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最終更新日:2023/5/2

自筆証書遺言の5つの要件とは?法改正後の正しい書き方について

本間 剛 (行政書士)
この記事の執筆者 行政書士 本間剛

ベンチャーサポート行政書士法人 代表行政書士。山形県出身。

はじめて相続を経験する方にとって、相続手続きはとても難しく煩雑です。多くの書類を作成し、色々な役所や金融機関などを回らなければなりません。専門家としてご家族皆様の負担と不安をなくし、幸せで安心した相続になるお手伝いを致します。

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自筆証書遺言の5つの要件とは?法改正後の正しい書き方について

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この記事でわかること

  • 自筆証書遺言が法的に有効となるための条件を知ることができる
  • 自筆証書遺言とセットになる財産目録の作成方法を知ることができる
  • 実際の自筆証書遺言の記載例で作成のポイントを確認できる

自筆証書遺言は、ご自身の最後のメッセージであり、また自身の財産や権利の在り方をどのようにするのかを記した法的効力のある文書です。

そして、遺言書は、遺言能力がある人であれば誰でも作成することができますが、有効に成立するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。

ここでは、自筆証書遺言が有効に成立するための要件や、作成上のポイントを解説します。

また、最近の改正をふまえた遺言書の記載例についても確認していきます。

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法的に有効な遺言書には条件がある

遺言書は、遺産分割の際に相続人が揉めることのないように、あるいは法定相続人以外の人に遺産を渡すために作成されます。

遺言書の作成件数は年々増える傾向にあり、以前より広く利用されている状況となっています。

ただ、紙にメッセージを書いておけば遺言書として法的に効力を発揮するわけではありません。

法的に有効な遺言書となるためには、いくつかの要件を満たす必要があるのです。

そのような要件が設けられているのは、遺言書が故人の遺志を示すものであることが客観的に証明されていなければならないこと、そして遺言者の最後の意思表示であることが第三者から見ても分かることが求められるからです。

自筆証書遺言に必要な5つの要件

それでは実際に、自筆証書遺言を作成した場合にどのような要件が認められるのかを確認していきましょう。

現在、自筆証書遺言が法的に有効に成立するためには、大きく分けて5つの要件が必要とされています

その内容について、1つずつ確認していきましょう。

要件①遺言者の要件

遺言者とは、遺言書を作成する人のことを指します。

遺言書を作成することのできる人は、遺言能力がなければならないと決められており、誰でも遺言書を作成できるわけではありません。

この「遺言能力を有する人」とは、15歳に達していること、そして認知症などのために意思能力が失われていないことを満たす人をいいます。

現実的に15歳未満の者が作成した遺言書であれば問題になることはまずありません。しかし、遺言書を作成した当時に遺言能力があるかどうかという点では争いになる可能性があります。

ただし、認知症を発症しているからといって、必ず遺言能力が失われるというわけでもありません。

作成された遺言書自体は、他の要件もクリアしていれば有効になるため、無効を主張する人は裁判所に提訴してその無効を主張する必要があります。

その際、遺言者の遺言書作成当時の状況や遺言書の内容の複雑さなどを総合的に考慮し、遺言書の有効・無効を判断します。

同じような認知症の症状を発症しているケースでも、有効になる場合もあれば無効になる場合もあるため、形式的に判断することは難しいと言えます。

なお、遺言書を代理人が作成することは認められません。

未成年者だから親権者が代理人になることはできませんし、認知症の人の代わりに成年後見人が遺言書を作成することもできません。

なお、認知症の方は特別な形式が設けられており、判断能力が一時的に回復した状態であれば2名以上の医師の立ち会いのもとに遺言書を作成できるとされていますが。そのように作成された特別な形式の遺言書以外は認められません。

要件②本文は手書きする

自筆証書遺言は名称のとおり、遺言書の本文を自筆したものでなければ成立しません。自筆とは手書きという意味です。

本文とは、遺言書の記載事項のうち、相続や財産の処分、遺贈、身分などに関する内容を記載した部分です。

おもにどの相続人にどの財産を相続させるのか、財産の一部を公益法人に寄付することを指定したり、あるいは認知していなかった子供を認知したりする内容となります。

いずれも、遺言書に記載されることで法的な効力が生じるため、遺言書が成立しているか否かによって、その後の遺産相続や財産の処分などの内容が大きく変わる可能性があります。

必ず遺言書の本文は手書きして作成するようにしましょう。

要件③遺言者の署名

遺言書を作成した人は、必ずその遺言書に署名をしなければなりません

明らかに誰が作成したものか、その内容から分かる場合もありますが、署名がなければ自筆証書遺言は成立しません。

本文を作成するのに集中していると、うっかり署名を忘れてしまう場合もあるため、必ず作成した後にもう一度確認するようにしましょう。

要件④押印

自筆証書遺言が成立するために、署名と同様に必要とされるのが押印です

重要な書類に印鑑を押すというのは日本の古くからの慣習であり、民法に押印が必要であるという規定が設けられています。

署名よりさらに形式的なものであり、遺言書の記載内容に特別な影響はなく、実際に本人が押したものかどうかも分かりませんが、法律が要求している以上は、押印がなければ無効になるのが原則と考えられます。

なお、押印に用いる印鑑は印鑑登録してある実印でなくても構いません。

ただ、自筆証書遺言の押印には実印を用いて、印鑑証明書とセットにすることでその有効性をより高めることができます。

要件⑤作成日を記載する

自筆証書遺言には、遺言書を作成した日付を記載する必要があります。

この日付を記載する理由は、遺言書を作成した日を確定することで、仮に自筆証書遺言が2通以上発見された場合に、どの遺言書が最後に作成されたものかを判別するためです。

必ず年月日まで正確に記載しなければなりません。

例えば「○年○月吉日」といった記載では無効となります。

また、自筆証書遺言が1通しかない場合でも、明確な日付の記載がなければ無効となります。

法改正で一部パソコン使用が可能に


これまで自筆証書遺言は本文だけでなく、財務目録などもすべて自筆で作成する必要がありました

しかしすべての内容を間違えないように自筆することは想像以上に大変で、遺言者にとっては大きなハードルとなっていました。

また、遺言書の記載内容は、時の経過とともに変えていきたいと考えるのが普通なのですが、もう一度すべてを書き直すのは大変なため、なかなか重い腰が上がらない状態となっていました。

そこで、2019年1月に民法が改正され、自筆証書遺言の作成がしやすくなったのです。

民法改正の内容

2019年1月の民法改正により、財産目録を遺言書に別紙として添付する際には、その財産目録を自筆で作成する必要はなく、パソコンなどを使って作成できるようになりました

さらに、財産目録の中で財産を特定するために、金融機関の通帳のコピーや不動産の登記事項証明書を目録として使用することもできるようになりました。

これにより、遺言書の本文は自筆し、財産目録はパソコンやコピーなどを使って作成することが認められるようになったのです。

パソコンを使って作成する際の注意点

パソコンを使って財産目録を作成した場合も、署名・押印は必要です。

自筆で作成し署名押印のある遺言書に、パソコンで作成した自筆の署名・押印がない財産目録をホチキスなどでとめておいたとしても有効にはなりません。

仮に財産目録が無効になってしまうと、その財産目録をもとに遺産の分割方法を指定している遺言書全体が無意味なものとなってしまう可能性もあるため、忘れないようにしなければなりません。

また、財産目録以外の部分までパソコンで作成してはいけません。

たとえ遺言書のタイトルや日付などであっても、自筆しなければ無効となってしまうのです。

さらに、財産目録に署名・押印が求められる以上、紙に印刷して保管しておくことも必要です。

もしもパソコン内部に作成された財産目録が厳重に管理されていたとしても、データとして保管しておくだけでは有効とならないため、勘違いしないようにしなければなりません。

相続財産を正確に記載しないと無効になる可能性あり

自筆証書遺言に添付する財産目録に財産を記載する場合、どの財産を指しているのかはっきりと特定し、誤解を生じないような記載が求められます

例えば、自宅を妻に相続させるという内容の遺言書を記載する場合を考えてみましょう。

通常、自宅といえば実際に住んでいる場所を指します。

そのため、「自宅を妻に相続させる」という記載方法でも、その財産の内容を特定できているように思うかもしれません。

しかし、実際にはこのような記載方法では問題となる可能性があります。

なぜなら、自宅という言葉の持つ意味は必ずしも1つだけではないからです。

複数の住居を所有している人もいますし、単身赴任で家族が別々の場所に住んでいる場合もあります。

また、遺言書を作成した後に引っ越しをした場合には、遺言書を作成した時に書いた「自宅」と亡くなった時の「自宅」は別の物件を指すこととなります。

そもそも、遺言者の自宅を知っているのは家族や一部の人に限られるため、このような記載方法では自筆証書遺言は有効に成立しません。

妻に自宅を相続させたいという内容の遺言を残す場合には、遺言者の自宅の場所を知らない第三者が見ても判別できるように、土地・建物の場所を特定する記載をしなければならないのです。

土地については住所・地番・地目・地積、建物については住所・家屋番号・種類・構造・床面積など、登記事項証明書に記載されている内容をそのまま記載して、誤解を生むことのないような記載を心がけましょう。

同じように金融機関の預金口座についても、単に「長男に○○銀行の普通預金を相続させる」とするのではなく、金融機関名・支店名・預金口座の種類・口座番号・口座名義人を明記するようにしましょう。

正しい遺言書の書き方例

それでは、自筆証書遺言の記載例を確認してみましょう。

ここでは、パソコンを使って財産目録を作成した場合の自筆証書遺言と財産目録の記載例と、注意点を紹介します。


遺言書の作成上の注意点

遺言書の本文はすべて自筆でなければなりません。

本文だけでなく、「遺言書」というタイトルや日付なども同様に自筆でなければならないので、注意が必要です。

先ほどの作成例では財産目録を別に作成していますが、もし財産の内容についても本文に記載する場合は、その財産の内容についても自筆する必要があります。

財産目録の作成上の注意点

財産目録を別に作成しているため、パソコンなどを使って作成することができます。

また、財産の表記については、すべての人が誤解のないように記載する必要があります。

例えば土地や建物などの不動産については、登記事項証明書に記載されている内容をそのまま書き写す、あるいはそのコピーを用いるなどで、どの財産を誰が承継するか確実に表示するようにします。

預貯金の口座についても、通帳の内容を確認しながら記載する、あるいはそのコピーを用いるなどして、間違いのないように目録を作成します。

財産目録にも署名・押印が必要とされますが、忘れる可能性があるため特に注意しましょう。

保管について

自筆証書遺言を作成したら、保管の方法が気になるかもしれません。

遺言書は簡単なところに保管していると、見つかったときに破棄されたり改ざんされるリスクがあります。

ここからは、遺言書の保管について紹介します。

自宅で保管する

遺言書の保管で真っ先にあがるのが、自宅の見つかりづらい場所でしょう。

具体的には自宅のタンス・机の引き出し・金庫などです。

簡単に見つかる場所だと、誰か発見したときのリスクが高いので注意が必要です。

ただし銀行の貸金庫などは見つかるリスクは少ないですが、金庫を開ける手続きが大変になります。

「遺言書が見つかっても破棄や改ざんされるリスクは少ない」という人は、自宅での保管でも問題ないでしょう。

法務局の遺言書保管制度を使う

遺言書を確実に保管しておきたい人は、法務局に預けて遺言書保管制度を利用しましょう。

遺言書保管制度とは、自筆証書遺言を法務局が責任を持って保管してくれる制度です。

法務局に預けているため、家族に見つかったり、破棄や改ざんのリスクがありません。

実際に相続が始まるまで、確実に保管をしてくれます。被相続人が亡くなったときには、遺族に通知してくれるため、遺言書を相続人に届けることができます。

また法務局に提出する際に、遺言書の形式ルールについてチェックしてくれます。

もし遺言書の形式ルールについて間違いがあれば、指摘してくれるため、修正して提出すれば正しい遺言書を作成できます。

ただし遺言の内容については確認してくれません。あくまで形式が合っているかどうかの確認になります。

自分で法務局まで行って手続きする手間はありますが、確実に保管できる方法です。

自筆証書遺言と公正証書遺言の違い

「自筆証書遺言について調べていると、公正証書遺言が出てきたけど、なにが違うの?」という人もいるでしょう。

公正証書遺言とは、公正役場で公証人・証人が立ち合って作成するものです。

公正役場でチェックしながら遺言書を作成するため、効力を持った遺言書を作成できます。

作成した公正証書遺言は、そのまま公正役場で保管してくれるため、紛失・改ざんのリスクもありません。

ただし証人が必要だったり、作成に手数料がかかるため、時間と手間はかかります。

「時間や手間がかかったとしても、確実な遺言書を作成したい」という人は公正証書遺言がおすすめです。

反対に「自分で遺言書を作成できる自信がある」という人は、自筆証書遺言がいいでしょう。

「どちらがいいか判断できない」という人は、相続に精通している専門家に一度相談して決めるのがおすすめです。

まとめ

遺言書は、どのような紙に記載しても、どのような記載内容であっても、形式的な要件を満たしていれば有効に成立します。

そのため、自筆証書遺言の作成は手軽にできる一方で、極めて慎重になる必要があります

逆に、遺言書が成立しなかった場合、財産の処分は相続人の遺産分割協議により行われるため、思惑とは全く異なる結果になる可能性があります。

せっかく遺言書を作成しても、その内容が実現しないということのないように、基本的な要件をもう一度確認して、実現可能な遺言書を作成するようにしましょう。

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