【ベンチャー支援専門の税理士が教える その税金3割ムダですよ】 第4回 設立時の資本金の額はどう決めるか?
資本金の持つ意味
会社を設立する方が決まって頭を悩ませる項目のひとつに「資本金の金額をいくらにするか?」があります。
株式会社の場合、資本金とは株式の発行によって集めた資金のことを言い、業務運営に活用できる元手の資金となります。
新会社法の施行前は、株式会社で1千万円の資本金が最低限必要でしたが、今は1円からでも設立可能です。
とは言え、会社の設立費用だけで約20万円がかかりますし、事業の初期投資なども考えるとあまりに少ない資本金額に設定してしまうと、設立してすぐ「債務超過」の状態になります。
債務超過の状態が直ちに取引先などに公表されたりすることはないので一時的には問題になりませんが、これは代表者や関係者が経費を肩代わりしている状態です。
そうなることが分かっていれば、そもそも資本金額を大きくしておくべきですので、設立当初から事業の計画性を疑われかねません。
資本金の額は会社の登記事項にあたりますので、法務局で手数料さえ支払えば誰でもアクセスできる公開情報です。
つまり、取引先や金融機関への信用力の証明ともなりますので、それなりの金額は用意すべきでしょう。
税金への影響
資本金の額は、会社が支払うべき税金の額にも大きく影響してきます。
消費税は、原則的に会社設立後2期の間は免税とされる決まりがありますが、資本金1千万円以上で設立してしまうと、1期目から納税義務が生じます。
また、都道府県・市町村に毎年支払う法人住民税の均等割(きんとうわり)という定額の税金がありますが、これも資本金の額で税額が異なり、1千万円を超えると年間10万円以上の負担増となります。
さらに資本金が3千万円を超えると法人税などにも影響がでてきます。
他の弊害が無く、自由に決められる状況であれば、設立時の資本金は1千万円未満にすることをお薦めします。
融資を検討している場合
資本金の額が大きければ、出資者がそれだけリスクを負っている証明になります。
これからお金を貸そうとする金融機関は、自分だけが貸し倒れのリスクを負うことを避けたいので、資本金額を重要視します。
事実、事業の立上げ時に最も利用される日本政策金融公庫の新創業融資制度では、自己資金の要件というものがあります。
これは、創業に必要な資金の3分の1以上は自分で用意する必要があり、残りの3分の2を申込み金額として申請することができるという要件です。
許認可・ビザ等の制約
その他に資本金の額が影響することとして、許認可や役員のビザの問題などがあります。
例えば、一般労働者派遣事業を行おうとする場合、2千万円以上の資本金が必要ですし、それ以外の業種でも制約があるケースがあります。
また外国人の方で、投資経営ビザを取得したい場合は資本金5百万円以上が必要となるなど、会社ごとの個別事情により検討する必要があります。
まずは会社の事業内容や融資の有無などから資本金の適正額を検討してみてください。
(東京IT新聞25年7月掲載)
参考ページ:日本政策金融公庫「新創業融資制度」
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/04_shinsogyo_m.html
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