定期借家契約を結んでいる場合、普通借家契約と異なる様々なルールが適用されます。
中途解約もその一つであり、定期借家契約では原則として中途解約ができません。
しかし、定期借家契約後にやむを得ない事情により中途解約しなければならないときもあるでしょう。
定期借家契約の中途解約を望む場合、一定の要件を満たせば例外的に認められるケースがあります。
ここでは、定期借家契約の中途解約が認められる要件や、認められない場合の対策などを詳しく解説します。
目次
定期借家契約とは、あらかじめ契約期間が決まっている契約方式です。
契約時に決めた期間を満了した場合、賃借人は原則退去しなければなりません。
定期借家契約の特徴は、以下の通りです。
普通借家契約の場合、定められた契約期間を満了しても賃借人が更新を希望すると原則として住み続けられます。
割安の家賃が設定されている理由は、賃借人が希望しても再契約できない場合があり、入居希望者が少ないためです。
家主側より再契約の打診があり、賃借人が同意した場合には再契約できます。
原則、定期借家契約で中途解約はできません。
その理由は、中途解約が認められると家主側が不利になってしまうためです。
定期借家契約は家主側の都合で期間を決めて貸し出しており、賃料は割安に設定されています。
しかし、賃借人による中途解約が容易にできてしまうと、賃料が割安な上に安定した収入も確保できないため、賃貸人の収支計画が狂う可能性があります。
こうなると、家主側の資産活用がスムーズに進むように作られた定期借家契約の前提が崩れてしまい、家主側のメリットがなくなります。
定期借家契約は原則として中途解約をできませんが、次の場合は例外的に中途解約が認められます。
それぞれのケースについて詳しく解説します。
賃借人が中途解約権を行使すると、契約書に特約の記載がなくとも中途解約できるケースがあります。
ただし、中途解約権を行使するには、以下に挙げる3つの要件を満たさなければなりません。
店舗兼住宅の場合、生活の本拠としており、店舗部分を含めた面積が200㎡未満であれば居住目的とみなされます。
やむを得ない事情とは、自らの意思ではなく不可抗力によって起きてしまった場合、もしくは部屋を借りる時点で予測が付かない場合です。
たとえば、「仕事で遠方に転勤が決まった」「親が病気を患い、介護のため実家に戻らなければならない」などです。
やむを得ない事情として認められるかどうかは、明確な基準はなく、個別的な事情を考慮して判断されます。
話し合いをしても家主側が合意できない場合、最終的には裁判所の判断を求めます。
残存期間分の賃料を違約金として支払えば、中途解約が可能です。
残存期間が6カ月で家賃10万円であれば、60万円を一括で支払います。
なお、具体的な違約金の金額は家主側との交渉次第です。
一般的に賃借人側が難しい立場での交渉となるため、家主側とは良好な関係を保ちつつ話し合いを進めましょう。
定期借家契約でどうしても中途解約できない場合には、契約期間満了まで賃料を支払い続けるしかありません。
この場合、新たに借りる住宅の賃料と合わせて負担します。
ここからは、賃料負担を少しでも減らすための効果的な対策について解説します。
フリーレントとは、当初数カ月分の賃料が無料の物件です。
ただし、フリーレントは契約期間が決まっているケースが多いため、短期使用には向いていません。
中途解約すると違約金が発生するため、契約期間を考えた上で物件を選びましょう。
定期借家契約の賃料減額は、賃借人にとって難しい交渉となるため、原則的に家主側に寄り添った提案が必須です。
普通借家契約では賃借人の不利になる特約が無効となるため、賃料の減額請求を禁止する特約は認められません。
一方で、定期借家契約では賃料の減額請求を禁止する特約が認められるため、多くのケースで特約が設けられています。
ただし、特約がある場合でも家主側の合意があれば賃料の減額や支払いの猶予も可能です。
たとえば次のような内容で丁寧に事情を説明し、家主側との交渉を行いましょう。
定期借家契約のよくある疑問は、以下の通りです。
それぞれの質問について回答します。
定期借家契約を結んでいる場合でも、大家と賃借人の双方の合意があれば再契約をして住居に住み続けられます。
普通借家契約と異なり、大家側の事情によっては住み続けられない可能性があるため注意しましょう。
一般的に、契約満了が近づいたタイミングで大家側から契約終了と再契約の可否について記載された通知が届きます。
現住居に住み続けたい場合、できるだけ早いタイミングで大家側と再契約について相談しておくのが望ましいです。
定期借家契約の期間が満了した場合、賃借人は大家側に正当事由がない場合でも立ち退き料の支払いなく退去しなければなりません。
例外的に、契約期間がかなり残っている場合は立ち退き料を請求できる可能性があります。
たとえば、10年間の定期借家契約にもかかわらず3年目に退去となった場合、賃借人は残り7年間の使用を放棄しなければなりません。
この場合、本来は使用できるはずだった期間や退去による経済的な損失を補填するため、立ち退き料が認められるケースがあります。
定期借家契約と普通借家契約の違いは下表の通りです。
普通借家契約 | 定期借家契約 | ||
---|---|---|---|
契約方法 | 口頭でも可 | 書面・電子交付のみ | |
契約期間 |
任意 (1年未満は期間を定めない契約となる) |
任意 (1年未満でも有効) |
|
更新・再契約 | 可 | 不可 (双方の合意で可) |
|
賃料の減額請求を禁止する特約 | 不可 | 可 | |
中途解約 | 賃借人から | 可 |
不可 (要件満たせば可) |
家主から | 正当事由が必要 |
普通借家契約は借主の権利がより保護されています。
一方、定期借家契約は良質な物件に割安で住める場合もあり、どちらが適しているかはケースバイケースです。
定期借家契約は、一般的な不動産賃貸で適用される普通借家契約と異なる特徴が多くあります。
中途解約や期間満了後の再契約は、大家側と賃借人で認識のズレがあるとトラブルに発展する恐れもあります。
もし大家側との交渉を望む場合、事前に弁護士へ相談しましょう。
当事者同士では交渉がうまく進まなかったり、話し合いを拒否されてしまうかもしれません。
特に定期借家契約の中途解約を望む場合、賃借人にとって不利な交渉となるため、個人での解決は難しいケースが多いです。
弁護士は交渉や紛争解決のプロフェッショナルであり、依頼人の利益を最優先に交渉を代行してくれます。
弁護士に相談し、大家側と賃借人にとって円満な解決となるよう交渉を進めていきましょう。