

東京弁護士会所属。東京都出身。
弁護士になる前、私は公務員として自治体業務に携わってきました。その経験から、法的な正しさだけでなく、社会的な公平性や、一人ひとりの生活に寄り添うことの重要性を深く理解しています。
立ち退き問題は、住まいや事業所といった生活の根幹に関わる問題であり、そこには多大な不安やストレスが伴います。私は「弁護士は敷居が高い」というイメージを払拭し、何でも気軽に話せる相談相手であることを常に心がけています。
複雑な法律用語を分かりやすく整理し、今後の見通しを丁寧にご説明した上で、依頼者様が「相談して良かった」と心から思える解決を目指します。公務員時代から大切にしている「誠実に向き合う」姿勢を貫き、皆様の正当な権利を守るために全力で取り組んでまいります。

管理会社や大家が提示する見積もりは、借主の知識不足を前提とした、法的に不当な上積み請求の可能性があります。
賃貸物件から退去するとき、高額な退去費用の請求に困惑しつつも支払ってしまう方は少なくありません。
感情的に怒りをぶつけるのではなく、国土交通省の原状回復ガイドラインに基づいて反論すれば退去費用を大幅に減額できるケースもあります。
退去費用に納得できないときは、支払う前に弁護士へ相談し、請求項目に不当な内容が含まれているかどうかを精査しましょう。
本記事では、退去費用の相場から高額になるケース、相談先・対処法・減額可能性などを解説します。
目次
退去費用が相場より高額なときは、ペットによる傷跡や無断DIYの修繕、不要な全面張り替えなどが含まれているケースが多いです。
適正な負担額を把握するため、一般的な退去費用の相場などを確認していきましょう。
退去費用の相場は2万円~11万円ほどですが、以下の通り間取りによって変動します。
| ワンルーム・1K | 2万~3万5,000円程度 |
| 1DK・1LDK・2K・2DK | 3万~6万円程度 |
| 2LDK・3DK | 6万~9万円程度 |
| 3LDK以上 | 9万~11万円程度 |
上記の退去費用はあくまで目安であり、間取りのみでなく状況や部屋の構造などによっても金額は変わります。
退去費用には主にクリーニング代や修繕費用などが含まれますが、相場を超えるときは必ず明細を確認しましょう。
相場は通常使用の退去費用であり、請求額が相場を超えるときは不当な上乗せ費用が含まれている可能性が高いです。
退去費用が高額になるのは、主に以下に例示する故意や過失、契約違反があるケースです。
ペットによる傷や臭いなどは、通常使用の経年劣化とは認められないため借主が原状回復義務を負います。
壁を下地まで交換する場合や、複数の床を張替える場合は高額請求となりますが、不当な責任範囲まで含まれていないか精査が必要です。
DIYは、釘やネジで壁に大きな穴ができた場合など、修繕が容易でないときは原状回復費用を請求される可能性があります。
一方で、経年劣化を考慮せずに請求額を算定しているケースもあるため、明細をチェックして請求額が妥当かどうか確認しましょう。
借主の負担費用の具体的な基準は、国土交通省の「原状回復ガイドライン」に定められています。
退去費用が妥当かどうかは、契約書の特約と原状回復ガイドラインの両面から判断しましょう。
原状回復ガイドラインによると、家具の設置跡や壁の日焼けなど、通常損耗や経年劣化の修繕費用は貸主負担です。
借主の故意や過失で設備を壊したときやカビなどを放置して除去を困難にしたときは、借主が費用を負担しなければなりません。
契約書に特約があるときは内容に従いますが、借主を一方的に不利にする内容は借地借家法や消費者契約法により無効となる可能性があります。

退去費用に納得いかないときは、以下の相談先を頼りましょう。
初期相談や公的な介入を求めるときは消費生活センターなどが適しています。
管理会社との交渉代行や減額請求などの法的解決は弁護士への依頼が適しており、状況に応じて相談先を使い分けましょう。
消費生活センターは、国民の消費生活に関する相談やサポートを無料で気軽に相談できる公的機関です。
地方公共団体によって設置され、消費者ホットライン(188)による電話相談や各都道府県にある窓口で無料相談を実施しています。
国民生活センター 全国の消費生活センター等
助言が中心で、相手方との直接交渉はしてもらえませんが、地域の弁護士を紹介してくれる場合もあるため相談窓口で確認しましょう。
匿名での相談はできないため、窓口で相談内容の他に氏名・住所・電話番号・性別・年齢・職業などを伝える必要があります。
日本消費者協会は、消費者に対する情報の提供や商品の苦情の処理など、消費生活全般に関する相談や啓蒙活動などを行う一般財団法人です。
消費生活に関する各種の無料相談を実施しており、相談員へトラブル解決のための助言や弁護士のあっせんなどを依頼できます。
相談方法は電話またはメール(消費者相談受付フォーム)となるため即時対応は難しく、対面の相談は原則としてできません。
弁護士の独占業務である交渉や法的対応なども業務の対象外となります。
相談するときは下記の日本消費者協会のHPから連絡しましょう。
日本消費者協会 消費者相談室
日本賃貸住宅管理協会は、賃貸住宅市場の整備・発展と、豊かな国民生活の実現を目的とした公益財団法人です。
賃貸トラブルに特化した専門的な相談先であり、専門的な知識がある相談員が賃貸トラブルや賃貸借契約の相談に無料で対応しています。
相談は、以下の日本賃貸住宅管理協会のHPからWebフォームやFAX、郵便などで受け付けています。
日本賃貸住宅管理協会 賃貸住宅に関するご相談
中立的な立場からの回答となり、回答までに時間を要する可能性がある点や相談回数が原則1人1回に限られる点にも注意しましょう。
弁護士は交渉や減額請求、訴訟などの法的な対応ができる相談先であり、受任通知の送付以降はすべての手続きを弁護士が代行します。
貸主との交渉が困難な場合や、訴訟を提起された場合などはできるだけ早期に弁護士へ相談しましょう。
弁護士事務所では一般的に、業務内容や実績などをHPで公開しています。
退去費用の交渉などの経験が豊富であり、親身になって相談にのってくれる弁護士への依頼がおすすめです。
弁護士事務所によっては初回無料相談も実施しているため、積極的に利用しましょう。
高すぎる退去費用を請求されたときは、以下のステップの通り合意書へのサインを拒否し、管理会社へ再請求を求めましょう。
①すぐには署名・捺印せず持ち帰る
②明細書を確認する
③契約書と「原状回復ガイドライン」を照合する
④管理会社に再精査を依頼する
⑤法的措置を検討する
再請求を求めるための明細の確認や契約書・原状回復ガイドラインの照合についても解説します。
不当な項目があっても後から争いにくくなるため、合意書はすぐ署名・捺印せず持ち帰りましょう。
退去時の立ち会いでは、室内の損傷の確認のみでなく退去費用の合意書に署名や捺印を求められるケースもあります。
違和感があるときは持ち帰って専門家に相談する旨を伝えましょう。
管理会社としては借主が冷静に判断する時間を与えないため、言葉巧みに合意を求めるケースもあるかもしれません。
合意が成立すると法的には退去費用の支払いに借主が納得したとみなされるため、冷静になって持ち帰る判断が重要です。
退去費用が高額な場合、清掃や修繕の箇所や理由、1円単位で記載された㎡単価など、費用の内訳がわかる明細書を請求しましょう。
退去費用に必要な項目でも、相場より割高なときや「修繕工事一式」のように内訳が不明瞭な場合、不当に加算されている可能性があります。
内訳を出すように伝える行為自体が、管理会社への牽制にもなるでしょう。
貸主には、敷金から控除する原状回復費用について説明する義務があります。
貸主が明細書を提出してくれない場合、説明義務に違反している旨を伝えましょう。
契約書に特約があるときはその内容で退去費用は計算されるため、以下のような条項がないか確認しましょう。
<特約の例>
・退去時のハウスクリーニングは借主が負担する。費用は一律3万円とする。
・壁紙の損傷の張替えは借主が負担する。費用は1㎡あたり2,000円とする。
特約が借主に一方的に不利な内容のときは、法的に無効を主張できる可能性があります。
特約がないときは、原状回復ガイドラインを確認しましょう。
原状回復ガイドラインの別表2(賃借人の負担範囲)には、原状回復義務の基本的な考え方や負担範囲、計算方法などが記載されています。
原状回復ガイドライン別表2賃借人の原状回復義務等負担一覧表(22ページから)
退去費用の内訳を確認し、不当に高い請求がされている場合は証拠とともに再精査を求めましょう。
日常生活で当然生じる通常損耗や経年劣化などは、原則として借主負担となりません。
入居開始前から既に存在していた傷の修繕費用も、借主負担ではないため退去費用からはずしてもらえます。
貸主に直接交渉しにくい場合は、賃貸物件の管理会社へ相談してみましょう。
貸主や管理会社との交渉が困難な場合や、交渉をしているが合意に向けて進まない場合、弁護士への相談がおすすめです。
法的措置は、話し合いでの解決と比べ時間や労力がかかるため、交渉で解決できないときの最終手段です。
貸主に交渉に応じる様子がまったく見られないときは、解決のために訴訟の提起が有効なケースもあります。
訴訟や調停の書面作成、裁判所への出頭など、専門的な法的手続きはすべて弁護士に代行してもらえます。
訴訟は一般的に時間がかかりますが、簡易裁判所の調停や少額訴訟など短期間・低コストな方法で解決できるケースもあるでしょう。
原状回復ガイドラインに基づく弁護士の交渉により、全面張替えなどの高額請求を数万円の部分補修に圧縮できたような事例は数多くあります。
以下では、弁護士の交渉によって高額請求の減額に成功した事例をご紹介します。
大手企業の場合、不当な請求項目が含まれていても会社の規定を盾に減額には応じられないと説明するケースが多いです。
一方で、大手企業の規定でも法的には一私企業の内部ルールに過ぎないため、交渉によって減額できる可能性があります。
たとえば、退去時に30万円を超えるクロスの全面張り替え費用を請求されたケースでは負担額が5万円以下まで減額されました。
クロスの耐用年数は6年であり、入居年数からの経年劣化を考慮すると全面張替えは妥当ではないと主張し、認められた結果です。
大手企業でも弁護士からの正当な主張によって減額してもらえる可能性はあるため、諦めずに弁護士に相談しましょう。
大手企業ほど、企業イメージや評判を重視するために訴訟リスクを回避する傾向にあります。
不当な退去費用の請求などの悪質な手法があった場合、知名度のある大手企業ほど情報が拡散しやすく、損害が膨大になるためです。
個人の交渉では、影響が小さいと見られて対応してもらえないケースもあるかもしれません。
一方で、弁護士が介入すると訴訟リスクが一気に高まるため、営業担当ではなく法務部や上層部が対応します。
弁護士から論理的な反論書面が届き、勝訴の見込みがない場合、損害を最小限にするため即座に非を認めて減額に応じる可能性が高いでしょう。
退去費用が高すぎるからといって、払わずに放置してはいけません。
対応せずに放置すると、遅延損害金が膨らみ、保証会社による代位弁済や給与の差し押さえ訴訟を起こされるリスクがあります。
相手方に訴えられるリスクもあるため、高すぎる退去費用で納得できなくても放置は避けましょう。
契約書には、一般的に支払いが遅延したときの遅延損害金の算定方法が定められているため、支払いが遅れるほど請求額が増えます。
遅延損害金は、以下の通り支払期日を超過した延滞日数に応じて加算されていく方式が一般的です。
延滞日数が長くなるほど遅延損害金が加算され続け、元本以上の金額に膨らむケースもあるでしょう。
放置しても相手が支払いを諦めるのは稀であり、訴訟に発展する可能性もあるため早期対応が重要です。
訴訟に発展した場合、連絡せずに放置した事実が借主に不利な証拠として扱われる可能性もあります。
退去費用を支払わないまま放置すると、保証会社が貸主に代位弁済を行い、借主は保証会社から厳しい取り立てを受ける可能性があります。
保証会社の代位弁済が借主の信用情報に記録されると、抹消されるまでの5〜10年間はローンや賃貸物件などの審査などに原則として通りません。
最終的には訴訟を提起されて給与や預金などが差し押さえられ、勤務先や家族に知られてしまうリスクもあります。
貸主や保証会社の手続きが進むほど、対応にかかる借主の労力や精神的負担も重くなります。
生活にさまざまな支障が出る前に早期対応するのが負担を最小限にする方法と言えるでしょう。
貸主からの請求を放置して時間が経過するほど証拠確保が難しくなり、貸主の主張が通りやすくなる恐れがあります。
明確な異議を示さずに時間が経過すると、請求を認めたとみなされて交渉の余地が狭まる可能性があるでしょう。
連絡を拒絶し続ける態度は、裁判になったときに不誠実で悪質な借主の印象を与え、正当な減額交渉の余地も失ってしまいます。
貸主から提示された請求額に納得できない場合、早期対応が重要となるため、早い段階で専門家に相談しながら減額交渉を進めましょう。
支払いを放置するのではなく、適正な支払額へ是正するために証拠の収集から早期に動き出すのが重要です。
退去費用が高額なときでも、請求項目の精査や原状回復ガイドラインとの照合によって減額できる可能性があります。
請求を受けてからの早期対応が重要となるため、できるだけ早く弁護士などの専門家に相談しましょう。
貸主からの請求を放置すると、不誠実な対応として裁判上の争いになったときに不利になる恐れがあります。
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