

東京弁護士会所属。イギリス(ロンドン)出身。
立ち退きは、人生という演劇における「幕間のセットチェンジ」のようなものです。次の新しいステージへスムーズに、かつ最良の状態で進むためには、適切な準備とプロフェッショナルによる調整が欠かせません。
私は都内の大規模・中堅法律事務所で培った高度な法的知見を活かし、居住用から事業用まで、数多くの「立ち退き料増額交渉」や「建物明渡し」の問題に取り組んできました。
「どれくらいの金額が妥当なのか」「いつまでに明け渡すべきか」といった不安に対し、法律の専門家として明確な見通しをスピーディーに提示いたします。皆様が正当な権利を守り、納得して次の一歩を踏み出せるよう全力でサポートいたします。ぜひ一度ご相談ください。

大家が賃借人に賃貸物件からの立ち退きを求めるときは、やむを得ないと認められる正当事由が必要です。
正当事由が弱い場合でも、十分な立ち退き料の支払いがあると補完され、立ち退きが認められる可能性があります。
自分の居住権には、法的に100万円〜数千万円単位の価値があります。
大家が立ち退き料を払わない場合でも、専門家の介入によって交渉に応じるケースは多いため、立ち退き問題に精通した弁護士に相談しましょう。
本記事では、大家が立ち退き料を支払ってくれないときの対処法や専門的な知見から増額交渉を行う方法などを解説します。
目次
大家が賃借人(借主)に建物からの退去を求める場合、法的な義務はありませんが、判例では多くのケースで立ち退き料の支払いが求められます。
住居は生活の基盤となる場所であり、要介護者の同居など退去が困難な事情を抱えているケースもあります。
退去前には新住居を契約する必要があり、賃借人の状況により契約費用や引っ越し費用などを払うための資金がない場合もあるでしょう。
具体的な立ち退き料の算定には、大家の退去を求める正当事由の強弱や賃借人の生活状況などが考慮されます。
大家が立ち退きを求める正当事由が不十分な場合、立ち退き料の増額によって補完しなければなりません。
大家が立ち退き料を拒否しても、過去の判例を提示すると交渉を優位に進められるケースが多いでしょう。
例外として、賃借人に契約違反がある場合や建物が老朽化して倒壊リスクが著しく高い場合などは立ち退き料がもらえない可能性もあります。
立ち退き料を払ってくれる主なケースは、以下の通りです。
立ち退き料を払ってくれるケース
建物の修繕工事や建て替え工事を行う場合
建物解体後に賃貸人(大家)が自宅を建てる場合
賃貸住宅に介護が必要な親族を呼ぶために立ち退きが必要な場合
再開発や道路拡幅などの公共事業で立ち退く場合
建て替えは収益改善など大家都合の目的であるケースも多く、増額交渉のチャンスと言えるでしょう。
大家都合のみではなく、再開発や公共事業の場合でも立ち退き料を払ってもらえます。
公共事業に伴う立ち退き料は、賃貸住宅の大家が公共事業の施行者から立ち退きの請求を受けた後、賃貸住宅の大家が賃借人へ立ち退きを請求します。
立ち退き料を払ってもらえないケースの例は、以下の通りです。
立ち退き料を払ってもらえないケース
家賃を数カ月滞納している
借りている賃貸物件にほとんど住んでいない
大家に無断で第三者に転貸している
ペット禁止物件にもかかわらずペットを飼育している
音楽を大音量で聞くなど近隣住民と騒音でトラブルになっている
賃貸借契約違反や近隣住民への迷惑行為をしている
賃借人が大家や近隣住民に迷惑をかけており、改善を促しても応じない場合、立ち退き料をもらえない可能性があります。
違反行為により賃貸借契約を解除させられたときも原則として立ち退き料はもらえません。
大家が立ち退き料を支払わないときには、主に以下の理由が考えられます。
大家側の考えを理解し、冷静に対処できるようにしましょう。
個人で建物を賃貸している場合は大家業に慣れていないため、立ち退き料を支払う必要はないと誤認しているケースもあります。
長年、賃借人と良好な関係を築いており、これまでに退去を求めた経験がない大家もいるでしょう。
大家の無知による場合、弁護士名義の書面によって法的な根拠を伝える方法が最も効果的です。
立ち退き料が支払われる正当な理由や事例を説明すると、納得してもらえる可能性があります。
大家が納得できるよう、弁護士に実際の判例や立ち退き料の算定などを依頼して、客観的な根拠に基づいた資料を提示しましょう。
正当事由とは、賃借人に退去を求めるのに相当と認められる事由です。
大家が主張する正当事由として、以下のケースが考えられます。
建物の所有者であるため、自らの都合で賃借人に退去を求められると考える大家もいるでしょう。
一方で、借地借家法により賃借人の居住権は保護されるため、大家から正当事由のない契約解除や更新拒絶は認められません。
単に大家が物件を使用したいといった一方的な都合のみでは、原則として正当事由があると認定されないでしょう。
立ち退き要求が認められるためには、賃借人の損失を補填する立ち退き料を支払い、正当事由を補完する必要があります。
以下を例とする契約違反によって賃貸借契約を解除されると、立ち退き料の請求も認められません。
契約の解除には、大家と賃借人の信頼関係が破壊されたと認められる必要があります。
軽微なひっかき傷や初回の滞納では、信頼関係の破壊までは認められないケースが多いでしょう。
大家都合の立ち退き要求に関して、裁判所で判断が下されたケースをご紹介します。
大家に正当な立ち退き料を支払ってもらうためにも、どのような理由で判断されたのか確認しておきましょう。
酒屋を営む店舗に対し、老朽化による取り壊しを理由に立ち退きを求めたケースがあります(東京地裁平成22年9月1日判決)。
判決では、立ち退き料300万円の支払いと引き換えに立ち退きが認められました。
事例裁判所・部:東京地裁
判決日:2010年9月1日
要旨:裁判所は、70年の築年数から大規模修繕が必要となり、隣接地の形状や面積から本件土地と一体とする賃貸ビルの建築に経済的合理性を認めた。
店舗の酒類販売業について、移転により従前の顧客との関係がなくなり、営業に支障が生じる可能性は否定できないと判断。
一方で、移転により廃業を余儀なくされるとまでは認め難いとして、立ち退き料300万円の支払いを条件に立ち退き要求を認めた。
建物の老朽化が著しく、地盤崩壊などの危険性があるとして立ち退き料の支払いなしに明け渡しの正当性が認められた事例があります。
事例裁判所・部:東京地裁
判決日:1991年11月26日
要旨:建物で居住を続ける危険性から、建物を取り壊して新しい賃貸ビルを建設する合理性が認められた。
老朽化を理由とする立ち退きの場合、立ち退き料を求められるケースがほとんどです。
一方で、老朽化の程度や大家と賃借人の事情も本件のように立ち退き料へ影響する可能性があります。
老朽化による倒壊リスクが非常に高い場合や、賃借人の建物の使用状況に問題があった場合などは、立ち退き料が減額されるケースもあるでしょう。
契約違反をしていないのにもかかわらず、立ち退き料を払ってもらえないときは、弁護士に相談しましょう。
賃貸借契約書に立ち退き料を支払わない特約が記載されていても、原則として借地借家法により無効となります。
契約書の法的な判断や大家との交渉には専門的な知見が必要となるため、弁護士に依頼するのがおすすめです。
ここからは、大家が立ち退き料を払ってくれないときの対処法を紹介します。
立ち退き料の交渉を始めるときは、必ず事前に弁護士へ相談しましょう。
賃借人から交渉を始めるときに手間取ると、後の交渉に影響が出てしまうためです。
交渉の内容や方法などは、大家に伝える前にあらかじめ弁護士と打ち合わせをしましょう。
立ち退き料を支払ってもらえない理由を、大家に確認してください。
賃借人を立ち退きさせる正当事由があるために、払わなくてもよいと考える大家もいます。
正当事由に不足がある場合、感情的にならず論理的に大家へ指摘しましょう。
大家側に正当事由があるだけでは、実際に立ち退きをさせられません。
立ち退きを求めるための正当事由に加えて、立ち退き料の支払いが必要です。
大家から立ち退きを求める理由を聞き、立ち退き料を受け取れる内容であれば、はっきりと意思を伝えましょう。
内容証明郵便を大家に送付する方法も有効です。
内容証明郵便とは、差出人が受取人に送付する文書の内容や到達日時などを郵便局が証明する制度です。
内容証明郵便を受け取った側は、郵便を受け取っていない、郵送物の内容を知らないと主張できず、裁判上で有効な証拠として扱われます。
内容証明郵便を弁護士名義で送ると、対応してもらえないときの法的手段を示すため、よりプレッシャーを与えられるでしょう。
賃借人にとっても送付内容が記録に残るため、内容証明郵便を利用するときは記載内容を弁護士と相談する必要があります。
大家への直接交渉や内容証明郵便の送付によっても進展がない場合は、最終手段として訴訟を提起します。
裁判では、根拠をもって立ち退き料をどの程度賃借人へ支払うのが妥当なのか判断をしてもらえます。
裁判に臨む場合は、弁護士と相談して立ち退き料を受け取るための根拠や資料を準備しておきましょう。
弁護士に依頼した場合、訴訟手続きを代行してもらえるため、賃借人が法廷に立つ必要はありません。

ここからは、大家に対して立ち退き料を支払ってもらう交渉手順を紹介します。
賃貸契約書で契約期間や更新の有無、特約の定めなどを確認しておきましょう。
「立ち退き料は支払わない」など賃借人を一方的に不利にする特約は、消費者契約法や借地借家法により無効となる可能性があります。
立ち退き料の金額については、過去の判例などからおおよその目安が決まっています。
交渉をスムーズにするためにも、目安を踏まえて事前に計算しておきましょう。
賃貸住宅の立ち退きの場合は、以下のような内訳が考えられます。
これらを合計した金額を立ち退き料として提示できます。
提示する金額は、引っ越し代のみでなく、家賃差額や慰謝料、店舗の休業補償なども含めた最大値で見積もりましょう。
交渉が始まったら、早い段階で提示できるように準備します。
大家から退去期日や立ち退き料の提示がある場合でも、安易に合意せず、退去しない意思を伝えましょう。
立ち退き料をできるだけ抑えたいと考えていた大家も、賃借人に立ち退きの意思がないときは解決に向け検討を始めます。
立ち退き料や退去までの期間など、交渉したいポイントも明確に伝えましょう。
大家によっては立ち退き料が必要ないと思い込んでいる人がいます。
大家に正当な事由がある立ち退き要求の場合でも、基本的に賃借人へ立ち退き料を払う必要があります。
賃借人の居住権は借地借家法で保護されており、立ち退き要求によって発生する転居費用や精神的負担は法的に補填されると大家に理解してもらいましょう。
感情論のみでなく、最終的に訴訟手続きに移行した場合の時間的・経済的なデメリットについて理解してもらう方法も有効です。
大家と交渉で合意した内容は、口頭での話し合いだけでなく、すべて書面などにまとめて記録しましょう。
交渉時にはお互いが納得の上で合意した内容も、口頭のみでは後から意見を覆したり、「言った」「言わない」のトラブルになる恐れがあります。
交渉後のトラブルを防ぐためには、合意内容を書面にまとめて共有し、お互いの認識に齟齬がないか確認しながら進めるのがよいでしょう。
交渉は、書面や電子メールなどの文面のみでなく、面談などで行うのが一般的です。
立ち退き交渉では、時には切迫した事情や生活状況などを説明する必要があり、面談の方がお互いの感情や本気度などが伝わりやすくなるためです。
面談では、相手の了承を得た上でボイスレコーダーやスマートフォンの録音機能などで音声を記録しておくと、後から書面にまとめる際に役立つでしょう。
大家との交渉では、お互いに主張を譲らないために意見がぶつかり、感情的になってしまうケースがあります。
交渉で感情的になってしまうと、冷静な判断ができず、相手の心証を害してしまうため交渉が円滑に進まない恐れがあるでしょう。
交渉が長期化して精神的・経済的な負担が重くなる恐れもあるため、大家との交渉は弁護士に一任する方がおすすめです。
建物の入居時に大家へ敷金を払っているときは、敷金の返還される額も確認しておきましょう。
敷金は、滞納した家賃や損壊した建物にかかる原状回復費用の補填などを目的として入居時に大家へ預ける金銭です。
大家から立ち退き料が支払われるときも、立ち退き料とは別に預けた敷金から原状回復費用などを控除した額が返還されます。
建物の老朽化による取り壊しを理由に退去するときは原則として原状回復が不要になるため、敷金は全額返還されるケースが多いです。
大家によっては、原状回復費用が不要になるにも関わらず、敷金から一部を控除するケースもあるため注意しましょう。
立ち退き料や原状回復費用が敷金から不当に控除されるのを防ぐため、敷金の返還額は交渉時に確認しましょう。
交渉では、お互いの主張をすべて通すのが難しい場合に備えてた妥協案の準備が重要です。
妥協案を準備しておかなければ、お互いに主張を譲らないまま交渉が長期化し、交渉が行き詰まるリスクがあります。
妥協案の例は、以下の通りです。
最初から立ち退き料の減額を認めずに、まずは支払方法や退去期日などから交渉しましょう。
なお、妥協案は、賃借人自身が納得できる範囲内が望ましいです。
大家が立ち退き料を支払わず、トラブルが起きたときはできるだけ早く弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談すると、以下のようなメリットがあります。
法的な根拠をもって立ち退き料の支払いを請求できる
弁護士は、過去の判例などから法的な根拠をもって立ち退き料を請求できます。
弁護士への依頼は、最終的には法的手段による回収も示唆するため、支払いに応じてもらえる可能性が高くなるでしょう。
交渉にかかる負担を大幅に軽減できる
大家との交渉を代行してもらえるため、労力や精神的負担が大幅に軽減されます。
VSG弁護士法人では多数の実績から専門的なノウハウを構築し、立ち退き料を相場以上に引き上げた事例もあります。
大家が立ち退き料を払ってくれないときのよくある質問は、以下の通りです。
それぞれの質問について回答します。
大家都合で退去するときの立ち退き料の相場は、家賃6〜12カ月分ほどです。
立ち退き料には、以下に例示する退去によって発生する費用が含まれます。
立ち退き料は、大家の退去を求める理由の強弱や、賃借人の退去により発生する損失の大きさなどが考量されます。
たとえば店舗を営業している場合、移転費用や休業補償、改装費用なども考慮されるため、立ち退き料が高額になるケースもあるでしょう。
以下のような契約のときは、原則として立ち退き料をもらえません。
定期賃貸借契約の場合
定期賃貸借契約とは、定められた契約期間の経過により更新なく終了が確定する賃貸借契約です。
契約者双方の合意がなければ契約は確定的に終了するため、立ち退き料は原則としてもらえません。
定期借家契約でも、通知期間の遅れなどで普通借家契約とみなされ、立ち退き料を請求できるケースもあります。
一時的な使用を目的とする場合
大家が地方へ転勤している期間のみの賃貸など、契約時に一時的な使用を目的としていた場合は立ち退き料を請求できません。
使用目的の達成により、契約は当然に終了すると考えられるためです。
建物の取り壊し予定が明記されている場合
建物の取り壊し時期や賃貸借契約の終了が契約締結時で明記されているときは、立ち退き料が認められません。
契約で明記されている場合、賃借人も建物の取り壊し後の退去について合意しているとみなされるためです。
建物の老朽化による建て替えや取り壊しを理由とする場合、立ち退きを求めるための正当事由として認められる可能性があります。
立ち退き料の金額は、個人の居宅のときは数十万円〜数百万円、営業店舗のときは数百万円〜数千万円のケースが一般的です。
立ち退き料の算定には、老朽化の程度や大家と賃借人の双方の事情が考慮されます。
たとえば、建物の老朽化が進んでいないときは立ち退き料を増額しなければ正当事由と認められない可能性が高いでしょう。
賃借人に要介護者がいるなど、転居が難しい事情がある場合も、立ち退き料への上乗せが認められる可能性があります。
一方で、建物の老朽化が著しく倒壊リスクなど重大な危険があるときは、立ち退き料なしに退去が認められた判例もあります。
立ち退き料が支払われるタイミングは、原則として退去期日と同日のケースが多いでしょう。
先に退去してしまうと、退去したにも関わらず立ち退き料を払ってもらえないなどトラブルになるケースもあるためです。
交渉次第では、引っ越し費用などに補填するため立ち退き料の一部を先払いで受け取れる場合もあります。
トラブルを避けるため、支払いのタイミングや条件などは、合意書で明確に定めておきましょう。
立ち退き料の請求は、退去する賃借人にとって発生する損害を補填するための正当な権利です。
大家が立ち退き料を支払ってくれない場合でも、一人で抱えこまずに弁護士へ相談しましょう。
弁護士は法的な根拠をもって大家に立ち退き料の支払いを求めるほか、大家との交渉を代行してもらえるため賃借人の負担が大幅に軽減できます。
VSG弁護士法人では、立ち退き料に精通した弁護士が賃借人側の視点から大家と交渉し、お客様の利益を最大化できるようサポートします。