

東京弁護士会所属。東京都出身。
弁護士になる前、私は公務員として自治体業務に携わってきました。その経験から、法的な正しさだけでなく、社会的な公平性や、一人ひとりの生活に寄り添うことの重要性を深く理解しています。
立ち退き問題は、住まいや事業所といった生活の根幹に関わる問題であり、そこには多大な不安やストレスが伴います。私は「弁護士は敷居が高い」というイメージを払拭し、何でも気軽に話せる相談相手であることを常に心がけています。
複雑な法律用語を分かりやすく整理し、今後の見通しを丁寧にご説明した上で、依頼者様が「相談して良かった」と心から思える解決を目指します。公務員時代から大切にしている「誠実に向き合う」姿勢を貫き、皆様の正当な権利を守るために全力で取り組んでまいります。

20年以上住んだアパートの退去費用は、経年劣化によって内装などの価値が減少しているため、借主の自己負担とはならない場合がほとんどです。
クロスにタバコのヤニ汚れなどがついている場合でも、新品交換費用を全額負担するケースは稀でしょう。
故意や過失の損傷は原則借主負担ですが、請求が高額なときは不当な項目が含まれている可能性もあります。
すぐに合意書へサインせず、無料相談窓口などを利用して弁護士に相談しましょう。
本記事では、退去費用の負担区分や請求額を抑える方法などを解説します。
目次
20年住んで耐用年数を経過した壁紙やカーペットなどの残存価値はほぼ0円です。
経年劣化で損耗した設備の修繕も、原則として貸主が負担します。
クリーニング費用は契約書に有効な特約があるときのみ借主負担となるため、支払う前に契約書の特約や費用の負担区分などを確認しておきましょう。
退去費用が貸主負担となるのは、以下の項目です。
通常の生活で自然発生した損耗などの修繕は毎月の家賃に含まれていると解されるため、原則借主負担とはなりません(最判平成17年12月16日判決[注1])。
借主が物件を使用収益できるように設備などを保つ責任は、家賃を受け取る貸主にあるとされています。
[注1]
事件名:敷金返還請求事件
裁判所・部:最高裁 第二小法廷
判決日:2005年12月16日
事件番号:平成16(受)1573
出典:裁判所判例検索
借主の自己負担が求められるのは、以下の費用です。
民法400条[注2]の善管注意義務違反にあたる不注意で損傷させたときの修繕費用は、原則として自己負担です。
下地の石膏ボード、フローリングの合板部分などの寿命は数十年あり、長年居住し続けても民法621条の原状回復義務を負う可能性はあるでしょう。
[注2]民法/e-Gov
民法
クリーニング費用を借主負担とする特約が有効になるには、以下の要件を満たさなければなりません。
消費者契約法10条[注3]で借主に一方的に不利な特約は無効となるため、負担範囲や金額が暴利的なときも有効となりません。
「タバコ特別消臭費用5万円」など、本来はクリーニング費用に含まれる項目が二重請求されるケースにも注意しましょう。
[注3]消費者契約法/e-Gov
消費者契約法10条
賃貸アパートの退去時にタバコのヤニ汚れがある場合、退去費用は基本的に借主負担です。
喫煙で発生した壁や天井などのヤニ汚れは通常の生活を超える範囲の使用で、借主の善管注意義務違反による汚損とみなされます(民法400条)[注2]。
一方で、一部の汚損にも関わらず全面張替えを不当に請求されるケースもあるため、請求額を鵜呑みにせず弁護士に相談しましょう。
賃貸借契約に以下の要件を満たしたタバコのヤニ汚れに関する特約がある場合、クロス張り替えなどの費用が借主負担となる可能性があります。
契約書に特約があるときでも、借主に一方的に不利益を与える暴利的な内容は消費者契約法10条[注3]に違反するため、無効となる可能性が高いです。
たとえば、ヤニ汚れがクロスの一部のみにも関わらず、部屋全体の全面張替えを求めるようなケースです。
特約があっても内容が不当なときは無効になり得るため、納得できないときは弁護士に相談しましょう。
退去費用は内装や設備の残存価値が基準になるため、以下の通り各設備ごとに異なる耐用年数と使用期間から計算します。
| 使用年数 | ヤニ汚れの退去費用 |
|---|---|
| 6年 | クロスやクッションフロア、エアコンなどの耐用年数は6年で、借主負担がほぼ0円となる。 |
| 15年 | 給排水設備や電気設備、空調設備などの建物附属設備が耐用年数を迎える。 下地ボードは耐用年数が15年~数十年であり、ヤニ浸食の有無が請求額に影響する。 |
| 20年 | 構造躯体などを除き、ほとんどの設備が耐用年数を大幅に超過する。 |
クロスの張り替え費用は1㎡あたり1,500~2,000円程度で、全面張り替えの退去費用の相場は15万~20万円程度でしょう。
フローリングの床にタバコの焦げ跡がある場合、1万5,000~5万円程度の補修費用がかかります。
貸主から喫煙を理由とした数十万円の補修費用を請求されても、耐用年数を経過した設備の請求は拒否しましょう。
壁紙などの耐用年数は減価償却と連動しており、価値の減少分は貸主が負担します。
たとえば、6年間住んだアパートにタバコのヤニ汚れがある場合の退去費用は、それぞれの負担額を以下のように計算します。
【条件】
入居期間:6年(72カ月)
汚損部分:壁紙
耐用年数:6年(72カ月)
退去費用:20万円
借主の負担額は「退去費用×(耐用年数-入居期間)÷耐用年数」と計算するため、以下の結果になります。
耐用年数を経過した壁紙の残存価値は0円で、貸主からの請求はありません。
貸主の負担額は「退去費用×入居期間÷耐用年数」となるため、以下の通りに計算します。
アパートに6年以上住んでいれば、ヤニ汚れによる壁紙の交換費用は貸主負担となる可能性が高いでしょう。
退去費用のトラブルを防ぐために、契約書の特約を入居前に確認しましょう。
タバコによる退去費用のトラブルを減らすためには、換気扇の下など他人に迷惑がかからない適切な喫煙場所を選ぶ必要もあります。
ただし、壁の汚れや匂いを気にしてベランダ喫煙すると、近隣住民からの健康被害告訴や裁判沙汰になるリスクもあるため注意しなければなりません。
退去費用に関するトラブルが発生しそうなときは、できる限り早く弁護士に対処法を相談するのが重要です。
退去費用としてヤニ汚れなどのクリーニング代を請求されたときは、契約書の内容を確認しましょう。
以下のようなケースでは、消費者契約法10条[注3]などに基づき支払いを拒否できる可能性があります。
請求書に記載された他の費用項目についても、契約書の負担区分や算定方法と合致しているか確認しておきましょう。
アパートでタバコを吸うときは、必ず換気できる場所を選んでください。
ベランダで喫煙すると近隣住民に健康被害が及び、民法709条[注2]の不法行為に基づく健康被害や洗濯物の汚損に伴う慰謝料請求訴訟を提起される可能性があります。
換気扇のあるキッチンなどが適していますが、1階の部屋は換気扇の排気が道路に漏れてしまい、近隣住民や歩行者の苦情に発展する恐れがあります。
受動喫煙によるトラブルを予防するため、他人に迷惑がかからない場所を探しましょう。
高額な退去費用を請求され、支払いに納得ができないときは弁護士などの専門家への相談がおすすめです。
貸主や管理会社は不動産賃貸のプロで、個人が交渉しても受け入れず、訴訟提起などの手段で対抗される恐れもあるでしょう。
弁護士に依頼すると、借主の法的な代理人として不当な請求を排除し、敷金の返還請求などを行います。
支払督促などの連絡窓口も弁護士に一本化されるため、借主の労力や精神的負担は大幅に軽減されるでしょう。
賃貸アパートの退去費用について以下のよくある質問に回答します。
経年劣化や耐用年数の償却によって残存価値が減額されるしくみや、退去費用が高額になる事例などを確認しておきましょう。
クロスやクッションフロアなどの主要な内装設備は、耐用年数の6年を経過すると残存価値がほぼ0円となります。
一方で、通常の清掃を怠ったためにお風呂に固着した黒カビのクリーニング費用などは年数の減価償却が適用されず、一定の支払いを求められる恐れがあります。
借主の善管注意義務違反で設備が故障したケースなども、修繕負担を免れない可能性があるため注意しましょう。
退去費用は一般的に数万〜十数万円ほどかかりますが、以下のような通常の使用を逸脱したケースでは高額になる恐れがあります。
明らかな故意や重大な過失などで特殊清掃や全面交換が必要となり、退去費用が200万円を超えるケースもあるでしょう。
20年住んだアパートの内装は耐用年数を大幅に超過しており、貸主が交換費用を負担するケースが多いでしょう。
クリーニング費用を請求された場合でも、特約で負担範囲や算定方法が明記され、借主が費用負担を明確に認識していなければ有効となりません。
喫煙のヤニ汚れを防ぐには場所を選ぶ必要がありますが、ベランダ喫煙は近隣住民から損害賠償を請求される恐れがあるため注意しましょう。
高額な退去費用の請求に一人で悩む前に、まずはVSG弁護士法人の無料相談窓口へご連絡ください。