工場を経営していた父が先般亡くなりました
母は既に亡くなっているため、相続人は長男である私と次男の弟の2人のみです。
現在、私は家業を継がず、デザインの道を進み、現在、独立してデザイン事務所を経営していて、それなりに成功しています。
私が家業を継がなかったため、弟が父とともに工場を経営してくれていました。
そんな中での父の死でしたので、工場は当然に弟が継いでくれることになりました。
そこで、私自身は相続を放棄して、父の全財産を弟に相続してもらおうと考えていて、このことは既に弟にも伝えていました。ところが、忙しさにかまけていたのと、法律の無知から、家庭裁判所への申述を行わないまま3ヶ月の熟慮期間が過ぎてしまいました。
今から、相続を放棄する方法はないでしょうか。また、それが無理なら、相続放棄以外の方法で、全財産を弟に相続させる方法はないでしょうか。
司法書士 田中千尋
原則3か月以内と定められている相続放棄の申立て期間を経過してしまった場合、相続放棄が認められるのは極めて例外的な場合に限られます。
相続発生から3か月を過ぎて相続放棄の申立てを行う場合、家庭裁判所に上申書を提出し、特別な事情があったために相続開始から3か月以内に相続放棄の手続きができなかったことを説明しなければなりません。
また、上申書を提出したからといって必ず受理されるわけではありません。
亡くなった人は財産がまったくないと信じていたことや、相続財産の調査を行うのに困難に理由があったことなどを説明することになると考えられますが、簡単な手続きではありません。
ただし、今回のケースでは相続放棄しなくても弟さんにすべての財産を相続してもらうことは可能です。
あなたと弟さんの2人が法定相続人となる今回の相続では、2人で合意できればどのような遺産分割を行っても問題ないからです。
そのため、あなたが何も相続しない一方で、弟さんがすべての財産を相続することで2人が合意すれば、全財産を弟さんに相続してもらうことができます。
全ての相続人が遺産分割協議に合意したことの証として遺産分割協議書を作成しなければなりません。
これは、1人の相続人がすべての財産を相続する場合でも必要となります。
また、遺産分割協議書ですべての財産を弟さんが相続するものとしていると、後から借入金などの債務が見つかった場合にそれらの債務も弟さんが相続しなければなりません。
1人で全財産を相続する場合には、より慎重に財産の調査を行う必要があります。
司法書士 田中千尋
相続サポートセンター(ベンチャーサポート司法書士法人) 代表司法書士。昭和62年生まれ、香川県出身。
大学卒業後、司法書士事務所の勤務を経て、ベンチャーサポート司法書士法人の代表司法書士に就任。相続登記や民事信託、成年後見制度の業務に従事。相談者に親身になって相談を受けることを心がけている。
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昭和55年うまれ、大阪府出身。
大卒後、税務署に就職し国税専門官として税務調査に従事。税理士としても10年を超えるキャリアを積み、現在は「相続に精通した税理士としての知識」と「元税務調査官としての経験」を両輪として活かした相続税申告を実践中。
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