書遺言の有無は全国の公証役場の遺言検索システムで確認可能

このように3種類の遺言書の方式により保管場所に違いがあります。

相続において遺言書があるかないかは非常に重要です。

それによってその後の手続きが大きく変わってくるからです。

生前に遺言書について聞いておければいいのですが、あまり触れにくい話題でもあり、残された遺族が後から必死になって探すというケースも少なくありません。

また遺言について聞く前に急に亡くなってしまったということもあるでしょう。

「まさか」とは思っていても思わぬかたちで遺言書が見つかることもあります。

相続の手続きはまず、遺言書を探すことから始めることが大切です。

では、どのようにして遺言書の有無を確認できるのでしょうか。

自筆証書遺言は故人が隠していそうな場所を探す

自分で書いた自筆証書遺言の場合は故人が保管していそうな場所を探すしかありません。

書斎の鍵付きの引き出し、本棚やお気に入りの本の中などをしらみつぶしに探していくことになります。

自宅を探しても見つからない場合は、銀行や信託銀行、付き合いのあった知人・友人・専門家などに預けていないかを確認しましょう。

なお、2020年7月以降は法務局でも自筆証書遺言を預けられるようになっています。

いずれにしても自筆証書遺言、秘密証書遺言については思い当たる場所や貸金庫などを自力で探すしかないのです。

それに対し、公正証書遺言の場合は遺言検索システムというとても便利な方法で調べることができます。

公正証書遺言は遺言検索システムでデータベース管理されている

遺言検索システムとは日本公証人連合会によって作成されたシステムで、1989年(平成元年)以降に作成された公正証書遺言がデータベースで管理されています。

公証人は1989年1月1日以降に作成したすべての公正証書遺言に関する情報を報告しています。

日本公証人連合会がそれらの情報をデータベースで管理しています。

その情報には遺言書の作成年月日、証書番号、遺言書の氏名、生年月日、作成公証人名と電話番号が含まれます。

どこの公証役場からでもこの遺言検索システムを利用して日本全国で作成された公正証書遺言を検索することができるのです。

遺言書があることがわかれば、保管している公証役場に請求して謄本を発行してもらえます。

郵送で受取ることも可能です。

このようにして、遺言書の存在を知らないまま手続きを進めて、あとから面倒な事態になるのを防ぐことができるわけです。

この遺言検索システムの利用請求は公証役場で行います。

全国約300か所ある公証役場で公正証書遺言の有無を確認できる

ここで簡単に公証役場について説明しておきます。

普通の生活をしているとあまり聞きなれないかもしれませんが、公証役場とは国内に約300か所ある法務局管轄の公的機関です。

必ず1名以上の公証人が配置されています

公証人とは、裁判官、検察官、法務局長など原則として30年以上の実務経験がる法律関係者の中から選ばれ法務大臣によって任命された公務員です。

主に公正証書の作成、私文書の証明、証書が作成された日付の証明などを行っています。

遺言検索システムの照会ができるのは公証人だけなので、そこに出向いて照会を依頼するわけです。

既に述べた通り、検索システムの利用は遺言者が公正証書遺言を作成した公証役場に限られるわけではありません。

最寄りの公証役場で利用できます。

公証役場の所在地と連絡先は下記のリンクから調べることができます。

参考:「公証役場一覧」(日本公証人連合会)

システムを利用できるのは相続人と利害関係者だけ

この検索システムの利用請求ができるのは下記の人に限られます。

  • 法定相続人
  • 相続人以外の利害関係者(受遺者、財産管理人など)

なお検索ができるのは遺言者が亡くなったあとです。

亡くなる前は遺言者本人しか利用できません。

推定相続人(法定相続人 )であっても利用できません。

検索自体は無料です。

検索にかかる時間は、書類の確認や照会手続きを含めて20~30分ほどです。

遺言書があることがわかったら謄本を請求しましょう。

手数料はページ1枚250円、閲覧は1回200円です。

謄本請求に必要な書類は下記の検索時に必要な書類と同じです。

原本が、訪れたところとは別の公証役場に保管されている場合は、郵送で謄本の請求・受領ができます。

公証役場の担当者に手続きと費用を確認しましょう。

公正証書遺言の確認に必要な書類

公証役場に行くときは、二度手間にならないように必要書類を忘れずに持参するようにしてください。

プライバシーを守るためにも公証人は相続人・利害関係者以外には絶対に公正証書遺言の照会依頼に応じません。

遺言書の存在の有無も含め何も対応してくれません。

下記の書類はどれも必要な書類なので、よく確認してから出向くようにしましょう。

相続人本人が公証役場に行く場合

  • 1.被相続人の戸籍(除籍)謄本
    遺言者が亡くなっていて遺言書の照会・検索が利用できることを証明するために必要です。
    死亡診断書でも大丈夫です。
  • 2.相続人の戸籍謄本
    検索を請求する人と遺言者の関係を証明するために必要です。
    遺言者の相続人であることを確認します。
  • 3.請求者の印鑑証明書(3か月以内)と実印
    検索を請求する人の本人確認資料です。
    顔写真付き身分証明書(運転免許証等・マイナンバーカード)と認印でも事足ります。

相続人の代理人が公証役場に行く場合

相続人ではない親族や司法書士・会計士などが代理を受けて公証役場に行く場合です。

上記の1~3に加えて下記の書類が必要です。

なお、相続人の実印は持参せず下記の委任状に押印します。

  • ・相続人から代理人への委任状
    遺言検索を代理したことの証明になります。
    相続人の実印を押印します。
  • ・代理人の身分証明書(運転免許証・マイナンバーカード等)と認印

代襲相続人が公証役場に行く場合

相続人が死亡していて代襲相続人(相続人の子供)が公証役場に行く場合です。

上記1と3に加えて下記の書類が必要です。

  • ・代襲相続人であることを証明する戸籍謄本

受遺者が公証役場に行く場合

相続人ではない方が、自分が受遺者(遺贈を受ける人)になっていると考えて公証役場に行く場合です。

上記1と3に加えて下記の書類が必要です。

  • ・受遺者であることが想定できる資料及び説明
    利害関係人であることを証明する必要があります。
  • ・受遺者が親族の場合は、戸籍謄本等など

相続財産管理人が公証役場に行く場合

上記1と3に加えて下記の書類が必要です。

  • ・相続財産管理人であることを明らかにする家庭裁判所の決定

遺言書を見つけても自分で開封してはいけない

公正証書遺言書ではなく、自筆証書遺言・秘密証書遺言を見つけた場合は、自分で開封してはいけません。

なぜなら自分で開封をすると、内容を書き換えたり遺言書を破棄したりする可能性があるからです。

遺言書は相続において重要な書類となるため、変に手を加えないようにルールが決められています。

自筆証書遺言・秘密証書遺言を見つけたら開封をせずに、家庭裁判所で検認してもらいましょう。

検認とは、家庭裁判所に相続人が集まって内容を確認して、遺言書の内容を明確にする手続きです。

検認することで、遺言書の内容・確認日時が明確になるため、不正に改ざんしたり破棄したりできなくなります。

自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合は、検認をしておかないと、その後の手続きに遺言書を利用できなくなります。

公正証書遺言・法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言書は、検認は必要ありません。

自筆証書遺言は法務局で保管されている可能性あり

2020年の7月から法務局で自筆証書遺言の保管制度が始まりました。

以前は自筆証書遺言を探すなら、相続人・親族が自力で遺言書を探すしか方法がなかったです。

法務局での保管制度を利用しているなら、法務局へ問い合わせで遺言書の内容が確認できます。

相続人は遺言書を確認できる

自筆証書遺言を法務局で保管しているなら、内容の確認ができます。

確認方法は下記の2種類になります。

  • ・電子データをモニターで閲覧する:1,400円
  • ・元本を閲覧する:1,700円

電子データをモニターで閲覧する方法は、全国どこの法務局でも可能です。

元本を閲覧する場合は、遺言書を保管している法務局まで出向く必要があります。

遺言書の閲覧請求ができるのは、法定相続人・受遺者・遺言執行者のみになります。

また遺言書の内容を確認できるのは、遺言者が亡くなったあとだけです。

遺言者が生きている場合には、配偶者・子供であったとしても、内容の確認はできません。

検認が必要ない

自筆証書遺言書の場合は、開封前に検認が必要です。

しかし法務局の保管制度を利用しているなら、検認が必要ありません。

なぜなら法務局の保管制度を利用するときに、家庭裁判所へ提出して事前に検認を済ませているからです。

通常の自筆証書遺言書は検認が必要ですが、法務局で保管されているなら牽引は不要なので覚えておきましょう。

遺言書の内容は確認が必要

法務局の保管制度を使っていたとしても、遺言書の内容には確認が必要です。

なぜなら事前に検認をしていたとしても、裁判所・法務局は遺言書の中身までチェックしないからです。

あくまで「遺言書の形式要件を満たしているか?」を見ているだけなので、内容についてはノータッチになります。

遺言書の内容・執行で不安なことがあれば、専門家への相談がおすすめです。

まとめ

相続では「法定相続より遺言書の内容が優先される」という大原則があります。

つまり、被相続人が法的に有効な遺言書を残していた場合は、原則として遺言書の内容に従って相続が行われます。

財産の分割が終わって10年後に遺言書が発見された場合でも、財産は再分割となる可能性があるわけです。

これはなかなか大変な事態です。

被相続人全員の同意があれば遺言に従わなくてもいいのですが、全員の同意を得るのは簡単なことではありません。

それで、相続手続きを行う際にはまず遺言書の有無をしっかり確定するようにしましょう。

被相続人が急に亡くなってしまった場合など遺言書があるかどうかわからないときは、公証役場での遺言検索システムを利用するなどして効率的に調べましょう。

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