

大阪弁護士会所属。京都市出身。
建物の老朽化や土地活用に伴う「立ち退き」の問題は、賃貸人・賃借人双方の利害が複雑に絡み合い、解決が長引くほどオーナー様にとって大きな精神的・経済的負担となります。
円滑な明渡しを実現するためには、正当事由の精査といった法律知識に加え、妥当な立ち退き料の算定や、相手方の状況に応じた柔軟な交渉力が欠かせません。
私はIT企業や経営コンサルタントとしての実務経験を活かし、単なる法律論に留まらない「ビジネス視点での最適な解決策」をスピーディーに提示することを得意としています。 早期解決によって次のステップへスムーズに進めるよう尽力いたします。ぜひ一度ご相談ください。
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書籍:「事業をやり直したい」と思ったときの会社のたたみ方

大家都合で退去を求めるときの立ち退き料は、一般的に家賃の6〜12カ月分ほどが相場です。
立ち退き料の内訳には、新居の初期費用や引っ越し費用、家賃差額補償などが含まれます。
借主の居住権は借地借家法で保護されており、大家の自己判断で退去要求すると権利濫用や損害賠償請求につながるリスクがあります。
できるだけ早い段階で立ち退き問題に精通した弁護士に相談し、立ち退き交渉を円滑に進めていきましょう。
本記事では、大家都合で退去を要求するときの立ち退き料の相場や円滑に交渉を進めるコツなどをご紹介します。
目次

大家都合による退去の立ち退き料の相場は、家賃の6~12カ月分程度です。
たとえば家賃7万円の場合、立ち退き料は42万〜84万円程度です。
退去要求では、大家が退去を求める理由と借主の生活状況などを比較考量して正当事由があると認められなければなりません(借地借家法28条[注1])。
立ち退き料は正当事由を補完する調整金であり、正当事由の強弱とのバランスによって適正な金額を算出します。
[注1]借地借家法/e-Gov
借地借家法

大家都合による立ち退き料の内訳には、主に以下のような項目があります。
借主から負担してほしい費用について要望があった場合でも、法的には貸主がすべての費用を受け入れる必要はありません。
それぞれの項目ごとに大家として負担が必要になる範囲を確認していきましょう。
新規で物件を契約するときにかかる以下のような初期費用は、大家都合での退去の立ち退き料に含まれます。
新居の敷金は、将来的に返還される預かり金です。
立ち退き料の内訳に含めるかどうかについては、全額補償ではなく一部控除とするなど、実務上の細かな調整が必要です。
引っ越し費用の金額は、荷物の種類や量、新居までの距離、引っ越しを行う時期などによって増減します。
引っ越し業者からの見積もりがベースとなるため、2社以上の相見積もりを条件としましょう。
ピアノなどの特殊家財の運搬やエアコンの工事費なども、立ち退き料に含める条件や金額の上限などを設定しておきます。
慰謝料・迷惑料とは、相手の受けた精神的苦痛を慰謝する目的で支払われる金銭です。
法律上、大家都合の退去であっても正当事由があるときは民法709条[注2]の不法行為ではないため、慰謝料を支払う義務はありません。
立ち退き料に含まれる慰謝料・迷惑料は、借主に立ち退きに合意してもらうための実務上の調整金です。
実費に加え、一定額を上乗せして円滑に立ち退き交渉を進める調整としての役割があります。
引っ越しによって現住居より家賃負担が増えてしまうケースでは、家賃差額を立ち退き料に含める場合があります。
たとえば、長年入居している間に周囲の家賃相場が上がり、同じ地域に引っ越すと現在より高い家賃を支払わなければならないケースです。
大家都合の退去で金銭的な負担を強いるため、次の計算式を用いて家賃差額を算出した上で補償します。
家賃差額は、引っ越し前と同水準の生活が可能な地域で、現状と同程度の広さや設備がある住居・店舗に引っ越す前提で計算します。
現在の住居より広い住宅や店舗に引っ越す場合、家賃の増額分まで認める必要はありません。
店舗やオフィスが退去によって休業や廃業を余儀なくされる場合、休業補償や営業廃止補償などを立ち退き料に含めなければなりません。
休業補償は、たとえば以下のような項目があります。
廃業を余儀なくされた場合の営業廃止補償の例は、以下の通りです。
休業補償や営業廃止補償は、税務申告書や確定決算書などの実務資料から日単位で精密に計算されます。
不誠実な事業者による水増し請求を防ぐため、資料から適正な営業補償額を求めましょう。
[注2]民法/e-Gov
民法
大家都合による立ち退き料に、法律上の規定はありません。
立ち退き料は、借地借家法26条や28条[注1]に定められた大家都合の解約が有効と認められるために、正当事由の不足を補完する金銭です。
大家の退去を求める理由がどれだけ強くとも、最終的には原則として立ち退き料の提示により裁判所に正当事由が認められます。
例外的に、大家都合の退去であっても状況や契約内容により、立ち退き料が不要とされるケースもあります。
個別のケースから、不当な請求を防ぎ、適正な立ち退き料を算定するのが重要と言えるでしょう。
大家の退去を求める正当事由として認められるのは、たとえば次のような場合です。
正当事由の要件は、借地借家法28条[注1]で定められています。
建物の老朽化によるときは耐震診断の結果など、客観的かつ合理的であると認められる理由や立証する資料などが求められます。
大家都合での退去要求であっても、以下のようなケースでは立ち退き料が不要になる可能性があります。
借主の義務違反や法制度上の理由によるときなどは、立ち退き料の支払いを求められません。
以下で、各項目について解説します。
借主に以下のような契約違反や迷惑行為があった場合、大家が立ち退き料を支払う必要はないと判断される可能性があります。
これらは、借地借家法26条や28条[注1]の大家都合の解約ではなく、民法541条[注2]に基づいた催告による契約解除です。
借主の違反で信頼関係が崩れているときは立ち退き料が発生せず、滞納家賃や原状回復費用、違約金などを請求可能です。
家賃滞納は、一般的に3カ月以上続くと信頼関係が破壊されたとみなされます。
契約と異なる目的での使用とは、予定と異なる店の営業、住居目的で借りた場所での店舗営業などです。
定期借家契約とは、期間の満了により原則として更新なく終了する賃貸契約です(借地借家法38条1項[注1])。
定期借家契約の契約期間満了後は当然に更新なく終了するため、立ち退き料の支払いはありません。
貸主には、期間満了1年前から6カ月前までに期間満了による終了通知をしなければ借主に契約終了を主張できないため注意しましょう(借地借家法38条6項[注1])。
大家自身がどうしても物件を使用しなければならない必要性や緊急性が強いときは、立ち退き料が不要もしくは少額に抑えられる可能性があります。
たとえば、以下の理由によって大家が物件に住む場合です。
立ち退き料は大家が物件を使用する正当性を補完する目的があります(借地借家法28条[注1])。
大家が物件を使用する目的の正当性が強いほど、借主への立ち退き料の支払いが不要となる可能性が高まるでしょう。
ただし、実務上は借主の生活環境も比較衡量されるため、自己使用の理由のみで立ち退き料を支払わずに済ませるのは難しいでしょう。
競売によって新しい大家に所有権が移った場合、賃借権は消滅します。
借主は、立ち退き料の請求なく6カ月の猶予期間内に退去しなければなりません(民法395条1項[注2])。
競売は裁判所が主導して行うため強い法的な効力があり、入居者が拒否した場合にも立ち退きが求められるためです。
一方で、実務上は借主が立ち退かないときは新しい大家が自主的に立ち退き料を支払って早期退去を合意するケースもあります。
借主を退去させる場合、抵当権は貸借権より先に設定されていなければなりません。
抵当権は、住宅ローンをはじめとする債務の返済が困難になった場合に行使される権利です。
抵当権が行使されると対象の物件が競売にかけられ売却されますが、その際に既存の賃貸借契約はなくなり賃借権が消滅します。

立ち退き交渉の流れは、借主への通知から条件の話し合いを行い、合意書を作成した後に立ち退き料への支払いへ進みます。
交渉での最も重大なポイントは、立ち退き料の支払いのタイミングです。
借主の退去前に立ち退き料の全額を先払いすると、借主が退去せずに居座り、トラブルに発展するリスクがあるためです。
完全に荷物が撤去され、玄関の鍵が手元に戻ってきた段階で立ち退き料の支払いを行いましょう。
立ち退き理由の説明や通知は、期間満了の1年前から6カ月前までに理由を明記した文書を内容証明郵便で送付するのが一般的です。
普通郵便を利用すると、借主から「通知が届いていない」と言い逃れをされるケースもあるかもしれません。
内容証明郵便を利用すると、借主へ通知した内容や到達日などを公的に証明できます。
借地借家法26条1項[注1]の「満了前1年から6カ月前までの解約通知」を立証するためにも、配達証明付きの内容証明郵便は必須条件です。
立ち退きの通知後、借主と退去日や立ち退き料について交渉を開始します。
立ち退き料の額に明確な基準はないため、交渉次第で金額が大きく変わる可能性があります。
お互いの条件を見極めながら、折り合いがつかないときは裁判所を通じた調停や判決を要するケースもあるでしょう。
借主との交渉がまとまったら、内容を立ち退き合意書などの書面にまとめます。
合意書は民法上の和解契約であり、借主に後から合意内容を反故にされるのを防ぐための契約書です(民法695条、696条[注2])。
立ち退き料を退去前に支払うと、支払い後に借主が退去しないなどトラブルになる可能性があるため、必ず建物の明渡しや鍵の返還を受けた後に支払いましょう。
借主が引っ越しの初期費用などを用意できない場合、大家が一部を先払いして退去を促すケースもあります。
大家の介護を背景とした事情を認めつつ、借主のがん治療による移転負担を考慮し、立ち退き料を条件に立ち退き請求が認められた事例があります。
事例裁判所・部:東京地裁
判決日:2016年7月14日
要旨:高齢で介護が必要な大家は、借主に立ち退きを求め、長男夫婦を空いた部屋に入居させて介護をしてもらう予定でした。
一方で、借主もがんの治療の体力的な負担と新居の家賃価格の上昇を懸念し、高額な立ち退き料を求めました。
両者の主張から、裁判所は引っ越し費用と2年分の家賃差額として200万円の立ち退き料を認めました。
大家の事情は借地借家法28条の正当事由に該当していましたが、同時に借主のがん治療の事情も考慮された点がポイントです。
両者の利害を調整するために、正当事由による立ち退きを認める一方で、立ち退き料の支払いが条件とされました。
立ち退き交渉をスムーズに進めるための方法は、以下の通りです。
交渉の初期段階から大家の正当事由の強さを論理的に示し、立ち退き料の引き下げを狙います。
合意した内容は書面にまとめて証拠として記録し、将来的な「言った」「言わない」のトラブルを防ぎましょう。
退去要求に正当事由がなく、大家の一方的な都合である場合、借主から退去を拒否される可能性があります。
正当事由の不足を指摘され、相場をはるかに超える高額な立ち退き料を要求される恐れもあるでしょう。
一方で、耐震診断書による倒壊リスクなどを説明されると、借主も生命の危険を認識し、合理的な立ち退き料での早期退去に応じざるを得なくなります。
交渉の初期段階から客観的な根拠に基づいた正当事由を提示できれば、交渉の主導権を握り、立ち退き料の抑止や減額につながります。
将来的なトラブルを防止するために、以下のを合意書に記載して当事者双方の署名捺印を行いましょう。
書類に残していない場合、後から合意の内容を確認できず、トラブルや裁判に発展する可能性もあります。
残置物の処分権限を定めない場合、大家が勝手に処分すると自力救済の禁止として器物損壊罪などに問われる可能性もあるため注意しましょう。
弁護士は依頼者の利益を第一にしながら、借主との交渉や訴訟手続きなどを代行します。
当事者同士が交渉すると、立ち退き料の金額などを巡って感情的に対立するケースが少なくありません。
弁護士に依頼すると、感情的な対立を回避でき、立ち退き料の減額や問題の早期解決につながる可能性が高くなります。
弁護士への相談は、遅くとも借主へ退去通知を内容証明郵便で送付する前に行っておきましょう。
弁護士に依頼すると、主に以下のようなメリットがあります。
感情的な対立を回避できる
弁護士の介入によって借主と直接交渉する必要がなく、感情的な対立を回避できます。
不当請求を防げる
不合理な高額請求があったときも、過去の判例などを根拠に反論できるため、適正価格での合意が可能です。
明渡しまでにかかる時間を短縮できる
お客様の事情にあわせて解決までの最短の道筋を描き、立ち退き問題にかかる時間や労力、
精神的負担などを軽減できるでしょう。
借主との交渉や訴訟手続きなどの代行は、管理会社やコンサルが業として行うと非弁行為として罰せられるため、弁護士にのみ依頼できます。
弁護士に相談する最適なタイミングは、借主に内容証明郵便で退去通知を送付する前です。
内容証明郵便は送付物の内容が記録される一方で、内容に不備や不適切な理由が記載されていても原則として撤回できません。
退去通知の文面に記載された退去期日や送付日などは、裁判になったときに貸主の正当事由を構成する重要な証拠となります。
一方で、不備があると借主に指摘され、逆に裁判で不利になってしまうケースもあるでしょう。
初期段階の退去通知の内容が借主との関係や裁判に影響する可能性もあるため、内容は必ず弁護士の確認後に送付するのがおすすめです。
大家都合の立ち退き料は家賃の6〜12カ月分が相場であり、新居の契約費用や引っ越し費用、家賃差額などが含まれます。
一方で、立ち退き料は大家が退去を求める正当事由の強さや借主の引っ越しが困難な事情などで大幅に変動します。
自発的な引き渡しを促し、立ち退き料を抑えるには、交渉の初期段階から正当事由の強さを訴えましょう。
借主に契約違反があるときや定期借家契約のときなどは、原則立ち退きは不要です。
合意した立ち退き料や退去期日、違反時の即時退去などは書面に記録しましょう。
弁護士に依頼すると、判例調査や書面作成、借主との交渉、訴訟手続きなどを代行してもらえるため、労力や精神的負担を大幅に軽減できます。
借主の立ち退き問題でお悩みの方は、VSG弁護士法人の初回無料相談窓口にご連絡ください。