私の父が先月、65歳で亡くなりました。
父は飲食店やアパート経営など、いくつかの事業を個人で行っていました。
まだ若いうえ特に持病もなく、健康そのものと思っていましたが、突然自宅で倒れてそのまま亡くなってしまったのです。
私をはじめ、母や弟夫婦も父の事業とは無関係の仕事をしており、跡を継ぐつもりもありません。
そのため、このまま飲食店は閉店すればいいものと思っていましたが、先日銀行の担当の方が母の元を訪れて、残された借金の返済について話をしたいと言ってきました。
そこで、父が事業のために多額の借金をしていることを知ったのです。
誰も父の事業を継ぐわけでもないのに、借金の返済をすることは不可能です。
そこで、亡くなった人の財産も借金も相続しない「相続放棄」をしようと考えています。
はたして相続放棄を弁護士などに依頼せずに、自分で完結することは可能でしょうか。
相続放棄を行う場合、多くの人は弁護士や司法書士に依頼して行うと思いますが、自分で行うことも可能です。
ただし、相続放棄を自分で行う際には、いくつか注意しなければならない点があります。
1つ目は、相続放棄を行う際に作成しなければならない書類や、そろえなければならない資料について、不足することのないようにすることです。
家庭裁判所に提出する書類としては、相続放棄申述書、被相続人の住民票除票または戸籍附票、相続放棄を申立てる人の戸籍謄本があります。
また、配偶者や子供が相続放棄を申立てる場合には、被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本が必要となります。
いずれの書類も、ない場合には相続放棄の申立てが認められないため、注意しなければなりません。
2つ目は、相続放棄申述書の記載についてです。
用紙は裁判所においてあるほか、裁判所のホームページからダウンロードすることもできます。
記載する項目はそれほど多いわけではありませんが、「申述の理由」として相続放棄する理由や相続財産の概略について記載する箇所があります。
特に現金・預貯金や負債などについては、おおよその金額を記載しなければならないため、その概要をあらかじめ把握しておく必要があります。
3つ目は、相続放棄には期限があることです。
原則として、亡くなった事実を知ってから3か月以内に家庭裁判所に申立てをしなければ、相続放棄をすることはできません。
財産の内容を把握することが困難なために3か月の期限を過ぎてしまいそうな場合には、その期限を延長するための申請もあります。
しかし、この申請も亡くなってから3か月以内に行う必要があります。
最後に、相続放棄する前に財産の一部を売却したりすることはできないということです。
不動産や有価証券など、その財産の一部をお金に換えてしまうと、その時点で相続したものとみなされ、その後に相続放棄することはできなくなります。
相続放棄する可能性がある場合には、亡くなってからも相続財産はそのままにしておく必要があるのです。
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