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定期借家契約は原則途中解約(中途解約)できない!例外ケースと違約金や判例を紹介

弁護士 川﨑公司

この記事の執筆者 弁護士 川﨑公司

東京弁護士会所属。新潟県上越市出身。
建物の取り壊しや土地売却などに伴う立ち退き問題は、生活基盤や事業拠点に関わる重大な局面であり、金銭面だけでなく精神的にも大きな負担となります。
適正な立ち退き料を算出・獲得するためには、法律の知識はもちろん、不動産価値の評価や移転に伴う経済的損失を正確に把握する視点が欠かせません。 私は証券会社や金融機関での10年以上の実務経験を活かし、客観的なデータに基づいた説得力のある交渉を行うことを得意としています。 依頼者様の不安に寄り添い、経済的・心理的に最善の結果を得られるよう尽力いたします。まずはお気軽にご相談ください。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍: 他の専門家から声がかかる 事業承継弁護士養成講座

この記事でわかること

  • 定期借家契約とは
  • 定期借家契約で途中解約ができない原則と例外的にできるケース
  • 定期借家契約の途中解約時の注意点
  • 定期借家契約の途中解約に関する判例
  • 定期借家契約の途中解約ができないときの対策

一定の契約期間で建物を賃借する契約を定期借家契約といい、期間満了までは原則として中途解約できません。

例外的に、床面積200㎡未満の居住用物件であり、やむを得ない事情のため1カ月前に申入れをしたときは中途解約できるケースもあります[注1]。
解約権留保特約がある場合や、賃貸人の合意がある場合も中途解約できますが、平均的な損害額の範囲で違約金が発生する可能性があるでしょう[注2]。

ここでは、定期借家契約の中途解約の条件や例外的に中途解約できるケース、違約金などを解説します。

定期借家契約とは

定期借家契約には、以下の特徴があります。

  • 相場より家賃が割安なケースもある
  • 賃借人都合で再契約できない
  • 契約期間は合意により自由に定められる
  • 契約方法は書面だけでなく電子契約も可能
  • 事前説明書面の交付による説明義務がある

普通借家契約は契約期間満了後に賃借人が希望すると原則更新可能です。
定期借家契約は再契約できない場合があるため、入居希望者が少ないときは家賃も割安になります。

法改正により2022年5月18日施行の宅地建物取引業法改正により、書面または電磁的記録での契約締結が可能となりました[注3]。
賃貸人は、契約前に書面または電磁的記録で期間満了後の更新がない旨を賃借人へ説明しなければなりません[注4]。

定期借家契約のメリット

定期借家契約は契約期間が限定される一方で、家賃が割安になり得るため、良質な物件に割安で居住できるケースがあります。
家賃だけでなく、敷金や礼金などの初期費用も割安な物件が多いです。
単身赴任や通学など、短期間のみ居住する場合に定期借家契約を利用すると費用を抑えられる可能性があるでしょう。

契約期間満了後は、賃貸人との合意で再契約可能です。
入居審査は物件の管理方針によりますが、定期借家契約は賃貸人のリスクが少ないケースが多く、普通借家契約と比べて通りやすい傾向にあります。

定期借家契約のデメリット

定期借家契約は原則として契約の更新ができず、中途解約も困難です。
賃貸人の合意があれば再契約できますが、地価の上昇などで周辺の家賃相場が上がっていると家賃の増額を求められる可能性もあるでしょう。

賃貸人との合意で定期借家契約を中途解約すると、想定していたよりも高額な違約金を求められるケースもあります。
違約金は合意解約の条件として定められますが、消費者契約法により同種のケースで発生する損害額の平均値が上限と定められています[注2]。

定期借家契約と普通借家契約の違い

定期借家契約と普通借家契約の違いは下表の通りです。

普通借家契約定期借家契約
契約方法口頭可書面または電子交付
契約期間 任意
(1年未満は期間を定めない契約となる)
任意
(1年未満でも有効)
更新・再契約不可
(双方の合意で可)
賃料の減額請求を禁止する特約排除不可(借地借家法第32条)賃料改定特約を定め得る(借地借家法第38条9項)
中途解約賃借人から 不可
(要件満たせば可)
賃貸人から正当事由が必要

普通借家契約は賃借人が強く保護されるため、賃貸人の更新拒絶には正当事由が必要です。
一方で、定期借家契約は良質な物件に割安で住める場合もあり、どちらが適しているかはケースバイケースです。

【原則】定期借家契約は中途解約(途中解約)できない

原則として、定期借家契約は中途解約ができません。
中途解約が認められると賃貸人が不利になってしまうためです。
定期借家契約は賃貸人の都合で期間を限定しており、賃料は割安に設定されているケースが多いです。
中途解約が容易にできると、賃料が割安な上に安定した収入も確保できず、収支計画が狂う可能性があるでしょう。
例外として、次章で解説する通り、床面積200㎡未満の居住用物件でやむを得ない事情により1カ月前に申入れをした場合などは中途解約が認められます。

定期借家契約で例外的に途中解約できるケース3つ

定期借家契約は原則として中途解約できませんが、次の場合は例外的に認められます。

  • 解約権留保特約付きの定期借家契約をしている(条件・予告期間・違約金の有無を契約で特定)
  • 中途解約権を行使する(200㎡未満の居住用物件であり、やむを得ない事情と1カ月前申入れが必要)
  • 違約金を支払う(上限は平均的損害額相当に留まる)

それぞれのケースについて詳しく解説します。

解約権留保特約付きの定期借家契約をしている

解約権留保特約とは、定期借家契約で一定の条件を満たした場合に中途解約できる権利を定めた特約です。
特約には、一般的に以下のような事項が定められています。

  • 解約条件(遠方への転勤や病気療養で契約の継続が困難になった場合など)
  • 予告期間(3カ月前までに通知が必要など)
  • 金銭の清算(違約金や原状回復費用の負担、敷金の返還方法など)

解約権留保特約について確認したいときは、定期借家契約を締結したときの契約書を確認しましょう。

中途解約権を行使する

以下の4つの要件を満たすと、契約書に特約がないときでも中途解約権を行使できるケースがあります。

  • 居住目的で使用
  • 床面積200㎡未満
  • やむを得ない事情により使用の継続が困難
  • 1か月前に解約の申入れ

店舗兼住宅の場合、生活の本拠であり、店舗部分を含めた床面積が200㎡未満であれば居住目的とみなされます。
やむを得ない事情とは、不可抗力や契約時点で予測ができない場合です。
たとえば、仕事の転勤や親族の介護などのケースがあるでしょう。

一方で、結婚や出産がやむを得ない事情にあたるかどうかは判断がわかれます。

違約金を支払う

違約金の支払いによって、中途解約に合意してもらえる可能性があります。
具体的な違約金の金額は、家主側との交渉次第です。
一般的に賃借人側が難しい立場での交渉となりますが、平均的な損害を超える額は無効となり得ます[注2]。
賃貸人の再賃貸による利益が生じた場合、違約金からその利益分が損益相殺として控除される可能性があります。

定期借家契約の途中解約(中途解約)する流れ

途中解約する流れは、以下の通りです。

  • 契約書の特約確認
  • やむを得ない事情の整理
  • 解約申入れ
  • 終了日・費用の確定

それぞれの流れを見ていきましょう。

契約書の特約確認

消費者契約法9条[注5]は、契約解除時の損害賠償や違約金について、同種の契約解除時に通常発生する平均的損害を超える部分は無効になると定めています。
消費者契約法10条[注6]では、事業者の責任免除や不法な高額キャンセル料など、消費者の利益を一方的に害する条項は無効としています。

契約書にこのような中途解約権の規定に反する特約があるときは無効を主張できるため、まずは契約書を確認しましょう。

やむを得ない事情の整理

中途解約をするやむを得ない事情として説明する内容を整理しましょう。
やむを得ない事情とは、たとえば以下があります。

  • 会社都合により遠方へ転勤するとき
  • 会社の倒産などで支払の継続が困難なとき
  • 本人やその家族の長期入院や介護が必要なとき

口頭のみでなく、医師の診断書など客観的な根拠となる資料があれば用意しておきましょう。

解約申入れ

解約の申入れの流れは以下の通りです。

  • 賃貸人へ1カ月前までに中途解約したい旨と解約事由を伝える
  • 賃貸人と解約時の条件を交渉する
  • 物件の明け渡しを行う
  • 敷金や違約金などを精算する

契約書に中途解約権の規定に反する特約があるときは、賃貸人との交渉時に無効を主張しましょう。
賃貸人が話し合いに応じてくれない場合や不当な違約金などを請求された場合、最終的には裁判上の手続きで解決を求めます。

終了日・費用の確定

法定中途解約のときは、解約の申入れから1カ月後に定期借家契約が終了します。
解約の申入れから1カ月分の家賃は精算しなければならないため、注意しましょう。

契約書の特約や合意解約によって申入れから解約までの期間が定められているときは、その内容に従います[注1]。
残りの家賃や違約金の支払、敷金の返還などを計算し、最終的な費用が確定します。

定期借家契約の途中解約(中途解約)時の注意点

定期借家契約を中途解約するときは、賃貸人と賃借人の認識に違いがないように注意しなければなりません。
トラブルを回避するために口約束は避け、退去日や原状回復費用などの条件は書面で記録に残します。
賃貸人とトラブルに発展しそうなときは、弁護士などの専門家へ相談しましょう。
ここからは、定期借家契約を中途解約するときの注意点を解説します。

合意書・覚書を作っておく

後のトラブルを防止するため、賃貸人と中途解約の条件について合意した内容は合意書や覚書を作成して記録しましょう。
具体的には、以下のような項目を記載します。

  • 退去日
  • 賃料精算起算日
  • 違約金や精算金の算定根拠
  • 原状回復の範囲と費用負担
  • 敷金精算の方法
  • 鍵の返還方法

賃貸人と賃借人の間で認識の違いが起きやすいポイントは明確にしておきましょう。
書面の作成後、賃貸人と賃借人が署名捺印し、それぞれ1部を保管します。

退去日・原状回復費用などを明確にする

退去日と原状回復費用の負担は、中途解約の合意書で最も重要な項目の一つです。
退去日が定められていない場合は、物件からの退去後も賃料が発生し続けるリスクがあるため退去日を明確にしておきましょう。

中途解約をするときは、賃貸人が過大な原状回復費用を請求するケースがあります。
原状回復費用は、国土交通省の原状回復ガイドラインによると、通常の経年劣化は賃借人ではなく賃貸人が負担します。
原状回復のために賃借人が負担する範囲を確認し、費用の負担額や計算方法を明確にしておきましょう。

貸主と対立しそうな時は専門家に相談する

中途解約を巡って賃貸人とトラブルに発展しそうなときは、専門家である弁護士への相談がおすすめです。
弁護士に依頼すると、契約書や特約についての法的な確認だけでなく、中途解約に必要となる資料や問題の解決方法などをアドバイスしてもらえます。
VSG弁護士法人では、経験豊富な弁護士がお客様の気持ちに寄り添いながら親身に対応します。

定期借家契約の中途解約(途中解約)に関する判例

法定中途解約のやむを得ない事情について、転勤・療養・介護など必要性の高い事由は認められやすい傾向にあります。
一方で、自宅購入など自己都合とみなされる事由は、判例をみると否定される可能性が高いと言えるでしょう。

契約期間1年以上の定期借家契約では、 賃貸人は期間満了1年前から6カ月前までの間に 賃借人へ通知しなければ、 終了を賃借人に対抗できません。
期間満了後に通知された場合、賃貸人は通知後6カ月の経過で賃借人に契約終了を対抗できるとされた判例があります[注1]。

定期借家契約で中途解約(途中解約)できないときの対策

定期借家契約を中途解約できない場合は、賃料の支払猶予や減額、支払回数の調整などを合意してもらうために交渉するのも一つの方法です。
新たな住宅として、フリーレント物件を選ぶ方法もあるでしょう。
ここからは、賃料負担を少しでも減らすための効果的な対策について解説します。

新たな住宅としてフリーレント物件を選ぶ

フリーレントとは、当初数カ月分の賃料が無料の物件です。
フリーレントは契約期間が決まっているケースが多いため、継続的な使用には向いていません。
中途解約すると違約金が発生するため、契約期間を考えた上で物件を選びましょう。

家主側と賃料を交渉する

定期借家契約では賃料の減額請求を禁止する特約が認められるため、多くのケースで特約が設けられています。
ただし、特約がある場合でも家主側の合意があれば賃料の減額や支払いの猶予も可能です。
たとえば、次のような内容で丁寧に事情を説明し、家主側との交渉を行いましょう。

  • 勤めていた会社が倒産したため、再就職できるまでの期間は賃料の支払いを猶予してもらう
  • 周辺の賃料相場に大幅な変動がある場合、経済事情の変更を家主側に説明する
  • 現状の賃料では負担が大きく、破産も検討しなければならないため、月々の賃料を減額するかわりに契約期間(支払回数)を伸長してもらう

定期借家契約の途中解約に関するよくある質問

定期借家契約の途中解約に関するよくある疑問は、以下の通りです。

  • 契約期間中に自己都合で解約できる?
  • 契約に解約権留保特約がない場合はどうなる?
  • 中途解約の申し入れはどれくらい前に伝えるべき?
  • 事業用物件の場合はどうなる?

それぞれの質問について回答します。

契約期間中に自己都合で解約できる?

契約期間中に自己都合で中途解約したい場合、原則として解約は認められません
例外として、法定中途解約の要件に該当するときは解約できます[注1]。
法定中途解約は、居住用の床面積200㎡未満の物件に限り、やむを得ない事情があるときに解約の申入れから1カ月で解約が認められます。

解約権留保特約が定められた定期借家契約を締結しているときは、自己都合でも解約が認められるケースがあるでしょう。
特約がない場合でも、賃貸人へ違約金を支払うなどの方法で合意解約できる可能性があります。

契約に解約権留保特約がない場合はどうなる?

解約権留保特約がない場合、原則として中途解約できません。
一方で、法定中途解約もしくは合意解約によって中途解約できる可能性があります[注1]。

賃貸人に合意解約を求める場合、条件の交渉が重要です。
違約金の他、退去時期の調整や原状回復費用の負担など、中途解約を認めてもらうために譲歩しなければならないときもあるでしょう。
法定中途解約を求めるときは、物件の床面積や中途解約をする事情などについて、客観的な資料を元に説明できれば中途解約を認めてもらえる可能性が高くなります。

中途解約の申し入れはどれくらい前に伝えるべき?

中途解約の申し入れは、法定中途解約は1カ月前、終了通知は6カ月~1年前に行うのが一般的です。
契約書の特約に「3カ月前に解約の申し入れをする」など定めがあるときは、その内容に従って申し入れをしましょう。

特約がない場合、床面積200㎡未満の居住用物件ではやむを得ない事情があれば1カ月前の通知で中途解約が可能です[注1]。
通知するときは、内容証明郵便を利用すると期間の起算点となる通知日を証明できるため有効でしょう。

事業用物件の場合はどうなる?

事業用物件の場合、原則として契約期間満了後に退去しますが、契約書に特約があるときは中途解約が可能です。
特約がない場合、賃貸人との交渉によっては合意解約できますが、違約金の支払などを求められるケースが多いでしょう。

床面積200㎡未満の居住用物件は、やむを得ない事情があれば1カ月前までの申入れで法定中途解約できますが、事業用物件には適用されません
契約書に解約権留保特約を定めるか、賃貸人との合意によって解約するのが原則となります。

まとめ

定期借家契約で物件を借りている場合は、原則として期間満了まで中途解約できません。
例外として、床面積200㎡未満の居住用物件はやむを得ない事情があれば1カ月前の通知で法定中途解約できます。
法定中途解約ができないときは、契約書に解約権留保特約があるか、賃貸人との交渉により合意解約できないかを確認しましょう。
中途解約では、退去日や原状回復費用の負担などが賃貸人とのトラブルが起きやすいポイントです。
話し合いでの解決が困難なときは、紛争解決のプロである弁護士への相談がおすすめです。
VSG弁護士法人では初回無料相談を実施しているため、積極的に活用して早期解決につなげましょう。

[注1]住宅:定期建物賃貸借 Q&A 

[注2]消費者契約法/e-Gov法令検索
消費者契約法第9条・第10条

[注3]法務省:借地借家法等の改正(定期借地権・定期建物賃貸借関係)について

[注4]住宅:過去の契約書式例

[注5]第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)

[注6]10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)

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