

大阪弁護士会所属。京都市出身。
建物の老朽化や土地活用に伴う「立ち退き」の問題は、賃貸人・賃借人双方の利害が複雑に絡み合い、解決が長引くほどオーナー様にとって大きな精神的・経済的負担となります。
円滑な明渡しを実現するためには、正当事由の精査といった法律知識に加え、妥当な立ち退き料の算定や、相手方の状況に応じた柔軟な交渉力が欠かせません。
私はIT企業や経営コンサルタントとしての実務経験を活かし、単なる法律論に留まらない「ビジネス視点での最適な解決策」をスピーディーに提示することを得意としています。 早期解決によって次のステップへスムーズに進めるよう尽力いたします。ぜひ一度ご相談ください。
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書籍:「事業をやり直したい」と思ったときの会社のたたみ方

定期借家契約とは、契約期間満了により確定的に契約が終了する借家契約です。
原則として契約期間満了後は更新ができず、貸主から退去を求められたときも立ち退き料を請求できません。
例外として、契約時に説明不備があった場合や、契約期間の満了前に退去を要求された場合などは立ち退き料を請求できる可能性があります。
貸主に普通借家契約から定期借家契約への切り替えを提案されても、安易に承諾せず弁護士に相談しましょう。
ここでは、定期借家契約の借主が退去を要求されたときの対処法や立ち退き料などを解説します。
目次
定期借家契約は、契約期間が満了すると更新されずに終了する賃貸借契約です。
普通借家契約では借主保護の観点から原則更新可能ですが、定期借家契約は借地借家法でも更新不可と定められています。
まずは、定期借家契約の基本的なしくみを確認したうえで、普通借家契約との違いを整理しましょう。
定期借家契約は、期間満了により契約の終了が確定します。
貸主の正当事由や立ち退き料も不要で、物件を明け渡さなければなりません。
借地借家法第38条[注1]では、定期借家契約の成立や終了を以下のように定めています。
書面や電磁的記録での締結
口頭のみではなく、公正証書などの書面や電磁的記録による方法で契約を締結しなければなりません。
更新がない旨の説明義務
貸主は、期間満了後に更新がない旨を事前に書面や電磁的方法で借主へ説明しなければなりません。
終了前の書面通知義務
貸主は、契約期間満了の6ヶ月前〜1年前に終了を書面で通知する義務があります。
契約期間に上限はなく、1年未満の短期や20年以上の長期も設定可能です。
定期借家契約は、通常の賃貸借契約と異なる特徴がいくつか存在します。
具体的には、次のような点が挙げられます。

定期借家契約は、公正証書で締結しなくても通常の書面や電磁的記録による方法で効力が発生します。
契約期間が長期に及ぶ場合や、紛失や改ざんを防ぎたい重要な内容を含む場合は公正証書の作成が望ましいでしょう。
定期借家契約では、主に以下の理由により原則として立ち退き料は発生しません。
定期借家契約と普通借家契約は、契約終了の性質や法的な位置づけが大きく異なっています。
それぞれの内容について確認していきましょう。
立ち退き料は、借主が退去によって発生する引っ越し費用や新居の契約費用などの損失を補填する意味があります。
普通借家契約は、契約期間満了後も借主の希望によって更新可能です。
意思に反して退去を求められた借主に合意してもらうため、損失の補填や慰謝料の名目で支払われます。
一方で、定期借家契約は当初から期間を定めて締結し、期間満了後は借主が物件を明け渡すのが前提となっています。
期間満了後は、貸主があらかじめ使用を予定しているケースも少なくありません。
契約書で退去日があらかじめ合意されているため、損失の補填や慰謝料も不要であると考えられています。
普通借家契約では、貸主から借主へ退去を求めるときに、退去の要求がやむを得ないと認められる正当事由が必要です。
単なる貸主の自己都合では、借主への立ち退き要求は原則として認められません。
建物の老朽化や貸主の親族の介護など、貸主側の正当事由の強さや借主側の生活状況などから立ち退き要求の正当性が総合的に判断されます。
立ち退き料は、貸主側の正当事由が弱いときに理由を補完する役割があります。
定期借家契約では、貸主に更新を拒絶する権利があり、正当事由がそもそも必要ないため、借主へ立ち退き料を支払う根拠は乏しいと言えるでしょう。

定期借家契約では立ち退き料は原則発生しませんが、以下のように例外的なケースでは補償を求められる可能性があります。
実務上トラブルになりやすい代表的なケースをご紹介します。
定期借家契約の契約期間の残存年数が長い場合、退去要求が契約違反や債務不履行とみなされる可能性があります。
たとえば、定期借家契約の賃貸借期間を3年と定めて契約したにも関わらず、契約開始から1年で賃貸人から立ち退き請求された場合です。
賃借人には2年間居住する権利を失うため、損害賠償や立ち退き料に相当する補償を請求できる余地があるでしょう。
定期借家契約が有効に成立するための要件として、契約書とは別の書面による「期間の更新がない」旨の説明が法律上義務付けられています。
借主へ書面が交付されていない場合、通常の普通借家契約と判断される可能性があるでしょう。
借主が口頭で内容を認識していたとしても、書面の交付がなければ内容は無効です。
通常の普通借家契約として扱われた場合、期間満了後に借主が希望するときは原則として更新可能です。
貸主から退去を求めるときも正当事由が必要であり、借主の損失補填や貸主の正当事由を補完するために立ち退き料が支払われるケースもあるでしょう。
借主が「形式的には定期借家だが、実際は更新し続けられる」と勧誘されて契約した事例では、信義則上、立ち退き料相当額の支払いが命じられました。
事例事件名:建物明渡請求事件
裁判所・部:東京地裁
判決日:2015年2月24日
要旨:勧誘の経緯から実質は普通借家契約の合意がなされており、立ち退き料相当額の支払いを命じた
原告が被告に対し、定期建物賃貸借契約の期間満了による建物の明渡しを求めた事件です。
被告側は、更新可能との勧誘で契約した経緯から定期借家契約の否認を求めました。
結果として、再契約を期待させる説明が信義則に反するとして立ち退き料相当額の支払いが命じられました。
物件の売買によってオーナーチェンジがあったときは、原則として借主との契約内容はそのまま新しい貸主に引き継がれます。
新しい貸主にとっては、定期借家契約であるため自己使用する時期の計画を立てやすいといったメリットがあるでしょう。
従前の定期借家契約の内容がそのまま引き継がれるため、原則として期間満了後に退去を要求されても立ち退き料は発生しません。
一方で、契約期間満了前に退去を求めるときは立ち退き料の支払いが問題となる可能性があります。
新しい貸主が早急に物件を使用したい事情があるときは、立ち退き料を交渉する余地があると言えるでしょう。
定期借家契約では立ち退き料は原則不要ですが、例外的に発生する場合でも金額は一律ではありません。
定期借家契約の立ち退き料は、残存期間や実費補填の考え方が中心となるためです。
補償対象となる経費や、金額の相場について、考え方と目安を整理します。
立ち退き料によって補償の対象となるのは、以下のように借主へ実際に発生する損害が中心です。
事業用の店舗や事務所の場合、上記の項目に加え、以下のような費用が立ち退き料の対象となります。
立ち退き料の総額は個別の事情によって異なりますが、住居は賃料の6カ月~1年分、店舗では賃料の1年~数年分が目安となるでしょう。
「定期借家契約でも立ち退き料がもらえるケース」で取り上げた内容を元に、立ち退き料を計算していきます。
計算はあくまで一例であり、実際の金額は個別事情によって異なります。
定期借家契約の立ち退き料相場【シミュレーション条件】
【立ち退き料計算】
立ち退き料は移転に必要な費用の補填と、現在の住居家賃・敷金と新居家賃・敷金との差額を補填します。
そのため、上記費用を計算して立ち退き料を算出します。
(1)48万円+(2)48万円=(3)96万円
今回のシミュレーション条件で計算した立ち退き料は96万円です。
個別の事情によって立ち退き料は変動するため、正確な金額を知りたい方は弁護士などの専門家に確認しましょう。

普通借家契約から定期借家契約への切り替えを求められた場合、借主にとって不利な条件変更となる可能性があります。
将来の立ち退き時に不利益を被る恐れがあるため、必要な対応を以下の3ステップで確認していきましょう。
定期借家契約へ切り替えると、契約期間満了時に更新できず、原則として退去しなければなりません。
普通借家契約では認められている更新の権利や、貸主からの退去要求に対する保護、立ち退き料の請求権などが失われます。
借主には現在の普通借家契約を維持する権利があるため、切り替えについて安易に応じるのは避けましょう。
書面の内容を十分に確認せず署名・押印すると、後から「知らなかった」「説明されていない」と主張するのは難しくなります。
なお、2000年3月1日以前に締結された居住用の普通借家契約は、定期借家契約への切り替えが制限されており、合意しても無効になるケースがあります。
賃貸人から定期借家契約への切り替えを求められた場合でも、条件次第では交渉の余地があります。
例えば、期間満了時の立ち退き料や移転費用の負担、再契約の可能性などを事前に取り決めると将来のトラブルの予防に繋がります。
切り替えに合意する条件として、家賃の大幅減額を提示するのも有効な手段でしょう。
交渉で合意した内容は、口約束のみではなく、必ず書面で記録して下さい。
切り替えを強く求められた場合には、弁護士に相談するのもよいでしょう。
個人が交渉をすると不利な条件に気付かないまま合意してしまうケースもあります。
「賃貸人からの要求がやや強引だな」と感じたときには、VSG弁護士法人に依頼して盾となる弁護士に交渉を代行してもらいましょう。
ここでは、定期借家契約と立ち退き料に関する期間途中の解約や店舗物件特有の悩みなど、実務で頻出する質問に回答します。
原則として、定期借家契約の期間が満了したときは立ち退き料を請求できません。
期間満了によって定期借家契約が確定的に終了し、借主は更新ができず、物件を明け渡さなければならないためです。
例外として、期間途中での退去要求や事前説明の不備など、定期借家契約の成立要件を満たしていなかったときは立ち退き料を請求できる可能性があります。
立ち退き料の請求可否や具体的な金額の算定は、個別の事情によって大きく異なります。
正確な立ち退き料の算定額を確認したいときは、不動産トラブルに強い弁護士などの専門家に依頼しましょう。
定期借家契約の借主は原則として立ち退き料を請求できませんが、契約期間の途中で退去を求められたときは請求できる可能性があります。
定期借家契約は一定期間を定めて建物を利用する契約であり、期間途中での解約は債務不履行に該当するためです。
契約期間途中の立ち退き料の算定では、家賃と残存期間の賃料相当額が立ち退き料のベースとなります。
たとえば、残存期間が2年あり、現住居の家賃8万円、新居の家賃10万円のときは以下のように計算します。
計算例
(新居の家賃10万円-現住居の家賃8万円)×残存期間24カ月=48万円
定期借家契約で借りている物件で事業用の店舗を運営している場合も、立ち退き料の考え方は居住用のケースと同様です。
契約期間満了時の退去であれば、原則として立ち退き料は発生しません。
一方で、契約期間が残っているにも関わらず退去を要求されたときは、例外的に立ち退き料を請求できる可能性があります。
立ち退き料を算定するときは、月額の賃料に残存期間の月数を乗じた金額がベースになります。
事業用の店舗の場合、店舗什器の移設費用や改装費用、休業補償なども損失に含まれるため、居住用より立ち退き料は高額になるケースが多いでしょう。
定期借家契約は、原則として契約期間満了後の更新ができず、立ち退き料も請求できません。
一方で、契約時の説明不備や契約期間が満了していないにも関わらず退去要求があったときなどは立ち退き料を請求できる可能性があります。
普通借家契約から定期借家契約への切り替えを提案された場合、安易に承諾せず、対応方法を弁護士に相談しましょう。
切り替え提案は借主にとっても賃料などを交渉できるチャンスでもあり、経験豊富な弁護士にリーガルチェックを依頼するのが望ましいです。
少しでも疑問があるときは、不動産トラブルに強い弁護士が多数在籍するVSG弁護士法人にご相談ください。
[注1]借地借家法/e-Gov
借地借家法第38条