父が75歳で他界しました。遺産は預貯金約5000万円で、相続人は私と弟の2人です。
私は1年前に結婚した際に祝い金として父から1000万円を受け取りましたが、弟からその際の贈与が特別受益の対象となるため、その分だけ相続分を少なくするべきだと言われました。
特別受益とはどのような制度で、弟が主張していることは正しいのでしょうか。
ご質問のように、生前に亡くなった方から財産を受け取っている場合、その分を相続財産の分割の計算に加味すべきとする考え方があります。この生前に受け取った利益のことを「特別受益」と呼びます。
実際に特別受益に該当するものには、①遺贈、②学費、③生計の資本としての贈与、④土地・建物の無償使用、⑤生活費の援助など様々なものがあります。ただし、何らかの形で金銭の負担をしてもらっていればすべて特別受益に該当するというわけではなく、通常の扶養義務の範囲内での生活費の援助や、通常の教育の範囲内にある学費については特別受益にあたらないとされるなど、その境界線はあいまいです。また、ここに記載した以外にも、特別受益にあたると判断される場合があるため、そのケースごとに判断しなければなりません。
特別受益には、相続人が被相続人から生前に贈与を受ける場合だけでなく、相続開始後に遺贈を受ける場合も含まれます。特定の相続人だけが利益を受けているにもかかわらず、相続財産を法定相続割合で分割することとなれば、結果的に特別受益を得ている人だけが得をすることとなり、相続人間で不公平が生じます。そのため、特別受益がある場合には、特別な計算を行うこととされているのです。
今回のご質問にある内容ですが、結婚の祝い金として受け取った1,000万円が特別受益にあたるかというものです。一般的に考えて、結婚の祝い金として1,000万円を渡す(もらう)のは普通のこととは言えません。身内からご祝儀をもらった程度であれば特別考慮する必要はないのですが、1,000万円という金額はかなり大きな金額であり、通常の扶養義務の範囲を超えるような金銭のやり取りと考えられます。したがって、この金額は特別受益に該当することになります。
特別受益がある場合は、その特別受益を受けた人も、特別受益を受けていない人も、相続財産の法定相続分の計算が変わります。
まずは相続財産に特別受益の額を加えて、もし特別受益がなかった場合の相続財産の額を計算します。そして、その額に法定相続割合を乗じて各相続人の法定相続分を計算します。そのうえで、特別受益を受けた人はその特別受益の額を控除することとなります。
今回のご質問のケースでは、あなたの相続分は(5,000万円+1,000万円)×1/2-1,000万円=2,000万円となります。また、弟さんの相続分は(5,000万円+1,000万円)×1/2=3,000万円となります。その結果、特別受益の金額まで含めて考えると、ともに3,000万円ずつを受け取ったこととなるのです。
他にも特別受益に該当するような財産を受け取っていないか、確認してから計算するようにしましょう。
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