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合同会社Vol.10 LLC(合同会社)とは?株式会社との違いメリット・デメリットを解説
この記事の執筆者 税理士 森健太郎
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
LLC(合同会社)は比較的新しい会社形態ですが、制定以来、LLCが拡大していることを知っていますか?
これから会社を設立しようと考えている人は、合同会社のメリットやデメリットを理解し、株式会社と比較してどちらを選ぶべきなのか、判断する必要があります。
会社といえば、株式会社を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、実はLLCは右肩上がりに増加しています。
なぜ大手有名企業が、株式会社でなくLLC(合同会社)を選ぶのか、 LLCの全貌を紹介しましょう。
LLCってそもそもなに?
LLCか株式会社どっちを選ぶべき?
LLCにはどんなメリットがある?
LLCで気をつけることってなに?
LLCと似た言葉でLLPってなに?
など、LLCにまつわる疑問が解消できる内容になっています。
LLC設立を検討している方は是非、参考にしてください。
▼目次- 1 LLCとは
- 2 米国LLCの税務の取り扱い
- 3 LLC・株式会社・その他持分会社の違い
- 4 LLCのメリット
- 5 LLCのデメリット
- 6 LLCとLLPの違い
LLCとは
LLCとはLimited Liability Company(リミテッド・ライアビリティ・カンパニー)の略で、アメリカ合衆国の各州の法律に基づいて設立される会社形態の一つです。
LLCの特徴は、有限責任・会社の永続性を保ちながら、連邦法人税を回避することができる法人であることです。
日本では2006年の新会社法で、このLLCをモデルにした「合同会社」が誕生しました。
日本版LLCと呼ばれることもあります。
LLC(合同会社)が誕生した理由の一つとして、高齢化社会や少子化、またIT産業などの台頭によって、個人の能力や専門知識、ノウハウといった人的資本が重要視されるようになったことが挙げられるでしょう。
従来の会社では人的資本を重視した企業は、無限責任制しかありませんでした。
もしくは有限責任にする代わりに組織内自治を捨てて株式会社にするしか方法がなかったために、有限責任の人的法人制度が欲しいという声が増えてきた背景があります。
米国LLCの税務の取り扱い
通常、会社には法人税が課せられるため、会社は利益の一部で法人税を支払い、残りの利益を出資者へ配当します。
この配当金を受け取った出資者は、所得税を支払う必要があります。
結果として出資者が受け取った利益には法人課税と所得税の2つの税が課せられていることになります。
一方で、米国LLPの場合は、会社の利益に対して法人税が課せられず出資者のみが所得税を払うパス・スルー課税か法人課税かのいずれかを選択できる仕組みです。
日本版LLCではパススルー課税は導入されていません。
国税庁によると米国LLCの日本の税制上の扱いは、以下のように定められています。
LLCが米国の税務上、法人課税又はパス・スルー課税のいずれの選択を行ったかにかかわらず、原則的には我が国の税務上、「外国法人(内国法人以外の法人)」として取り扱うのが相当です。ただし、米国のLLC法は個別の州において独自に制定され、その規定振りは個々に異なることから、個々のLLCが外国法人に該当するか否かの判断は、個々のLLC法の規定等に照らして、個別に判断する必要があります。
引用:国税庁
LLC・株式会社・その他持分会社の違い
会社は、株式会社か持分会社(もちぶんかいしゃ)の2種類に分類されます。
持分会社とは合同会社・合資会社・合名会社3つの会社をまとめた総称です。
持分会社は株式会社と比較して、設立の手続きが簡単で設立費用を抑えられ、運営の自由度が高いが、社会的な信用力には欠けるといった特徴があります。
持分会社のなかでも、合名会社・合資会社は設立時の資本の規定がなく、出資は現金以外に信用・労務や現物出資が認められており、LLCよりもより設立が簡単であるといえるでしょう。
項目 | 持分会社 | 株式会社 | ||
---|---|---|---|---|
LLC (合同会社) |
合資会社 | 合名会社 | ||
設立に必要な人数 | 1人以上 | 2人以上 | 1人以上 | 1人以上 |
設立費用 | 10万円程度 | 25万円程度 | ||
登録免許税 | 6万円 | 15万円 | ||
定款印紙代 | 4万円※電子の場合は無料 | |||
責任範囲 | 有限 | 無限/有限 | 無限 | 有限 |
意思決定機関 | 社員の同意 | 株主総会 | ||
決算公告の義務 | なし | あり | ||
肩書き | 代表社員 | 代表取締役 | ||
利益配分 | 規定なし | 出資額に応じる | ||
貸借対照表の作成 | 必要 | |||
損益計算書の作成 | 必要 | |||
変動計算書の作成 | 社員資本等変動計算書 | 株主資本等変動書 | ||
組織変更 | 可 |
LLCは株式会社と比較して、設立コストが抑えられることや、会社としての意思決定が社内で完結するのでスムーズに行えます。
また、利益配分が自由であることや決算公書の作成義務がないため、運営の自由度が高いことも大きなメリットといえるでしょう。
LLCのメリット
LLCのメリットを、以下のポイントから解説します。
【LLCのメリット】- ・設立費用が安い
- ・設立手続きが簡単
- ・決済公告が不要
- ・柔軟な組織運営が可能
- ・利益分配が自由
設立費用が安い
名目 | 株式会社 | 合同会社 |
---|---|---|
収入印紙代 | 4万円(※0円) | 4万円(※0円) |
定款認証の手数料 | 5万円 | 0万円 |
登録免許税 | 15万円〜 | 6万円〜 |
合計 | 24万円 (20万円) | 10万円 (6万円) |
※電子の定款の場合には収入印紙代が不要
合同会社と株式会社の大きな違いの一つとして設立コストが挙げられます。
株式会社を設立する場合、約25万円必要なのに対し、合同会社の方は10万円程度で済むため、会社を設立しやすいでしょう。
設立費用が安く済む代わりに、合同会社は株式会社よりも信用性が低いため、資金調達の幅が限られる点はデメリットと言えます。
そのためLCCは個人事業の節税対策や、友人と知識や技術を持ち寄って起業、将来的に会社を大きくする予定がないといった場合には、合同会社が設立のハードルが低くおすすめです。
設立手続きが簡単
LLCは以下の6つのステップで設立できます。
1.基本事項の決定
まずは会社名や事業目的、会社の所在地、資本金の額、誰が代表社員なのか、事業年度などを決定します。
会社名は既存の会社とかぶることがないよう注意しましょう。
2.印鑑の作成
会社の設立手続きには、会社の印鑑を作る必要があります。
会社印は実印、銀行印、角印の3本用意するといいでしょう。
3.定款の作成
定款では、上記の基本事項に加えて、公告方法、社員の責任、退社の取り決め、損益の分配方法を記載しましょう。
株式会社よりも記載事項がすくないため、比較的簡単に作成できます。
4.資本金の払込み
資本金が振り込まれたことを証明する証明を用意します。
振り込み口座は社員のものであればいいでしょう。
振り込み日は、定款が認証された日より後である必要があるため注意しましょう。
5.登記書類の作成
合同会社設立登記申請書「商号」「本店」「登記の事由」「登記すべき事項」「課税標準金額(資本金)」「登録免許税(収入印紙の金額)」「納付書類」「日付」「申請人の詳細」などです。
6.登記書類の提出
登記申請は、設立する会社の本店所在地を管轄する法務局で手続きを行います。
登録免許税として6万円の収入印紙を貼って提出します。
提出した日をもって、会社の設立が完了します。
株式会社の場合には、公証人と打ち合わせをして定款認証を行ったり、必要となる役員等の選任手続きがあったりと細かい規定がありますが、合同会社の場合には所有と経営が分離していないために、より簡単な手続きで済むようになっています。
多額の資金調達が必要でないのであれば、わざわざ煩雑なステップを踏んで株式会社を設立する必要はないでしょう。
決算公告が不要
株式会社は年に一度、決算書を公告する必要であるのに対し、合同会社の場合には決算公告は不要です。
公告には費用がかかりますが、合同会社の場合はこの公告の義務はないとされているためにこの費用を節約することができます。
また株式会社は決算公告の手間暇をかけることで、よりクリーンな企業であることを一般大衆を対象にアピールでき、信頼性を得ることにもつながります。
しかし合同会社の場合は決算公告も任意であるため、知らせた方がメリットにつながる相手にだけ知らせるなど、自由にできます。
そのため、例えば未開拓分野で会社を設立し利益が出ている場合、他社に真似されにくいことやライバル会社が出現しにくいため合同会社を選ぶのも一つの考え方でしょう。
柔軟な組織運営が可能
合同会社は、株式会社と比べると会社の組織運営の自由度が高いこともメリットの一つです。
例えば、組織に複数の経営者がいるような場合には取締役会を設置する取締役設置会社となることが考えられますが、株式会社の場合には取締役会を置く場合には監査役を必ず置かなくてはならないなどの法律上のルールがあります。
合同会社の場合にはこうしたルールは基本的に存在せず、会社の根本ルールである定款に職務内容を定めることによって自由で柔軟、かつ迅速に組織運営を行うことが可能になります。
新分野の事業や開発スピードが大切な事業などは、株式会社のように外部機関が関わらない合同会社の方が向いているでしょう。
利益分配が自由
合同会社の場合、出資者の出資額に関係なく、個人の貢献度などに応じて自由に利益を配当することができます。
例えば、それぞれの貢献度を社員でしっかり話し合ったうえで評価できるため、社員の来期のモチベーション向上にも繋がるでしょう。
このように利益の配分を自由に設定できる点は、合同会社ならではのメリットともいえます。
一方株式会社の場合には、株主の出資額や所有株式数に応じて利益を配分するという決まりがあります。
合同会社における利益配当では、一部満足できない人が出て、社内の人間関係トラブルに発展する可能性があるので注意が必要です。
これらを回避するためには、経営者同士しっかりコミュニケーションをとり良好な人間関係を築くこと、丁寧に考え方をすり合わせておくことが大切です。
貢献度に応じて社員のモチベーションを保ちたい専門知識を要する事業を始める人は、合同会社の利益配分が自由であることが大きな魅力でしょう。
LLCのデメリット
LLCには、以下のようなデメリットがあることも覚えておきましょう。
【LLCのデメリット】- ・信用度が低く見られる可能性がある
- ・上場ができない
- ・出資額に関係なく出資者全員が議決権を持つ
信用度が低く見られる可能性がある
合同会社は、設立コストも安く簡単に作れ、経営の意思決定も簡単に進む代わりに、社会的な信頼性は低い傾向があります。
株式会社は手続きが面倒である反面、信頼性の高い組織体であるという認識を得ることができます。
信用度が低く見られることで、資金調達の幅が狭くなるという不利益があるでしょう。
国や自治体の助成金を利用したり、日本政策金融公庫の融資を受けるなどして、資金の調達を検討しましょう。
上場ができない
合同会社の場合、株式会社のように上場するという概念がないため、会社の成長度に応じて上場するということができません。
上場すれば、社会的な信用を得て大きな経営資金の調達が可能となったり、会社として安定することに繋がります。
そのため合同会社では資金調達の幅が限られたり、会社を拡大していかないというイメージがあるため、新しい優秀な人材を確保しにくいというデメリットがあります。
合同会社が大きく成長した場合や将来的に上場を検討する場合、合同会社から株式会社への切り替えを検討することになるでしょう。
出資額に関係なく出資者全員が議決権を持つ
LLCでは出資額に関係なく、出資者全員が平等に議決権を持ちます。
一方で株式会社では株数に応じて議決権の割合を決定します。
多く出資している人と、あまり出資していない人でも一票の重みが同じという意味では公平であるという見方もできる一方で、不満に感じる社員もいるかもしれません。
一度、意見の対立が起こってしまうと、合同会社のメリットであるスピーディーな意思決定ができなくなります。
また退社することとなれば、出資額の減少にもつながるため、経営が不安定になるリスクもあるでしょう。
これらを回避するためには、経営者同士しっかりコミュニケーションをとり良好な人間関係を築くことが求められます。
LLCとLLPの違い
LLC(合同会社) | LLP(有限責任事業組合) | |
---|---|---|
法人格 | あり | なし |
責任 | 有限 | 有限 |
税金 | 法人税、所得税 | 所得税 |
株式会社への変更 | 可 | 不可 |
LLPには法人格がないため法人税が課せられないこと、株式会社への変更ができない点が大きな違いとして挙げられます。
これらの違いから、LLCは将来的に株式会社化も想定した長期的な事業におすすめであると言えます。
一方でLLPはより短期的な事業で、参加者それぞれが自分の能力を生かしやすい事業に向いているでしょう。
ここでは、LLCとLLPの違いを以下の点から解説します。
- ・法人格の有無
- ・税金の負担
- ・株式会社への組織変更
法人格の有無
LLCとLLPのもっとも大きな違いは、法人格があるかどうかです。
LLCには法人格がありますが、LLPは個人同士の契約関係なので法人格がありません。
法人格があると、その組織の名義で財産を所有することができるようになります。
例えば、土地や建物などの不動産を所有することになった時には、法務局に行って登記という手続きを行います。
組織名義の登記があると、全ての人に対して「この不動産はこの組織のものです」ということがいえるようになるのです。
税金の負担
LLCとLLPとでは、税金の負担の仕方が異なります。
LLCは法人格があるため、事業から得た利益に対して法人税が課されます。
一方で、LLPには法人格がないので、構成員として参加した人が個人事業主として所得税が課されることになります。
例えば利益の配当金において、LLCでは事業の利益から法人税を差し引いた金額を出資者に分配します。
受け取った配当金には所得税が課税されるため、二重に課税されます。
一方でLLPには事業としての利益に法人税が課税されないため、LLPの方が出資者に対するリターンの割合が高くなると言えます。
株式会社への組織変更
LLCとLLPの違いとして、将来的に株式会社に組織変更をしたいと考えた場合の手続きの違いがあります。
LLCは解散手続きを行わなくても、株式会社に移行することができるのに対して、LLPではいったん組織を解散したうえで株式会社を新たに設立する必要があります。
組織を解散するためには、財産の分配や、仮に債務がある場合に財産の差し押さえなどの問題に対処しなければならず、手続きが煩雑になるでしょう。
株式会社への組織変更の容易さという面ではLLPよりもLLCの方がやりやすいといえます。