私の父は今年80歳を迎えます。
すでに仕事を辞めてから10年以上経っていますが、今でも趣味のゴルフを楽しみ、また夫婦での旅行にも年に1,2回出かけるなど、まだまだ充実した日々を送っているようです。
そんなある日、友人とともにゴルフへ出かけた父は、その友人から2,500万円まで生前贈与しても非課税になる制度があると聞いてきました。
それほど大きな金額の贈与を行おうと思ったことのなかった父も、自宅の建物や敷地を相続した時のことを考えると、少しでも早く生前贈与しておくことで税金が少なく済むのではないかと考えているようです。
はたして2,500万円まで非課税となる贈与の制度とはどのようなものなのか、またこの制度を利用した方がいいのか教えてください。
生前贈与を行っても、受贈者1人あたり2,500万円までの贈与について贈与税が非課税となるものとして「相続時精算課税」という制度があります。
この制度は、高齢者から若年層に財産の移転を促進することを狙いとして、2003年に新たに創設された制度です。
相続時精算課税制度を利用できるのは、贈与する人は60歳以上の父母や祖父母であり、財産を受ける人は贈与者の子供や孫であり20歳以上の人です。
贈与できる財産には制限がないため、現金や土地、有価証券などあらゆる財産について利用することが可能です。
相続時精算課税制度を利用した場合、累計で2,500万円まで非課税となります。
いったん相続時精算課税制度を利用すると、通常の相続税の課税制度である暦年課税を適用することはできなくなります。
そのため、相続時精算課税を利用した場合は110万円の基礎控除は適用されません。
また、累計で2,500万円を超えて贈与した場合は、超える部分に対して一律20%の税率が適用されます。
贈与した段階では2,500万円まで贈与税が非課税となりますが、贈与した人が亡くなった時には、相続時精算課税により贈与された財産を相続財産に含めて相続税の計算を行う必要があります。
この時、相続時精算課税により贈与された財産については、贈与した時の評価額で相続税の計算を行う必要があるため、評価額が減少しているにもかかわらず相続税の額が増えてしまう場合もあります。
もし相続時精算課税を利用している人が、2,500万円を超えて贈与を受けたために贈与税を支払っていた場合には、その支払った税額は相続税の計算を行った際に計算された相続税の額から控除されます。
相続時精算課税を利用して贈与した財産については、相続税の計算を行う際に相続財産に含まれます。
しかし、暦年贈与によって贈与された財産については、原則として相続財産に含まれません。
そのため、相続時精算課税を利用したからといって必ずしも相続税の節税にはなりません。
特に自宅を相続時精算課税により贈与すると、相続税が減額される特例を使うことができなくなり、かえって税負担が増える結果となるため、デメリットの方が大きくなることに注意が必要です。
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